日常探偵団2 火の玉とテレパシーと傷害

髙橋朔也

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緋色 その参

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「マキシマム。面白いから、本当のことを言ってもいいかね?」甲斐次は真を見ながら、白い歯を剥き出しにして笑った。
「まあ、言ったとしても、今更ダメージは受けないだろうな」
「なら、言っていいというわけだな?」
「ああ、そういうことだ」
 甲斐次は微笑みながら、真の方を向いた。。それから、口を開く。「我が家に養子として迎える真琴は、君の血の繫がった兄弟だ」
「はぁ?」真は眉間に皺を寄せた。「体外受精によって生まれた者の一人か?」
「そうだよ。だから、亡き誠の面影がある」
「なんで真琴は養子縁組なんだ?」
「悟ったくせに、聞こうとするのか? ──真琴は誠と心臓が適合していなかったからだ」
「だったら、今になって養子にする理由がない」
「違うよ。何回も言わせるな、真。真琴は誠と似た何かがあるのだよ」
「面影か?」
「目だ。目が似ている。いや、眼(まなこ)だよ。眼がな、同じなんだよ!」
 甲斐次は椅子から立ち上がった。

 次の日、新島は疲れたように重い足取りで登校した。高田も似たような歩き方で、二人の共通点は悩みを抱えているということだ。
 真琴は、今月中にも新島家の人間として籍を入れるらしい。
 また、高田は高田で苦労していた。赤い火の玉の正体は一晩考えてもわからなかった。三島が言っていた螺鈿シールを調べてみると、確かに使えそうな物だったが、やはりどこに吊り下げたかが問題だ。隣りの家とは離れているし、足音もなかった。康治の妻はまだ帰宅していなかったようだし、まさか本物の火の玉だったという結論も駄目だ。今日にでも新島に尋ねる予定で、手帳にはまとめてきていた。パソコンはパソコン部のでも借りよう、とも考えていた。
 新島という一縷(いちる)の望みにかけていた高田だったが、新島の顔を見た途端に尋ねる気が失せた。新島の顔は、失意のどん底のような表情で形成されていたからだ。昨日の会食で何かあったと知った高田は、まずは新島を励ますことにした。
「よお、新島!」
「お、おう。昨日、君津の家に行ったんだろ? 何かわかったか?」
「急だな。それより、じゃんけんしようぜ」
「お前の方が急だぞ......」
「じゃーんけーんっポンッ!」
 高田の声に合わせて新島はパーを出した。高田はグーを出してから、チョキを出した。
「高田、お前後出しだ」
「証拠がないだろ?」
「証拠はないな」
「だろ? 人をむやみやたらと疑っちゃ駄目だぜ」
「何かイラッとしたが......元気が出た」
「だったら、俺に言うことがあるだろ?」
「じゃんけん弱っ!」
「じゃなくて、ほらっ」
「サンキュー、か?」
「あ? 39?」
「違ーよバカッ」
 二人は微笑しながら教室に入った。
 数分後、教室に八代が入ってきて、教卓の前で背筋を伸ばした。「今日、転校生がうちのクラスに転入してくる」
 瞬く間に教室中の生徒から歓声が上がった。
「転校生は女子だが──」
 男子生徒が雄叫びを上げる。
 八代は廊下に顔を向けて、「よし。入ってこい」と言った。
 八代が呼んでから、数秒で教室に顔を出したのは女生徒だった。髪は長いが後ろで、ポニーテールと呼ばれる束ね方をしている。身長は160センチ前後で瞳が大きく、大人びた感じがするが、口元からは無邪気さも感じられる笑みがある。鼻の形はちゃんとしていて、まつげは長い。誰もが認める超絶美人だ。
「自己紹介をしてくれ」
 一度うなずき、前に向き直って口を開いた。「乾(いぬい)第三中学校から転入しました、早稲田(わせだ)木風(このかぜ)です」
 男子生徒の盛り上がりを八代がなだめて、早速授業が始められた。
 それから多々あったものの、一日の授業が終わり、放課後のチャイムが鳴ってすぐ新島と高田はコンピューター室に向かって走り出した。
 コンピューター室に到着すると、高田はパソコンを起ち上げてUSBを差し込んだ。画面が明るくなると同時にマウスとキーボードをいじくって、例の赤色の火の玉の映像を再生させた。新島は椅子に座ってゆっくりと眺めた。
「なあ、高田」
「どうした? 何かわかったか?」
「お前の話しを聞いたり、映像を見たりしてわかったことが一つある」
「なんだ?」
「本物っぽくない?」
「わかる! その気持ちわかる! だが、火の玉なんて存在しないんだから人為的としか思えない」
「......そういえば、三島が面白いことを言っていた」
「何?」
「赤色の螺鈿シールを使って火の玉を出現させたんじゃないかだってさ」
「螺鈿シール?」新島はパソコンで検索エンジンを開き、螺鈿シールと打ち込んで検索した。「なるほど、これが螺鈿シールか」
「どうだ?」
「なにが?」
「螺鈿シールで火の玉は出来そうかな?」
「うーん」新島は腕を組んで、うなり声を上げながら椅子を回転させた。「やってみないとわからなさそうだな」
「実験、やってみっか!」
「わかった。螺鈿シールの調達は俺に任せろ」
「オーケー。俺はなにをすればいい?」
「高田は......そうだな、釣り竿が一つ欲しいな」
「わかった。釣り竿一本を調達しておこう。他にはあるか?」
「特には無いな」
 新島はパソコンをシャットダウンさせて、USBを引っこ抜いた。
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