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第一章『初陣へ』
伊達政宗、送り主を探すのは伊達じゃない その参
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書をたしなむ。つまり、書道か。前世で生きていた時、働いていた学校では書道の授業があった。俺の担当は歴史なのだが、書道の授業を監督したことも数回あった。何となくだが、生徒の書きっぷりを思い出してコツをつかんだような気がする。おそらく、問題はない。
筆を握って、床に正座した。「父上。どのような字を書けばよろしいでしょうか?」
「『達筆』とでも書こう」
お題は『達筆』。そのままじゃねーかっ!! この時、輝宗のセンスがないことを悟った。
ただ、達筆の二文字なら容易く書くことが出来そうだ。指先に力をこめて、慎重に書き出した。あ、ちょっと待て! 危ねぇ。『辶』を最初に書こうとしちまった。やらかすところだった。汗を拭って、巧みに筆を操って『達』を書けた。そして次の問題。『筆』の書き順は?
「どうした、政宗? 筆が止まっておるぞ?」
「......いえ、大丈夫です」
義姫と小次郎の進み具合を確認した。もう少しで二枚目に突入しようとしていたからドキッとしたが、そのお陰で『筆』の書き順がわかった。イメージトレーニングをしてから、早速紙の上で筆を動かした。
何とか書き終えることが出来たから、顔を上げて肩を落とした。
その後も何枚か書いて、書をたしなむことは終わった。結局輝宗の目的がまったくわからなかった。しかし、今回の書道で、少し字がうまくなった。そういう実感があった。
意外にも、輝宗と義姫、それに小次郎も字体が綺麗だった。伊達家の奴らは全員が字がうまいのか? それにしては、俺は前世と変わらない程度の字しか書けなかった。この差は何なのだろう。前世の記憶のあるない、の違いか? 確かめるために、あとで小十郎にも『達筆』という字を書かせてみよう。景頼にも書かせたらどうなるかな?
「ふあぁ......」
小十郎、景頼、愛姫の三人よりぐっすり寝ていたはずの俺だが、あくびが出てしまった。前世で学校に出勤する時刻は早かったから、名坂横久の体は眠気に強くなっていた。けど、伊達政宗の体は眠気に弱いようだ。あの三人には悪いが、部屋に戻ったら、また夢でも見よう。
スキップして自分の部屋に入ると、例の三人がまだ会議をしていたようだ。会話を聞いていると、手紙から犯人を推理するのを諦めて犯人らしき奴らを列挙してから怪しい奴だけを調べていくようだ。悪くない方法だ。どう調べていくかが難しいが、こんな熱中している三人の横ではぐーすか眠れない。あくびを噛み殺して、仕方ないから俺も会議に参加した。
「怪しい奴は誰だ?」
小十郎は紙に書かれた名前の、一番上を指差した。「当然、犯人として怪しい奴はこの二人を筆頭にしているだろ?」
「確かに、それしかないか」
犯人など、考えればあいつ意外にはなかなか考えられないものだ。小十郎も、なるほどかなり腕を上げたな。
翌日、体を起き上がらせて、太陽の光りを浴びた。それが何よりも気持ち良かった。前世では歴史しか見てこなかったが、転生してから太陽があんなに綺麗なことを知った。
昨日、会議の後は犯人をどうやって捕らえるかが論点となった。立場が立場なだけに、無礼には扱えない。そこが難しい。ちゃちゃっと床に体を押さえつけて、パパッと手錠を掛けたいものだ。
会議の結果、犯人を捕まえはしないが手紙は返してもらい、俺達が未来人だということも口外禁止として強制させることで事態の収束を図ることとなった。脅さなくても、犯人が俺達を未来人だと口外することはしないと思う。犯人にとって何らメリットが存在しないからだ。これで未来人ということがバレる心配はしなくても良かろう。
「コーラ、久々に飲みたいなぁ」
天に向かってつぶやいた。そりゃ、コーラはあまり飲まなかったけど、十数年飲まないと飲みたくなってくるのだ。コーラは戦国時代にはないし、スマートフォンとかがあれば作り方はあるだろうがそもそもスマートフォンがねぇんだ。つぶやいてから、急にコーラが飲みたくなってきた。どうすれば良いんだ? 小十郎なら作り方は知ってんじゃね? それならすぐにでも起こしに行きたかったが、小十郎は眠いだろうし起こすのは残酷だから起きるのを待つことにした。
スマートフォンがこの時代で使えたなら、世に言うチートだな。
数時間経って、小十郎が動き出した。そして、部屋に入ってきた。俺はやっと来たか、と思って床に座った。
「神辺」
「ん?」
「コーラ飲みたい」
「コーラ?」
「うん」
「作り方は知らんな」
どうやら、小十郎もコーラの作り方は知らないようだ。ちょっとがっかりした。
景頼と愛姫が起きたから、犯人の口封じへと出掛けた。ここで少し、犯人について補足しておこう。伊達政宗を語るなら、必ず登場しなくてはならない人物なのだが、まだ登場を果たしていなかった。いや、昨日やっと登場果たしたな。そいつは、伊達政宗の生みの親で輝宗の正室・義姫なのである。言われてみれば、義姫が犯人ということには納得だ。義姫の感じからして、秘密をペラペラしゃべることはないだろうが今後伊達政宗の障害になる。口止めは必要だ。
筆を握って、床に正座した。「父上。どのような字を書けばよろしいでしょうか?」
「『達筆』とでも書こう」
お題は『達筆』。そのままじゃねーかっ!! この時、輝宗のセンスがないことを悟った。
ただ、達筆の二文字なら容易く書くことが出来そうだ。指先に力をこめて、慎重に書き出した。あ、ちょっと待て! 危ねぇ。『辶』を最初に書こうとしちまった。やらかすところだった。汗を拭って、巧みに筆を操って『達』を書けた。そして次の問題。『筆』の書き順は?
