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第一章『初陣へ』
伊達政宗、殺生をするのは伊達じゃない その弐
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まずいな。調子に乗って、呑みすぎたぞ。小十郎の顔がものすごく歪んで見える。酔った酔った酔った酔った!
この体、全然酒に強くない! 前世の俺の体なら、この程度だったら二日酔いにすらなっていなかったはずだ。伊達政宗の体、まったく酒豪じゃねー!
「大丈夫ですか、若様? 顔色が優れないようですが......」
「小十郎、俺......酔ってしまったようだ」
「本当なのですか!?」
「本当だから仕方がない。この体は酒豪じゃないぞ」
「私に出来ることはありますか?」
「水をくれ」
小十郎は水を一杯持ってきた。俺は水を口に含むと、一息ついた。
「ふぅ。何とか今日は宴会を最後まで出席出来そう......」
「ご無理は体に毒ですよ、若様」
「それもそうだな。宴会が終わったら、ゆっくり睡眠をとるよ」
「その方が良いでしょう」
俺はうなずいて、また盃に酒をとくとくと注いだ。小十郎がギョッとするような表情を浮かべていたような気がしたが、気のせいだろう。いや、気のせいだと思いたい。
口に酒を運びながら、周りの家臣らを眺めた。色々と早呑みなどをして楽しんでいるようだな。他には、マナーを破ってしまって禁酒を宣告された者もいた。かわいそうな奴だな、と思うとつい口元が緩んでしまった。元々性格はひん曲がった方だ。人の不幸は蜜の味、というのを自身の美徳としているほどにはひん曲がっている。
宴会終了後、小十郎に肩を支えられながら、寝床に潜り込むことが出来た。目を動かしてありがとうの意を小十郎に伝えると、速やかに脳を睡眠モードに移行させた。
元来、前世の俺の血筋は眠るのが早い。午後9時に眠る、というわけではなく、布団に潜って数秒で眠れるレベルだ。つまり、文字通り速やかに眠ってしまったわけなのである。
朝、目が覚める。目が覚めてからの数十分は、今日は何をやって遊ぼうか思案する時間だ。腕を組んで真面目に吟味を始めた。しかし、すぐに小十郎が入ってきた。
「若様。まずいことが起きてしまいました」
「ど、どうしたんだ!?」
「本日の夜にも、お屋形様が宴会を催すようです」
口が大きく開いた。昨日の今日で、また宴会をやるのか。酒が好きすぎんだろーが!
「今回も参加いたしますか?」
「当然だ。父上が用意した宴会に出ない手はないぞ」
「わかりました」
今日は宴会まで何をしようか......。
雑談しかないと結論が出るのに1秒。小十郎が部屋を出る前に引き留めた。「待て!」
「なんでしょうか?」
「今日は雑談をしよう。景頼も呼んでこい」
「雑談の場所はここでよろしいでしょうか?」
「ああ、ここで良い」
小十郎はすぐに景頼を連れて戻ってきた。
「どんな雑談をしようか?」
「若様」景頼は平伏する。「今回の雑談、ぜひ私の考えるテーマでしてもよいでしょうか?」
「別にかまわないが、そのテーマとは何なのだ?」
「これにございます」
景頼は書物を取り出して、ページをめくった。タイトルは『予言未来書 一之巻』。
「その本は何だ?」
「名の通り、予言の書でございますが、かなり出来事が的中しておりますので若様にお見せしようと......」
「読み上げてみろ」
景頼は首を縦に振った。「1570年。織田信長公と徳川家康連合軍が浅井長政と朝倉義景の連合軍を破る。
1571年。織田信長公の比叡山延暦寺焼き討ち。
1572年。徳川家康、武田信玄に敗れる。
1573年。室町幕府滅亡。
1577年。隻眼の覇者・伊達政宗の元服。
1580年。石山本願寺、織田信長公に降伏。
1582年。明智光秀の謀反。織田信長公自害......」
現在は1577年。完璧に予言出来ているじゃないか! 1582年は本能寺の変。考えられる可能性としては、俺以外の転生者だ。俺が難なく転生出来たわけだから、おそらく転生の条件はそこまで難しいわけでもないだろう。神に見初められれば、試練なく転生も出来るはずだ。
アーティネスにくわしく転生の条件などを尋ねておけば良かったと、今になって後悔した。
「景頼! その予言の書は、他にあるのか!」
「若様。それが、この一之巻は出所は不明でして、なかなかはずれのない予言の書だったので若様に」
「なるほど。これは調査の必要があるな。どこで手に入れた?」
「それが......これは家来の一人が所持していたもので、所持していた者はどこで入手したか覚えていないようでございます」
「それは残念だな」
予言の書の出所が不明だと、他の転生者の有無などが全然調べられないな。いっそのこと、再度死んでみてアーティネスに接触を図ることも出来るな。ただ、また伊達政宗の体に戻ってこれる確証がない。一度死ぬことは避けよう。
転生者だけでなく、転移者もいるかもしれない。身元不明の者がいれば、即刻連れてくるように働きかけておく必要もあるな。
ただ、現在伊達家の中には俺(伊達政宗)の弟・竺丸(じくまる)派の者が多い。というのも、母親である義姫が俺を嫌うから家臣どもは竺丸を当主に推しだした。まったく、困ったものである。
そこで、輝宗は伊達家の中興の祖から名前をいただいて嫡男・梵天丸に『政宗』と命名した。それにより、竺丸派の家臣を牽制することに成功した。
つまり、政宗派の家臣が著しく少ない。悲しいことだが、働きかけるのは家督を継いでからにした方が良さそうだ。
この体、全然酒に強くない! 前世の俺の体なら、この程度だったら二日酔いにすらなっていなかったはずだ。伊達政宗の体、まったく酒豪じゃねー!
「大丈夫ですか、若様? 顔色が優れないようですが......」
「小十郎、俺......酔ってしまったようだ」
「本当なのですか!?」
「本当だから仕方がない。この体は酒豪じゃないぞ」
「私に出来ることはありますか?」
「水をくれ」
小十郎は水を一杯持ってきた。俺は水を口に含むと、一息ついた。
「ふぅ。何とか今日は宴会を最後まで出席出来そう......」
「ご無理は体に毒ですよ、若様」
「それもそうだな。宴会が終わったら、ゆっくり睡眠をとるよ」
「その方が良いでしょう」
俺はうなずいて、また盃に酒をとくとくと注いだ。小十郎がギョッとするような表情を浮かべていたような気がしたが、気のせいだろう。いや、気のせいだと思いたい。
口に酒を運びながら、周りの家臣らを眺めた。色々と早呑みなどをして楽しんでいるようだな。他には、マナーを破ってしまって禁酒を宣告された者もいた。かわいそうな奴だな、と思うとつい口元が緩んでしまった。元々性格はひん曲がった方だ。人の不幸は蜜の味、というのを自身の美徳としているほどにはひん曲がっている。
宴会終了後、小十郎に肩を支えられながら、寝床に潜り込むことが出来た。目を動かしてありがとうの意を小十郎に伝えると、速やかに脳を睡眠モードに移行させた。
元来、前世の俺の血筋は眠るのが早い。午後9時に眠る、というわけではなく、布団に潜って数秒で眠れるレベルだ。つまり、文字通り速やかに眠ってしまったわけなのである。
朝、目が覚める。目が覚めてからの数十分は、今日は何をやって遊ぼうか思案する時間だ。腕を組んで真面目に吟味を始めた。しかし、すぐに小十郎が入ってきた。
「若様。まずいことが起きてしまいました」
「ど、どうしたんだ!?」
「本日の夜にも、お屋形様が宴会を催すようです」
口が大きく開いた。昨日の今日で、また宴会をやるのか。酒が好きすぎんだろーが!
「今回も参加いたしますか?」
「当然だ。父上が用意した宴会に出ない手はないぞ」
「わかりました」
今日は宴会まで何をしようか......。
雑談しかないと結論が出るのに1秒。小十郎が部屋を出る前に引き留めた。「待て!」
「なんでしょうか?」
「今日は雑談をしよう。景頼も呼んでこい」
「雑談の場所はここでよろしいでしょうか?」
「ああ、ここで良い」
小十郎はすぐに景頼を連れて戻ってきた。
「どんな雑談をしようか?」
「若様」景頼は平伏する。「今回の雑談、ぜひ私の考えるテーマでしてもよいでしょうか?」
「別にかまわないが、そのテーマとは何なのだ?」
「これにございます」
景頼は書物を取り出して、ページをめくった。タイトルは『予言未来書 一之巻』。
「その本は何だ?」
「名の通り、予言の書でございますが、かなり出来事が的中しておりますので若様にお見せしようと......」
「読み上げてみろ」
景頼は首を縦に振った。「1570年。織田信長公と徳川家康連合軍が浅井長政と朝倉義景の連合軍を破る。
1571年。織田信長公の比叡山延暦寺焼き討ち。
1572年。徳川家康、武田信玄に敗れる。
1573年。室町幕府滅亡。
1577年。隻眼の覇者・伊達政宗の元服。
1580年。石山本願寺、織田信長公に降伏。
1582年。明智光秀の謀反。織田信長公自害......」
現在は1577年。完璧に予言出来ているじゃないか! 1582年は本能寺の変。考えられる可能性としては、俺以外の転生者だ。俺が難なく転生出来たわけだから、おそらく転生の条件はそこまで難しいわけでもないだろう。神に見初められれば、試練なく転生も出来るはずだ。
アーティネスにくわしく転生の条件などを尋ねておけば良かったと、今になって後悔した。
「景頼! その予言の書は、他にあるのか!」
「若様。それが、この一之巻は出所は不明でして、なかなかはずれのない予言の書だったので若様に」
「なるほど。これは調査の必要があるな。どこで手に入れた?」
「それが......これは家来の一人が所持していたもので、所持していた者はどこで入手したか覚えていないようでございます」
「それは残念だな」
予言の書の出所が不明だと、他の転生者の有無などが全然調べられないな。いっそのこと、再度死んでみてアーティネスに接触を図ることも出来るな。ただ、また伊達政宗の体に戻ってこれる確証がない。一度死ぬことは避けよう。
転生者だけでなく、転移者もいるかもしれない。身元不明の者がいれば、即刻連れてくるように働きかけておく必要もあるな。
ただ、現在伊達家の中には俺(伊達政宗)の弟・竺丸(じくまる)派の者が多い。というのも、母親である義姫が俺を嫌うから家臣どもは竺丸を当主に推しだした。まったく、困ったものである。
そこで、輝宗は伊達家の中興の祖から名前をいただいて嫡男・梵天丸に『政宗』と命名した。それにより、竺丸派の家臣を牽制することに成功した。
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