34 / 245
第一章『初陣へ』
伊達政宗、尻拭いは伊達じゃない その壱
しおりを挟む
次の日、俺は気持ちよい感じで目が覚めた。前世は早起きだし、転生してから何かと良いことが多いような気もする。歴史好きにとって、戦国時代に逆行転生は願ったり叶ったりだ。天下を統一して、アーティネスにお礼を言わなくては俺の面目がない。
起きたらまず、小十郎を呼んだ。
「名坂?」
「よう、神辺。未来人を集めてこい」
「な、何か江渡弥平がアクションを起こしたのかよ?」
「いや、単に今の時代にはまだないゲームを皆でやろうと思ったんだ。景頼も呼んで来いよ」
「わかった。で、どんなゲーム?」
「オセロだ! オセロはかなり真新しいゲームだから、この時代には存在しない。ゲームルールの説明も面倒だし、未来人らと景頼、愛姫、あとは成実も入れてオセロゲームをやるぞ!」
「オセロか。懐かしいな」
「だから、全員を呼び集めてくれ。将棋大会の次はオセロ大会だ!」
小十郎は諸々の人数をかき集めて、事前に作っておいたオセロの盤と石で、オセロを始めた。成実だけはオセロのルールを知らないから、俺が丁寧に教えたらよく理解したらしい。
「さすがは若様! 若様は面白いゲームを考えましたね!」
「あ、いや、俺が考えたゲームじゃないんだけどさ」
「若様、ご謙遜を」
「いや、マジで俺の思いついたゲームじゃねぇんだよ! マジで!」
「大丈夫です。私にはわかります。さすがは若様だ!」
成実に正しく教えるのは無理だとわかると、ため息をつきながらオセロ大会を開始した。しかし、成実はかなり強かった。戦も強いが、成実にはゲームの才にも恵まれていたとは......。非常にムカつく! くそ!
で、勝ったのは成実。マジでうぜぇ! ついでに言うと、俺は予選一回戦のうちに敗退した。俺はなり振りかまわず進めたのだが、自陣の大穴に気づかずに兵をほとんど懐柔されて終わった。
決勝戦が成実の勝利に終結して三十分が経ち、俺は輝宗に呼び出された。腰を押さえながら立ち上がり、用事は何だろうと思いながら本丸御殿へと向かった。
「どうしました、父上?」
「政宗に、先の戦でのわしの尻拭いを頼みたいと思ってな」
「父上の尻拭い、ですか?」
輝宗は笑顔で大きくうなずいた。「お前の初陣は華々しかっだが、かなりの死者も出した。その死者の火葬をしていた時だ。一つの不可解な報告があった」
「報告? どのような報告ですか?」
「『家臣の遺体の中に他殺と疑わしきもの一体』という報告だった」
「他殺体ですか!」
戦なのだから、ほとんど他殺体だと思うのだが......。
「そう。そして、その遺体を調べてみた。以前、お前が解決した城内で起こった蛇の事件と同様に、今回の遺体も外傷一つない。だが、蛇のこともあったから、小さい穴があるかもと考えて確かめた。結果、今回は蛇が凶器ではないとわかった。それだけわかった、他は何一つ不明の状況が続いている」
「死因について、医者の見解はどのようなものですか?」
「医者は、窒息死だろうとは言っていた」
「口を手で塞がれた、などの痕跡は遺体にありましたか?」
「遺体には争った痕跡すらなかったようだ」
「......さようですか」
「この件の解決をお願いできるか?」
窒息死の遺体で外傷はない。蛇でもない。医学の知識もない俺だが、景頼から預かって保管している書物の中に医学書が混じっていたことを思い出した。愛姫、小十郎、景頼らと話し合えば、結論も出るだろう。輝宗からの信頼度を上げるためにも、ここは頑張り時だ。
「わかりました、父上。この伊達政宗、必ず犯人を縄で縛り上げてお目にかけましょう!」
「さすがは政宗だ。期待しているぞ!」
「ありがたきお言葉! 期待に応えられるように、死力を尽くさせていただきます」
「頼んだぞ。遺体はすでに城内に用意してある。本丸御殿の外で待機させている医者に案内してもらえ」
「承知しました」
本丸御殿を出ると、確かに医者がいた。その医者に案内されて、俺は遺体の安置された部屋に入った。戦をやってすぐだから、遺体もかなり見た経験はある。しかし、嫌なことは何度やっても嫌だ。遺体を見慣れることは一生出来ないな。
「若様。この遺体について、くわしくご説明しましょうか?」
「良いのか?」
「はい。それは当然でございます」
「くわしく説明してみろ」
「窒息死が死因だとは聞きましたか?」
「ああ、それは父上から聞いた」
「窒息死と言ってもかなりいろいろあります。窒息死という条件だけで、くわしい死因を絞り出すのは困難。毒死、絞殺扼殺でないことは断言出来ましょう。首回りには絞めた跡がなく、解剖をしてみましたが毒物の検出には至りませんでした」
「溺死はどうだ?」
「今のところ考えられません」
「それ以外にどのような窒息死があると言うのだ」
「口や鼻に異物を詰め、死亡後に外したとかは考えられます」
「だが、証拠もないし犯人もわからんだろ」
「ええ。ですから、お屋形様は若様をご指名したのですよ」
「そうなのだが......」
これは参ったな。完璧に誤算だ。ここまで難しい案件だとは思わなかった。一晩、四人で集まって医学書を読み続けるしかなさそうだ。今日がまともに寝れないとわかり、どっと疲れが込み上がってきた。