「どうした、政宗? 筆が止まっておるぞ?」
「......いえ、大丈夫です」
義姫と小次郎の進み具合を確認した。もう少しで二枚目に突入しようとしていたからドキッとしたが、そのお陰で『筆』の書き順がわかった。イメージトレーニングをしてから、早速紙の上で筆を動かした。
何とか書き終えることが出来たから、顔を上げて肩を落とした。
その後も何枚か書いて、書をたしなむことは終わった。結局輝宗の目的がまったくわからなかった。しかし、今回の書道で、少し字がうまくなった。そういう実感があった。
意外にも、輝宗と義姫、それに小次郎も字体が綺麗だった。伊達家の奴らは全員が字がうまいのか? それにしては、俺は前世と変わらない程度の字しか書けなかった。この差は何なのだろう。前世の記憶のあるない、の違いか? 確かめるために、あとで小十郎にも『達筆』という字を書かせてみよう。景頼にも書かせたらどうなるかな?
「ふあぁ......」
小十郎、景頼、愛姫の三人よりぐっすり寝ていたはずの俺だが、あくびが出てしまった。前世で学校に出勤する時刻は早かったから、名坂横久の体は眠気に強くなっていた。けど、伊達政宗の体は眠気に弱いようだ。あの三人には悪いが、部屋に戻ったら、また夢でも見よう。
スキップして自分の部屋に入ると、例の三人がまだ会議をしていたようだ。会話を聞いていると、手紙から犯人を推理するのを諦めて犯人らしき奴らを列挙してから怪しい奴だけを調べていくようだ。悪くない方法だ。どう調べていくかが難しいが、こんな熱中している三人の横ではぐーすか眠れない。あくびを噛み殺して、仕方ないから俺も会議に参加した。
「怪しい奴は誰だ?」
小十郎は紙に書かれた名前の、一番上を指差した。「当然、犯人として怪しい奴はこの二人を筆頭にしているだろ?」
「確かに、それしかないか」
犯人など、考えればあいつ意外にはなかなか考えられないものだ。小十郎も、なるほどかなり腕を上げたな。
翌日、体を起き上がらせて、太陽の光りを浴びた。それが何よりも気持ち良かった。前世では歴史しか見てこなかったが、転生してから太陽があんなに綺麗なことを知った。
昨日、会議の後は犯人をどうやって捕らえるかが論点となった。立場が立場なだけに、無礼には扱えない。そこが難しい。ちゃちゃっと床に体を押さえつけて、パパッと手錠を掛けたいものだ。
会議の結果、犯人を捕まえはしないが手紙は返してもらい、俺達が未来人だということも口外禁止として強制させることで事態の収束を図ることとなった。脅さなくても、犯人が俺達を未来人だと口外することはしないと思う。犯人にとって何らメリットが存在しないからだ。これで未来人ということがバレる心配はしなくても良かろう。
「コーラ、久々に飲みたいなぁ」
天に向かってつぶやいた。そりゃ、コーラはあまり飲まなかったけど、十数年飲まないと飲みたくなってくるのだ。コーラは戦国時代にはないし、スマートフォンとかがあれば作り方はあるだろうがそもそもスマートフォンがねぇんだ。つぶやいてから、急にコーラが飲みたくなってきた。どうすれば良いんだ? 小十郎なら作り方は知ってんじゃね? それならすぐにでも起こしに行きたかったが、小十郎は眠いだろうし起こすのは残酷だから起きるのを待つことにした。
スマートフォンがこの時代で使えたなら、世に言うチートだな。
数時間経って、小十郎が動き出した。そして、部屋に入ってきた。俺はやっと来たか、と思って床に座った。
「神辺」
「ん?」
「コーラ飲みたい」
「コーラ?」
「うん」
「作り方は知らんな」
どうやら、小十郎もコーラの作り方は知らないようだ。ちょっとがっかりした。
景頼と愛姫が起きたから、犯人の口封じへと出掛けた。ここで少し、犯人について補足しておこう。伊達政宗を語るなら、必ず登場しなくてはならない人物なのだが、まだ登場を果たしていなかった。いや、昨日やっと登場果たしたな。そいつは、伊達政宗の生みの親で輝宗の正室・義姫なのである。言われてみれば、義姫が犯人ということには納得だ。義姫の感じからして、秘密をペラペラしゃべることはないだろうが今後伊達政宗の障害になる。口止めは必要だ。
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