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跋扈 その肆
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新島は部室の扉を開けて、廊下に踏み出た。「今から校庭に出るぞ!」
三人は返事をしてから、部室を出た。
階段を駆け下り、昇降口を走り抜け、上履きで校庭に飛び出した。しかし、もうすでに青白い火の玉はなかった。
「どこに消えた?」
「新島、諦めろ。もう火の玉は消えたんだ」
「くそっ!」
「まあ、写真は撮影したし、上出来なほうだろ?」
「......そうだな。部室に戻って、今日は帰ろう」
「そうしよう」
四人は階段を上がり、部室に入った。カバンに荷物を詰め、帰り支度をすませると、カバンをつかんで部室を出た。そして、正門を乗り越えてそれぞれが帰宅した。
新島は火の玉について、歩きながらトリックを考えていた。火の玉を撮影した写真を眺めながら考えているのだが、なかなか火の玉をつくりだす方法が思いつかない。家に帰ってスマートフォンで検索してみようと考えると、歩くスピードを速めた。新島の靴のかかとが地面にこすりつけられて、ズズッ、という鈍い音がしていた。
マンションにはすぐに到着した。二階に上がると、206号室の扉の鍵穴に鍵を差し込んだ。鍵をひねると、ドアを手前に引いた。扉が開くと中に入り、鍵のつまみをひねって施錠した。玄関で靴を脱ぐと、急いで奥の和室まで行った。和室にスマートフォンを置いてあるのだ。
スマートフォンを手に取ると、ロックの掛かっていない画面に指を置いて上にスライドした。検索エンジンを開き、キーワードを打ち込んで検索した。そして、ファイアボール現象というのがヒットしたが今日火の玉とは全くの別物だ。
次の日、新島は未だに火の玉の正体で頭を悩ませていた。昨日、スマートフォンを使って調べていたのだが、トリックはまったくうかばなかった。
教室の自席の椅子に座っていると、高田が新島の席に近づいた。
「悩める子羊よ」
「何だよ、高田......。キリスト教では『悩める子羊よ』じゃなくて『迷える子羊よ』だぞ」
「マジ? 俺はずっと悩める子羊よ、だと理解していたが......」
「バカだな、やっぱり。で、どうした?」
「悩んでいる感じだったから、火の玉の件かなって思ってね」
「その通り、火の玉の件で悩んでいる」
「で、何かわかったか?」
「全然わかんない」
「俺の考えを言っていいか?」
「何だ? 言ってみろ」
「俺達は映像を見せられていたんじゃないか?」
「どういうことだ?」
「一階から六階のどこかに、上向きに大型モニターが設置されていた。そして、火の玉が浮遊している映像をそのモニターで流していたとしたら?」
「なるほど。面白い発想だ。だが、そんな大型モニターがあったなら片付けるのに一苦労だろ? 実際、昨日は七階から校庭に急いで降りた。だが、校庭にはそんなものはなかった。つまり、大型モニターではないだろう」
「確かにそうだな」
「面白い発想だがな」
「徹夜で考えたアイディアなんだけどな......」
「君津さんが一階から火の玉を見ているんだから、大型モニターはないだろうな」
「まあ、確かにそうだな。そんな近くから見たら映像だってわかるはずだね」
「そういうことだよ」
「話しは変わるが、新島は今日も部室に来るか?」
「当たり前だ。火の玉の正体を知るまでは毎日欠かさず部室に行く」
「それに、君津は家に帰ってからも赤色の火の玉を見ているんだ。そっちも解決しないとな」
「そういえば、そうだな」
「まあ、頑張れよ」
高田は新島の頭をデコピンして、自分の席に戻って行った。
──放課後
「新島!」
「ちょっと待ってくれ。筆箱の中身が全部落ちちゃったんだ。シャープペンシルの芯までばらまいてしまったよ」
「手伝ってやるよ」
「ああ、頼むよ」
新島は高田と一緒に筆記用具を拾い集めた。そして、筆箱に全て詰めてから、カバンに収めた。
すると、二人しかいない教室に誰かが入ってきた。新島が振り返ると、そこには三島がいた。
「どうした、三島?」
「三組教室を覗いたら、二人がいたので......」
「そうか。じゃあ、部室行くか?」
「三人でか?」
「当たり前だろ」
三人で文芸部部室に向かった。
「高田は、火の玉の正体がわかるか?」
「わかんない。大型モニターだと考えていたからな」
「じゃあ、三島は何か考えがあるか?」
「くわしくはわかりませんが、化学などが関係しているのではないでしょうか?」
「化学......なるほど」新島の頭の上には、電球が浮かんだイメージだ。そしてその電球が、ピカッ、と光ったのだ。「化学反応というわけだな。うん、もしかしたら三島の言うとおりかもしれない。高田より役に立つじゃないか」
「ありがとうございます」
「おい、新島。最後の酷いぞ」
「そうか? ごく普通の一般論だ」
「全然一般論ではないのだが?」
「......ああ、悪かったよ。それより、部室に行く前に理科室に寄ってみないか?」
「何で?」
「それは、理科室に青白い光りを放つ化学反応の薬品があるかもしれない。理科室にある薬品の名前を紙に書き出して、パソコン部の協力を仰いで、コンピューターで各々の薬品を検索する。そしたら、どれが青白く光るかわかるぞ」
「なるほど。名案だ」
一同は、理科室に方向を変えた。
三人は返事をしてから、部室を出た。
階段を駆け下り、昇降口を走り抜け、上履きで校庭に飛び出した。しかし、もうすでに青白い火の玉はなかった。
「どこに消えた?」
「新島、諦めろ。もう火の玉は消えたんだ」
「くそっ!」
「まあ、写真は撮影したし、上出来なほうだろ?」
「......そうだな。部室に戻って、今日は帰ろう」
「そうしよう」
四人は階段を上がり、部室に入った。カバンに荷物を詰め、帰り支度をすませると、カバンをつかんで部室を出た。そして、正門を乗り越えてそれぞれが帰宅した。
新島は火の玉について、歩きながらトリックを考えていた。火の玉を撮影した写真を眺めながら考えているのだが、なかなか火の玉をつくりだす方法が思いつかない。家に帰ってスマートフォンで検索してみようと考えると、歩くスピードを速めた。新島の靴のかかとが地面にこすりつけられて、ズズッ、という鈍い音がしていた。
マンションにはすぐに到着した。二階に上がると、206号室の扉の鍵穴に鍵を差し込んだ。鍵をひねると、ドアを手前に引いた。扉が開くと中に入り、鍵のつまみをひねって施錠した。玄関で靴を脱ぐと、急いで奥の和室まで行った。和室にスマートフォンを置いてあるのだ。
スマートフォンを手に取ると、ロックの掛かっていない画面に指を置いて上にスライドした。検索エンジンを開き、キーワードを打ち込んで検索した。そして、ファイアボール現象というのがヒットしたが今日火の玉とは全くの別物だ。
次の日、新島は未だに火の玉の正体で頭を悩ませていた。昨日、スマートフォンを使って調べていたのだが、トリックはまったくうかばなかった。
教室の自席の椅子に座っていると、高田が新島の席に近づいた。
「悩める子羊よ」
「何だよ、高田......。キリスト教では『悩める子羊よ』じゃなくて『迷える子羊よ』だぞ」
「マジ? 俺はずっと悩める子羊よ、だと理解していたが......」
「バカだな、やっぱり。で、どうした?」
「悩んでいる感じだったから、火の玉の件かなって思ってね」
「その通り、火の玉の件で悩んでいる」
「で、何かわかったか?」
「全然わかんない」
「俺の考えを言っていいか?」
「何だ? 言ってみろ」
「俺達は映像を見せられていたんじゃないか?」
「どういうことだ?」
「一階から六階のどこかに、上向きに大型モニターが設置されていた。そして、火の玉が浮遊している映像をそのモニターで流していたとしたら?」
「なるほど。面白い発想だ。だが、そんな大型モニターがあったなら片付けるのに一苦労だろ? 実際、昨日は七階から校庭に急いで降りた。だが、校庭にはそんなものはなかった。つまり、大型モニターではないだろう」
「確かにそうだな」
「面白い発想だがな」
「徹夜で考えたアイディアなんだけどな......」
「君津さんが一階から火の玉を見ているんだから、大型モニターはないだろうな」
「まあ、確かにそうだな。そんな近くから見たら映像だってわかるはずだね」
「そういうことだよ」
「話しは変わるが、新島は今日も部室に来るか?」
「当たり前だ。火の玉の正体を知るまでは毎日欠かさず部室に行く」
「それに、君津は家に帰ってからも赤色の火の玉を見ているんだ。そっちも解決しないとな」
「そういえば、そうだな」
「まあ、頑張れよ」
高田は新島の頭をデコピンして、自分の席に戻って行った。
──放課後
「新島!」
「ちょっと待ってくれ。筆箱の中身が全部落ちちゃったんだ。シャープペンシルの芯までばらまいてしまったよ」
「手伝ってやるよ」
「ああ、頼むよ」
新島は高田と一緒に筆記用具を拾い集めた。そして、筆箱に全て詰めてから、カバンに収めた。
すると、二人しかいない教室に誰かが入ってきた。新島が振り返ると、そこには三島がいた。
「どうした、三島?」
「三組教室を覗いたら、二人がいたので......」
「そうか。じゃあ、部室行くか?」
「三人でか?」
「当たり前だろ」
三人で文芸部部室に向かった。
「高田は、火の玉の正体がわかるか?」
「わかんない。大型モニターだと考えていたからな」
「じゃあ、三島は何か考えがあるか?」
「くわしくはわかりませんが、化学などが関係しているのではないでしょうか?」
「化学......なるほど」新島の頭の上には、電球が浮かんだイメージだ。そしてその電球が、ピカッ、と光ったのだ。「化学反応というわけだな。うん、もしかしたら三島の言うとおりかもしれない。高田より役に立つじゃないか」
「ありがとうございます」
「おい、新島。最後の酷いぞ」
「そうか? ごく普通の一般論だ」
「全然一般論ではないのだが?」
「......ああ、悪かったよ。それより、部室に行く前に理科室に寄ってみないか?」
「何で?」
「それは、理科室に青白い光りを放つ化学反応の薬品があるかもしれない。理科室にある薬品の名前を紙に書き出して、パソコン部の協力を仰いで、コンピューターで各々の薬品を検索する。そしたら、どれが青白く光るかわかるぞ」
「なるほど。名案だ」
一同は、理科室に方向を変えた。
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