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ロールプレイ
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「あ、ぁ……」
思いがけない粗相に頭が熱くなる。こんな、服を着たまま射精してしまうなんて。いけないことを。ぎしりと軋む音がした。涙で歪んだ男がベッドの縁に座りこみ、薄ら笑いでこちらを眺めている。意地の悪い声。
「どうかしたのか」
「え……?」
予期せぬ質問に僕は口ごもった。男の長い指が僕の顎をとらえ、俯いた顔を無理に引き上げる。
「何でそんな発情した顔してんだ?」
「そ、それは……」
「もしかして、勝手にイッたんじゃねえだろうな?」
『勝手に』――。そうだ、僕はご主人様に支配してもらっているのだから、射精だって管理されて当然だ。鼓動が速まる。口から心臓が飛び出てしまいそうだ。
失敗するのは嫌いだ。謝るのも嫌いだ。出来損ないの僕を見ようともしない父と母の横顔。つけいる隙を見つけては、より多くの肉をすかさず噛みちぎろうとする浅ましい取引先の顔。嫌な顔がよぎる。
失敗は、してはいけないこと。
「ご、……ごめん、なさい」
でも、だからこそ――してみたいこと。
「ごめん? 何をしたのが悪いと思ってんだ?」
「か、勝手に、気持ちよくなって……、僕だけ、イッて、ごめんなさい……」
声が震える。男の目を見つめ、鼻をすすりながら懸命に言う。恥辱がちりちりと皮膚を焼き、身を焦がす。全身を嫌な汗が伝う。くつくつと男が低く笑った。
「――あんなのでイッちまったのか。本当にやらしいなぁ、あんた」
「は、……ぁ」
顎に添えられたままの親指が伸び、ゆるく頬を撫でた。それだけで、過敏になった神経がぞくぞくと興奮を伝える。
「見せてみな。ザーメンまみれになったあんたのちんぽをさ」
「え」
「脱げよ、ほら。濡れて気持ち悪ぃだろ?」
「は、い……」
顎を軽く弾かれ、僕はよろよろと立ち上がった。ぬちゃ、と粘ついた音がした気がした。まるで操られるように、震える手で上着を脱ぎ、ソファにかける。ネクタイに手をかけたところで男が制した。
「上はいい。下だけ脱ぎな」
さっき僕が投げかけた言葉をそのまま返し、男がにやりと笑った。気の利いた最高の侮辱に興奮で息が詰まる。僕はあまりの喜悦に薄ら笑いすら浮かべていたかもしれない。頭の中に心臓が入りこんだかのように、ずくずくとこめかみが疼いた。
ベルトを緩める。スラックスは無事だったようで、表面的にはまだ乾いていた。ファスナーを下ろした途端、青臭いような雄の匂いが立ちのぼる。
「くせえなぁ。ザーメンの匂いだ」
馬鹿にしたような声に、僕はまた勃起していた。男の手が伸び、スラックスを引き下ろす。普段、他人に見せることのない皮膚が外気に晒される心許なさと、股間付近の濡れた感触に、さっと鳥肌が立った。
「へぇ、あんた体毛薄いんだな」
大きな手が内腿を撫でた。陽の光をほとんど浴びない白い肌と、浅黒い労働者の荒れた手。コントラストが目に焼きついてまぶしかった。長い指が内腿を這い、そのまま濡れた下着の上から屹立を撫で上げる。彼が撮った写真で何度も見た、異様に反り返った中指が、僕の形を確かめるように、根元から先端までを伝い上げた。
「はっ……」
ぞくぞくとわななく下腹部を押さえているのか、それとも垂れ落ちるワイシャツの裾をたくし上げているのか、自分でもよく分からなかった。無様に膝を擦り合わせる情けないさまは、まるで尿意を我慢する小さな子どものようだ。じわり、と下着に新たな染みが増す。
「あぁっ……!」
男の指が濡れた下着を一気に引き下ろした。ゴムに引っかかった屹立が勢いよく下腹に当たり、ぺちんと間の抜けた音を響かせる。男が僕を見上げ、うっすらと笑った。
「イッたばっかなのに、また早漏ちんぽおっ勃ててんのか」
