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第一章『初陣へ』

伊達政宗、尻拭いは伊達じゃない その壱

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 次の日、俺は気持ちよい感じで目が覚めた。前世は早起きだし、転生してから何かと良いことが多いような気もする。歴史好きにとって、戦国時代に逆行転生は願ったり叶ったりだ。天下を統一して、アーティネスにお礼を言わなくては俺の面目がない。
 起きたらまず、小十郎を呼んだ。
「名坂?」
「よう、神辺。未来人を集めてこい」
「な、何か江渡弥平がアクションを起こしたのかよ?」
「いや、単に今の時代にはまだないゲームを皆でやろうと思ったんだ。景頼も呼んで来いよ」
「わかった。で、どんなゲーム?」
「オセロだ! オセロはかなり真新しいゲームだから、この時代には存在しない。ゲームルールの説明も面倒だし、未来人らと景頼、愛姫、あとは成実も入れてオセロゲームをやるぞ!」
「オセロか。懐かしいな」
「だから、全員を呼び集めてくれ。将棋大会の次はオセロ大会だ!」
 小十郎は諸々の人数をかき集めて、事前に作っておいたオセロの盤と石で、オセロを始めた。成実だけはオセロのルールを知らないから、俺が丁寧に教えたらよく理解したらしい。
「さすがは若様! 若様は面白いゲームを考えましたね!」
「あ、いや、俺が考えたゲームじゃないんだけどさ」
「若様、ご謙遜けんそんを」
「いや、マジで俺の思いついたゲームじゃねぇんだよ! マジで!」
「大丈夫です。私にはわかります。さすがは若様だ!」
 成実に正しく教えるのは無理だとわかると、ため息をつきながらオセロ大会を開始した。しかし、成実はかなり強かった。戦も強いが、成実にはゲームの才にも恵まれていたとは......。非常にムカつく! くそ!
 で、勝ったのは成実。マジでうぜぇ! ついでに言うと、俺は予選一回戦のうちに敗退した。俺はなり振りかまわず進めたのだが、自陣の大穴に気づかずに兵をほとんど懐柔かいじゅうされて終わった。

 決勝戦が成実の勝利に終結して三十分が経ち、俺は輝宗に呼び出された。腰を押さえながら立ち上がり、用事は何だろうと思いながら本丸御殿へと向かった。
「どうしました、父上?」
「政宗に、先の戦でのわしのしりぬぐいを頼みたいと思ってな」
「父上の尻拭い、ですか?」
 輝宗は笑顔で大きくうなずいた。「お前の初陣は華々しかっだが、かなりの死者も出した。その死者の火葬をしていた時だ。一つの不可解な報告があった」
「報告? どのような報告ですか?」
「『家臣の遺体の中に他殺と疑わしきもの一体』という報告だった」
「他殺体ですか!」
 戦なのだから、ほとんど他殺体だと思うのだが......。
「そう。そして、その遺体を調べてみた。以前、お前が解決した城内で起こった蛇の事件と同様に、今回の遺体も外傷一つない。だが、蛇のこともあったから、小さい穴があるかもと考えて確かめた。結果、今回は蛇が凶器ではないとわかった。それだけわかった、他は何一つ不明の状況が続いている」
「死因について、医者の見解はどのようなものですか?」
「医者は、窒息死だろうとは言っていた」
「口を手で塞がれた、などの痕跡は遺体にありましたか?」
「遺体には争った痕跡すらなかったようだ」
「......さようですか」
「この件の解決をお願いできるか?」
 窒息死の遺体で外傷はない。蛇でもない。医学の知識もない俺だが、景頼から預かって保管している書物の中に医学書が混じっていたことを思い出した。愛姫、小十郎、景頼らと話し合えば、結論も出るだろう。輝宗からの信頼度を上げるためにも、ここは頑張り時だ。
「わかりました、父上。この伊達政宗、必ず犯人を縄で縛り上げてお目にかけましょう!」
「さすがは政宗だ。期待しているぞ!」
「ありがたきお言葉! 期待に応えられるように、死力を尽くさせていただきます」
「頼んだぞ。遺体はすでに城内に用意してある。本丸御殿の外で待機させている医者に案内してもらえ」
「承知しました」
 本丸御殿を出ると、確かに医者がいた。その医者に案内されて、俺は遺体の安置された部屋に入った。戦をやってすぐだから、遺体もかなり見た経験はある。しかし、嫌なことは何度やっても嫌だ。遺体を見慣れることは一生出来ないな。
「若様。この遺体について、くわしくご説明しましょうか?」
「良いのか?」
「はい。それは当然でございます」
「くわしく説明してみろ」
「窒息死が死因だとは聞きましたか?」
「ああ、それは父上から聞いた」
「窒息死と言ってもかなりいろいろあります。窒息死という条件だけで、くわしい死因を絞り出すのは困難。毒死、絞殺扼殺やくさつでないことは断言出来ましょう。首回りには絞めた跡がなく、解剖をしてみましたが毒物の検出には至りませんでした」
溺死できしはどうだ?」
「今のところ考えられません」
「それ以外にどのような窒息死があると言うのだ」
「口や鼻に異物を詰め、死亡後に外したとかは考えられます」
「だが、証拠もないし犯人もわからんだろ」
「ええ。ですから、お屋形様は若様をご指名したのですよ」
「そうなのだが......」
 これは参ったな。完璧に誤算だ。ここまで難しい案件だとは思わなかった。一晩、四人で集まって医学書を読み続けるしかなさそうだ。今日がまともに寝れないとわかり、どっと疲れが込み上がってきた。
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