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第一章『初陣へ』
伊達政宗、尻拭いは伊達じゃない その壱
しおりを挟む 女子会の翌日、私は、直面した大きな問題をひとまず横に置いて、必死に働いていた。
そう、それはそれは、必死に……。
「オリアナ様っ! こちらの書類をお願いします!」
「すみません、こちらの確認もっ」
「オリアナ様、財務部から問い合わせが……」
「あぁっ、クソ! これも全て、殿下のせむぐっ」
「あー、はいはい、不敬罪にされたくなければ、黙っていましょうねー」
そんな周囲の声に包まれながら、私達は激務に見舞われていた。
原因は、同僚の一人が叫びかけたもの。
ヴァイラン魔国の王子の一人によって引き起こされた事件のせいだ。
「ふふふふ、大丈夫ですよ。殿下には、しっかりと、そのお立場を理解していただくので」
そして、そんな激務の中、静かに、しかし、猛烈に怒りを顕にしているのが、宰相閣下本人だった。
顔は笑顔なのに、目が全く笑っていない宰相閣下は、凄まじい速度で様々な書類を処理していく。
昨夜、ヴァイラン魔国の王子であるリウスが、突如として失踪した。それも、大量の仕事を溜めた状態で、恐らくは計画的に。
この国は、ジークフリート陛下とユウカ皇后陛下のお二方が統治しておられる。そして、そのお二方は仲睦まじく、三人のお子様がおられた。
一人目は、第一王子のルーク様で、現在、二十七歳、二人目は、第二王子のリウス様、十七歳。そして、三人目は、第一王女のユリアナ様、五歳だ。
今回問題となっているのは、第二王子のリウス様。陛下と皇后陛下は、もうすぐ行われる豊穣祭の準備を行っており、第一王子殿下、外交のために他国へ赴いているという状況下で、陛下方の準備を一緒に手伝っていたはずのリウス様の失踪だ。行き先は不明だが、目的だけははっきりしている。
こんな時に、片翼だなんてっ!
そう、リウス様は、片翼を見つけたので、口説きに行きます、という手紙だけを残して、どこかへ向かったのだ。
もちろん、事件性も疑わなければならないので、騎士達は血眼になってリウス様を捜している。しかし、現状では、この忙しい最中に大量の仕事を意図的に残して、こちらを動けなくさせていることといい、手紙に他者の魔力が干渉した形跡も、別人が置き手紙を書いた形跡もないため、リウス様の暴走という線が強い。
片翼に対する想いが強いのは、魔族であれば一定の理解は得られるだろう。しかし、この対応に対しては、さすがに全員が憤慨していた。
とはいえ、魔族は基本的にお花畑思考だと考えていた私の認識は、あながち間違い、というわけでもなく……。
「殿下の片翼だなんて、一体どんな方なんでしょう」
「そりゃあ、うんと素敵な方に決まってるわっ」
そんな侍女達の悪意なき言葉に、殺気立つ者が続出したのは、言うまでもない。
結局、リウス様が見つかったのは、三日後であり、その隣には、筋骨隆々の……女性(?)が立っていたそうだ。
そう、それはそれは、必死に……。
「オリアナ様っ! こちらの書類をお願いします!」
「すみません、こちらの確認もっ」
「オリアナ様、財務部から問い合わせが……」
「あぁっ、クソ! これも全て、殿下のせむぐっ」
「あー、はいはい、不敬罪にされたくなければ、黙っていましょうねー」
そんな周囲の声に包まれながら、私達は激務に見舞われていた。
原因は、同僚の一人が叫びかけたもの。
ヴァイラン魔国の王子の一人によって引き起こされた事件のせいだ。
「ふふふふ、大丈夫ですよ。殿下には、しっかりと、そのお立場を理解していただくので」
そして、そんな激務の中、静かに、しかし、猛烈に怒りを顕にしているのが、宰相閣下本人だった。
顔は笑顔なのに、目が全く笑っていない宰相閣下は、凄まじい速度で様々な書類を処理していく。
昨夜、ヴァイラン魔国の王子であるリウスが、突如として失踪した。それも、大量の仕事を溜めた状態で、恐らくは計画的に。
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一人目は、第一王子のルーク様で、現在、二十七歳、二人目は、第二王子のリウス様、十七歳。そして、三人目は、第一王女のユリアナ様、五歳だ。
今回問題となっているのは、第二王子のリウス様。陛下と皇后陛下は、もうすぐ行われる豊穣祭の準備を行っており、第一王子殿下、外交のために他国へ赴いているという状況下で、陛下方の準備を一緒に手伝っていたはずのリウス様の失踪だ。行き先は不明だが、目的だけははっきりしている。
こんな時に、片翼だなんてっ!
そう、リウス様は、片翼を見つけたので、口説きに行きます、という手紙だけを残して、どこかへ向かったのだ。
もちろん、事件性も疑わなければならないので、騎士達は血眼になってリウス様を捜している。しかし、現状では、この忙しい最中に大量の仕事を意図的に残して、こちらを動けなくさせていることといい、手紙に他者の魔力が干渉した形跡も、別人が置き手紙を書いた形跡もないため、リウス様の暴走という線が強い。
片翼に対する想いが強いのは、魔族であれば一定の理解は得られるだろう。しかし、この対応に対しては、さすがに全員が憤慨していた。
とはいえ、魔族は基本的にお花畑思考だと考えていた私の認識は、あながち間違い、というわけでもなく……。
「殿下の片翼だなんて、一体どんな方なんでしょう」
「そりゃあ、うんと素敵な方に決まってるわっ」
そんな侍女達の悪意なき言葉に、殺気立つ者が続出したのは、言うまでもない。
結局、リウス様が見つかったのは、三日後であり、その隣には、筋骨隆々の……女性(?)が立っていたそうだ。
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