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第2部
15 仮説-4
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「……なんとなくだ。主人は否定したいはずなのに、何故か生存を肯定する理由も探している。前者はその所業を、後者は死を、いずれも否定したいように思えるのだ」
獣は勘だけで言っているのは間違いない、なのに、それなのに。
「……」
なぜか私には、それを否定できなかった。
「祖母が亡くなった時の事は覚えているか?」
6年前、当時の私は祖母の死体を見たショックで暫く気を失い、目覚めた時には葬式すら終わった後だった。
お別れも言えなかった。
実感はなかった。
祖母が亡くなった事。
回復魔術が使えなくなった事。
髪の毛が真っ白になってしまった事。
何もかもが訳が分からなくて、与えられた役目を果たさないままに、果たしていた。
「……いいえ……」
「墓には?」
「……私は自由に動く事を禁じられていましたから」
「……そうか。それで聞くが、祖母だったなら許すのか?」
根本的な質問だった。獣や毛玉、アトラが本当に聞きたかったのは、この質問だったのかもしれない。
「──それは」
私にとって半ば、母親の代わりだった存在。
それが敵だとして──。
「先ずは直接確かめます。……ですが、例え祖母であろうと私にした仕打ちは、許し難い」
例え、祖母の命をもう一度失わせる事になったとしても。
──絶対に許す訳には行かない。
◆◆◆◆◆◆◆◆
「アレは……」
「……同じ獣……とは思えないな」
食事を終え、泥濘を暫く進むと、夥しい数の異形が荒れ狂うように暴れているのが見えた。
その中心で一際大きな影が、唸るような声を発していた。
「足りない、足りない、足りない、足りない!!」
仄かな光を帯びた灰色の泥を纏う、赤い竜は、泥の中から生まれていく異形達を食い散らかしている。
牙や顎には飛び散った肉片がこべり付き、青白く光る目は、どこを見ているのかわからず、左眼には剣が刺さっていた。
「……余は言葉の通じない相手は苦手であるので、鉄火場は任せるぞー」
アトラは糸を伸ばして天井に逃れようとする。
「まだ、はなしてもいない。まて」
巨大化した毛玉がアトラを捕まえる。
その物音に気がついたのか、竜の首がこちらを向く。
「──そこの者ども、何の用だ?なぜ私の元へ現れた?この永劫に続く食事に料理として並びに来たのか?」
女性のような声だった。姿形からは思いもよらない美しい声だった。
「私はクララと申します、こちらは獣、同盟者のアトラ、支援者のツァト様です。この牢獄から出る為に下へ向かっています」
歩み寄って名乗る。
「下?ここよりも下があるとでも?私の知る限りここより、下なんてものはない。そして──出口なんてものもな!」
竜は牙を剥き、咆哮した。
獣は勘だけで言っているのは間違いない、なのに、それなのに。
「……」
なぜか私には、それを否定できなかった。
「祖母が亡くなった時の事は覚えているか?」
6年前、当時の私は祖母の死体を見たショックで暫く気を失い、目覚めた時には葬式すら終わった後だった。
お別れも言えなかった。
実感はなかった。
祖母が亡くなった事。
回復魔術が使えなくなった事。
髪の毛が真っ白になってしまった事。
何もかもが訳が分からなくて、与えられた役目を果たさないままに、果たしていた。
「……いいえ……」
「墓には?」
「……私は自由に動く事を禁じられていましたから」
「……そうか。それで聞くが、祖母だったなら許すのか?」
根本的な質問だった。獣や毛玉、アトラが本当に聞きたかったのは、この質問だったのかもしれない。
「──それは」
私にとって半ば、母親の代わりだった存在。
それが敵だとして──。
「先ずは直接確かめます。……ですが、例え祖母であろうと私にした仕打ちは、許し難い」
例え、祖母の命をもう一度失わせる事になったとしても。
──絶対に許す訳には行かない。
◆◆◆◆◆◆◆◆
「アレは……」
「……同じ獣……とは思えないな」
食事を終え、泥濘を暫く進むと、夥しい数の異形が荒れ狂うように暴れているのが見えた。
その中心で一際大きな影が、唸るような声を発していた。
「足りない、足りない、足りない、足りない!!」
仄かな光を帯びた灰色の泥を纏う、赤い竜は、泥の中から生まれていく異形達を食い散らかしている。
牙や顎には飛び散った肉片がこべり付き、青白く光る目は、どこを見ているのかわからず、左眼には剣が刺さっていた。
「……余は言葉の通じない相手は苦手であるので、鉄火場は任せるぞー」
アトラは糸を伸ばして天井に逃れようとする。
「まだ、はなしてもいない。まて」
巨大化した毛玉がアトラを捕まえる。
その物音に気がついたのか、竜の首がこちらを向く。
「──そこの者ども、何の用だ?なぜ私の元へ現れた?この永劫に続く食事に料理として並びに来たのか?」
女性のような声だった。姿形からは思いもよらない美しい声だった。
「私はクララと申します、こちらは獣、同盟者のアトラ、支援者のツァト様です。この牢獄から出る為に下へ向かっています」
歩み寄って名乗る。
「下?ここよりも下があるとでも?私の知る限りここより、下なんてものはない。そして──出口なんてものもな!」
竜は牙を剥き、咆哮した。
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