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第一章『初陣へ』
伊達政宗、援軍要請は伊達じゃない その参
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「小十郎? 忍者からの吉報か?」
「はい」
俺はあらかじめ書いていた書状を小十郎に渡した。「それが書状だ。蘆名に届けてくれ。じきに援軍が送られてくるぞ」
小十郎は、俺が渡した書状を持って走り去っていった。
「景頼。俺もそこまで鬼ではない。真実を話してみろ」
その瞬間、景頼の顔はパッと晴れた。「ではまず、私は未来人です。そして、江渡弥平と繋がりがあります」
「お前はどのような任務で我が伊達家に侵入した?」
「江渡弥平率いる集団のバックにいる組織は、2021年代の日本政府です。日本政府は、秘密裏にタイムマシンを作るために江渡弥平に依頼。江渡弥平はタイムマシンを作り上げます。日本政府の野望は、歴史改変にあります。その試験段階として、伊達政宗を初陣の内に殺したら奥州もとい伊達家はどうなるのか、という計画を実行に移しました」
「俺を殺して、何の得になる?」
「日本政府は知りたいんだよ、タイムマシンによって歴史に干渉し、今までの歴史を変えられるかを」
「そのために俺を?」
「はい。未来に現存する史料から、伊達政宗の動きを把握し、初陣の内に必ず殺せるように準備されています」
「お前も未来人だろ? どうやって屋代家に介入出来たんだ?」
「いえ、簡単なことです。幼い屋代景頼の脳内に、構成員である私の脳をコピーして植え付けているだけです」
「お前の立場は?」
「歴史改変計画現地司令官という立場です」
「四番目の立場か。なるほど。前世(?)の名前は?」
「三笠謙吉です」
俺は一度考えたが、信用出来ると踏んだ俺は小十郎を呼んだ。
「若様。お呼びですか?」
「景頼。俺と小十郎も転生者、つまり未来人だ」
「へ?」
景頼は口を大きく開いて、唖然としていた。まずは小十郎にくわしく事情を説明してから、景頼に全てを打ち明けた。景頼は驚いていたが、それなら今までの推理力は納得したと言った。
「何で納得なんだ?」
「現代には推理小説がたくさんありますからね」
「いや、推理小説なんてまったく読んでないぞ?」
それから、景頼はまた驚いた。景頼への細かい説明には一時間を要した。
最後に、景頼は口を開いた。「何で若様は私を信用してくれたのですか?」
「予言の書『予言未来書 一之巻』は筆で書かれた直筆のものだ。そして、筆に墨をつけるタイミングには心理が働くのだ。あの予言の書で、筆の墨が少なくなって文字がかすれてきて、墨を再度筆に付けて書いていた文字はほとんど『伊達政宗』。つまり、俺の名前を意識していたというわけだ。文章では『織田信長』に『公』をつけて、信長と縁のある奴だと思い込ませようとしていたのだと思うが、無意識のうちの意識までは隠せなかったようだね。おそらく、お前は俺に仕えている内に俺に情が湧いたんだろ?」
「さようです! さすが、若様!」
「俺達は同じ未来人だ。敬語は使わないでくれ」
「いえ。敬語は、若様に対して当然のことですから......」
俺、小十郎、景頼の三人で、軍事会議を始めた。江渡弥平と相馬氏は深く繫がっている。もちろん、江渡弥平らの正体は明かしていないらしい。
景頼によると江渡弥平は相馬氏の居城にて、毎日宴会を開いている。今回の戦いは江渡弥平は血眼になって勝ちにこだわっていた。必ず勝ちましょう、景頼はそう言った。
景頼は江渡弥平の居場所や軍隊の編成について教えてくれた。結果、相馬氏の弱手を発見するに至った。あとは蘆名からの援軍を待ち、合流して一気に相馬氏を攻めるのみだ。万事うまく運んできた。
思った通り、蘆名から謝罪文と援軍が送られてきた。謝罪文には、書状の内容を守らなかったことを詫びている。俺は急いで輝宗の元を訪ねた。
「父上。蘆名からの援軍が到着しました!」
「誠か!?」
「はい。嘘など言ってはいません」
「そうかそうか。よし。どのような作戦だったかは後で聞くとして、今は相馬氏に勝つことだ。本隊と援軍を一緒に敵陣に突っ込む。良いか!」
「わかりました」
援軍を合わせた伊達家の軍が、一斉に敵陣に向かって突っ込んでいった。戦場で猛威を振るったのは、片倉小十郎景綱、伊達成実の二人だ。その勢いに乗る形で、相馬氏本陣を制圧した。見事に初陣を勝利に飾った俺は、大変満足である。だが、日本政府が敵となると、これからも油断は出来ない。慎重にことを進めていかねばなるまい。景頼は日本政府を裏切ったわけだし、これからも伊達家は日本政府からマークされ続けるだろう。
良いこともあった。未来を話せる者が一人増えて、三人になった。戦国時代と言えど、楽しいことは山ほどある。
その良いことの一つには、輝宗から信頼度がまた上がったことにある。おっと。輝宗にはまだ、蘆名から援軍を送ってもらえた方法について話していなかった。ちょうど輝宗に呼び出されたわけだから、俺はそのことも話しておこうと思って立ち上がり、本丸御殿へと馳せ参じた。
「失礼します、父上」
「政宗。教えてもらいたい。蘆名にどうやって援軍を送らせたのだ?」
輝宗は、そのことについて知りたかったから俺を呼んだのかー! マジか!
「はい」
俺はあらかじめ書いていた書状を小十郎に渡した。「それが書状だ。蘆名に届けてくれ。じきに援軍が送られてくるぞ」
小十郎は、俺が渡した書状を持って走り去っていった。
「景頼。俺もそこまで鬼ではない。真実を話してみろ」
その瞬間、景頼の顔はパッと晴れた。「ではまず、私は未来人です。そして、江渡弥平と繋がりがあります」
「お前はどのような任務で我が伊達家に侵入した?」
「江渡弥平率いる集団のバックにいる組織は、2021年代の日本政府です。日本政府は、秘密裏にタイムマシンを作るために江渡弥平に依頼。江渡弥平はタイムマシンを作り上げます。日本政府の野望は、歴史改変にあります。その試験段階として、伊達政宗を初陣の内に殺したら奥州もとい伊達家はどうなるのか、という計画を実行に移しました」
「俺を殺して、何の得になる?」
「日本政府は知りたいんだよ、タイムマシンによって歴史に干渉し、今までの歴史を変えられるかを」
「そのために俺を?」
「はい。未来に現存する史料から、伊達政宗の動きを把握し、初陣の内に必ず殺せるように準備されています」
「お前も未来人だろ? どうやって屋代家に介入出来たんだ?」
「いえ、簡単なことです。幼い屋代景頼の脳内に、構成員である私の脳をコピーして植え付けているだけです」
「お前の立場は?」
「歴史改変計画現地司令官という立場です」
「四番目の立場か。なるほど。前世(?)の名前は?」
「三笠謙吉です」
俺は一度考えたが、信用出来ると踏んだ俺は小十郎を呼んだ。
「若様。お呼びですか?」
「景頼。俺と小十郎も転生者、つまり未来人だ」
「へ?」
景頼は口を大きく開いて、唖然としていた。まずは小十郎にくわしく事情を説明してから、景頼に全てを打ち明けた。景頼は驚いていたが、それなら今までの推理力は納得したと言った。
「何で納得なんだ?」
「現代には推理小説がたくさんありますからね」
「いや、推理小説なんてまったく読んでないぞ?」
それから、景頼はまた驚いた。景頼への細かい説明には一時間を要した。
最後に、景頼は口を開いた。「何で若様は私を信用してくれたのですか?」
「予言の書『予言未来書 一之巻』は筆で書かれた直筆のものだ。そして、筆に墨をつけるタイミングには心理が働くのだ。あの予言の書で、筆の墨が少なくなって文字がかすれてきて、墨を再度筆に付けて書いていた文字はほとんど『伊達政宗』。つまり、俺の名前を意識していたというわけだ。文章では『織田信長』に『公』をつけて、信長と縁のある奴だと思い込ませようとしていたのだと思うが、無意識のうちの意識までは隠せなかったようだね。おそらく、お前は俺に仕えている内に俺に情が湧いたんだろ?」
「さようです! さすが、若様!」
「俺達は同じ未来人だ。敬語は使わないでくれ」
「いえ。敬語は、若様に対して当然のことですから......」
俺、小十郎、景頼の三人で、軍事会議を始めた。江渡弥平と相馬氏は深く繫がっている。もちろん、江渡弥平らの正体は明かしていないらしい。
景頼によると江渡弥平は相馬氏の居城にて、毎日宴会を開いている。今回の戦いは江渡弥平は血眼になって勝ちにこだわっていた。必ず勝ちましょう、景頼はそう言った。
景頼は江渡弥平の居場所や軍隊の編成について教えてくれた。結果、相馬氏の弱手を発見するに至った。あとは蘆名からの援軍を待ち、合流して一気に相馬氏を攻めるのみだ。万事うまく運んできた。
思った通り、蘆名から謝罪文と援軍が送られてきた。謝罪文には、書状の内容を守らなかったことを詫びている。俺は急いで輝宗の元を訪ねた。
「父上。蘆名からの援軍が到着しました!」
「誠か!?」
「はい。嘘など言ってはいません」
「そうかそうか。よし。どのような作戦だったかは後で聞くとして、今は相馬氏に勝つことだ。本隊と援軍を一緒に敵陣に突っ込む。良いか!」
「わかりました」
援軍を合わせた伊達家の軍が、一斉に敵陣に向かって突っ込んでいった。戦場で猛威を振るったのは、片倉小十郎景綱、伊達成実の二人だ。その勢いに乗る形で、相馬氏本陣を制圧した。見事に初陣を勝利に飾った俺は、大変満足である。だが、日本政府が敵となると、これからも油断は出来ない。慎重にことを進めていかねばなるまい。景頼は日本政府を裏切ったわけだし、これからも伊達家は日本政府からマークされ続けるだろう。
良いこともあった。未来を話せる者が一人増えて、三人になった。戦国時代と言えど、楽しいことは山ほどある。
その良いことの一つには、輝宗から信頼度がまた上がったことにある。おっと。輝宗にはまだ、蘆名から援軍を送ってもらえた方法について話していなかった。ちょうど輝宗に呼び出されたわけだから、俺はそのことも話しておこうと思って立ち上がり、本丸御殿へと馳せ参じた。
「失礼します、父上」
「政宗。教えてもらいたい。蘆名にどうやって援軍を送らせたのだ?」
輝宗は、そのことについて知りたかったから俺を呼んだのかー! マジか!
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