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犯人 その伍
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新島はレジ袋に手を突っ込んで、缶コーヒーを全員に配った。
「あ」高田は缶コーヒーの側面を見つめていた。「今回はちゃんとブラックコーヒーだ!」
「当たり前だ。私は二度のヘマをやる女ではないぞ」
新島は土方のカバンを開けて、テスト用紙を取り出した。「再テストも問題変わってないのに、ほとんど同じ問題を間違えているじゃないか......」
「それはそれ、これはこれだ」
「さて、どうだかな」
新島はテスト用紙を土方に渡して、椅子に座った。「それより、学校が内部犯だとわかった理由がまったくわからない」
「ちゃんと考えてみろ。もしバレたら、俺達も退学だ。退学は新島ただ一人の方が好都合だ」
「高田、お前はクズ野郎だ!」
「ごく一般的な思考だろ? 文芸部の四人全員が退学するより、新島一人の方が良いだろ?」
「それはそうなんだが、仲間を思いやる気持ちもないのか?」
「ない!」
「この野郎!」
二人の口論は二十分でおさまった。
「というか」土方は缶コーヒーを飲み干して、缶をゴミ箱に投げ込んだ。「新島が真剣にどのようなことをしたか思い出して、失敗があったかなかったか確かめればいいんじゃないか?」
「あ、それもそうだな」
新島はそれに納得し、事細かく行動を思い出した。
以下、記載があるまでは新島の話しに基づいて再現したボヤ騒ぎを起こすまでの行動の全てである。
新島は四時三十分に目覚まし時計のかまびすしい音で起床した。いつもより数時間早い起床に、体がうまく対応出来ていない。眠いのだ。ため息をついて、洗面台に向かった。
洗面台は風呂場の隣りであり、脱衣所でもある。蛇口をひねり、水を流した。両手でつくった器に、蛇口から流れ出る冷水を溜めた。その水を、顔にかけた。冷たい。だが、洗面する前よりは眠気が吹っ飛んでいる。
タオルで顔に付いた水を拭き取り、あくびをしながらキッチンまで歩いていった。冷蔵庫を開けると、納豆を取り出して白飯と混ぜた。一気に口に突っ込み、食器をシンクにぶち込んだ。
事前に用意していた煙幕弾をカバンに詰め込み、100%に充電されたスマートフォンをマナーモードに切り替えて制服に袖を通す。制服を着ていないと、学校内に入る際に目立つからだ。
家を出ると、走って正門まで行った。門を飛び越えると、持参した袋から上履きを出して外履きを袋に詰めた。
校舎に入るためには扉からだが、鍵はちゃんと施錠されている。だから、外部犯に見せかけるためにも窓ガラスを焼き破りで割った。校舎内に侵入を果たすと、A棟七階まで階段を使って上がり、職員室の扉のガラス部分をハンマーでたたき割った。職員室には各種部屋の鍵が保管されている。新島は手袋をはめて、鍵が入れてあるキーケースを開けた。各教室の鍵を取り、七階に煙幕弾を仕掛けてから六階まで降りた。
各階に所狭しと煙幕弾を設置。教室には鍵で侵入してロッカーの裏に煙幕弾を放り込んだ。目立つ場所に煙幕弾を置くと、即煙幕弾だと露見してしまうからだ。
B棟まで隈無く煙幕弾を仕掛けると、職員室に戻って鍵を元通りにした。
文芸部部室の鍵を取り、部室の扉の鍵穴に差し込んでひねった。部室の扉を解錠したら、その鍵も元に戻した。部室に入ると、鍵を掛けてソファで横になった。ボヤ騒ぎが起きるまでは新島は部室で待機だった。
ボヤ騒ぎが起きると、人っ子一人校舎から出た。カバンは教室に残っているわけだから、新島は早速三組教室に入って早稲田のカバンの中身をいじった。スマートフォンで何枚か写真を撮ったら、カバンも戻して空き部屋の床板の下に隠れた。
以上、新島が話した犯行時のことの顛末だ。
話しを聞いた高田は深くため息をもらした。「あのさぁ、新島。キーケースの場所を知っているのは学校関係者しかいないわけだ。しかも、お前は職員室は荒らしてなかっただろ? つまり、荒らさずにキーケースの在処を知っている奴は内部の者だということで、学校は内部犯を疑っているんだと思う」
「え? そういうこと? 俺のミスってこと?」
「そういうことだ」
「マジかぁ! しかも、俺達ってことはバレてなさそうだし完全に無駄骨だったということかっ!」
「ドンマイ。元気出せよ」
「出ねーよ!」
新島はただ後悔をしていた。他の四人は大爆笑である。何はともあれ、彼彼女ら文芸部の部員には学校からの疑いがないことがわかった。新島は落胆していた。
土方は飲み足りなかったらしく、カバンを持って最寄りのコンビニに出掛けてブラックの缶コーヒーを再び五本購入して帰ってきた。
五人は一斉にプルタブを引いてから、押し戻して口に当ててコーヒーを流し込んだ。高田は途中でむせて床にコーヒーをこぼしてしまい、新島は怒りながら雑巾で拭いていた。高田も拭くのを手伝ってから、またコーヒーを飲み始めた。だが、次は自分の制服にコーヒーをこぼした。シミになるから焦って制服を脱いだ。
「俺の洗濯機を使え。シミになったら大変だ」
「サンキュ、新島!」
高田は制服を洗濯機に入れた。
「あ」高田は缶コーヒーの側面を見つめていた。「今回はちゃんとブラックコーヒーだ!」
「当たり前だ。私は二度のヘマをやる女ではないぞ」
新島は土方のカバンを開けて、テスト用紙を取り出した。「再テストも問題変わってないのに、ほとんど同じ問題を間違えているじゃないか......」
「それはそれ、これはこれだ」
「さて、どうだかな」
新島はテスト用紙を土方に渡して、椅子に座った。「それより、学校が内部犯だとわかった理由がまったくわからない」
「ちゃんと考えてみろ。もしバレたら、俺達も退学だ。退学は新島ただ一人の方が好都合だ」
「高田、お前はクズ野郎だ!」
「ごく一般的な思考だろ? 文芸部の四人全員が退学するより、新島一人の方が良いだろ?」
「それはそうなんだが、仲間を思いやる気持ちもないのか?」
「ない!」
「この野郎!」
二人の口論は二十分でおさまった。
「というか」土方は缶コーヒーを飲み干して、缶をゴミ箱に投げ込んだ。「新島が真剣にどのようなことをしたか思い出して、失敗があったかなかったか確かめればいいんじゃないか?」
「あ、それもそうだな」
新島はそれに納得し、事細かく行動を思い出した。
以下、記載があるまでは新島の話しに基づいて再現したボヤ騒ぎを起こすまでの行動の全てである。
新島は四時三十分に目覚まし時計のかまびすしい音で起床した。いつもより数時間早い起床に、体がうまく対応出来ていない。眠いのだ。ため息をついて、洗面台に向かった。
洗面台は風呂場の隣りであり、脱衣所でもある。蛇口をひねり、水を流した。両手でつくった器に、蛇口から流れ出る冷水を溜めた。その水を、顔にかけた。冷たい。だが、洗面する前よりは眠気が吹っ飛んでいる。
タオルで顔に付いた水を拭き取り、あくびをしながらキッチンまで歩いていった。冷蔵庫を開けると、納豆を取り出して白飯と混ぜた。一気に口に突っ込み、食器をシンクにぶち込んだ。
事前に用意していた煙幕弾をカバンに詰め込み、100%に充電されたスマートフォンをマナーモードに切り替えて制服に袖を通す。制服を着ていないと、学校内に入る際に目立つからだ。
家を出ると、走って正門まで行った。門を飛び越えると、持参した袋から上履きを出して外履きを袋に詰めた。
校舎に入るためには扉からだが、鍵はちゃんと施錠されている。だから、外部犯に見せかけるためにも窓ガラスを焼き破りで割った。校舎内に侵入を果たすと、A棟七階まで階段を使って上がり、職員室の扉のガラス部分をハンマーでたたき割った。職員室には各種部屋の鍵が保管されている。新島は手袋をはめて、鍵が入れてあるキーケースを開けた。各教室の鍵を取り、七階に煙幕弾を仕掛けてから六階まで降りた。
各階に所狭しと煙幕弾を設置。教室には鍵で侵入してロッカーの裏に煙幕弾を放り込んだ。目立つ場所に煙幕弾を置くと、即煙幕弾だと露見してしまうからだ。
B棟まで隈無く煙幕弾を仕掛けると、職員室に戻って鍵を元通りにした。
文芸部部室の鍵を取り、部室の扉の鍵穴に差し込んでひねった。部室の扉を解錠したら、その鍵も元に戻した。部室に入ると、鍵を掛けてソファで横になった。ボヤ騒ぎが起きるまでは新島は部室で待機だった。
ボヤ騒ぎが起きると、人っ子一人校舎から出た。カバンは教室に残っているわけだから、新島は早速三組教室に入って早稲田のカバンの中身をいじった。スマートフォンで何枚か写真を撮ったら、カバンも戻して空き部屋の床板の下に隠れた。
以上、新島が話した犯行時のことの顛末だ。
話しを聞いた高田は深くため息をもらした。「あのさぁ、新島。キーケースの場所を知っているのは学校関係者しかいないわけだ。しかも、お前は職員室は荒らしてなかっただろ? つまり、荒らさずにキーケースの在処を知っている奴は内部の者だということで、学校は内部犯を疑っているんだと思う」
「え? そういうこと? 俺のミスってこと?」
「そういうことだ」
「マジかぁ! しかも、俺達ってことはバレてなさそうだし完全に無駄骨だったということかっ!」
「ドンマイ。元気出せよ」
「出ねーよ!」
新島はただ後悔をしていた。他の四人は大爆笑である。何はともあれ、彼彼女ら文芸部の部員には学校からの疑いがないことがわかった。新島は落胆していた。
土方は飲み足りなかったらしく、カバンを持って最寄りのコンビニに出掛けてブラックの缶コーヒーを再び五本購入して帰ってきた。
五人は一斉にプルタブを引いてから、押し戻して口に当ててコーヒーを流し込んだ。高田は途中でむせて床にコーヒーをこぼしてしまい、新島は怒りながら雑巾で拭いていた。高田も拭くのを手伝ってから、またコーヒーを飲み始めた。だが、次は自分の制服にコーヒーをこぼした。シミになるから焦って制服を脱いだ。
「俺の洗濯機を使え。シミになったら大変だ」
「サンキュ、新島!」
高田は制服を洗濯機に入れた。
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