19 / 245
第一章『初陣へ』
伊達政宗、側近の看病は伊達じゃない その壱
しおりを挟む
俺は完璧な拳銃の設計図を完成させた。銃身は短く、銃身の上部を開閉式にした。簡単に火薬と弾丸を詰められる。引き金を引くと銃身のすき間に熱い針を差し込むために、短いハンマーを動かす仕組みにした。威力を上げるために、爆風の強い火薬も採用した。
狙いはうまく定まらないだろうが、強化版としては十分だ。鍛治屋に作らせ、早速鷹狩りと偽って試し撃ちに出掛けた。
「若様!」小十郎は口を大きく開いて叫んだ。「あまりお戯れが過ぎると危険です!」
「わかってる!」
俺は試作品の拳銃を構えて、素早く火薬と弾丸を詰め込んだ。さくじょう(木の棒)を使って、弾を固定させると、ターゲットを捕捉して、引き金を引いた。その瞬間、銃身銃床もろとも爆発した。痛い! 隻眼になって以来の痛みだ。俺はその場に倒れた。
爆風の強い火薬を採用したが、それだと銃身の強度が足りなかったようだ。痛い。
「若様! お体は大丈夫ですか!?」
「ごめん。駄目みたい......」
そこで、意識が途絶えて辺りが真っ暗になった。やばい。
目が覚めると布団に潜り込んでいた。上半身を起こすと、小十郎が看病してくれていたことがわかった。
「小十郎。助かった」
「若様は安心して横になってください。今は鍛治屋が銃身の強度を上げることに努めております」
「銃身が爆発してから何時間経った?」
「三時間でございます」
「父上には?」
「野生の動物にやられたと申しておきました」
「それは良かった。拳銃の試し撃ちに出掛けたことが父上にバレれば大変だ」
俺は再び横になった。
「江渡弥平を捕まえる」
「正気ですか、若様? 奴は未来人ですよ!?」
「必ず奴を捕まえて、全ての情報を吐かせる」
「そのようなことが出来るのですか?」
「出来る。それは必然だ」
「根拠はどのような?」
「ない。根拠などあるわけがない」
「そのようなことでよろしいのですか?」
「江渡弥平を捕まえられればそれでいい。転生者・転移者について調べなくてはならない」
「拳銃を作ったなら、次は転生者・転移者をお調べになるのですか?」
「ああ。ただちに見つけ出さなくてはならない」
「......なぜですか?」
「それはもちろん、脅威になりうるからだ。場合によっては秘密裏に処分する」
「処分、ですか?」
「未来の技術を持っているなら、伊達氏の戦力を総動員しても勝てない可能性の方がはるかに高いのだ」
小十郎はゴクリと唾を飲んだ。「未来人は全て殺処分ですか?」
「何度も言うが、場合による。相手が好意的でないなら、すかさず殺処分だな」
「若様はなぜ未来人を恐れるのでしょうか?」
ここで俺が未来人だと言えばそこまでだ。未来の技術を過去に持ち込むのは大きな危険を伴う。また、自分が未来人だと言っても命の保証はない。戦乱の世を生き抜くには、自分が未来人だと露見してはいけないのだ。
「我々より進んだ高度な文明を築いている未来が末恐ろしい。ただそれだけだ」
「狩られる前に狩る、ということで?」
「そうかもしれない。自分より強い者がいるなら、どのような手を使ってでも乗り越えなくてはならない。殺処分でも、仕方がない」
「弱肉強食の戦国時代ですからね」
俺は無言でうなずいた。
体も回復した今日、俺は布団から脱けだして立ち上がった。
「拳銃を作りに行こう」
鍛治屋のところへ向かうと、注文通りの品が出来上がっている。試し撃ちしてもいいか尋ね、水堀に向かって撃ってみた。だが、あまりうまく狙えずに腹を立てていると、一人の鍛治屋が言った。
「若様。そりゃ、失敗作のものですよ。熱する加減をミスって銃身が微妙に曲がっちゃった奴です」
「そうなのか。そいつは失敬。成功している奴を寄越してくれ」
「これです」
鍛治屋から拳銃を受け取ると、また水堀目掛けて撃った。
「あれ? 弾が出ないぞ」
弾が出ないから鍛治屋に見せてみた。
「ありゃ! 不純物の混ざった鉛を使って作られた弾丸だから、途中で砕けてますよ」
「鉛弾......」
鍛治屋はちゃんとした弾丸を渡してきた。それを受け取ると、火薬とともに詰めて発射した。
「いい具合に発射出来るな。もっと威力のある火薬を使いたいから銃身の強度をもう少し上げられるか?」
「それは可能ですが、火薬も威力が高ければ良いってわけではありませんよ」
「それは承知の上で、銃身の強度を上げてくれ」
「若様のお願いなら断れません。わかりました。銃身の強度を、もっと上げてみます」
「了解。威力のある銃を期待している」
鍛治屋はその後もうんたらかんたら言っていたが、ほとんど覚えていない。次に向かったのは、景頼の元だ。
「景頼!」
「わ、若様! 体の怪我は完治されたのですか?」
「そのようなことを言っている場合ではないことは、江渡弥平との一戦でわかっているはずだ。即刻未来人を見つけ出さなくてはならない! 小十郎を呼べ!」
「わかりました!」
景頼と小十郎という、いつものメンツがそろった。俺は部屋に招き入れ、口を開いた。「未来人が敵方の味方をするなら、こちらが負ける確率は格段に上がる! そうなる前に、未来人を捕らえる。出来るならば、生け捕りにしたいと考えている!
この計画は他言無用! もちろん、父上にもだ!」
狙いはうまく定まらないだろうが、強化版としては十分だ。鍛治屋に作らせ、早速鷹狩りと偽って試し撃ちに出掛けた。
「若様!」小十郎は口を大きく開いて叫んだ。「あまりお戯れが過ぎると危険です!」
「わかってる!」
俺は試作品の拳銃を構えて、素早く火薬と弾丸を詰め込んだ。さくじょう(木の棒)を使って、弾を固定させると、ターゲットを捕捉して、引き金を引いた。その瞬間、銃身銃床もろとも爆発した。痛い! 隻眼になって以来の痛みだ。俺はその場に倒れた。
爆風の強い火薬を採用したが、それだと銃身の強度が足りなかったようだ。痛い。
「若様! お体は大丈夫ですか!?」
「ごめん。駄目みたい......」
そこで、意識が途絶えて辺りが真っ暗になった。やばい。
目が覚めると布団に潜り込んでいた。上半身を起こすと、小十郎が看病してくれていたことがわかった。
「小十郎。助かった」
「若様は安心して横になってください。今は鍛治屋が銃身の強度を上げることに努めております」
「銃身が爆発してから何時間経った?」
「三時間でございます」
「父上には?」
「野生の動物にやられたと申しておきました」
「それは良かった。拳銃の試し撃ちに出掛けたことが父上にバレれば大変だ」
俺は再び横になった。
「江渡弥平を捕まえる」
「正気ですか、若様? 奴は未来人ですよ!?」
「必ず奴を捕まえて、全ての情報を吐かせる」
「そのようなことが出来るのですか?」
「出来る。それは必然だ」
「根拠はどのような?」
「ない。根拠などあるわけがない」
「そのようなことでよろしいのですか?」
「江渡弥平を捕まえられればそれでいい。転生者・転移者について調べなくてはならない」
「拳銃を作ったなら、次は転生者・転移者をお調べになるのですか?」
「ああ。ただちに見つけ出さなくてはならない」
「......なぜですか?」
「それはもちろん、脅威になりうるからだ。場合によっては秘密裏に処分する」
「処分、ですか?」
「未来の技術を持っているなら、伊達氏の戦力を総動員しても勝てない可能性の方がはるかに高いのだ」
小十郎はゴクリと唾を飲んだ。「未来人は全て殺処分ですか?」
「何度も言うが、場合による。相手が好意的でないなら、すかさず殺処分だな」
「若様はなぜ未来人を恐れるのでしょうか?」
ここで俺が未来人だと言えばそこまでだ。未来の技術を過去に持ち込むのは大きな危険を伴う。また、自分が未来人だと言っても命の保証はない。戦乱の世を生き抜くには、自分が未来人だと露見してはいけないのだ。
「我々より進んだ高度な文明を築いている未来が末恐ろしい。ただそれだけだ」
「狩られる前に狩る、ということで?」
「そうかもしれない。自分より強い者がいるなら、どのような手を使ってでも乗り越えなくてはならない。殺処分でも、仕方がない」
「弱肉強食の戦国時代ですからね」
俺は無言でうなずいた。
体も回復した今日、俺は布団から脱けだして立ち上がった。
「拳銃を作りに行こう」
鍛治屋のところへ向かうと、注文通りの品が出来上がっている。試し撃ちしてもいいか尋ね、水堀に向かって撃ってみた。だが、あまりうまく狙えずに腹を立てていると、一人の鍛治屋が言った。
「若様。そりゃ、失敗作のものですよ。熱する加減をミスって銃身が微妙に曲がっちゃった奴です」
「そうなのか。そいつは失敬。成功している奴を寄越してくれ」
「これです」
鍛治屋から拳銃を受け取ると、また水堀目掛けて撃った。
「あれ? 弾が出ないぞ」
弾が出ないから鍛治屋に見せてみた。
「ありゃ! 不純物の混ざった鉛を使って作られた弾丸だから、途中で砕けてますよ」
「鉛弾......」
鍛治屋はちゃんとした弾丸を渡してきた。それを受け取ると、火薬とともに詰めて発射した。
「いい具合に発射出来るな。もっと威力のある火薬を使いたいから銃身の強度をもう少し上げられるか?」
「それは可能ですが、火薬も威力が高ければ良いってわけではありませんよ」
「それは承知の上で、銃身の強度を上げてくれ」
「若様のお願いなら断れません。わかりました。銃身の強度を、もっと上げてみます」
「了解。威力のある銃を期待している」
鍛治屋はその後もうんたらかんたら言っていたが、ほとんど覚えていない。次に向かったのは、景頼の元だ。
「景頼!」
「わ、若様! 体の怪我は完治されたのですか?」
「そのようなことを言っている場合ではないことは、江渡弥平との一戦でわかっているはずだ。即刻未来人を見つけ出さなくてはならない! 小十郎を呼べ!」
「わかりました!」
景頼と小十郎という、いつものメンツがそろった。俺は部屋に招き入れ、口を開いた。「未来人が敵方の味方をするなら、こちらが負ける確率は格段に上がる! そうなる前に、未来人を捕らえる。出来るならば、生け捕りにしたいと考えている!
この計画は他言無用! もちろん、父上にもだ!」
0
お気に入りに追加
124
あなたにおすすめの小説
おれは忍者の子孫
メバ
ファンタジー
鈴木 重清(しげきよ)は中学に入学し、ひょんなことから社会科研究部の説明会に、親友の聡太(そうた)とともに参加することに。
しかし社会科研究部とは世を忍ぶ仮の姿。そこは、忍者を養成する忍者部だった!
勢いで忍者部に入部した重清は忍者だけが使える力、忍力で黒猫のプレッソを具現化し、晴れて忍者に。
しかし正式な忍者部入部のための試験に挑む重清は、同じく忍者部に入部した同級生達が次々に試験をクリアしていくなか、1人出遅れていた。
思い悩む重清は、祖母の元を訪れ、そこで自身が忍者の子孫であるという事実と、祖母と試験中に他界した祖父も忍者であったことを聞かされる。
忍者の血を引く重清は、無事正式に忍者となることがでにるのか。そして彼は何を目指し、どう成長していくのか!?
これは忍者の血を引く普通の少年が、ドタバタ過ごしながらも少しずつ成長していく物語。
初投稿のため、たくさんの突っ込みどころがあるかと思いますが、生暖かい目で見ていただけると幸いです。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
とある元令嬢の選択
こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
大日本帝国、アラスカを購入して無双する
雨宮 徹
歴史・時代
1853年、ロシア帝国はクリミア戦争で敗戦し、財政難に悩んでいた。友好国アメリカにアラスカ購入を打診するも、失敗に終わる。1867年、すでに大日本帝国へと生まれ変わっていた日本がアラスカを購入すると金鉱や油田が発見されて……。
大日本帝国VS全世界、ここに開幕!
※架空の日本史・世界史です。
※分かりやすくするように、領土や登場人物など世界情勢を大きく変えています。
※ツッコミどころ満載ですが、ご勘弁を。
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
出撃!特殊戦略潜水艦隊
ノデミチ
歴史・時代
海の狩人、潜水艦。
大国アメリカと短期決戦を挑む為に、連合艦隊司令山本五十六の肝入りで創設された秘匿潜水艦。
戦略潜水戦艦 伊号第500型潜水艦〜2隻。
潜水空母 伊号第400型潜水艦〜4隻。
広大な太平洋を舞台に大暴れする連合艦隊の秘密兵器。
一度書いてみたかったIF戦記物。
この機会に挑戦してみます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる