3 / 245
序章『転生』
伊達政宗、隻眼になるのは伊達じゃない その参
しおりを挟む
伊達政宗は1567(永禄10)年、出羽国米沢城にて伊達氏第16代当主・伊達輝宗の嫡男として、正室の義姫から生まれた。幼名は『梵天丸』だから、俺は伊達梵天丸と名乗った方が良いだろうか? なんか格好悪いな。
話しはすごい変わるのだが、実はアーティネスに、伊達政宗を十年前に出生させることは出来るか尋ねてみたんだが、それは私の力では出来ないとか言って断られた。
もし、伊達政宗が十年前に生を受けて誕生したのなら、織田信長や豊臣秀吉、徳川家康などに肩を並べて天下統一も夢ではなかった。というのも、1575年に起こる長篠の戦いにも20歳で出陣が可能だったり本能寺の変なども関係してくる。たった十年が、伊達政宗の天下統一の道を塞いだのだ。時というものは切ない物で、壁にすらなる。俺はその十年の壁をぶち壊すことが出来るだろうか。
いや、それはどうでもいい。本当に俺が危惧しているのは、前世の記憶が戻ったのが俺が9歳になった時だったのだ。あと一年も経てば1577年。つまり、元服だ。名も伊達藤次郎政宗と改名するわけだが、そもそも、全然天然痘になんないから隻眼にならん。どうしたものか......。伊達政宗は独眼竜でこそだ。隻眼じゃない伊達政宗は論外としか言いようがないじゃないか!
伊達政宗は天然痘になって右目が失明し、白くなった眼球が飛び出してくるはずだ。それを小十郎が切り落としたのが逸話である。その話しが違うとすれば、自ら右目を刀で斬る必要があるかもしれない。
だが、遺骨の調査の際に、伊達政宗は隻眼であった可能性が高いことがわかっている。意味がわからくなってきたな。
俺は隻眼を求めて刀を探して歩いた。が、すぐに刀は見つかった。伊達家は武士の家なわけだから当然なんだけどな。
「梵天丸。刀はまだいじるでないぞ。子供には少々危険なものなのだ。尖っているし、刃を触ったら指も切れる。梵天丸は将来有望で俺の嫡男なんだから怪我をさせるわけにはいかない」
刀を手に取ろうとしたら、横から手が伸びてきて止められた。声と手の主は父・輝宗だった。
「すみません、父上。私も元服したら刀で初陣を飾ると思うと、つい触りたくなってしまいまして......」
「ハッハッハッハッ! 梵天丸は面白いことを言うな」輝宗は笑い泣きをしていた。涙腺から光る滴が垂れてきたのだ。その涙を手で拭き取りながら、また口を開いた。「戦場で敵を倒すのに猛威を振るうのは弓矢や鉄砲だろ? 刀じゃうまく相手を殺ることは出来ないぞ?」
そうか、思い出した! 戦国時代の戦場での負傷者の多くを弓矢や鉄砲が占めているのだ。刀で負傷する割合はかなり低い。つい忘れてしまっていた。九年間も歴史の書物を読んでいないから当然と言えば当然だが、不覚だった。
ここはとぼけてみることにしよう。「父上、日本刀は戦場では役に立たないのですか?」
「そうなんだよ、梵天丸。日本刀はな、基本的に片手で扱いながら戦う。つまり、弓矢よりよっぽど扱いが難しくなるわけだ。槍も振り回すだけだし弓矢は矢を飛ばすだけだ。しかし、刀は接近戦でのみ力を発揮する。刀は武器の中でも扱いにくい」
そう。刀は片手で戦うことが多い。馬に乗りながらの状態や、走りながらなどで戦う時は片手で刀を握りながらだ。槍は振り回すだけで戦える。刀は無用、弓矢鉄砲槍は有用である。鉄砲に関しては予算の問題もある。
「ご教授ありがとうございます、父上」
「うむ。元服までまだ数年ある。ゆっくりと思考しなさい。初陣を飾るのも9歳が考えることじゃない。教養を学べ。これが父からの教えだ」
承知しました、と言うと輝宗は笑いながら向こうに消えていった。
元服するまでに力をつけないといけないようだ。俺は近くに誰もいないことを確認して、刀を手に取って鞘から抜いた。まばゆく光る刀は、俺の顔を鮮明に映し出すほど反射するように磨かれている。
磨かれた剣先を右目に向け、まぶたを閉じた。刀を顔から遠ざけ、額から右目を通るような刀傷をつくるようにイメージしながら、刺した。右目に刀を刺した。血が勢いよく吹き出た。
痛すぎて、さすがの俺ですら叫んでしまった。想像していたよりはるかに痛い。前に前世で学校の階段から転げ落ちて全治二ヶ月の骨折になったことがあるが、それとは比べものにならない苦痛だった。すぐにまた輝宗が駆けつけてきた。
「梵天丸! 大丈夫か!」
輝宗が呼びかけていることはわかったが、叫ぶことしか出来ない。輝宗が大急ぎで人数を集めると、俺の近くで多数の奴らが作業を始めた。どうやら、俺の看病etcのようだ。時が経つにつれて痛みも治まっていき、右目に包帯が巻かれていることに気づいた。
「梵天丸!」
「ち、父上......」
「医者からの宣告だ。梵天丸の右目は......視力を失ったんだ」
こうして、伊達政宗は幼少期の頃に右目を失明した。以降は眼帯のない時代だから、白い包帯を巻くこととなった。独眼竜、隻眼の覇者の第一歩の証である。
話しはすごい変わるのだが、実はアーティネスに、伊達政宗を十年前に出生させることは出来るか尋ねてみたんだが、それは私の力では出来ないとか言って断られた。
もし、伊達政宗が十年前に生を受けて誕生したのなら、織田信長や豊臣秀吉、徳川家康などに肩を並べて天下統一も夢ではなかった。というのも、1575年に起こる長篠の戦いにも20歳で出陣が可能だったり本能寺の変なども関係してくる。たった十年が、伊達政宗の天下統一の道を塞いだのだ。時というものは切ない物で、壁にすらなる。俺はその十年の壁をぶち壊すことが出来るだろうか。
いや、それはどうでもいい。本当に俺が危惧しているのは、前世の記憶が戻ったのが俺が9歳になった時だったのだ。あと一年も経てば1577年。つまり、元服だ。名も伊達藤次郎政宗と改名するわけだが、そもそも、全然天然痘になんないから隻眼にならん。どうしたものか......。伊達政宗は独眼竜でこそだ。隻眼じゃない伊達政宗は論外としか言いようがないじゃないか!
伊達政宗は天然痘になって右目が失明し、白くなった眼球が飛び出してくるはずだ。それを小十郎が切り落としたのが逸話である。その話しが違うとすれば、自ら右目を刀で斬る必要があるかもしれない。
だが、遺骨の調査の際に、伊達政宗は隻眼であった可能性が高いことがわかっている。意味がわからくなってきたな。
俺は隻眼を求めて刀を探して歩いた。が、すぐに刀は見つかった。伊達家は武士の家なわけだから当然なんだけどな。
「梵天丸。刀はまだいじるでないぞ。子供には少々危険なものなのだ。尖っているし、刃を触ったら指も切れる。梵天丸は将来有望で俺の嫡男なんだから怪我をさせるわけにはいかない」
刀を手に取ろうとしたら、横から手が伸びてきて止められた。声と手の主は父・輝宗だった。
「すみません、父上。私も元服したら刀で初陣を飾ると思うと、つい触りたくなってしまいまして......」
「ハッハッハッハッ! 梵天丸は面白いことを言うな」輝宗は笑い泣きをしていた。涙腺から光る滴が垂れてきたのだ。その涙を手で拭き取りながら、また口を開いた。「戦場で敵を倒すのに猛威を振るうのは弓矢や鉄砲だろ? 刀じゃうまく相手を殺ることは出来ないぞ?」
そうか、思い出した! 戦国時代の戦場での負傷者の多くを弓矢や鉄砲が占めているのだ。刀で負傷する割合はかなり低い。つい忘れてしまっていた。九年間も歴史の書物を読んでいないから当然と言えば当然だが、不覚だった。
ここはとぼけてみることにしよう。「父上、日本刀は戦場では役に立たないのですか?」
「そうなんだよ、梵天丸。日本刀はな、基本的に片手で扱いながら戦う。つまり、弓矢よりよっぽど扱いが難しくなるわけだ。槍も振り回すだけだし弓矢は矢を飛ばすだけだ。しかし、刀は接近戦でのみ力を発揮する。刀は武器の中でも扱いにくい」
そう。刀は片手で戦うことが多い。馬に乗りながらの状態や、走りながらなどで戦う時は片手で刀を握りながらだ。槍は振り回すだけで戦える。刀は無用、弓矢鉄砲槍は有用である。鉄砲に関しては予算の問題もある。
「ご教授ありがとうございます、父上」
「うむ。元服までまだ数年ある。ゆっくりと思考しなさい。初陣を飾るのも9歳が考えることじゃない。教養を学べ。これが父からの教えだ」
承知しました、と言うと輝宗は笑いながら向こうに消えていった。
元服するまでに力をつけないといけないようだ。俺は近くに誰もいないことを確認して、刀を手に取って鞘から抜いた。まばゆく光る刀は、俺の顔を鮮明に映し出すほど反射するように磨かれている。
磨かれた剣先を右目に向け、まぶたを閉じた。刀を顔から遠ざけ、額から右目を通るような刀傷をつくるようにイメージしながら、刺した。右目に刀を刺した。血が勢いよく吹き出た。
痛すぎて、さすがの俺ですら叫んでしまった。想像していたよりはるかに痛い。前に前世で学校の階段から転げ落ちて全治二ヶ月の骨折になったことがあるが、それとは比べものにならない苦痛だった。すぐにまた輝宗が駆けつけてきた。
「梵天丸! 大丈夫か!」
輝宗が呼びかけていることはわかったが、叫ぶことしか出来ない。輝宗が大急ぎで人数を集めると、俺の近くで多数の奴らが作業を始めた。どうやら、俺の看病etcのようだ。時が経つにつれて痛みも治まっていき、右目に包帯が巻かれていることに気づいた。
「梵天丸!」
「ち、父上......」
「医者からの宣告だ。梵天丸の右目は......視力を失ったんだ」
こうして、伊達政宗は幼少期の頃に右目を失明した。以降は眼帯のない時代だから、白い包帯を巻くこととなった。独眼竜、隻眼の覇者の第一歩の証である。
0
お気に入りに追加
125
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

いや、婿を選べって言われても。むしろ俺が立候補したいんだが。
SHO
歴史・時代
時は戦国末期。小田原北条氏が豊臣秀吉に敗れ、新たに徳川家康が関八州へ国替えとなった頃のお話。
伊豆国の離れ小島に、弥五郎という一人の身寄りのない少年がおりました。その少年は名刀ばかりを打つ事で有名な刀匠に拾われ、弟子として厳しく、それは厳しく、途轍もなく厳しく育てられました。
そんな少年も齢十五になりまして、師匠より独立するよう言い渡され、島を追い出されてしまいます。
さて、この先の少年の運命やいかに?
剣術、そして恋が融合した痛快エンタメ時代劇、今開幕にございます!
*この作品に出てくる人物は、一部実在した人物やエピソードをモチーフにしていますが、モチーフにしているだけで史実とは異なります。空想時代活劇ですから!
*この作品はノベルアップ+様に掲載中の、「いや、婿を選定しろって言われても。だが断る!」を改題、改稿を経たものです。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
旧式戦艦はつせ
古井論理
歴史・時代
真珠湾攻撃を行う前に機動艦隊が発見されてしまい、結果的に太平洋戦争を回避した日本であったが軍備は軍縮条約によって制限され、日本国に国名を変更し民主政治を取り入れたあとも締め付けが厳しい日々が続いている世界。東南アジアの元列強植民地が独立した大国・マカスネシア連邦と同盟を結んだ日本だが、果たして復権の日は来るのであろうか。ロマンと知略のIF戦記。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
織田信長IF… 天下統一再び!!
華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。
この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。
主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。
※この物語はフィクションです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる