31 / 88
学園生活(カッコカリ)
第30話 溢れ出る本の波
しおりを挟む
モモが取り出した本を中心に、床一面の本は崩れ落ち始め、部屋の中身--山程の本と私達、後その他諸々--は下へ吸い込まれていく。
足元は星空みたいな不思議空間。
大量の本は波のようにうねりながら、真下に落ちる事なく、螺旋を描いてその奥へと流れていく。
「あ、アリシアさん!どうにかしてください!」
「えー、せっかくだから流されて行きなよー」
「えぇ!?」
「何事も経験、けいけんー」
アリシアはケラケラ笑いながら本の波の中に飲まれていく。
そんな経験しとうないわ!ヘルプミー、イヴ!
《ククッ!我輩の助けが必…うぉぉぉぉ!!》
イヴは波に飲まれて行った。
何やってんだよ、助けろよ!千の魔術はどうしたよ!
「ルルゥゥゥゥ!!」
モモを乗せたルルは本の波に逆走しているが、いくら走っても跳ねても無駄な様子。
本の流れには逆らえないようだ。
「ふっふっふ!逆らうんじゃなくて--乗るのだよー!」
いつの間にか波の上にアリシアが浮き上がってきた。いや、仁王立ちで波に乗っていた。
「な、なん……だと……!!」
不思議空間の奥へと流れていく激流、その上で余裕そうな顔のアリシア、足元には触手蠢くチェスト。
「ふ…ふしゃっ…ふしゃっ《ぐぉぉ、やめろ踏むんじゃない!重い!》」
苦しそうな悲鳴が聞こえる。
彼女にはきっと聞こえていないのだろう。
「やかんちゃん!なんかあげて!」
「ふしゃぁ!《人族にくれてやるものなぞあるものか!》」
言ってる事が矛盾している触手が、何かをこちらへ放り投げる。
勢いよく飛んできたそれを掴む。
その物体は単なる板切れ、今は藁をも掴む私。
なんだって構わないんだ。今を凌げれば!!
「うぉぉぉぉぉぉ!!」
なんとか板の上に立ち、流れに乗る。
「お、いいねぇー!乗ったねぇー!」
冗談じゃないぞ!こんなん飲まれたらただじゃ済まないでしょう!なんで笑ってんだこの人は!
《お、おい!小娘!ここだ!我輩は!》
少し離れたところでジタバタしているクソトカゲ。どうやってそこまで行けと、自分でなんとかしてよ。
《この薄情者め!恥を知れ!年長者を労われ!》
うるさいなぁ、仕方ない、助けてやりますか。
「なんか棒とか使えるものありますか!!」
「あいよー!」
触手の中を弄るアリシア。
「あれ、取れないな、よいしょー!」
ぶちぶちと触手を引っこ抜きながら探している。
「ふしゃぁぁぁ《うぐぉぉ!やめろぉぉ、やめてくれぇぇぇ》」
情けねぇな魔族の尖兵、なんか哀れだ。
他の人には声聞こえてなさそうだし。何故か逆らえないみたいだし。
「これでどーだー!」
長めの棒と一緒に、スポンッと何かが飛び出した。
「あー」
「ふしゃぁぁぁぁあ」
引っこ抜かれた触手の本体らしき物体は、空間の奥へ消えていった。
「ほれ、フーカちゃん!」
中身の事などまるで気にかけていないアリシアは棒を投げ渡す。
「おっ、とと。よし」
取り落としそうになりながら、何とか棒を受け取る。それは丁度パドルみたいな形状をしていた。
「こんのっ!曲がれっ!」
波の中に棒を突き立て、ゆっくりと板の向きを変える。板は本の波の上で、徐々にイヴの方へ向かい始めた。
「今行くから!もう少し待ってて!」
《早く来い!間に合わなくなっても知らんぞー!!》
お前はそれでも悪竜王か!!
《あの奥に向かって魔力が吸われているのだ!今の我輩では対処できん!》
それでもナビゲーターキャラなの君ぃ!まあいい!そろそろ手が届くし、そっちからも手伸ばして!