起きたらまず、小十郎を呼んだ。
「名坂?」
「よう、神辺。未来人を集めてこい」
「な、何か江渡弥平がアクションを起こしたのかよ?」
「いや、単に今の時代にはまだないゲームを皆でやろうと思ったんだ。景頼も呼んで来いよ」
「わかった。で、どんなゲーム?」
「オセロだ! オセロはかなり真新しいゲームだから、この時代には存在しない。ゲームルールの説明も面倒だし、未来人らと景頼、愛姫、あとは成実も入れてオセロゲームをやるぞ!」
「オセロか。懐かしいな」
「だから、全員を呼び集めてくれ。将棋大会の次はオセロ大会だ!」
小十郎は諸々の人数をかき集めて、事前に作っておいたオセロの盤と石で、オセロを始めた。成実だけはオセロのルールを知らないから、俺が丁寧に教えたらよく理解したらしい。
「さすがは若様! 若様は面白いゲームを考えましたね!」
「あ、いや、俺が考えたゲームじゃないんだけどさ」
「若様、ご謙遜を」
「いや、マジで俺の思いついたゲームじゃねぇんだよ! マジで!」
「大丈夫です。私にはわかります。さすがは若様だ!」
成実に正しく教えるのは無理だとわかると、ため息をつきながらオセロ大会を開始した。しかし、成実はかなり強かった。戦も強いが、成実にはゲームの才にも恵まれていたとは......。非常にムカつく! くそ!
で、勝ったのは成実。マジでうぜぇ! ついでに言うと、俺は予選一回戦のうちに敗退した。俺はなり振りかまわず進めたのだが、自陣の大穴に気づかずに兵をほとんど懐柔されて終わった。
決勝戦が成実の勝利に終結して三十分が経ち、俺は輝宗に呼び出された。腰を押さえながら立ち上がり、用事は何だろうと思いながら本丸御殿へと向かった。
「どうしました、父上?」
「政宗に、先の戦でのわしの尻拭いを頼みたいと思ってな」
「父上の尻拭い、ですか?」
輝宗は笑顔で大きくうなずいた。「お前の初陣は華々しかっだが、かなりの死者も出した。その死者の火葬をしていた時だ。一つの不可解な報告があった」
「報告? どのような報告ですか?」
「『家臣の遺体の中に他殺と疑わしきもの一体』という報告だった」
「他殺体ですか!」
戦なのだから、ほとんど他殺体だと思うのだが......。
「そう。そして、その遺体を調べてみた。以前、お前が解決した城内で起こった蛇の事件と同様に、今回の遺体も外傷一つない。だが、蛇のこともあったから、小さい穴があるかもと考えて確かめた。結果、今回は蛇が凶器ではないとわかった。それだけわかった、他は何一つ不明の状況が続いている」
「死因について、医者の見解はどのようなものですか?」
「医者は、窒息死だろうとは言っていた」
「口を手で塞がれた、などの痕跡は遺体にありましたか?」
「遺体には争った痕跡すらなかったようだ」
「......さようですか」
「この件の解決をお願いできるか?」
窒息死の遺体で外傷はない。蛇でもない。医学の知識もない俺だが、景頼から預かって保管している書物の中に医学書が混じっていたことを思い出した。愛姫、小十郎、景頼らと話し合えば、結論も出るだろう。輝宗からの信頼度を上げるためにも、ここは頑張り時だ。
「わかりました、父上。この伊達政宗、必ず犯人を縄で縛り上げてお目にかけましょう!」
「さすがは政宗だ。期待しているぞ!」
「ありがたきお言葉! 期待に応えられるように、死力を尽くさせていただきます」
「頼んだぞ。遺体はすでに城内に用意してある。本丸御殿の外で待機させている医者に案内してもらえ」
「承知しました」
本丸御殿を出ると、確かに医者がいた。その医者に案内されて、俺は遺体の安置された部屋に入った。戦をやってすぐだから、遺体もかなり見た経験はある。しかし、嫌なことは何度やっても嫌だ。遺体を見慣れることは一生出来ないな。
「若様。この遺体について、くわしくご説明しましょうか?」
「良いのか?」
「はい。それは当然でございます」
「くわしく説明してみろ」
「窒息死が死因だとは聞きましたか?」
「ああ、それは父上から聞いた」
「窒息死と言ってもかなりいろいろあります。窒息死という条件だけで、くわしい死因を絞り出すのは困難。毒死、絞殺扼殺でないことは断言出来ましょう。首回りには絞めた跡がなく、解剖をしてみましたが毒物の検出には至りませんでした」
「溺死はどうだ?」
「今のところ考えられません」
「それ以外にどのような窒息死があると言うのだ」
「口や鼻に異物を詰め、死亡後に外したとかは考えられます」
「だが、証拠もないし犯人もわからんだろ」
「ええ。ですから、お屋形様は若様をご指名したのですよ」
「そうなのだが......」
これは参ったな。完璧に誤算だ。ここまで難しい案件だとは思わなかった。一晩、四人で集まって医学書を読み続けるしかなさそうだ。今日がまともに寝れないとわかり、どっと疲れが込み上がってきた。
0
お気に入りに追加
121
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
Another World〜自衛隊 まだ見ぬ世界へ〜
華厳 秋
ファンタジー
───2025年1月1日
この日、日本国は大きな歴史の転換点を迎えた。
札幌、渋谷、博多の3箇所に突如として『異界への門』──アナザーゲート──が出現した。
渋谷に現れた『門』から、異界の軍勢が押し寄せ、無抵抗の民間人を虐殺。緊急出動した自衛隊が到着した頃には、敵軍の姿はもうなく、スクランブル交差点は無惨に殺された民間人の亡骸と血で赤く染まっていた。
この緊急事態に、日本政府は『門』内部を調査するべく自衛隊を『異界』──アナザーワールド──へと派遣する事となった。
一方地球では、日本の急激な軍備拡大や『異界』内部の資源を巡って、極東での緊張感は日に日に増して行く。
そして、自衛隊は国や国民の安全のため『門』内外問わず奮闘するのであった。
この作品は、小説家になろう様カクヨム様にも投稿しています。
この作品はフィクションです。
実在する国、団体、人物とは関係ありません。ご注意ください。
【新訳】帝国の海~大日本帝国海軍よ、世界に平和をもたらせ!第一部
山本 双六
歴史・時代
たくさんの人が亡くなった太平洋戦争。では、もし日本が勝てば原爆が落とされず、何万人の人が助かったかもしれないそう思い執筆しました。(一部史実と異なることがあるためご了承ください)初投稿ということで俊也さんの『re:太平洋戦争・大東亜の旭日となれ』を参考にさせて頂きました。
これからどうかよろしくお願い致します!
ちなみに、作品の表紙は、AIで生成しております。
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲
俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。
今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。
「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」
その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。
当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!?
姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。
共に
第8回歴史時代小説参加しました!
冤罪で自殺未遂にまで追いやられた俺が、潔白だと皆が気付くまで
一本橋
恋愛
ある日、密かに想いを寄せていた相手が痴漢にあった。
その犯人は俺だったらしい。
見覚えのない疑惑をかけられ、必死に否定するが周りからの反応は冷たいものだった。
罵倒する者、蔑む者、中には憎悪をたぎらせる者さえいた。
噂はすぐに広まり、あろうことかネットにまで晒されてしまった。
その矛先は家族にまで向き、次第にメチャクチャになっていく。
慕ってくれていた妹すらからも拒絶され、人生に絶望した俺は、自ずと歩道橋へ引き寄せられるのだった──
漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?
みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。
なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。
身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。
一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。
……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ?
※他サイトでも掲載しています。
※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。
転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~
hisa
ファンタジー
受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。
自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。
戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?
教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!!
※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく!
※第5章に突入しました。
※小説家になろう96万PV突破!
※カクヨム68万PV突破!
※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる