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第一章『初陣へ』
伊達政宗、側近の看病は伊達じゃない その参
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タイムマシンについてうざったくない程度に述べてみたが、ただの現実逃避だ。書物を読むのが嫌になってきたからだ。前世でも本を最後まで読み終えたことのない俺が、日本語ではなく漢文で書かれた書物を最後まで読めると思うか? 答えは誰もがおわかりの通り、否だ。途中からたった一ページを読むのにかなりの時間を使うようになってきた。俺が飽きてきた証拠である。本日はもう作業を切り上げようと決意したのは、作業を最初に始めてから五時間ほど経ってからだ。
「今日の作業はこれまでにしようか?」
小十郎も景頼もかなり疲労していると見え、腰を押さえながら立ち上がって部屋を去って行った。
俺はため息をついて、床に寝転がった。拳銃は明日には完成しているはずだ。もう寝よう。布団に潜り込んだ。
目が覚めた。今日も書物を読まなくてはいけないと思うと体がまったく動かなくなった。それでも力を振り絞って起き上がり、顔を冷や水で洗った。目の前がくっきりと見えるようになってから、鍛治屋の元へ急いだ。今日辺りにでも輝宗に火縄銃の強化版を渡しておきたい。
「鍛治屋! 出来たか?」
「試作品を通して、立派な完成品が出来ましたよ」
「それはいい」
「どうぞ、完成品です」
鍛治屋から拳銃を受け取り、本丸に行った。
「父上、失礼します」
「政宗か」
「火縄銃の強化版が出来ました」
俺は拳銃を出して見せた。
「それが強化版か?」
「はい。連続発射は銃身が熱くなるので避けた方が良いでしょう。射程距離は短く、離れた的(まと)を撃とうとするほど弾丸は的から逸れます。ですが、近距離の相手への殺傷能力は従来の火縄銃の数倍です」
実はわざと近距離相手を傷つけることに特化させた。遠距離射撃が可能な拳銃を作ってしまえば、戦で無双した挙げ句大量生産されるからだ。歴史が大きく変わってしまう。
「素晴らしい。火縄銃の強化版と言って差し支えないじゃないか!」
「ありがたき幸せ」
「うむ。これで貸し借りなしだな」
これでまた輝宗からの信頼度が格段に上がった。これなら、うまく家督を継げそうだ。継いだら天下だ。天下を目指す!
俺はお辞儀をして本丸御殿を出た。次は小十郎と景頼と合流し、書物を照らし合わせた。書物を照らし合わせるという つまらないことの繰り返しを一週間続けた。もう辛いと感じてきていたが、やっと未来人らしき奴を発見した。といっても、俺の手柄ではないことは読者もおわかりだろうと思う。小十郎の手柄だ。小十郎がその発見をした時、俺は半分眠った状態だった。小十郎と景頼から冷たい視線を向けられた気がしたが、気のせいだと思いたい。
「で、小十郎。その未来人の疑いがある奴の名前は?」
「牛丸と記されています」
「牛丸か。.......そいつの所在は?」
「江渡弥平と同じく、城下町のはずれです」
「直ちに行こう。馬と火縄銃を用意しろ!」
俺達三人は馬を走らせて牛丸の家の手前で降りた。念のために、俺特製の火縄銃の強化版『THE・拳銃』を携帯させてきた。小十郎と景頼にも持たせている。
まずは強化版に火薬と弾丸を詰めて、針の先を熱した。それから火縄銃にも火薬と弾を込めてさくじょうで固めた。縄に火を着けた。そして、前回同様に扉を破る。
「牛丸! 手を上げろ!」
しかし、人影はない。奥の部屋に進んでみたが、やはり人はいない。代わりにタイムマシンがあった。江渡弥平が乗りこんだ機械と遜色ないものだ。牛丸も時間旅行者と見て間違いないな。
タイムマシンの心臓部に、とりあえず鉛弾を撃ち込んだ。黒い煙を上げてぶち壊れた。
そして、部屋の中を見て回った。江渡弥平の家と変わりない物の無さだ。一冊の本を見つける。タイトルからすると教養の本だが、内容は異なる。タイムマシンの設計図や心臓部の作り方。発案者は江渡弥平。設計図によると核は太陽の一部で、このタイムマシンでの過去への逆走の原理はこうだ。動いている物体は止まっている物体に比べて時間の経ち方が少しに遅くなるのだが、その時間の経ち方を増幅させるらしい。タイムマシンを少し前進させ、その時に少し時間の経ち方が遅くなる。その少しを大きく増幅させている。増幅させる方法は、時間の実体化。実体化した時間の素粒子を分解して──。
「誰だ?」
後ろから声をかけられた。牛丸が戻ってきたのだ。
「伊達政宗だ」
牛丸を三人で囲んで一斉に取り押さえた。
時間の実体化の方法が気になるところだな。そんなことを考えていたら、後ろを叩かれた。振り返ると、タイムマシンに乗った江渡弥平だ。
「貴様! 江渡弥平!」
「牛丸に何てことしてんだ......」
俺は火縄銃の銃口を江渡弥平に向けた。「そちらの計画はなんだ!?」
「歴史を変えることだよ!」
よそ見をした隙に牛丸に逃げられ、設計図を取られた。江渡弥平もタイムマシンで消え去った。残ったのは、壊れたタイムマシンだけだ。後にタイムマシンを破壊して核を取り出してみたが、燃え尽きていた。太陽の一部を凝固させたようだが、長持ちはしないようだ。
少し前に戻るが、素粒子より小さい物が存在するのか。実際にそういう話しはある。イギリスの数学者・理論物理学者ロジャー・ペンローズらによって『量子脳理論』が提唱された。これは、意識や魂を司る素粒子よりも小さな物質があるというものだ。江渡弥平は素粒子よりも小さな物質を見つけたのかもしれない。
「今日の作業はこれまでにしようか?」
小十郎も景頼もかなり疲労していると見え、腰を押さえながら立ち上がって部屋を去って行った。
俺はため息をついて、床に寝転がった。拳銃は明日には完成しているはずだ。もう寝よう。布団に潜り込んだ。
目が覚めた。今日も書物を読まなくてはいけないと思うと体がまったく動かなくなった。それでも力を振り絞って起き上がり、顔を冷や水で洗った。目の前がくっきりと見えるようになってから、鍛治屋の元へ急いだ。今日辺りにでも輝宗に火縄銃の強化版を渡しておきたい。
「鍛治屋! 出来たか?」
「試作品を通して、立派な完成品が出来ましたよ」
「それはいい」
「どうぞ、完成品です」
鍛治屋から拳銃を受け取り、本丸に行った。
「父上、失礼します」
「政宗か」
「火縄銃の強化版が出来ました」
俺は拳銃を出して見せた。
「それが強化版か?」
「はい。連続発射は銃身が熱くなるので避けた方が良いでしょう。射程距離は短く、離れた的(まと)を撃とうとするほど弾丸は的から逸れます。ですが、近距離の相手への殺傷能力は従来の火縄銃の数倍です」
実はわざと近距離相手を傷つけることに特化させた。遠距離射撃が可能な拳銃を作ってしまえば、戦で無双した挙げ句大量生産されるからだ。歴史が大きく変わってしまう。
「素晴らしい。火縄銃の強化版と言って差し支えないじゃないか!」
「ありがたき幸せ」
「うむ。これで貸し借りなしだな」
これでまた輝宗からの信頼度が格段に上がった。これなら、うまく家督を継げそうだ。継いだら天下だ。天下を目指す!
俺はお辞儀をして本丸御殿を出た。次は小十郎と景頼と合流し、書物を照らし合わせた。書物を照らし合わせるという つまらないことの繰り返しを一週間続けた。もう辛いと感じてきていたが、やっと未来人らしき奴を発見した。といっても、俺の手柄ではないことは読者もおわかりだろうと思う。小十郎の手柄だ。小十郎がその発見をした時、俺は半分眠った状態だった。小十郎と景頼から冷たい視線を向けられた気がしたが、気のせいだと思いたい。
「で、小十郎。その未来人の疑いがある奴の名前は?」
「牛丸と記されています」
「牛丸か。.......そいつの所在は?」
「江渡弥平と同じく、城下町のはずれです」
「直ちに行こう。馬と火縄銃を用意しろ!」
俺達三人は馬を走らせて牛丸の家の手前で降りた。念のために、俺特製の火縄銃の強化版『THE・拳銃』を携帯させてきた。小十郎と景頼にも持たせている。
まずは強化版に火薬と弾丸を詰めて、針の先を熱した。それから火縄銃にも火薬と弾を込めてさくじょうで固めた。縄に火を着けた。そして、前回同様に扉を破る。
「牛丸! 手を上げろ!」
しかし、人影はない。奥の部屋に進んでみたが、やはり人はいない。代わりにタイムマシンがあった。江渡弥平が乗りこんだ機械と遜色ないものだ。牛丸も時間旅行者と見て間違いないな。
タイムマシンの心臓部に、とりあえず鉛弾を撃ち込んだ。黒い煙を上げてぶち壊れた。
そして、部屋の中を見て回った。江渡弥平の家と変わりない物の無さだ。一冊の本を見つける。タイトルからすると教養の本だが、内容は異なる。タイムマシンの設計図や心臓部の作り方。発案者は江渡弥平。設計図によると核は太陽の一部で、このタイムマシンでの過去への逆走の原理はこうだ。動いている物体は止まっている物体に比べて時間の経ち方が少しに遅くなるのだが、その時間の経ち方を増幅させるらしい。タイムマシンを少し前進させ、その時に少し時間の経ち方が遅くなる。その少しを大きく増幅させている。増幅させる方法は、時間の実体化。実体化した時間の素粒子を分解して──。
「誰だ?」
後ろから声をかけられた。牛丸が戻ってきたのだ。
「伊達政宗だ」
牛丸を三人で囲んで一斉に取り押さえた。
時間の実体化の方法が気になるところだな。そんなことを考えていたら、後ろを叩かれた。振り返ると、タイムマシンに乗った江渡弥平だ。
「貴様! 江渡弥平!」
「牛丸に何てことしてんだ......」
俺は火縄銃の銃口を江渡弥平に向けた。「そちらの計画はなんだ!?」
「歴史を変えることだよ!」
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少し前に戻るが、素粒子より小さい物が存在するのか。実際にそういう話しはある。イギリスの数学者・理論物理学者ロジャー・ペンローズらによって『量子脳理論』が提唱された。これは、意識や魂を司る素粒子よりも小さな物質があるというものだ。江渡弥平は素粒子よりも小さな物質を見つけたのかもしれない。
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