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音楽室のベートーベン
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それじゃあ、七不思ぎの二つめ。音楽室にかざってあるベートーベンの絵のお話。よくあるお話だと、絵の中のベートーベンが泣いたり、さけび出したり、血をながしたり、絵からぬけ出してピアノをひいたりするよね。でもね、この学校のベートーベンは少しちがうの。知りたいよね。
ある日、すいそう楽部の部活が終わったあと、一人、女の子が音楽室にのこってれん習を続けていました。
「はぁ、中々上手くならないな…」
女の子はフルートという楽器を使っていましたが、入部して半年たっても中々上手にならなくて、少し落ちこんでいました。
「もう一回、頑張ろ」
がんばりやな女の子は何時間ものこってれん習しています。気付けば時間は午後8時をすぎていました。とっくに下校時こくはすぎていたので、女の子は急いで帰るじゅんびをして音楽室を出ようとしたその時です。
「もう終了かい、まだまだ頑張れるのではないのかい。」
どこからか男の人の声がしました。音楽室を見わたしても人がいる感じがしなかったので女の子はこわくなりました。
「なに、怖がることはない、むしろ私は君たちにとって知らない筈がない存在だよ?」
「誰、誰なの?」
女の子は声の主に問いかけます。
「まあ、私が誰かはどうでもよろしい。それよりも、君はもう帰ってしまうのかい」
「だって、もう下校時刻過ぎてるし…」
「時間は問題ではない。それよりも努力を続けるかどうかが今の君に問われるべきことだ。私が見たところ、君はまだまだ上達の余地があるはずなんだがね。ここで帰ってしまうとそれを潰してしまうことになる。そう思わないか?」
「でも、明日も練習できるし…」
「いいや、明日じゃ遅い。今中途半端なままで終われば、明日にはまたリセットされてしまうからな。同じことの繰り返しで全く意味がない。今までもそうだったではないか。」
全く知らないどころか、すがたの見えない人から図星をつかれた女の子は戸まどいました。
「よし、わかった。時間が気になるのであれば、私が時間を巻き戻してあげよう。午後6時まで。そして、そのまま時間を止めてあげよう。これで時間なぞ気にせず練習出来るだろう。どうだね?」
「えっ?そんなことできるの?」
「私は少々特殊な存在でね。時間を操作するくらい容易いことさ。」
すると、さっきまでしずんでいたはずの夕日が空に浮かんできました。女の子はびっくりして、あわてて時計を確認します。午後6時、部活が終わってみんなが帰っていった時間です。
「さぁ、思う存分練習に励みなさい。」
初めは、夢を見ているような気分だった女の子だったけど、午後6時を指したまま止まった時計を見て、本当のことだと分かった女の子は、そのあと自分がまんぞくするまでれん習を続けました。
「よしっ、上手く吹けるようになった」
数時間ご、女の子はおどろくほど上手になっていました。
「上手くなったじゃないか、やはり私が見込んだ通りだ」
また、声だけが音楽室にひびきわたります。
「あの、ありがとうございます!お陰で私、嘘みたいに上達して…」
「何、礼など必要ない、全て君の努力の賜物だ。君には、元からそれだけの実力が備わっていたのだ。」
ほめられて女の子はうれしくなります。
「さ、もう帰りなさい、時間が動き出した。また、下校時刻を過ぎてしまうよ。」
「あの、あなたは一体…」
女の子のその言葉をさいごに、音楽室はしずかになってしまいました。少しさびしい気持ちになった女の子は、帰ろうと音楽室の戸に手をかけた時、ふと振り返りました。すると、女の子はある小さな変化に気づきました。いつもこわい顔をしているベートーベンの絵が少しだけ笑っていたのです。おしまい
どうだったかな?またまた、全ぜんこわくなかったよね。でも元々ベートーベンってえらい人だから、生とをこわがらせるような意地悪なことはしないと思うな。顔はこわいけど。七不思ぎの二つめはちょっぴり温かい気持ちになるお話でした。
終
ある日、すいそう楽部の部活が終わったあと、一人、女の子が音楽室にのこってれん習を続けていました。
「はぁ、中々上手くならないな…」
女の子はフルートという楽器を使っていましたが、入部して半年たっても中々上手にならなくて、少し落ちこんでいました。
「もう一回、頑張ろ」
がんばりやな女の子は何時間ものこってれん習しています。気付けば時間は午後8時をすぎていました。とっくに下校時こくはすぎていたので、女の子は急いで帰るじゅんびをして音楽室を出ようとしたその時です。
「もう終了かい、まだまだ頑張れるのではないのかい。」
どこからか男の人の声がしました。音楽室を見わたしても人がいる感じがしなかったので女の子はこわくなりました。
「なに、怖がることはない、むしろ私は君たちにとって知らない筈がない存在だよ?」
「誰、誰なの?」
女の子は声の主に問いかけます。
「まあ、私が誰かはどうでもよろしい。それよりも、君はもう帰ってしまうのかい」
「だって、もう下校時刻過ぎてるし…」
「時間は問題ではない。それよりも努力を続けるかどうかが今の君に問われるべきことだ。私が見たところ、君はまだまだ上達の余地があるはずなんだがね。ここで帰ってしまうとそれを潰してしまうことになる。そう思わないか?」
「でも、明日も練習できるし…」
「いいや、明日じゃ遅い。今中途半端なままで終われば、明日にはまたリセットされてしまうからな。同じことの繰り返しで全く意味がない。今までもそうだったではないか。」
全く知らないどころか、すがたの見えない人から図星をつかれた女の子は戸まどいました。
「よし、わかった。時間が気になるのであれば、私が時間を巻き戻してあげよう。午後6時まで。そして、そのまま時間を止めてあげよう。これで時間なぞ気にせず練習出来るだろう。どうだね?」
「えっ?そんなことできるの?」
「私は少々特殊な存在でね。時間を操作するくらい容易いことさ。」
すると、さっきまでしずんでいたはずの夕日が空に浮かんできました。女の子はびっくりして、あわてて時計を確認します。午後6時、部活が終わってみんなが帰っていった時間です。
「さぁ、思う存分練習に励みなさい。」
初めは、夢を見ているような気分だった女の子だったけど、午後6時を指したまま止まった時計を見て、本当のことだと分かった女の子は、そのあと自分がまんぞくするまでれん習を続けました。
「よしっ、上手く吹けるようになった」
数時間ご、女の子はおどろくほど上手になっていました。
「上手くなったじゃないか、やはり私が見込んだ通りだ」
また、声だけが音楽室にひびきわたります。
「あの、ありがとうございます!お陰で私、嘘みたいに上達して…」
「何、礼など必要ない、全て君の努力の賜物だ。君には、元からそれだけの実力が備わっていたのだ。」
ほめられて女の子はうれしくなります。
「さ、もう帰りなさい、時間が動き出した。また、下校時刻を過ぎてしまうよ。」
「あの、あなたは一体…」
女の子のその言葉をさいごに、音楽室はしずかになってしまいました。少しさびしい気持ちになった女の子は、帰ろうと音楽室の戸に手をかけた時、ふと振り返りました。すると、女の子はある小さな変化に気づきました。いつもこわい顔をしているベートーベンの絵が少しだけ笑っていたのです。おしまい
どうだったかな?またまた、全ぜんこわくなかったよね。でも元々ベートーベンってえらい人だから、生とをこわがらせるような意地悪なことはしないと思うな。顔はこわいけど。七不思ぎの二つめはちょっぴり温かい気持ちになるお話でした。
終
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