《くうっ!》
私の手がイヴに届くかというその時。
「ふしゃぁぁぁ《ぐああああぁぁぁぁ!!》」
上から何かが降ってきて、その何かがへばりついた。粘ついたような気味の悪い感触。
「うわっ!何なん」
「ふしゃぁぁ!ふしゃぁぁ!《落ちてなるものか!魔族の勝利の為にこんなところで…》」
《私の顔から離れろ!》
つい念話を使ってしまった。
「ふしゃ!?《な!人族が私たちの言葉を解するだと!》」
《そこの雑魚に構わず我輩を早く助けてくれ!》
「ふしゃ…!?《竜族……!?何故こんなところに!まさか裏切ったのか!?》」
《いいから私の顔から離れろぉ!》
「ふ、ふしゃ《やめてくれ、わたしは悪い魔族じゃない、違うんだ、これは条約でも許された範囲であって、あと捕虜の拷問は禁止されているし…》」
《やかましい!》
顔にへばりついた触手の塊を引き剥がして投げ捨てる。
「ふしゃぁぁぁ《うわぁぁぁぁぁ!!》」
再び空間の奥へと落ちていった謎生物。
「おっ、よっ、ほっ!」
声に振り向くと、器用にチェストで本の波を乗りこなし、近くまでアリシアが来ていた。彼女は片手を上に掲げると手を開く。
--その丁度真上に、今、つい先ほど私が投げた触手が落ちてきた。
「ここは上も下もないからねー!」
え、つまりどういう事なんですか?解説のイヴさん。
《下の空間からこの部屋の上に続いている……のか?……だが魔力源があの奥ではないなら……いやそんな魔術は存在しない…なるほど》
なるほど?つまり?
《魔力源はこの本の中にある!おそらく制御しているのもそれだ!》
それでどうすればいいの?
《あるのは先頭だ!我輩を抱えて、飛び降りろ!》
そんなん怖くてやってられるか!
《たとえ落ちてもまた戻って来るだけだ!》
ああもう、ええい、ままよ!
大体なんとかなるんだろう!
イヴを掴み、不思議空間へと飛び降りる。
凄まじい速さで落下していく。
頭から飛び込んだせいで景色は逆さまに見え、まるで星空へ上昇しているようだ。
《あったぞ!アレだ!》
イヴが言った方向には僅かに光を放つ本。
《掴め!》
ほんの一瞬イヴが翼を広げ、速度を緩める。
手を伸ばし、あと少しで届くかどうか。
それでも僅かに届かない。
あと少し、こっちに来てくれれば!届くのに!あと少し!
「『こっちに来い!』」
《小娘!それは……!?》
不意に、光る本が私の手の中に飛び込んできた。
「や、やった!それで!これをどうすればいいの!?」
《我輩に任せろ、《開け闇の門》》
イヴは本を受け取ると、魔術で空間に開いた隙間の中へと本を投げ込む。
《閉じよ!》
隙間が閉じ、本はどこかへ消えた。
え、それでいいの!?それ消したらこの部屋って!?
《勿論元に戻る!》
元に戻る?元の広さって元の?
《ああ!魔術が掛けられる前だ!》
視界が本で埋まった。
多分部屋が縮んだんだろう。
「ぐぇ」
誰かの小さな悲鳴。
ミシミシと音がする。
これは良くない感じがしますよ、イヴさん。
《あの量の本が入りきる筈もあるまい》
耐えきれなくなった壁が崩れ、廊下に本が溢れ出す。
《出るぞ!掴まれ!》
イヴに掴まって外へ出る。
「これは!……うおっ」
外で警備していたアリシアの護衛が本に飲まれたのが見えた。
「おおー、廊下だぁー」
箒に跨って脱出してきたアリシアは私達と並走する。護衛には目もくれない。
溢れ出した本は流れるように廊下を満たしながら進んでいく。
「ルルぅぅぅ!」
ルルの俊足に乗って、迫り来る本の波を背に廊下を駆けるモモ。
あの不思議空間から出られたのはいいけど、これも不味くないか!?
《この建物は閉じた空間ではないだろう?外に出ればそれで……》
もう少しで階段だ。上に上がって逃げよう。
《壁を吹き飛ばして外に出ればいいのではないか?》
あー、その手があったかー、思いつかなかったぞー。
《フッ!発想が貧困だな、小娘》
思いついてもやらないから!普通!
また壊したらそこまで修理しないといけ……ん?
《黒水よ穿て》
イヴが放った真っ黒な水は行く先の壁をぶち抜いた。
「やるねえー、水も使えるんだー」
何してんだクソトカゲェェェェ!!
《我輩の発想に感銘を受けていたではないかっ!?何がおかしい!?》
皮肉も分からないのか!?
《し、知っとるわ!今まで何回お前に言ったと思っておる!》
何を!いや、もう今はいい!
とりあえずしょうが無いから!外に飛んで!
《フン!"我輩頼み"のクセによく言うわ!》
イヴが力強く羽ばたいて、寮の外へ出る。
そしてさらに上空へ、アリシアも同様に空へ。
「フーカさん!?流石に壊しすぎですよ!」
止まりきれなかったのか、空中に投げ出されたモモが今更な注意を言ってきた。
「私悪くない!こいつがやったんだ!こいつが……」
「使い魔ならなんとかしてくださいよぉぉ」
そう言いながらモモとルルは落ちて行った。
寮に開いた穴から滝のように流れて行った本の波。外から見て気がついた。
私達が逃げた方とは反対の通路、その窓と言う窓から本が溢れ出ているのを。
というか寮全体から本が流れ出ている。
「アリシアさん……あれどうするんですか?」
「んー?そろそろ片付けるー?」
「それってどういう…」
「《火の王よ、我が声に応え、我の望むものを灰燼に帰せ》」
アリシアの懐から取り出した杖を寮に向けると、壁に開いた穴やら窓やらに火が灯り、流れ出る本は出る先から消炭になっていく。
「火事になるんじゃ…」
「大丈夫だよーそこまで未熟じゃない」
一瞬、アリシアの目が赤く光ったような気がした。
寮の方を見ると中の本の群れも凄まじい速度で燃え尽き、延焼する事なく、灰になり舞い上がって行く。--凄まじい量の灰が。
「灰が……」
「任せてー、《火の王よ、我は灰を捧げる》」
詠唱と共に、舞い上がった灰は溶けるように消えて行った。
「あー、面白かったー」
アリシアは至極楽しそうだ。
この世界の人間ってやはりどこかおかしいんじゃ…
《安心しろ、お前もそれほど変わらない》
足元は星空みたいな不思議空間。
大量の本は波のようにうねりながら、真下に落ちる事なく、螺旋を描いてその奥へと流れていく。
「あ、アリシアさん!どうにかしてください!」
「えー、せっかくだから流されて行きなよー」
「えぇ!?」
「何事も経験、けいけんー」
アリシアはケラケラ笑いながら本の波の中に飲まれていく。
そんな経験しとうないわ!ヘルプミー、イヴ!
《ククッ!我輩の助けが必…うぉぉぉぉ!!》
イヴは波に飲まれて行った。
何やってんだよ、助けろよ!千の魔術はどうしたよ!
「ルルゥゥゥゥ!!」
モモを乗せたルルは本の波に逆走しているが、いくら走っても跳ねても無駄な様子。
本の流れには逆らえないようだ。
「ふっふっふ!逆らうんじゃなくて--乗るのだよー!」
いつの間にか波の上にアリシアが浮き上がってきた。いや、仁王立ちで波に乗っていた。
「な、なん……だと……!!」
不思議空間の奥へと流れていく激流、その上で余裕そうな顔のアリシア、足元には触手蠢くチェスト。
「ふ…ふしゃっ…ふしゃっ《ぐぉぉ、やめろ踏むんじゃない!重い!》」
苦しそうな悲鳴が聞こえる。
彼女にはきっと聞こえていないのだろう。
「やかんちゃん!なんかあげて!」
「ふしゃぁ!《人族にくれてやるものなぞあるものか!》」
言ってる事が矛盾している触手が、何かをこちらへ放り投げる。
勢いよく飛んできたそれを掴む。
その物体は単なる板切れ、今は藁をも掴む私。
なんだって構わないんだ。今を凌げれば!!
「うぉぉぉぉぉぉ!!」
なんとか板の上に立ち、流れに乗る。
「お、いいねぇー!乗ったねぇー!」
冗談じゃないぞ!こんなん飲まれたらただじゃ済まないでしょう!なんで笑ってんだこの人は!
《お、おい!小娘!ここだ!我輩は!》
少し離れたところでジタバタしているクソトカゲ。どうやってそこまで行けと、自分でなんとかしてよ。
《この薄情者め!恥を知れ!年長者を労われ!》
うるさいなぁ、仕方ない、助けてやりますか。
「なんか棒とか使えるものありますか!!」
「あいよー!」
触手の中を弄るアリシア。
「あれ、取れないな、よいしょー!」
ぶちぶちと触手を引っこ抜きながら探している。
「ふしゃぁぁぁ《うぐぉぉ!やめろぉぉ、やめてくれぇぇぇ》」
情けねぇな魔族の尖兵、なんか哀れだ。
他の人には声聞こえてなさそうだし。何故か逆らえないみたいだし。
「これでどーだー!」
長めの棒と一緒に、スポンッと何かが飛び出した。
「あー」
「ふしゃぁぁぁぁあ」
引っこ抜かれた触手の本体らしき物体は、空間の奥へ消えていった。
「ほれ、フーカちゃん!」
中身の事などまるで気にかけていないアリシアは棒を投げ渡す。
「おっ、とと。よし」
取り落としそうになりながら、何とか棒を受け取る。それは丁度パドルみたいな形状をしていた。
「こんのっ!曲がれっ!」
波の中に棒を突き立て、ゆっくりと板の向きを変える。板は本の波の上で、徐々にイヴの方へ向かい始めた。
「今行くから!もう少し待ってて!」
《早く来い!間に合わなくなっても知らんぞー!!》
お前はそれでも悪竜王か!!
《あの奥に向かって魔力が吸われているのだ!今の我輩では対処できん!》
それでもナビゲーターキャラなの君ぃ!まあいい!そろそろ手が届くし、そっちからも手伸ばして!
《くうっ!》
私の手がイヴに届くかというその時。
「ふしゃぁぁぁ《ぐああああぁぁぁぁ!!》」
上から何かが降ってきて、その何かがへばりついた。粘ついたような気味の悪い感触。
「うわっ!何なん」
「ふしゃぁぁ!ふしゃぁぁ!《落ちてなるものか!魔族の勝利の為にこんなところで…》」
《私の顔から離れろ!》
つい念話を使ってしまった。
「ふしゃ!?《な!人族が私たちの言葉を解するだと!》」
《そこの雑魚に構わず我輩を早く助けてくれ!》
「ふしゃ…!?《竜族……!?何故こんなところに!まさか裏切ったのか!?》」
《いいから私の顔から離れろぉ!》
「ふ、ふしゃ《やめてくれ、わたしは悪い魔族じゃない、違うんだ、これは条約でも許された範囲であって、あと捕虜の拷問は禁止されているし…》」
《やかましい!》
顔にへばりついた触手の塊を引き剥がして投げ捨てる。
「ふしゃぁぁぁ《うわぁぁぁぁぁ!!》」
再び空間の奥へと落ちていった謎生物。
「おっ、よっ、ほっ!」
声に振り向くと、器用にチェストで本の波を乗りこなし、近くまでアリシアが来ていた。彼女は片手を上に掲げると手を開く。
--その丁度真上に、今、つい先ほど私が投げた触手が落ちてきた。
「ここは上も下もないからねー!」
え、つまりどういう事なんですか?解説のイヴさん。
《下の空間からこの部屋の上に続いている……のか?……だが魔力源があの奥ではないなら……いやそんな魔術は存在しない…なるほど》
なるほど?つまり?
《魔力源はこの本の中にある!おそらく制御しているのもそれだ!》
それでどうすればいいの?
《あるのは先頭だ!我輩を抱えて、飛び降りろ!》
そんなん怖くてやってられるか!
《たとえ落ちてもまた戻って来るだけだ!》
ああもう、ええい、ままよ!
大体なんとかなるんだろう!
イヴを掴み、不思議空間へと飛び降りる。
凄まじい速さで落下していく。
頭から飛び込んだせいで景色は逆さまに見え、まるで星空へ上昇しているようだ。
《あったぞ!アレだ!》
イヴが言った方向には僅かに光を放つ本。
《掴め!》
ほんの一瞬イヴが翼を広げ、速度を緩める。
手を伸ばし、あと少しで届くかどうか。
それでも僅かに届かない。
あと少し、こっちに来てくれれば!届くのに!あと少し!
「『こっちに来い!』」
《小娘!それは……!?》
不意に、光る本が私の手の中に飛び込んできた。
「や、やった!それで!これをどうすればいいの!?」
《我輩に任せろ、《開け闇の門》》
イヴは本を受け取ると、魔術で空間に開いた隙間の中へと本を投げ込む。
《閉じよ!》
隙間が閉じ、本はどこかへ消えた。
え、それでいいの!?それ消したらこの部屋って!?
《勿論元に戻る!》
元に戻る?元の広さって元の?
《ああ!魔術が掛けられる前だ!》
視界が本で埋まった。
多分部屋が縮んだんだろう。
「ぐぇ」
誰かの小さな悲鳴。
ミシミシと音がする。
これは良くない感じがしますよ、イヴさん。
《あの量の本が入りきる筈もあるまい》
耐えきれなくなった壁が崩れ、廊下に本が溢れ出す。
《出るぞ!掴まれ!》
イヴに掴まって外へ出る。
「これは!……うおっ」
外で警備していたアリシアの護衛が本に飲まれたのが見えた。
「おおー、廊下だぁー」
箒に跨って脱出してきたアリシアは私達と並走する。護衛には目もくれない。
溢れ出した本は流れるように廊下を満たしながら進んでいく。
「ルルぅぅぅ!」
ルルの俊足に乗って、迫り来る本の波を背に廊下を駆けるモモ。
あの不思議空間から出られたのはいいけど、これも不味くないか!?
《この建物は閉じた空間ではないだろう?外に出ればそれで……》
もう少しで階段だ。上に上がって逃げよう。
《壁を吹き飛ばして外に出ればいいのではないか?》
あー、その手があったかー、思いつかなかったぞー。
《フッ!発想が貧困だな、小娘》
思いついてもやらないから!普通!
また壊したらそこまで修理しないといけ……ん?
《黒水よ穿て》
イヴが放った真っ黒な水は行く先の壁をぶち抜いた。
「やるねえー、水も使えるんだー」
何してんだクソトカゲェェェェ!!
《我輩の発想に感銘を受けていたではないかっ!?何がおかしい!?》
皮肉も分からないのか!?
《し、知っとるわ!今まで何回お前に言ったと思っておる!》
何を!いや、もう今はいい!
とりあえずしょうが無いから!外に飛んで!
