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第2部

24 回想

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「おそらく、どちらも活かす為に、肉塊の私には回復魔術の権能を、そして、すでに抜け殻だった祖母には私の記憶、或いは魂が分配されたのでしょう」

 だから私に回復魔術が使えなくなってしまったと言いたいのだろうか。

「ですが、それが終わった後、様子を見に来た修道士が見たものは、すっかり白髪になってしまった"クララ"と、蠢いている"肉塊"。果たしてどちらを私と思うでしょうね。まあ、言うまでもありません。貴女は気を失っていましたが、私はその様子をずっと見ていましたから」

 目に指を当てて、見開くようなジェスチャーをするアリア。

「貴女は大事そうに抱えられて、部屋からいなくなり、私は悪魔として黒い森に打ち捨てられました」


◆◆◆◆◆◆◆◆


「そこからは、まあ、いろいろあって何とか人間の体を手に入れたので、貴女に会いに行こうと思いました。その時はまだ、私にとっては若返った祖母のはずでしたから」

「ですが、そうではなかった!貴女は聖女となってはいましたが、祖母ではなかった!私は一度貴女に会おうとしましたが、修道士に止められて、まともに見る事も叶わず、私は外へ投げ捨てられました」

 苦々しい目で私を睨む、私から奪った紫の瞳で。

「それでも、何とか貴女に会おうとして、私は修道院に忍び込み、貴女を発見します。剣の鍛錬をしていたようでした」

「──その時、教会が徹底的に隠したのも納得しました。なんせ、体力のなかった私とは大違い、凄まじい形相で剣なんて振っているんですもの。そして、魔力の殆どは貴女の方に行った事も」

「言動は、私とも、お祖母様とも思えない。おまけにレオン様と仲睦まじくしている姿なんて見たら、耐えられませんでした。私にとっては、アルラウネが言っていた、"あらかじめ決まったものは変えられない"という事を捻じ曲げた罰だと思いましたが……それでも許せませんでした」

「私からすれば、家族を奪い、地位を奪い、伴侶を奪い、能力まで奪って、私を不具のようにした悪魔にしか見えませんでした──だから決めたのです、全く同じ事を仕返して、全てを取り戻そうと……そう難しい事じゃあ、ありませんでした、私には聖女の力がありましたから」

 手の中に魔力を渦巻かせるアリア。

「私は静かに準備しました、枢機卿達の弱みを握り、力を見せつけ、金を引き出して、欲に目のくらんだ貴族どもを懐柔し、ひたすら根を回しを続け、ついに皇帝を籠絡し、貴女の味方を全員、私の物にしました。貴女が温室でぬくぬくとしている間、私は戦い続けていたのです」

「私の作戦は功を奏し、貴女を追放することが出来ました。……まあ、まさか、貴女が自分の事を本当に"クララ"だと思っているとは思いませんでしたがね」
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