日常探偵団2 火の玉とテレパシーと傷害

髙橋朔也

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以心伝心 その捌

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 しかし、三島、新田、獅子倉の姿は発見出来ず、新島と高田は困り果てた。
「新島。あの三人は帰ったんじゃないか?」
「そんなわけないだろ。絶対まだ校内のどこかにいるはずなんだ。必ず探し出せ」
「って言われてもな......。A棟とB棟を一生懸命探し回ったがB棟の方は人っ子一人いないぜ?」
「いや、まだ探していない場所があるだろ?」
「どこだ? そんなのがあるのか?」
「ある」新島はA棟一階の下駄箱の近くの壁に飾られた校内の地図のところまで歩いていった。高田め新島に着いていく。「俺達はさっきまで、生徒が普通に入れるところや入ってもおかしくないところなどを重点的に調べていた。
 だが、学年職員室や職員室などは調べていない。職員室などは生徒も入れる場合があるが長時間滞在することは出来ないが、生徒が入れないところを調べてみる価値はありそうだろ?」
 新島の説明を横で聞いていた高田は、感心したように口を開いた。「なるほど。その考えはなかった。目の付け所というか、新島はやっぱりすごいな」
「そんなことを言っている場合ではない。A棟七階から生徒の入れないところを一から調べていくんだ」
「すげー地道な作業だな......」
「地道な作業の繰り返しだ。ちりも積もれば山となるって言うだろ?」
「確かにそんなことはよく言ってる奴いるけど、ちりって積もる途中で風で吹き飛ばされない?」
「細かいことをごちゃごちゃ言っている暇はないだろ」
「でもさぁ、前にすごく古い家に入ったことがあるんだ。10年くらい放置されてた家なんだ。その家はな、確かにほこりがたくさん床にあった。だけど、数センチくらいしか積もってなかったぞ。ということは、山になるまでにはかなりの歳月がかかるはずだし、ちりも積もれば山となるって最初に言った奴は適当に言ったんだと思う。多分、最初に言った奴は何年で山になるか確かめてない。あとさ、山ってどのくらいの高さで山になるんだろうか?」
「高田は何でそんなに細かいことを言えるんだよ。そっちの方が不思議でたまらない」
「これくらい普通だ。誰もが思っていることを、俺が代弁してあげたんだ」
「少なくとも、俺はちりが云々なんて考えたことはないからな」
「嘘だぁ! 一度はあるんじゃない?」
「ない。ないないない!」
 二人は話しながらA棟七階に向かい、職員室を覗いたり男子トイレを覗いたりした。残念ながら女子トイレに新島と高田が入るわけにもいかず、三島と新田と獅子倉の名前を呼んで返事がなければ女子トイレはスルーという決まりとなった。
 スクールカウンセラー室を調べる際には相当苦労した。こっそり中を覗こうにも、スクールカウンセラー室がある場所はA棟三階で一番目立つからだ。結局、新島と高田がじゃんけんをした。負けた新島がスクールカウンセラー室に入り、カウンセラーを受けることになった。
 三十分カウンセラーを受けた新島は、内心腹を立てて戻ってきた。
「どうしたんだ、新島?」
「親にいじめられている設定にした。何もわかっていないくせに知ったような面をされたのがムカつく」
「仕方ない。クローンの経験なんて一般人はないからな」
「そりゃそうだけど......」
「それで」高田は新島の腕をつかんで、スクールカウンセラー室から離れた。「スクールカウンセラー室の中に三島、新田、獅子倉はいたか?」
「いや、いなかった」
「......三十分も無駄にしたな」
 二人はまた走り出して、探し回った。そして、新島は三島と新田、獅子倉がいそうな場所を思いついて、急に飛び出して走り出していった。
「おい、新島!」
「高田、着いてこい!」
 高田は首を傾げながら、後を追った。新島が入った部屋は、保健室だった。高田は納得して、保健室に足を踏み入れた。
 新島の視線の先を高田が見ると、三島と新田がいた。新田はベッドに横たわっていた。
「三島」新島はベッドに歩み寄った。「新田は大丈夫なのか?」
「途中で倒れてしまいましたが、すぐに保健室に運んでベッドに寝かせたので、もう大丈夫だと思います」
「それなら安心だ」
 新島は安堵のため息をもらして、椅子に腰を下ろした。高田もそれに習って、パイプ椅子に座った。
「そういえば、獅子倉はどこにいるんだ?」
 高田の一言で新田はベッドから飛び上がった。それから、上履きを履くと、すぐに保健室を走り出した。三島と新島、高田も新田を追いかけるために右足と左足を交互に踏み出して走り始めた。
 新田が向かっていったのは、B棟一階の化学薬品倉庫という小さな部屋だった。しかし、化学薬品倉庫とは名ばかり。実際は薬品などほとんどない。
 新田は化学薬品倉庫の扉を開けた。中では、獅子倉が倒れていた。新島はまた火の玉でも見たのかと思ったが、右脚の膝が赤く腫れ上がっていた。三人は赤く腫れ上がった膝を見た瞬間、体が震えだした。
 いち早く危険を察知した新田は、化学薬品倉庫の冷蔵庫を開けて保冷剤を取り出して冷やし始めた。
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