隻眼の覇者・伊達政宗転生~殺された歴史教師は伊達政宗に転生し、天下統一を志す~

髙橋朔也

文字の大きさ
上 下
41 / 245
第一章『初陣へ』

伊達政宗、送り主を探すのは伊達じゃない その参

しおりを挟む
 書をたしなむ。つまり、書道か。前世で生きていた時、働いていた学校では書道の授業があった。俺の担当は歴史なのだが、書道の授業を監督したことも数回あった。何となくだが、生徒の書きっぷりを思い出してコツをつかんだような気がする。おそらく、問題はない。
 筆を握って、床に正座した。「父上。どのような字を書けばよろしいでしょうか?」
「『達筆たっぴつ』とでも書こう」
 お題は『達筆』。そのままじゃねーかっ!! この時、輝宗のセンスがないことを悟った。
 ただ、達筆の二文字なら容易く書くことが出来そうだ。指先に力をこめて、慎重に書き出した。あ、ちょっと待て! 危ねぇ。『しんにょう』を最初に書こうとしちまった。やらかすところだった。汗を拭って、巧みに筆を操って『達』を書けた。そして次の問題。『筆』の書き順は?
「どうした、政宗? 筆が止まっておるぞ?」
「......いえ、大丈夫です」
 義姫と小次郎の進み具合を確認した。もう少しで二枚目に突入しようとしていたからドキッとしたが、そのお陰で『筆』の書き順がわかった。イメージトレーニングをしてから、早速紙の上で筆を動かした。
 何とか書き終えることが出来たから、顔を上げて肩を落とした。
 その後も何枚か書いて、書をたしなむことは終わった。結局輝宗の目的がまったくわからなかった。しかし、今回の書道で、少し字がうまくなった。そういう実感があった。
 意外にも、輝宗と義姫、それに小次郎も字体が綺麗だった。伊達家の奴らは全員が字がうまいのか? それにしては、俺は前世と変わらない程度の字しか書けなかった。この差は何なのだろう。前世の記憶のあるない、の違いか? 確かめるために、あとで小十郎にも『達筆』という字を書かせてみよう。景頼にも書かせたらどうなるかな?
「ふあぁ......」
 小十郎、景頼、愛姫の三人よりぐっすり寝ていたはずの俺だが、あくびが出てしまった。前世で学校に出勤する時刻は早かったから、名坂横久の体は眠気に強くなっていた。けど、伊達政宗の体は眠気に弱いようだ。あの三人には悪いが、部屋に戻ったら、また夢でも見よう。
 スキップして自分の部屋に入ると、例の三人がまだ会議をしていたようだ。会話を聞いていると、手紙から犯人を推理するのを諦めて犯人らしき奴らを列挙してから怪しい奴だけを調べていくようだ。悪くない方法だ。どう調べていくかが難しいが、こんな熱中している三人の横ではぐーすか眠れない。あくびを噛み殺して、仕方ないから俺も会議に参加した。
「怪しい奴は誰だ?」
 小十郎は紙に書かれた名前の、一番上を指差した。「当然、犯人として怪しい奴はこの二人を筆頭にしているだろ?」
「確かに、それしかないか」
 犯人など、考えればあいつ意外にはなかなか考えられないものだ。小十郎も、なるほどかなり腕を上げたな。

 翌日、体を起き上がらせて、太陽の光りを浴びた。それが何よりも気持ち良かった。前世では歴史しか見てこなかったが、転生してから太陽があんなに綺麗なことを知った。
 昨日、会議の後は犯人をどうやって捕らえるかが論点となった。立場が立場なだけに、無礼には扱えない。そこが難しい。ちゃちゃっと床に体を押さえつけて、パパッと手錠を掛けたいものだ。
 会議の結果、犯人を捕まえはしないが手紙は返してもらい、俺達が未来人だということも口外禁止として強制させることで事態の収束を図ることとなった。脅さなくても、犯人が俺達を未来人だと口外することはしないと思う。犯人にとって何らメリットが存在しないからだ。これで未来人ということがバレる心配はしなくても良かろう。
「コーラ、久々に飲みたいなぁ」
 天に向かってつぶやいた。そりゃ、コーラはあまり飲まなかったけど、十数年飲まないと飲みたくなってくるのだ。コーラは戦国時代にはないし、スマートフォンとかがあれば作り方はあるだろうがそもそもスマートフォンがねぇんだ。つぶやいてから、急にコーラが飲みたくなってきた。どうすれば良いんだ? 小十郎なら作り方は知ってんじゃね? それならすぐにでも起こしに行きたかったが、小十郎は眠いだろうし起こすのは残酷だから起きるのを待つことにした。
 スマートフォンがこの時代で使えたなら、世に言うチートだな。
 数時間経って、小十郎が動き出した。そして、部屋に入ってきた。俺はやっと来たか、と思って床に座った。
「神辺」
「ん?」
「コーラ飲みたい」
「コーラ?」
「うん」
「作り方は知らんな」
 どうやら、小十郎もコーラの作り方は知らないようだ。ちょっとがっかりした。
 景頼と愛姫が起きたから、犯人の口封じへと出掛けた。ここで少し、犯人について補足しておこう。伊達政宗を語るなら、必ず登場しなくてはならない人物なのだが、まだ登場を果たしていなかった。いや、昨日やっと登場果たしたな。そいつは、伊達政宗の生みの親で輝宗の正室・義姫よしひめなのである。言われてみれば、義姫が犯人ということには納得だ。義姫の感じからして、秘密をペラペラしゃべることはないだろうが今後伊達政宗の障害になる。口止めは必要だ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

滝川家の人びと

卯花月影
歴史・時代
故郷、甲賀で騒動を起こし、国を追われるようにして出奔した 若き日の滝川一益と滝川義太夫、 尾張に流れ着いた二人は織田信長に会い、織田家の一員として 天下布武の一役を担う。二人をとりまく織田家の人々のそれぞれの思惑が からみ、紆余曲折しながらも一益がたどり着く先はどこなのか。

織田信長IF… 天下統一再び!!

華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。 この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。 主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。 ※この物語はフィクションです。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

if 大坂夏の陣 〜勝ってはならぬ闘い〜

かまぼこのもと
歴史・時代
1615年5月。 徳川家康の天下統一は最終局面に入っていた。 堅固な大坂城を無力化させ、内部崩壊を煽り、ほぼ勝利を手中に入れる…… 豊臣家に味方する者はいない。 西国無双と呼ばれた立花宗茂も徳川家康の配下となった。 しかし、ほんの少しの違いにより戦局は全く違うものとなっていくのであった。 全5話……と思ってましたが、終わりそうにないので10話ほどになりそうなので、マルチバース豊臣家と別に連載することにしました。

【新訳】帝国の海~大日本帝国海軍よ、世界に平和をもたらせ!第一部

山本 双六
歴史・時代
たくさんの人が亡くなった太平洋戦争。では、もし日本が勝てば原爆が落とされず、何万人の人が助かったかもしれないそう思い執筆しました。(一部史実と異なることがあるためご了承ください)初投稿ということで俊也さんの『re:太平洋戦争・大東亜の旭日となれ』を参考にさせて頂きました。 これからどうかよろしくお願い致します! ちなみに、作品の表紙は、AIで生成しております。

本能のままに

揚羽
歴史・時代
1582年本能寺にて織田信長は明智光秀の謀反により亡くなる…はずだった もし信長が生きていたらどうなっていたのだろうか…というifストーリーです!もしよかったら見ていってください! ※更新は不定期になると思います。

旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます

竹本田重朗
ファンタジー
転生石原閣下による大東亜戦争必勝論 東亜連邦を志した同志達よ、ごきげんようである。どうやら、私は旧陸軍の石原莞爾に転生してしまったらしい。これは神の思し召しなのかもしれない。どうであれ、現代日本のような没落を回避するために粉骨砕身で働こうじゃないか。東亜の同志と手を取り合って真なる独立を掴み取るまで… ※超注意書き※ 1.政治的な主張をする目的は一切ありません 2.そのため政治的な要素は「濁す」又は「省略」することがあります 3.あくまでもフィクションのファンタジーの非現実です 4.そこら中に無茶苦茶が含まれています 5.現実的に存在する如何なる国家や地域、団体、人物と関係ありません 6.カクヨムとマルチ投稿 以上をご理解の上でお読みください

生残の秀吉

Dr. CUTE
歴史・時代
秀吉が本能寺の変の知らせを受ける。秀吉は身の危険を感じ、急ぎ光秀を討つことを決意する。

処理中です...