ナメクジ

文字の大きさ
上 下
3 / 3

欲と欲が繋ぎ合えば愛となる

しおりを挟む
「………」
声が出なかった。先程の発言を撤回するのに最良の言葉が見つからない。というより、元からそんなものは存在しない。私はお姉様に、どれだけ徳を積んだとしても許容されることのない思いを抱いていること。この事実が発言の根底にある限り、私が発言を撤回するということは、私が私を否定することになってしまう。でも、撤回しないと未来永劫お姉様に嫌われたまま灰色の人生を送ってしまう。虚空の中に手を突っ込み必死に言葉を掴み取ろうとするも、当然、何も得られず結局無言を貫いてしまう。

「雪。」
私が俯いたまま沈黙していると、お姉様は私の名前を呼ぶと同時に、春の曙光のような温情を纏った腕で私を抱き締めた。
「お、お姉様。これは…」
私の顔に血の気が戻っていく。
「大丈夫、大丈夫。私は雪を受け止めることが出来るから。」
お姉様は、私の頭を優しく撫でながら救済を説く女神の様に慈愛に満ちた口調で言う。
「嘘です。だって、血の繋がった姉妹に邪な気持ちを抱くことは世の理に背いているから。」
そんなお姉様に、私は自棄気味に反論してしまう。
「確かに、姉妹に情欲を催すのは一般の価値観では受け入れ難いことかもしれない。でも、それが基準って訳じゃない。過去、現在、未来、時間の変遷を辿るだけでも観測不可能な程、価値観というものは形状を変化させているし、普遍の価値観なんて存在しない。一般なんてただの平均に過ぎないの。だから、雪が異常だなんて非難する人間はいない。いたとしても、平均を自らの基準に変換するしか能のない自我が迷子の低俗な木偶人形。気にする必要はない。」
溜まった涙が一粒の滴となり、煌きの尾を伸ばしながら頬を伝う。
「お姉様、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…」
お姉様の腕の中で先程の非礼、そして今まで卑屈な思考を一つの感情に着していた愚を何度も、何度も詫びる。

「雪、愛してるよ。」
突然、耳元に口を近づけて、お姉様は静かに囁いた。
「うぇっ!?お、お姉様、それは…」
「勿論、姉妹としてじゃなく、一人の女の子としてね。」
お姉様の甘い吐息が、敏感になった耳を愛撫する。微小な刺激が私を情欲の花園へと誘う。
「んぅっ!お姉様っ!ぁんっ!」
「子どもの頃から好きだった。だから雪も私に好意を寄せているってわかって嬉しかった。私も雪の手で身体の色んな部分に触れて欲しいし、雪の身体に触れたい。」
これは、お姉様への愛を拗らせすぎた故に聞こえる幻聴だろうか。脳が、激しく昇温する熱によって蕩けていく。今にも意識が断線しそうだ。
「だから雪…雪?」
「あ、あへぇ…」
あぁ、目の前の景色が霞んでいく…。蓋が緩くなってしまった蜜壺から官能の蜜液が甘美な芳香を拡散させ、悦びを感じながら溢れ出ていく。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

バックパックガールズ ~孤独なオタク少女は学園一の美少女たちの心を癒し、登山部で甘々な百合ハーレムの姫となる~

宮城こはく
恋愛
 空木ましろはオタク趣味をひたすら隠して生きる、孤独なインドア女子高生だった。  友達が欲しいけど、友達の作り方が分からない。  スポーツ万能で頭が良くて、友達が多い……そんな憧れの美少女・梓川ほたか先輩のようになりたいけど、自分なんかになれるはずがない。  そんなましろは、ひょんなことから女子登山部を訪問することになるのだが、なんと登山部の部長は憧れのほたか先輩だった!  部員減少で消滅の危機に瀕しているため、ほたか先輩からは熱烈な歓迎を受ける。  それはもう過剰なまでに!  そして登山部は、なぜか美少女ぞろい!  スーパーアスリートで聖母のようにやさしいお姉さん・ほたか先輩。  恥ずかしがり屋の目隠しボクっ娘・千景さん。  そしてワイルドで怖いのに照れ屋な金髪少女・剱さんの甘々な色香に惑わされていく。 「私には百合の趣味はないはず! 落ち着けましろ!」  ……そんな風に誘惑にあらがいつつも、特殊スキル『オタク絵師』によって少女たちを魅了し、持ち前の『観察眼』によって絆を深めていく。  少女たちは次々にましろを溺愛するようになり、ましろはいつの間にか百合ハーレムの姫になっていくのだった。  イチャイチャで甘々な百合ハーレムの真ん中で、ましろのゆる~い青春の物語が幕を開けるのですっ! ※「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアップ+」でも公開中です。

女の子がいろいろされる話

ききょきょん
恋愛
女の子がいじめらたり、いじられたり色々される話です。 私の気分であげるので、性癖とか方向性はぐちゃぐちゃです、よろしくお願いします。 思いついたら載せてくゆるいやつです。。

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

どうして隣の家で僕の妻が喘いでいるんですか?

ヘロディア
恋愛
壁が薄いマンションに住んでいる主人公と妻。彼らは新婚で、ヤりたいこともできない状態にあった。 しかし、隣の家から喘ぎ声が聞こえてきて、自分たちが我慢せずともよいのではと思い始め、実行に移そうとする。 しかし、何故か隣の家からは妻の喘ぎ声が聞こえてきて…

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

【完結】【R18百合】女子寮ルームメイトに夜な夜なおっぱいを吸われています。

千鶴田ルト
恋愛
本編完結済み。細々と特別編を書いていくかもしれません。 風月学園女子寮。 私――舞鶴ミサが夜中に目を覚ますと、ルームメイトの藤咲ひなたが私の胸を…! R-18ですが、いわゆる本番行為はなく、ひたすらおっぱいばかり攻めるガールズラブ小説です。 おすすめする人 ・百合/GL/ガールズラブが好きな人 ・ひたすらおっぱいを攻める描写が好きな人 ・起きないように寝込みを襲うドキドキが好きな人 ※タイトル画像はAI生成ですが、キャラクターデザインのイメージは合っています。 ※私の小説に関しては誤字等あったら指摘してもらえると嬉しいです。(他の方の場合はわからないですが)

人妻の日常

Rollman
恋愛
人妻の日常は危険がいっぱい

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

処理中です...