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第一章『初陣へ』
伊達政宗、プロポーズは伊達じゃない その壱
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次の日。愛姫には秘密で、小十郎と結婚指輪はどの宝石が良いか話し合った。小十郎には前世で彼女がいたものの、彼も指輪はあげたことがないらしい。これは困ったな。小十郎は恋愛経験豊富そうな雰囲気を漂わせていた気がするんだけどな......。死に方だって、彼女を守るためだしさ。
その前に、俺も小十郎も宝石をあまり知らなさ過ぎるんだよ。ダイヤモンドとかルビーしか頭に浮かばない。ダイヤモンドは贅沢だし、ということで宝石はルビーに決まった。
ルビーを調達するにはどうしようかも話し合ったが、単純に輝宗にお願いすればいいということで終わった。
全ての準備が整うと、より緊張してきた。プロポーズなど初めだし、断ることはないとわかっていても心臓は激しく動く。呼吸を整えた。
宝石の調達を頼むために、俺は輝宗の元へと向かって歩き出した。
「父上。お願いしたいことがあります」
「どうした、政宗」
「あの美しい愛姫に似合う宝石をプレゼントしたいと思っております。その宝石ルビーを、父上が調達していただけないでしょうか......」
「ルビーか。何とかしてみよう。お前には火縄銃の強化版のお礼もしていなかったし。まずは半年ほど時間をくれ。ルビーを調達してみせる」
「ありがとうございます」
俺は頭を下げた。輝宗は首を縦に数回ほど振ってから、腕を組んだ。
「それでは、失礼いたしました」
「うむ」
ルビーは何とかなりそうだから、ホッとため息をついた。
将棋で遊ぼう。小十郎、景頼、成実を部屋に呼んで、愛姫と俺を合わせて五人で将棋を始めた。だが、成実の一言によって工作が始まることとなった。
将棋の盤は一つしかなく、最初に俺と成実が将棋を指したのだが、成実が『失礼ながら、若様。盤をもっと増やしたら効率が良くなるのではないでしょうか?』と言った。それにより、愛姫を除く男四人衆は木材から盤の形に切り出して、墨を塗ってマス目を作り、駒の工作が始まった。
ノコギリが四つ用意され、木材を切るために前後に動かしていったが、これがなかなか操作が難しいのだ。うまく出来たと思ってよくよく見ると、かなり切り口が斜めっていた。その時は腰を叩いて、また木材を切り進めていった。
何とか二つの将棋盤を完成することに成功した。次に、駒を作るために駒の形に切り出したが、墨で字を書くのが思った以上に至難だった。駒を一セット作るのに、四人で力を合わせても一週間かかってしまった。もう一セットは五日で完成。やっとのことで、将棋大会を再開することが出来た。
第一回戦は伊達政宗VS伊達成実という従兄弟対決から始まった。初戦にして、俺は成実に敗れた。二回戦、三回戦は一回戦と同時進行されていて、最終的に決勝戦は成実と景頼の戦いとなった。序盤、成実が優勢であったが、終盤に差し掛かるにつれて景頼がリードしていった。成実はかなり頑張った方だが、結局投了をした。優勝は景頼となった。
将棋大会が終わり、参加者は帰っていった。だが、小十郎、景頼、愛姫には残ってもらった。景頼には、予言の書を保管場所から持ってくるように命じた。
愛姫に景頼の所有する予言の書を見せてやりたかったというのが一番の理由で、二番目の理由は予言の書について愛姫の意見を尋ねたかったからだ。たった数週間一緒にいただけだが、愛姫はかなり良い観察眼の持ち主なのだ。良質な意見が聞けるはずである。景頼には、予言の書を持ってこさせた後で退室させた。予言の書の作者が未来人である可能性が高いため、話しは自然と景頼に聞かれてはまずいことになってくるからだ。
景頼に持ってこさせた予言の書の内の、未来のことが的中して書かれている部分を愛姫に見せてみた。
「確かに、内容の全てが完璧に当たっていますね。これの出所は?」
「これは景頼の家来の一人が所持していたもので、出所は不明。だが、未来のことがなかなか忠実に予言されている。俺の予想では作者は未来人だと思う。あと、この予言の書の内容はかなり織田信長について触れているし信長のことを『信長公』と呼称している。おそらく、作者は信長と関わりがある人物か『信長公記』を持っている奴だ。つまり、必然的に作者が未来人だという推理が成り立ってくる」
「若様。信長公記とは?」
「神辺。別に敬語ではなくても良い。信長公記とは信長の家臣・太田牛一が書き記した信憑性の高い信長の史料だ。まず、著者の牛一の名前の読み方を話しておく。『太田』は『おおた』と読むことで良いのだが、問題は『牛一』の方だ。『牛一』を『ぎゅういち』と読んだり『うしかず』と読んだりもするのだが、やはり戦国時代では『一』を『かず』ではなく『かつ』と読んだ方が『勝』とルビが同じで縁起がいい。最近は『太田牛一』と読む傾向もあり、そちらの方が正しいだろう。
そして、第二の論点は太田牛一の『信長公記』と小瀬甫庵の『信長公記』がある。小瀬甫庵は豊臣秀吉の『太閤記』の作者でもあるが、太田牛一の『信長公記』に脚色をした奴だ。脚色をしたものを『信長記』と呼び、太田牛一のものを『信長公記』と呼ぶのが一般的だ。
