紅いあなたに恋をした

まちは

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温かい家

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「昨日街中で和宮さんのことを見かけたのですが、その時にあなたの後ろに見えたんですよ。真っ赤な服を着た女性があなたと同じユニフォームを着た男の子にハサミを刺していた場面が。」

真っ赤な服の女の人。
そう言われて浮かぶのはあの人だ。
そしてあの人に刺されている男子、きっとそれは杉橋だ。

「丁度、杉橋さんが午後5時に家に帰ると言っていたのに10時になっても帰ってこないというご家族からの通報と捜索の参考にと写真をこちらに出してくださったのですよ。その時に何故かそのお話のことがとても気になり、写真をよく見ていたのでその男の人が杉橋さんだとピンときたのです。」

何というか、都合のいい話だなと思った。
俺の後ろに何かが見えるとか、気になって杉橋の写真をよく見ていたなんていう辺りが。

今更な話だが、自分にか見えていない血痕だけで事件が起こっているなんて言って捜査ができるものなのだろうか。
本当にこの2人は警察なのか?
今の時代偽装なんて簡単にできるし、俺はその偽装を見破れる知識なんて持っていない。
実は俺は今、騙されているのでは?

「疑う気持ちは分かりますが、1度俺達を信じてくれませんか?もしかしたらまだ杉橋くんを助けてあげられるかもしれないんです!」

今まで喋っていなかった木嶋さんが口を開いた。

「…何を話せばいいんですか。」

俺も今まで杉橋の事を誰にも話していない罪悪感はある。
あの状態でも助かるかも知れないなら手伝いたい。

「ご協力感謝します。」

そう言って2人は頭を下げた。

「まず、あなたとあの女性…いや"口裂け女"にどんな接点があるのか教えていただけますか?」

口裂け女…敦も言っていたけれどやはりあの人は口裂け女なのか。
俺は初めてあの人を見かけ杉橋が引き裂かれたときのことや夢の中で監督とあの人のやり取りをすべて言った。
なるべく客観的に。

「そうですか。お話してくれてありがとうございます。」

出雲さんが流れるような仕草で時計を見て、

「少し気になる事を調べてから質問をしたいですし、これ以上お話をしてしまうと遅くなってしまうので今日はこの辺にさせてください。」
「あ、はい。」

まだこの2人と話さないとならないのか。
あまり嬉しくはない。
けれど確かに辺りは薄暗くなっている。
両親も杉橋の事件で少し神経質になっているようだしこれ以上遅くなることは避けたい。

「もしも何かありましたら警察署の方にお電話ください。私達どちらかの名前を出せばすぐ電話を通してもらえると思うので。」
「分かりました。」
「バタバタとしてすみませんでした。」

1つ綺麗なお辞儀をすると出雲さんは去っていった。

「先輩のこと気味悪がらないであげてください。ああ見えて先輩も色々気にしているところがあるので。」

眉毛を下げ、木嶋さんは言った。
何というかを木嶋さんは少し子供っぽく見える。

「…はい。」
「ありがとうございます!!」

ぱぁっという明るい笑顔をしたあと何度も頭を下げつつ木嶋さんは帰っていった。
柔らかそうな髪やあの笑顔は昔友達の家で見たゴールデンレトリバーのようだ。

2人の姿が見えなくなったところで俺も家に帰ろうと歩き出した。




「ただいま。」
「おかえりなさい。帰ってくるの早かったのね。」
「今日部活がなくて。」

服を着替えながら答える。

「あら?どうして??」
「監督が休みだったから。」
「心配ね。」
「うん。」

一度リビングを出て洗面所に行き洗濯機に服を投げ入れる。
手洗いうがいをして小腹を満たすためリビングに戻る。
そこにはニコニコしている母がいた。

「楽しそうだけどなんかあった?」
「久しぶりに翔とゆっくり話せたなーって思って。」
「…」
「最近翔が忙しくしててあんまり話せてなかったから寂しかったのよ。」

ご飯早めに作っちゃうからね、という言葉を置いて母はキッチンへ向かった。
母が俺との会話が無かったことにどこか気恥ずかしさを感じつつ、申し訳ないなと思った。
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