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虚空塔攻略戦:前編
第45話 ユーザーが望んでいたもの
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肉塊の用意した昼食を食べていると、ネーデルは休まずに作業しているのが見えた。
休まなくてもいいのかな?
そんなに忙しくなるほどの物を頼んだつもりはないけどな。
「もしかしてあまり進んでない?」
やっぱり敵対してる種族同士だと作業がうまくいかないものなのだろう。
「着々と進んでおります。現在半分程の行程が完了しております」
「半分?」
「……っ!え、ええ、完璧な、ものを用意します」
なんか焦ってるけど大丈夫なのかな。
「ちゃんと皆それぞれキチンと作業するように」
喧嘩して作業が終わらないとか、そういうのはやめてよね。
「は、はい、急がせるよう、至急連絡します」
肉塊は泡を食ったように駆けて行った。
なかなか思い通りにならないものだ。
《一度でもお前の思う通りに事が運んだ事があるのか?》
やかましいわ!失敗は成功の母!
《二度あることは三度ある、と言うしな》
……なんで生前と同じ諺が通じるんだろう。
《翻訳されておるのだ、お前が独り言を話しておるときは我輩にも何を言っているか分からんし》
へー、じゃあ思考垂れ流しじゃないんだ
《そういうことにしておいてやろう》
なんか引っかかる言い方だなぁ。
肉塊の用意した昼食は謎の肉を焼いただけの物だった。
意識が戻ってからロクなものを口にしていない気がする。
この世界の住人は普段何を食べているんだろうか、もう少しまともな物が食べたい。
◆◆◆◆◆◆◆◆
思考がまとまらなかった。
どうなっている、なぜ土塊兵たちと肉塊兵がバラバラに組み立てをしている?
それに僕が作り直した設計図はどこに行ったんだ?
「設計図はどこに行った?」
肉塊のような魔族に尋ねる。他にあてはない。
「クドゥリュー様、命令、作業、効率化、配布」
「それで、元はどこにある?」
「不明、貴様は、言われた通り、指揮をしろ」
「設計図がなかったらどうにもならないだろうが!」
「各員が所持、どれか、回収しろ」
「お前は持ってないのか?」
「保持している」
「じゃあそれをよこせ。連絡係のお前には必要ないだろう」
「わかった」
「……え?」
受け取ったそれは、フーカが最初に書いた設計図とも呼べない代物だった。
◆◆◆◆◆◆◆◆
フーカに肉塊と呼ばれる魔族は戦慄していた。
作業現場は混沌としていたからだ。
《おい!そこ!それはそっちじゃない!》
「オ、オレ、ハコブ、コレ」
「ドラムカン、オス、オス」
洗脳された生徒や教師はイマイチ能力が足りず。
「………」
ネーデルの土塊兵はあらかじめ決められた事しか出来ないので、融通はきかない。
《こっち全然手が足りてないぞ!》
《ここって行き止まりだっけ?》
《わかんないから上に繋げとけ!》
《ここは右向きにするのか?左向きにするのか?》
《どっちでも大して変わらないだろ!》
眷属も末端まで行くと、何故かあまり優秀とまでは言えない個体が生まれてしまう。
《時間がないぞ!明日の朝までだ!》
《確実に良いものにしなければ!》
指揮をとっている眷属は張り切りすぎている。
しかも、それぞれ持っている設計図は好き勝手に変えられ、別物。
これは手が終えない、大丈夫と言った手前。
どうにかしなければならないのは間違いない。
肉塊は対策を考え始めた。
◆◆◆◆◆◆◆◆
肉塊は取り敢えず外から吸い上げている魔力量を増やして一気に作業することにした。
「かなり、魔力、使いました。吸い上げ、量、増やし、ます」
「えっ」
「大丈夫、です、死には、しません」
「え?私から?」
「違います、外です」
「外?」
「まあいいや、好きにして」
◆◆◆◆◆◆◆◆
魔導国王宮では魔力欠乏症の被害者がまた一人増えていた。
「魔導国王様が倒れたぞ!!」
「な、なんだって!!」
「どうするんだよ!!魔導国王なのに弱い事がバレたらマズイぞ!!」
「こ、これは会議を開かねば!」
こうして、何度目かわからない会議の準備に勤しんでいた。
◇◇◇◇◇◇◇◇
《なあ、小娘。わざわざこんなものを作らずとも、肉塊を騙してこの部屋と入り口を繋げればよかったのではないか?》
ん、ああ、うん。思いつかなかった。
「これって戻せないの?」
「クドゥリュー様の魔力、流入していますので、おそらく、無理でしょう」
「どう言う事?」
「クドゥリュー様の魔力で虚空塔の、内部が、魔物、と化して、います、むしろ」
「むしろ?」
「クドゥリュー様、魔力、魔物、そのもの」
「あ、うん、そうなんだ」
もはや怒る気も起きない。
「それでどこまでいったの?」
「100の階層全て完了しました」
「えっ、そんなに?」
「明日と言われたからな。一晩で終えた。さあ、約束は守ってもらえるんだよな?」
奥からフラフラなネーデルが歩いてきた。
「え、ええ勿論です」
そこまでやれなんて誰が言ったよ。
休まなくてもいいのかな?
そんなに忙しくなるほどの物を頼んだつもりはないけどな。
「もしかしてあまり進んでない?」
やっぱり敵対してる種族同士だと作業がうまくいかないものなのだろう。
「着々と進んでおります。現在半分程の行程が完了しております」
「半分?」
「……っ!え、ええ、完璧な、ものを用意します」
なんか焦ってるけど大丈夫なのかな。
「ちゃんと皆それぞれキチンと作業するように」
喧嘩して作業が終わらないとか、そういうのはやめてよね。
「は、はい、急がせるよう、至急連絡します」
肉塊は泡を食ったように駆けて行った。
なかなか思い通りにならないものだ。
《一度でもお前の思う通りに事が運んだ事があるのか?》
やかましいわ!失敗は成功の母!
《二度あることは三度ある、と言うしな》
……なんで生前と同じ諺が通じるんだろう。
《翻訳されておるのだ、お前が独り言を話しておるときは我輩にも何を言っているか分からんし》
へー、じゃあ思考垂れ流しじゃないんだ
《そういうことにしておいてやろう》
なんか引っかかる言い方だなぁ。
肉塊の用意した昼食は謎の肉を焼いただけの物だった。
意識が戻ってからロクなものを口にしていない気がする。
この世界の住人は普段何を食べているんだろうか、もう少しまともな物が食べたい。
◆◆◆◆◆◆◆◆
思考がまとまらなかった。
どうなっている、なぜ土塊兵たちと肉塊兵がバラバラに組み立てをしている?
それに僕が作り直した設計図はどこに行ったんだ?
「設計図はどこに行った?」
肉塊のような魔族に尋ねる。他にあてはない。
「クドゥリュー様、命令、作業、効率化、配布」
「それで、元はどこにある?」
「不明、貴様は、言われた通り、指揮をしろ」
「設計図がなかったらどうにもならないだろうが!」
「各員が所持、どれか、回収しろ」
「お前は持ってないのか?」
「保持している」
「じゃあそれをよこせ。連絡係のお前には必要ないだろう」
「わかった」
「……え?」
受け取ったそれは、フーカが最初に書いた設計図とも呼べない代物だった。
◆◆◆◆◆◆◆◆
フーカに肉塊と呼ばれる魔族は戦慄していた。
作業現場は混沌としていたからだ。
《おい!そこ!それはそっちじゃない!》
「オ、オレ、ハコブ、コレ」
「ドラムカン、オス、オス」
洗脳された生徒や教師はイマイチ能力が足りず。
「………」
ネーデルの土塊兵はあらかじめ決められた事しか出来ないので、融通はきかない。
《こっち全然手が足りてないぞ!》
《ここって行き止まりだっけ?》
《わかんないから上に繋げとけ!》
《ここは右向きにするのか?左向きにするのか?》
《どっちでも大して変わらないだろ!》
眷属も末端まで行くと、何故かあまり優秀とまでは言えない個体が生まれてしまう。
《時間がないぞ!明日の朝までだ!》
《確実に良いものにしなければ!》
指揮をとっている眷属は張り切りすぎている。
しかも、それぞれ持っている設計図は好き勝手に変えられ、別物。
これは手が終えない、大丈夫と言った手前。
どうにかしなければならないのは間違いない。
肉塊は対策を考え始めた。
◆◆◆◆◆◆◆◆
肉塊は取り敢えず外から吸い上げている魔力量を増やして一気に作業することにした。
「かなり、魔力、使いました。吸い上げ、量、増やし、ます」
「えっ」
「大丈夫、です、死には、しません」
「え?私から?」
「違います、外です」
「外?」
「まあいいや、好きにして」
◆◆◆◆◆◆◆◆
魔導国王宮では魔力欠乏症の被害者がまた一人増えていた。
「魔導国王様が倒れたぞ!!」
「な、なんだって!!」
「どうするんだよ!!魔導国王なのに弱い事がバレたらマズイぞ!!」
「こ、これは会議を開かねば!」
こうして、何度目かわからない会議の準備に勤しんでいた。
◇◇◇◇◇◇◇◇
《なあ、小娘。わざわざこんなものを作らずとも、肉塊を騙してこの部屋と入り口を繋げればよかったのではないか?》
ん、ああ、うん。思いつかなかった。
「これって戻せないの?」
「クドゥリュー様の魔力、流入していますので、おそらく、無理でしょう」
「どう言う事?」
「クドゥリュー様の魔力で虚空塔の、内部が、魔物、と化して、います、むしろ」
「むしろ?」
「クドゥリュー様、魔力、魔物、そのもの」
「あ、うん、そうなんだ」
もはや怒る気も起きない。
「それでどこまでいったの?」
「100の階層全て完了しました」
「えっ、そんなに?」
「明日と言われたからな。一晩で終えた。さあ、約束は守ってもらえるんだよな?」
奥からフラフラなネーデルが歩いてきた。
「え、ええ勿論です」
そこまでやれなんて誰が言ったよ。
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