日常探偵団2 火の玉とテレパシーと傷害

髙橋朔也

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犯人 その肆

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「おい」新島は腕を組んだ。「高田、もう一回言ってみろ」
「学校は今回の一件を内部犯と考えているらしい」
「は? 何でだよ!」
「俺もくわしくは知らないんだ。俺に聞かないでくれ」
「これは調査する価値がありそうだな」
「調査?」
「八坂中学校について、久々に調べてみよう」
 もし内部犯だとバレているなら危険だから、ということで調査がスタートした。
 まず、隣りの職員室から教職員全員を移動させてパソコン内の情報を確かめてみよう、ということになった。
 職員室からどうやって教職員を連れ出すかは簡単に結論が出た。もう一度ボヤ騒ぎを起こすのみだ。だが、次は少し違う。A棟屋上で爆発を起こすのだ。職員室の上が屋上だから職員室は大騒ぎだ。
 次に誰のパソコンを見るかが問題になった。今年になって立場が上がった八代と、三島のクラスの担任教師で生活指導監督という肩書きの佐々木(ささき)の名前が上がった。結局、二人のパソコンを盗み見ようということになった。
 新島は屋上に火薬を仕掛け、爆発させた。教職員は職員室から飛び出して屋上へと向かった。その隙に文芸部の四人は職員室に侵入して、八代の席に新島か座ってパソコンを起動させた。
「あ、やべっ!」
 新島が驚愕してパソコンの画面を見つめた。高田もパソコンを覗き込んだ。「パスワードか! 忘れてた!」
 パスワードは数字四文字である。
「高田! 八代の誕生日は?」
「えっと......確か8月23日だ」
「0823か。わかった」
 新島は0823と打ち込んだ。だが、パスワードが違った。
「くそっ! 八代(やしろ)を数字にしても846で駄目だし、下の名前は?」
「史郎(しろう)だ」
「46じゃねぇよ! 馬鹿!」
 新島は823と846を足して1669としてパスワードに打ち込んだりもしたが、全然うまくいかない。
 すると、何かを思いついたらしく『8246』と、キーボードを叩いて打ち込んでいった。その途端にパソコンは開いた。
「は? 何で?」
「八代の読み方はやしろだが、八代(やつしろ)と読む地名もある。パスワードは大体名前に関係した奴ばっかだしな」
「なるほど」
 新島は持ってきたUSBを差し込んで、八代のパソコンのデータをコピーしてから、佐々木の席に座ってパソコンを起動させた。
 またパスワードが現れた。次はアルファベットと数字の入った六文字だ。
「三島! 佐々木の下の名前は?」
「武(たけ)だったはずです」
「年齢は?」
「48歳」
 新島はパソコンの製造年代を確認した。五年前の型で、佐々木が持参したものだ。キーボードをカチャカチャして、『take43』と打った。take(テイク)43みたいだな。
 だが、パスワードは間違っていた。
「新島。何で43なんだ?」
「パソコンにパスワードを設定したのは購入した五年前。その時はまだ43歳だろ? だから、take43だ」
 新島は思案した。
「三島。佐々木のスマホのパスワードは知っているか?」
「パターンのパスワードです。IとZを繋げたみたいな形でした」
「ほお? IZか」
 新島は深く考えこみ、キーボードの上の指を動かした。
「パスワードは多分、『noma10』だな」
 見事、パソコンを開けた。
「noma10?」
「ノマと10(テン)でノマ点(々)だ。アルファベットで『nomaten』だと七文字だし数字が入っていない。だからtenを10にしたら大成功だ」
「いや、ノマ点って?」
「『佐々木』の『々』だ。カタカナの『ノ』と『マ』を繋げたみたいだからノマとかノマ点と呼ぶ。IとZを繋げても、何とかノマ点に見えるだろ? パスワードを覚えるのが面倒だから、持っている機械の全てのパスワードを同じにしている奴は多いんだ」
「よくわかったな」
 新島は佐々木のパソコン内の全ての情報をUSBにコピーし、全員は文芸部部室に帰還した。
 コンピューター室に行き、パソコンを一台借りてUSBを差し込み、八代と佐々木のパソコンのデータを確認してみた。だが、ボヤ騒ぎについてのことは何も書かれてはいなかった。
「結局空振りじゃねーか!」
「仕方ない。仕方ない。ハァ......」
 四人は脱力して、床に座り込んだ。新島以外はほとんど何もやっていないが、精神的に疲れてしまったようだ。
 最終的にわかったことは、早稲田はおそらく毎日黒い服を持ってきているということ。もし早稲田を放っておいたら、また傷害事件が起こるかもしれないと新島が危険視していた。高田はそんなことはないと言って、また新島と喧嘩を始めていた。
 今日の出来事を要約すると、やはり早稲田は現在一番怪しい奴だということだ。
 文芸部は帰り支度をして、早めに部活動を切り上げた。本日は臨時の烏合の衆の会議だからである。四人が新島のマンションに到着した時には、土方はソファでくつろいでいた。
「先輩。いつも何で早いんだよ!」
「今日は補習を無理矢理やらせようとしてくる教師を振り切って帰ってきた。だから早かったんだ!」
「明日学校に行ったら、絶対その教師怒ってるぞ」
「大丈夫、大丈夫。あ、テーブルに缶コーヒーが人数分置いてあるからな!」
 新島がテーブルに目を向けた。レジ袋の中に、缶コーヒーが五本入っていた。
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