《フン!"我輩頼み"のクセによく言うわ!》
イヴが力強く羽ばたいて、寮の外へ出る。
そしてさらに上空へ、アリシアも同様に空へ。
「フーカさん!?流石に壊しすぎですよ!」
止まりきれなかったのか、空中に投げ出されたモモが今更な注意を言ってきた。
「私悪くない!こいつがやったんだ!こいつが……」
「使い魔ならなんとかしてくださいよぉぉ」
そう言いながらモモとルルは落ちて行った。
寮に開いた穴から滝のように流れて行った本の波。外から見て気がついた。
私達が逃げた方とは反対の通路、その窓と言う窓から本が溢れ出ているのを。
というか寮全体から本が流れ出ている。
「アリシアさん……あれどうするんですか?」
「んー?そろそろ片付けるー?」
「それってどういう…」
「《火の王よ、我が声に応え、我の望むものを灰燼に帰せ》」
アリシアの懐から取り出した杖を寮に向けると、壁に開いた穴やら窓やらに火が灯り、流れ出る本は出る先から消炭になっていく。
「火事になるんじゃ…」
「大丈夫だよーそこまで未熟じゃない」
一瞬、アリシアの目が赤く光ったような気がした。
寮の方を見ると中の本の群れも凄まじい速度で燃え尽き、延焼する事なく、灰になり舞い上がって行く。--凄まじい量の灰が。
「灰が……」
「任せてー、《火の王よ、我は灰を捧げる》」
詠唱と共に、舞い上がった灰は溶けるように消えて行った。
「あー、面白かったー」
アリシアは至極楽しそうだ。
この世界の人間ってやはりどこかおかしいんじゃ…
《安心しろ、お前もそれほど変わらない》
0
お気に入りに追加
291
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
転生した社畜は異世界でも無休で最強へ至る(旧題|剣は光より速い-社畜異世界転生)
丁鹿イノ
ファンタジー
【ファンタジア文庫にて1巻発売中!】
深夜の職場で人生を終えた青桐 恒(25)は、気づいたらファンタジーな異世界に転生していた。
前世の社畜人生のお陰で圧倒的な精神力を持ち、生後から持ち前の社畜精神で頑張りすぎて魔力と気力を異常に成長させてしまう。
そのうち元Sクラス冒険者である両親も自重しなくなり、魔術と剣術もとんでもないことに……
異世界に転生しても働くのをやめられない!
剣と魔術が存在するファンタジーな異世界で持ち前の社畜精神で努力を積み重ね成り上がっていく、成長物語。
■カクヨムでも連載中です■
本作品をお読みいただき、また多く感想をいただき、誠にありがとうございます。
中々お返しできておりませんが、お寄せいただいたコメントは全て拝見し、執筆の糧にしています。
いつもありがとうございます。
◆
書籍化に伴いタイトルが変更となりました。
剣は光より速い - 社畜異世界転生 ~社畜は異世界でも無休で最強へ至る~
↓
転生した社畜は異世界でも無休で最強へ至る
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
11 Girl's Trials~幼馴染の美少女と共に目指すハーレム!~
武無由乃
ファンタジー
スケベで馬鹿な高校生の少年―――人呼んで”土下座司郎”が、神社で出会った女神様。
その女神様に”11人の美少女たちの絶望”に関わることのできる能力を与えられ、幼馴染の美少女と共にそれを救うべく奔走する。
美少女を救えばその娘はハーレム入り! ―――しかし、失敗すれば―――問答無用で”死亡”?!
命がけの”11の試練”が襲い来る! 果たして少年は生き延びられるのか?!
土下座してる場合じゃないぞ司郎!
悪役令嬢エリザベート物語
kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ
公爵令嬢である。
前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。
ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。
父はアフレイド・ノイズ公爵。
ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。
魔法騎士団の総団長でもある。
母はマーガレット。
隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。
兄の名前はリアム。
前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。
そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。
王太子と婚約なんてするものか。
国外追放になどなるものか。
乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。
私は人生をあきらめない。
エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。
⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです
異世界母さん〜母は最強(つよし)!肝っ玉母さんの異世界で世直し無双する〜
トンコツマンビックボディ
ファンタジー
馬場香澄49歳 専業主婦
ある日、香澄は買い物をしようと町まで出向いたんだが
突然現れた暴走トラック(高齢者ドライバー)から子供を助けようとして
子供の身代わりに車にはねられてしまう
転生したら遊び人だったが遊ばず修行をしていたら何故か最強の遊び人になっていた
ぐうのすけ
ファンタジー
カクヨムで先行投稿中。
遊戯遊太(25)は会社帰りにふらっとゲームセンターに入った。昔遊んだユーフォーキャッチャーを見つめながらつぶやく。
「遊んで暮らしたい」その瞬間に頭に声が響き時間が止まる。
「異世界転生に興味はありますか?」
こうして遊太は異世界転生を選択する。
異世界に転生すると最弱と言われるジョブ、遊び人に転生していた。
「最弱なんだから努力は必要だよな!」
こうして雄太は修行を開始するのだが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる