紅いあなたに恋をした

まちは

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疑いの目

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けたたましい目覚ましの音で起きる。
しかしまだ脳裏には昨日夢で見たあの人が残っていた。
普段は起きると夢の内容は全て忘れてしまうタイプなんだが。

「翔ー、まだ寝てるのー??」

下から母の声がする。

「起きてる。」
「ご飯できてるから冷めないうちに降りてきなさーい。」
「分かった。」

母の声でどこか非現実的なものに引きずられそうだった意識が戻ってきた。


「いってきます。」
「いってらっしゃい。」

いつもなら母ももう仕事に出かけている時間だが家にいて家事をしている。
どうやら今日は休みのようだ。
最近部活の忙しさを理由に家族とまともな会話をしていない。
駄目だな、と少し反省する。





「おはよう、翔。」
「おはよう。」

他のやつと喋っていた敦は、俺に気づくと声をけてきた。

「なぁ、今日の部活休みだってよ。」
「??今日は部活の日じゃなかったか?」

野球部の休みは大体月に1、2回。
休みは先週あったから今月はもうないはず。

「なんか監督が胃腸炎になって学校これないかららしいぞ。」
「胃腸炎??」
「今まで体調なんて壊したことないのにな。あの人無駄に健康的だっだのに。」
「そうだな。」

昨日あの人は監督の腹を掻っ捌いていたけどそれが原因なのか?
俺が気にし過ぎなのかもしれないがどうなんだろう。

「まぁ、杉橋もまだ見つかってなくて部活内も少し浮足立ってたからちょうどいいとは思うけどな。」
「まだ杉橋はいないのか?。」
「うん、なんか連絡も全く取れないらしい。」

杉橋のあの出血量では絶対に死んでいると思う。
でも監督もあの人に会ってハサミで捌かれて杉橋ももしかしたら生きているかもしれない。
決して監督に死んでほしかったわけではないが不思議に感じる。

夢だったからなのだろうか…。

敦の話を斜め聞きしながら色々なことを考えていた。
敦はそんな俺の態度に気付きつつも昨日のことを気にしているのか、特に突っ込んでくることはなかった。

「はいはいみんな静かに。」

昨日と同じようで少し違う今日が始まる。


今日の休み時間の話も杉橋のことでいっぱいだ。
むしろ昨日よりも多いかもしれない。

「まじで杉橋、事件に巻き込まれたりしてんじゃないの??」
「最近物騒だし絶対あるよ!!」

「2日も学校休めてあいつずるいよな。」
「それな笑笑」

昨日はみんな面白半分で言っていたが、2日もいないとなると本気で心配する人も出てきた。
だが依然面白おかしく話すやつも多い。
俺はそんな同級生の態度がなんだか怖く感じた。




今日も1日が終わり下校の時間になった。
最近の変なこともあり誰か一緒に帰る人を探したが、みんな遊びの予定で埋まっているらしく1人で帰ることになった。

今日の空は雲が多く赤い空は見えそうにない。
そのことに安心しつつ帰っていた。

「すみません、そこの学生の方。少しお話を聞かせていただいてもよろしいですか。」

その声に反応して後ろを振り向くと若そうな2人の男性が立っていた。
片方の人はスーツをぴしっと着こなしていて柔らかい笑顔を浮かべている。
体の線も細く最近の女子にモテそうな雰囲気だ。
もう片方の人は肩幅も広く全体的にガッチリとしている。
きっとラグビーか何かを現在もやっているか辞めてまだ間もないくらいだと思う。
快活な雰囲気がありかっちりとしたスーツがどこか窮屈そうだ。
見知った顔ではないが俺に何か用があるのだろうか。

「なんですか?」

とりあえず足を止め聞いてみた。

「私達警察のものなんですか。」

そう言って見せられたのは2人分の警察手帳。
警察手帳を見せられるなんてドラマみたいなこと本当にあるのかと驚いた。

「杉橋さんと同じ部活の和宮さんですよね。杉橋さんのことについてお話があるのですが、お時間頂いてもよろしいですか?」

訂正だ。あの人の笑みは柔らかいのではなく、人に感情を読み取らせないためのものだ。
俺の名前と顔が分かっているあたり"俺に対して"聞きたいことがあるんだろう。

「いいですよ。」
「ありがとうございます。では、立ち話もなんですし近くのお店にでも入りましょうか??」
「いえ、ここで大丈夫です。」
「わかりました。では、お話を始めましょう。」

警察の人はにこやかに言い放った。
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