信長記は戦国時代の後の江戸時代にヒットしてベストセラーとなった。一方で信長公記は上級国民どもがこっそりと継いでいった。信長記は脚色もされていて信憑性も低い。桶狭間の戦いは奇襲だった、とか長篠の戦いの鉄砲三段打ちってのが嘘だという理由は全て脚色された信長記のせいだ。今から扱うものは、太田牛一の『信長公記』の方なんだよ」
その前に、俺も小十郎も宝石をあまり知らなさ過ぎるんだよ。ダイヤモンドとかルビーしか頭に浮かばない。ダイヤモンドは贅沢だし、ということで宝石はルビーに決まった。
ルビーを調達するにはどうしようかも話し合ったが、単純に輝宗にお願いすればいいということで終わった。
全ての準備が整うと、より緊張してきた。プロポーズなど初めだし、断ることはないとわかっていても心臓は激しく動く。呼吸を整えた。
宝石の調達を頼むために、俺は輝宗の元へと向かって歩き出した。
「父上。お願いしたいことがあります」
「どうした、政宗」
「あの美しい愛姫に似合う宝石をプレゼントしたいと思っております。その宝石ルビーを、父上が調達していただけないでしょうか......」
「ルビーか。何とかしてみよう。お前には火縄銃の強化版のお礼もしていなかったし。まずは半年ほど時間をくれ。ルビーを調達してみせる」
「ありがとうございます」
俺は頭を下げた。輝宗は首を縦に数回ほど振ってから、腕を組んだ。
「それでは、失礼いたしました」
「うむ」
ルビーは何とかなりそうだから、ホッとため息をついた。
将棋で遊ぼう。小十郎、景頼、成実を部屋に呼んで、愛姫と俺を合わせて五人で将棋を始めた。だが、成実の一言によって工作が始まることとなった。
将棋の盤は一つしかなく、最初に俺と成実が将棋を指したのだが、成実が『失礼ながら、若様。盤をもっと増やしたら効率が良くなるのではないでしょうか?』と言った。それにより、愛姫を除く男四人衆は木材から盤の形に切り出して、墨を塗ってマス目を作り、駒の工作が始まった。
ノコギリが四つ用意され、木材を切るために前後に動かしていったが、これがなかなか操作が難しいのだ。うまく出来たと思ってよくよく見ると、かなり切り口が斜めっていた。その時は腰を叩いて、また木材を切り進めていった。
何とか二つの将棋盤を完成することに成功した。次に、駒を作るために駒の形に切り出したが、墨で字を書くのが思った以上に至難だった。駒を一セット作るのに、四人で力を合わせても一週間かかってしまった。もう一セットは五日で完成。やっとのことで、将棋大会を再開することが出来た。
第一回戦は伊達政宗VS伊達成実という従兄弟対決から始まった。初戦にして、俺は成実に敗れた。二回戦、三回戦は一回戦と同時進行されていて、最終的に決勝戦は成実と景頼の戦いとなった。序盤、成実が優勢であったが、終盤に差し掛かるにつれて景頼がリードしていった。成実はかなり頑張った方だが、結局投了をした。優勝は景頼となった。
将棋大会が終わり、参加者は帰っていった。だが、小十郎、景頼、愛姫には残ってもらった。景頼には、予言の書を保管場所から持ってくるように命じた。
愛姫に景頼の所有する予言の書を見せてやりたかったというのが一番の理由で、二番目の理由は予言の書について愛姫の意見を尋ねたかったからだ。たった数週間一緒にいただけだが、愛姫はかなり良い観察眼の持ち主なのだ。良質な意見が聞けるはずである。景頼には、予言の書を持ってこさせた後で退室させた。予言の書の作者が未来人である可能性が高いため、話しは自然と景頼に聞かれてはまずいことになってくるからだ。
景頼に持ってこさせた予言の書の内の、未来のことが的中して書かれている部分を愛姫に見せてみた。
「確かに、内容の全てが完璧に当たっていますね。これの出所は?」
「これは景頼の家来の一人が所持していたもので、出所は不明。だが、未来のことがなかなか忠実に予言されている。俺の予想では作者は未来人だと思う。あと、この予言の書の内容はかなり織田信長について触れているし信長のことを『信長公』と呼称している。おそらく、作者は信長と関わりがある人物か『信長公記』を持っている奴だ。つまり、必然的に作者が未来人だという推理が成り立ってくる」
「若様。信長公記とは?」
「神辺。別に敬語ではなくても良い。信長公記とは信長の家臣・太田牛一が書き記した信憑性の高い信長の史料だ。まず、著者の牛一の名前の読み方を話しておく。『太田』は『おおた』と読むことで良いのだが、問題は『牛一』の方だ。『牛一』を『ぎゅういち』と読んだり『うしかず』と読んだりもするのだが、やはり戦国時代では『一』を『かず』ではなく『かつ』と読んだ方が『勝』とルビが同じで縁起がいい。最近は『太田牛一』と読む傾向もあり、そちらの方が正しいだろう。
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信長記は戦国時代の後の江戸時代にヒットしてベストセラーとなった。一方で信長公記は上級国民どもがこっそりと継いでいった。信長記は脚色もされていて信憑性も低い。桶狭間の戦いは奇襲だった、とか長篠の戦いの鉄砲三段打ちってのが嘘だという理由は全て脚色された信長記のせいだ。今から扱うものは、太田牛一の『信長公記』の方なんだよ」
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