「うぅっ……」
男の大きな手が精液まみれの屹立を握りこむ。掌の熱さ。上下の摩擦。にちゅにちゅといやらしい音。僕は片手でワイシャツの裾を、片手でいやらしい声を漏らす口元を、あたかも自分自身を抱きしめるかのように必死になって押さえた。だが、物欲しげに腰は前へとせり出し、もっと、と強欲に快感をねだる。
「そら、まんこに見立ててやらしく腰振ってみろ」
「は、いっ……」
握りこんだ掌の隙間にぬかるんだ先端をこすりつけるように、懸命に腰を動かす。大きくて熱い他人の掌。ああ、僕は今、とてもいやらしいことをしている。足元にスラックスをまとわりつかせたまま、がに股でわざわざ高さを調整し、男の手を相手に下品に腰を振っている。でもそれは命令だから。ご主人様が求めたことだから――。
「はっ、あっ、あ、あ、っ、……」
屈辱と喜悦に歪む僕の顔をじっと観察する男の視線がまとわりつくようで、ぞくぞくと全身の皮膚が甘く粟立つ。もう限界だ。いつ暴発してもおかしくない。でも腰を振るのを止められない。僕は涙声で懇願する。
「ご、主人様、僕、もう、イッてしまい、そうでっ……!」
「ふぅん?」
必死に言い募る僕に、可笑しそうに男が片眉を上げた。主人からの許可。僕が今求めているのはそれだけで――。
「ごめ、なさい、早漏雑魚ちんぽで、ごめんなさいっ、僕、僕もう、精子出したくてっ……!」
必死に自分の情けなさをアピールする、という恥辱。だが、普段なら死んでも言わないような言葉が舌に甘く、びりびりと頭をとろけさせる。謝ることが、普段の自分を捨てることが、背徳感が、こんなにも気持ちいいなんて。
「……ま、いいか。じゃあ、このまま射精しなよ」
「あ、りが、あぁぁっ……!」
男の言葉が終わるや否や、びくん、びくんと何度も身体がわなないた。とてつもない快感が背骨を通って理性を薙ぎ払う。二回目の連続射精にもかかわらず、掌から溢れそうなほど大量の精液が男の手を汚していた。不規則な荒い息をなかなか整えられず、揺れる視界の中、浅黒い手の甲をゆっくりと伝う白濁が鮮やかだった。
「――やらしすぎんだろ、あんた」
男がぽつりと言った。彼の顔にぼんやりと目をやると、視線に気づいたのか、すぐさま薄笑いを貼りつける。
「ベッドに上がんな。俺のちんぽが欲しいんだろ、ケツ振って誘ってみろ」
「っ……」
汚れた手はそのままに、男が顎をしゃくる。ついに、犯してもらえる――。僕はもどかしい思いで足元でくしゃくしゃになったスラックスと下着を脱ぎ去った。ワイシャツとネクタイ、靴下と革靴はそのままにベッドに上がる。真っ白なシーツを汚す背徳感に酔いしれながら、男の方へと尻を向けた。ひとつ息をつき、思い切って頭を下げ、腰を高く上げる。ぎし、とベッドが軋んだ。
「ご主人様……」
肩越しに男を見つめ、僕は片手を伸ばして尻たぶをゆっくりと押し開いた。何事もなく契約が結べたなら即セックスしようと思って、男と商談する直前にちゃんと中をきれいにしておいたのだ。とはいえ、こんな場所を他人に見せるのは初めてで、顔から火が出そうなほどの羞恥にめまいがした。ああ、僕は今、とてもいけないことをしている。
自分でもじっくりとは見たことのない場所。そこはもう、ただの排泄器官などではない。僕自身の手で開発した生殖器――いいや、立派な雄まんこだ。男へと見せつけるように指を這わせ、肉の蕾をそろりと指の腹で丸くなぞる。発情してふくらんだ柔肉にゆっくりと指を埋めていく。
「僕の、このいやらしい発情まんこを、ご主人様の好きにしてください……!」
夢見ていた卑猥な台詞を口にするだけで、頭の血管が切れそうなほどに興奮し、耳や頬に痛いほどに血がのぼる。商談中なら恥じることなく何でも言えたが、実際の場で淫語を自らの意志で発するというのは全く異なるのだと実感した。
指を二本挿し入れ、左右に押し開く。中に仕込んでいたローションに濡れるこの肉孔が、男の目には魅力的に見えてくれているだろうか。濡れた粘膜が物欲しげにひくついているのが見えるはずだ。今までに経験したことのないレベルの快楽を求めてうごめく僕の雄まんこが。
僕はさらに尻を突き出した。ぎしりとベッドが鳴る。男が身を乗り出していた。大きな掌が尻たぶを掴み、さっき僕が出した精液を入り口になすりつける。僕の身体が期待にぶるりと震えた。
「じゃあ、好きにさせてもらおうか」
「う、あっ……!?」
低くしゃがれた声とともに、熱く濡れた何かが肉蕾を這う。ぐねぐねと入り口をこね回す熱と吐息が尻の谷間を湿らせる。男の舌、が、舐めているのだ。ああ、いけない。こんな。未知の感触にぞくぞくと背筋が震え、思わず身体が逃げようとするが、大きな掌に阻まれてびくともしない。
「何だ? 俺の好きにしろって言ったのはあんただろうが」
「ンひっ……!」
ばちっ、という乾いた音と鋭い衝撃が身体を走り、僕は思わず目を見開いた。尻を――叩かれたのだ。かっ、と頭に血がのぼり、視界が涙で歪む。軽くはたかれた程度で、決して痛かったわけではない。だが、まるで出来の悪い子どもを叱るかのような軽い打擲が、僕の中の劣等感を激しく煽りたてる。だがそれ以上に――。
「嫌ならやめちまうぜ」
「や、やめないでくれっ! お願いだ……!」
「いい子だ」
思わず飛び出した僕の素の言葉に男は低く笑い、叩いた部分を優しく撫でた。男の飴と鞭がたまらなかった。劣等感を上回る恍惚が身体中を駆けめぐり、あぁ……と僕の唇から熱い溜め息が漏れる。
続きを乞うて男の方へと片手を伸ばす。男の足に触れると、応えるように熱い舌が再び入り口に添えられた。ぴちゃぴちゃ、じゅぷじゅぷといやらしい音が体内からも響き、皮膚を甘くさざめかせる。入り口の肉は敏感だ。男の舌のざらつきが、うごめきが、あますことなく感じられる。
シーツに額をすりつけるようにして未知の快感を耐えようとする僕の目に、腰を高く上げた足の隙間から男の姿が見えた。あぐらをかき、入り口を丹念に舌でほぐす男の股間は重たげに勃ち上がっていた。
「っ、ご主人、様っ……!」
たまらなくなって僕は泣きそうな声で囁いた。ぞくぞくと身体が歓喜にわななく。僕のことを欲しがっている。氏素性も知れぬ身体ひとつの僕が欲情されている。こんなにいやらしい人間である僕が求められている。それが嬉しくてたまらない。
男は舌をようやく離した。やわらかくほぐれた穴の縁を何かが円を描くようになぞる。指だ。中指だけそり返った、あの長い指。
「すっかり縦長になって、完全にまんこだなぁ。なああんた、何人の男に抱かれたらこんないやらしい形になるんだ?」
男の指が長さを教えこむように、入り口をゆっくりと上下に撫でた。大学生の頃から遊んでもいれば形崩れもしよう。仕方がない。だが、男の言には決定的に間違っている部分がある。羞恥が身を焼く。何度か逡巡した後、僕はぽつぽつと言葉を紡いだ。演技をする余裕もない。
「だ、誰も……」
「え?」
「いないんだ……。今日が、初めてで……」
そうだ、僕は処女で、童貞だ。今まで人を好きになったことはないし、付き合ったこともない。だってそうだろう。付き合って良い人間は親が制限していた。そんな人間は独り立ちしてもまともに人付き合いなどできやしない。自分は上下関係を作らなければ人と接することができない迷惑な人間なんだと、幸いにも僕は自力で気づいていた。
だから、僕が見初めたご主人様を金で雇ったのだ。それぐらい分かれ――などと、僕は内心男に八つ当たりした。胸の奥に眠るコンプレックスがちくちくと刺激される。屈辱の涙がじわりと目の表面を濡らす。
「……へぇ、自分でこんなやらしい身体にしたのか。あんた、上手くいきゃあ、俺のちんぽが初めてになっちまうんだなぁ」
だが、男の声は嘲笑うでもなく、どこか感慨深そうな響きがあった。
「ん、ふ、……っ」
入り口を撫でていた指が二本、ゆっくりと体内に入りこんでくる。腹の奥で待ちわびている前立腺を探るように、媚肉を押しこみながらゆっくりと進んでいく。自分のものではない指が。あの反り返った中指が――。
「はは、まんこが締まったぜ。そんなにちんぽが欲しいか?」
「欲しいです……」
媚びた声で僕は言う。本当はあの指のことを考えていたけれど、否定するほどのことではないし、いざ指摘されると欲しくなる。実際、腹の奥は犯してほしくてじわじわと甘く疼いていた。
「けど、あんたのここをしっかり広げてやらなきゃ、俺のは入んねーからな。……そうだな、俺の上に乗れよ」
「え、えと……、どう……?」
「俺の方にケツを向けて乗るんだ。69ってやつ」
男はTシャツを脱ぎ捨てると、僕の隣にその長い身体を寝そべらせた。僕は思わず息を呑む。盛り上がった胸。引き締まった腹。刻みこんだような腰。嫌になるほど長い手足。まるで彫像のように均整の取れた肉体。だが、浅黒い肌に刻まれた細かな傷跡や密集する体毛が、そして中央にふてぶてしく寝そべる膨張した雄が、自撮り写真や石像とは異なる生の存在感を主張していた。ジムで鍛えただけの僕とは違う、荒々しく、実用的な肉体。
ぎしりとスプリングを軋ませ、僕は男に背中を見せると、その太い胴体を膝立ちで跨った。男の腰の横に手をつき、ゆっくりと後ろに尻を突き出していく。必然的に僕の目の前には太い血管を纏わせた立派すぎる屹立が突きつけられた。羞恥と期待で顔に血がのぼる。
「まんこ広げてる間、そいつで遊んでな」
まるで鎌首をもたげた蛇のように、雄茎が僕を狙って上下に頭を揺らす。男の大きな掌が尻肉を鷲掴み、僕は熱い溜め息をついた。指が体内に潜りこみ、熟れた前立腺の膨らみを指の腹でこすり始める。
「あっ、ああ、ンっ、それダメ……っ」
ぞくぞくと走り抜けていく甘い衝撃に思わず背筋が反り返った。きっと男は最後まで挿れられないからこそ、かつては前戯で恋人をそれなりに満足させてきたのだろう。たかが指なのに、こんなにも気持ちいい。ぐにぐにと前後にこねられ頭が馬鹿になりそうだった。
「駄目? じゃあ止めるか」
「やだ、やめないでぇ……っ!」
間髪入れぬ懇願に男が苦笑した。指が増えていく。思わず締まろうとする肉門をくぱりと開き、中のとろ肉にふうと息を吹きかけられると、僕は目の前の雄に頬をすりつけながら悶えることしかできなくなる。駄目だ、奉仕しなきゃ。そう思って舌を伸ばして先端を舐めるが、指がしこりを細かく前後するともう駄目だ。あの反り返った中指が。そう思うと僕の身体はぶるりと震えた。
「あっ、あ、ああぁ、だめ、イッちゃう、ぼく、指マンでイッちゃう、指でぇ……っ!」
我慢しようと思ったのに、震える身体は止まらなかった。全身を甘い電流が包みこみ、腰はかくかくと痙攣しながら男の指をきつく食い締めていた。二度、三度と大きく跳ね、ようやく僕の身体から力が抜けていく。熱い溜め息が男の引き締まった下腹を湿らせた。
「今度は勝手に雌アクメしてんのか」
「ごめ、……さ、……」
もう息も絶え絶えで、まともに言葉にならなかった。甘い、甘い雌の絶頂。それは、今までの僕にとってゴールだった。到達できたら、今日はいいオナニーをした、とぐっすり眠れるような。それが、たかが指で――。男が上手いのか、僕が興奮しすぎているのか。強烈な快感に痺れきった頭では判断がつかなかった。
「だらしねえまんこだな。じゃあもう好きなだけアクメしな」
「え……、っ、ああぁぁっ……!」
びくんと身体が跳ねた。さらに指が増やされ、ぐじゅぐじゅと湿った音とともに早い速度で前後左右にこねまわされたのだ。絶頂したばかりの敏感な前立腺ではひとたまりもない。
「やっ、や、イッちゃうから、イッちゃうからぁっ……! またイクッ! や、あっ、んんんんっ……!」
ヒィ、とか細い悲鳴が喉から漏れた。身体が理性の制御を外れていた。腰が跳ねる。雄まんこが指を食い締める。全身ががくがくと痙攣し、恐ろしいほどに気持ちいい。きっと浮遊感や多幸感を与える脳内麻薬がどばどば出ているのだろう。指が左右三本ずつ入りこみ、男が納得するまで入口が拡張されるころには、僕は初めてのメスイキ連続絶頂にぐったりとしていた。
「……どうする?」
指を抜いた男が尋ねた。今や、尻の谷間ではぽっかりと穴が開いていることだろう。身体中がじんじんしていた。身体の中に開いた空虚が、消えていく快感があまりにも寂しくて、僕はみっともなく腰を振り、半泣きの声で懇願した。
「ご主人様のちんぽ挿れてください……! 根元までずっぽり全部飲みこむから……っ! お願いします……!」
「ふーん。じゃあ――」
そのまま自分で挿れてみせな、と背後で寝そべったまま男は言い、僕の尻を軽く叩いた。許可がもらえた僕は、いそいそとベッドサイドに用意していたローションを取ると、嬉々として男の屹立にたっぷりと垂らした。まぶすように上下にしごく。指が回りきらないほどの太さに、改めて生唾を飲んだ。
男の腰を挟むように膝立ちでにじり寄る。手を添え、垂直に立てた屹立の先端と、物欲しげに濡れる肉蕾がむちゅりと口づけた。その熱さと大きさに身体が震えた。武者震いというやつかもしれない。僕は背後を振り返る。
「僕のまんこが、ご主人様のちんぽを飲みこむところ、見ていてくださいね……」
「ああ」
男はウェットティッシュで濡れた指を拭いながらにやりと笑った。ワイシャツの裾をたくしあげ、ディルドを挿れるときの要領で中身のものを出すようにいきむ。いきむということは、入り口を広げるということでもあるのだ。僕は深く息を吐き、ゆっくりと先端を体内に飲みこんでいく。
大きく傘を張ったエラを何とか体内に収め、僕は全身に汗をしたたらせながら一息ついた。大きさと形は模していても、ディルドと本物とはやはり似て非なるものなのだと実感する。熱い。固い。何より、どくんどくんと体内で脈打つこの奇妙な感覚。これに慣れてしまったら、もう無機物には戻れないのでは――? などと心配になってしまう。
「おい、もうギブアップか?」
男の声が背中に投げかけられた。僕は軽く手を上げ、さらに腰を進めた。エラを体内に収めて一旦窄まったものの、僕を貫くこの雄槍は胴体の中央が指も回り切らないほどに中太りしている。ピークはこれからだ。じりじりと、自分でも焦れるほどにゆっくりと腰を下ろしていく。
「別に無理しなくったっていいんだぞ」
全身に冷や汗をにじませながら肉杭を飲みこむ僕に、男がぶっきらぼうに言った。俺はどうでもいいんだぜ、という態度を演じているが、おそらくは本気で心配しているのだろう。何しろ、男にとっても最後までできるかどうかの瀬戸際なのだ。
一番太い部分にさしかかり、入り口がみちみちに広がっているのが自分でも分かる。男の目からはどう見えるだろう。しわが全て引き伸ばされ、半分がた己を受け入れた雄まんこ。細かく上下に腰を動かしながら、ゆっくりと、だが確実に飲みこんでいくさまを見てくれているだろうか。
「は、……あっ……!」
「っ……」
ずるん、と一気に身体の奥へと肉槍が入りこみ、息が一瞬止まった。一番太いところを乗り越えたのだ。大きく息をつくと、僕は背後を振り返り、微笑んだ。
「一番太いとこ、入りましたよ……。見てくれてましたか……?」
「……ああ、見てる。もう少しで全部だ。……いけるか?」
相当奥まで入った気がするが、指で確かめると確かにまだ少し余っている。足の間に手をつき、深い息を吐きながら長大な屹立を迎えいれる。愛用ディルドが到達するよりも奥。鈍い痛みを上回る痺れるほどの快感。ちんぽの裏どころか臍の裏まで入りこんでいるのではないかと錯覚する体積、熱、脈動――。僕は気がつくと、男の腰の上に座りこんで、荒い息をつきながら天井を見上げていた。
「あぁ……入っ、た……」
腹の中がいっぱいだった。関節のやわらかい僕は女の子のように膝をついてぺたんと座りこみながら、満足感に満ちた溜め息をついた。ずくんずくんと体内で脈打つ搏動が奇妙で、それでいて身体になじみつつあった。
その時、身体のわきから男の手がぬうと突き出された。ワイシャツ越しの背中に男の体温を感じる。前のめりになった僕の身体を長い腕が抱きとめた。
思いがけない粗相に頭が熱くなる。こんな、服を着たまま射精してしまうなんて。いけないことを。ぎしりと軋む音がした。涙で歪んだ男がベッドの縁に座りこみ、薄ら笑いでこちらを眺めている。意地の悪い声。
「どうかしたのか」
「え……?」
予期せぬ質問に僕は口ごもった。男の長い指が僕の顎をとらえ、俯いた顔を無理に引き上げる。
「何でそんな発情した顔してんだ?」
「そ、それは……」
「もしかして、勝手にイッたんじゃねえだろうな?」
『勝手に』――。そうだ、僕はご主人様に支配してもらっているのだから、射精だって管理されて当然だ。鼓動が速まる。口から心臓が飛び出てしまいそうだ。
失敗するのは嫌いだ。謝るのも嫌いだ。出来損ないの僕を見ようともしない父と母の横顔。つけいる隙を見つけては、より多くの肉をすかさず噛みちぎろうとする浅ましい取引先の顔。嫌な顔がよぎる。
失敗は、してはいけないこと。
「ご、……ごめん、なさい」
でも、だからこそ――してみたいこと。
「ごめん? 何をしたのが悪いと思ってんだ?」
「か、勝手に、気持ちよくなって……、僕だけ、イッて、ごめんなさい……」
声が震える。男の目を見つめ、鼻をすすりながら懸命に言う。恥辱がちりちりと皮膚を焼き、身を焦がす。全身を嫌な汗が伝う。くつくつと男が低く笑った。
「――あんなのでイッちまったのか。本当にやらしいなぁ、あんた」
「は、……ぁ」
顎に添えられたままの親指が伸び、ゆるく頬を撫でた。それだけで、過敏になった神経がぞくぞくと興奮を伝える。
「見せてみな。ザーメンまみれになったあんたのちんぽをさ」
「え」
「脱げよ、ほら。濡れて気持ち悪ぃだろ?」
「は、い……」
顎を軽く弾かれ、僕はよろよろと立ち上がった。ぬちゃ、と粘ついた音がした気がした。まるで操られるように、震える手で上着を脱ぎ、ソファにかける。ネクタイに手をかけたところで男が制した。
「上はいい。下だけ脱ぎな」
さっき僕が投げかけた言葉をそのまま返し、男がにやりと笑った。気の利いた最高の侮辱に興奮で息が詰まる。僕はあまりの喜悦に薄ら笑いすら浮かべていたかもしれない。頭の中に心臓が入りこんだかのように、ずくずくとこめかみが疼いた。
ベルトを緩める。スラックスは無事だったようで、表面的にはまだ乾いていた。ファスナーを下ろした途端、青臭いような雄の匂いが立ちのぼる。
「くせえなぁ。ザーメンの匂いだ」
馬鹿にしたような声に、僕はまた勃起していた。男の手が伸び、スラックスを引き下ろす。普段、他人に見せることのない皮膚が外気に晒される心許なさと、股間付近の濡れた感触に、さっと鳥肌が立った。
「へぇ、あんた体毛薄いんだな」
大きな手が内腿を撫でた。陽の光をほとんど浴びない白い肌と、浅黒い労働者の荒れた手。コントラストが目に焼きついてまぶしかった。長い指が内腿を這い、そのまま濡れた下着の上から屹立を撫で上げる。彼が撮った写真で何度も見た、異様に反り返った中指が、僕の形を確かめるように、根元から先端までを伝い上げた。
「はっ……」
ぞくぞくとわななく下腹部を押さえているのか、それとも垂れ落ちるワイシャツの裾をたくし上げているのか、自分でもよく分からなかった。無様に膝を擦り合わせる情けないさまは、まるで尿意を我慢する小さな子どものようだ。じわり、と下着に新たな染みが増す。
「あぁっ……!」
男の指が濡れた下着を一気に引き下ろした。ゴムに引っかかった屹立が勢いよく下腹に当たり、ぺちんと間の抜けた音を響かせる。男が僕を見上げ、うっすらと笑った。
「イッたばっかなのに、また早漏ちんぽおっ勃ててんのか」
「うぅっ……」
男の大きな手が精液まみれの屹立を握りこむ。掌の熱さ。上下の摩擦。にちゅにちゅといやらしい音。僕は片手でワイシャツの裾を、片手でいやらしい声を漏らす口元を、あたかも自分自身を抱きしめるかのように必死になって押さえた。だが、物欲しげに腰は前へとせり出し、もっと、と強欲に快感をねだる。
「そら、まんこに見立ててやらしく腰振ってみろ」
「は、いっ……」
握りこんだ掌の隙間にぬかるんだ先端をこすりつけるように、懸命に腰を動かす。大きくて熱い他人の掌。ああ、僕は今、とてもいやらしいことをしている。足元にスラックスをまとわりつかせたまま、がに股でわざわざ高さを調整し、男の手を相手に下品に腰を振っている。でもそれは命令だから。ご主人様が求めたことだから――。
「はっ、あっ、あ、あ、っ、……」
屈辱と喜悦に歪む僕の顔をじっと観察する男の視線がまとわりつくようで、ぞくぞくと全身の皮膚が甘く粟立つ。もう限界だ。いつ暴発してもおかしくない。でも腰を振るのを止められない。僕は涙声で懇願する。
「ご、主人様、僕、もう、イッてしまい、そうでっ……!」
「ふぅん?」
必死に言い募る僕に、可笑しそうに男が片眉を上げた。主人からの許可。僕が今求めているのはそれだけで――。
「ごめ、なさい、早漏雑魚ちんぽで、ごめんなさいっ、僕、僕もう、精子出したくてっ……!」
必死に自分の情けなさをアピールする、という恥辱。だが、普段なら死んでも言わないような言葉が舌に甘く、びりびりと頭をとろけさせる。謝ることが、普段の自分を捨てることが、背徳感が、こんなにも気持ちいいなんて。
「……ま、いいか。じゃあ、このまま射精しなよ」
「あ、りが、あぁぁっ……!」
男の言葉が終わるや否や、びくん、びくんと何度も身体がわなないた。とてつもない快感が背骨を通って理性を薙ぎ払う。二回目の連続射精にもかかわらず、掌から溢れそうなほど大量の精液が男の手を汚していた。不規則な荒い息をなかなか整えられず、揺れる視界の中、浅黒い手の甲をゆっくりと伝う白濁が鮮やかだった。
「――やらしすぎんだろ、あんた」
男がぽつりと言った。彼の顔にぼんやりと目をやると、視線に気づいたのか、すぐさま薄笑いを貼りつける。
「ベッドに上がんな。俺のちんぽが欲しいんだろ、ケツ振って誘ってみろ」
「っ……」
汚れた手はそのままに、男が顎をしゃくる。ついに、犯してもらえる――。僕はもどかしい思いで足元でくしゃくしゃになったスラックスと下着を脱ぎ去った。ワイシャツとネクタイ、靴下と革靴はそのままにベッドに上がる。真っ白なシーツを汚す背徳感に酔いしれながら、男の方へと尻を向けた。ひとつ息をつき、思い切って頭を下げ、腰を高く上げる。ぎし、とベッドが軋んだ。
「ご主人様……」
肩越しに男を見つめ、僕は片手を伸ばして尻たぶをゆっくりと押し開いた。何事もなく契約が結べたなら即セックスしようと思って、男と商談する直前にちゃんと中をきれいにしておいたのだ。とはいえ、こんな場所を他人に見せるのは初めてで、顔から火が出そうなほどの羞恥にめまいがした。ああ、僕は今、とてもいけないことをしている。
自分でもじっくりとは見たことのない場所。そこはもう、ただの排泄器官などではない。僕自身の手で開発した生殖器――いいや、立派な雄まんこだ。男へと見せつけるように指を這わせ、肉の蕾をそろりと指の腹で丸くなぞる。発情してふくらんだ柔肉にゆっくりと指を埋めていく。
「僕の、このいやらしい発情まんこを、ご主人様の好きにしてください……!」
夢見ていた卑猥な台詞を口にするだけで、頭の血管が切れそうなほどに興奮し、耳や頬に痛いほどに血がのぼる。商談中なら恥じることなく何でも言えたが、実際の場で淫語を自らの意志で発するというのは全く異なるのだと実感した。
指を二本挿し入れ、左右に押し開く。中に仕込んでいたローションに濡れるこの肉孔が、男の目には魅力的に見えてくれているだろうか。濡れた粘膜が物欲しげにひくついているのが見えるはずだ。今までに経験したことのないレベルの快楽を求めてうごめく僕の雄まんこが。
僕はさらに尻を突き出した。ぎしりとベッドが鳴る。男が身を乗り出していた。大きな掌が尻たぶを掴み、さっき僕が出した精液を入り口になすりつける。僕の身体が期待にぶるりと震えた。
「じゃあ、好きにさせてもらおうか」
「う、あっ……!?」
低くしゃがれた声とともに、熱く濡れた何かが肉蕾を這う。ぐねぐねと入り口をこね回す熱と吐息が尻の谷間を湿らせる。男の舌、が、舐めているのだ。ああ、いけない。こんな。未知の感触にぞくぞくと背筋が震え、思わず身体が逃げようとするが、大きな掌に阻まれてびくともしない。
「何だ? 俺の好きにしろって言ったのはあんただろうが」
「ンひっ……!」
ばちっ、という乾いた音と鋭い衝撃が身体を走り、僕は思わず目を見開いた。尻を――叩かれたのだ。かっ、と頭に血がのぼり、視界が涙で歪む。軽くはたかれた程度で、決して痛かったわけではない。だが、まるで出来の悪い子どもを叱るかのような軽い打擲が、僕の中の劣等感を激しく煽りたてる。だがそれ以上に――。
「嫌ならやめちまうぜ」
「や、やめないでくれっ! お願いだ……!」
「いい子だ」
思わず飛び出した僕の素の言葉に男は低く笑い、叩いた部分を優しく撫でた。男の飴と鞭がたまらなかった。劣等感を上回る恍惚が身体中を駆けめぐり、あぁ……と僕の唇から熱い溜め息が漏れる。
続きを乞うて男の方へと片手を伸ばす。男の足に触れると、応えるように熱い舌が再び入り口に添えられた。ぴちゃぴちゃ、じゅぷじゅぷといやらしい音が体内からも響き、皮膚を甘くさざめかせる。入り口の肉は敏感だ。男の舌のざらつきが、うごめきが、あますことなく感じられる。
シーツに額をすりつけるようにして未知の快感を耐えようとする僕の目に、腰を高く上げた足の隙間から男の姿が見えた。あぐらをかき、入り口を丹念に舌でほぐす男の股間は重たげに勃ち上がっていた。
「っ、ご主人、様っ……!」
たまらなくなって僕は泣きそうな声で囁いた。ぞくぞくと身体が歓喜にわななく。僕のことを欲しがっている。氏素性も知れぬ身体ひとつの僕が欲情されている。こんなにいやらしい人間である僕が求められている。それが嬉しくてたまらない。
男は舌をようやく離した。やわらかくほぐれた穴の縁を何かが円を描くようになぞる。指だ。中指だけそり返った、あの長い指。
「すっかり縦長になって、完全にまんこだなぁ。なああんた、何人の男に抱かれたらこんないやらしい形になるんだ?」
男の指が長さを教えこむように、入り口をゆっくりと上下に撫でた。大学生の頃から遊んでもいれば形崩れもしよう。仕方がない。だが、男の言には決定的に間違っている部分がある。羞恥が身を焼く。何度か逡巡した後、僕はぽつぽつと言葉を紡いだ。演技をする余裕もない。
「だ、誰も……」
「え?」
「いないんだ……。今日が、初めてで……」
そうだ、僕は処女で、童貞だ。今まで人を好きになったことはないし、付き合ったこともない。だってそうだろう。付き合って良い人間は親が制限していた。そんな人間は独り立ちしてもまともに人付き合いなどできやしない。自分は上下関係を作らなければ人と接することができない迷惑な人間なんだと、幸いにも僕は自力で気づいていた。
だから、僕が見初めたご主人様を金で雇ったのだ。それぐらい分かれ――などと、僕は内心男に八つ当たりした。胸の奥に眠るコンプレックスがちくちくと刺激される。屈辱の涙がじわりと目の表面を濡らす。
「……へぇ、自分でこんなやらしい身体にしたのか。あんた、上手くいきゃあ、俺のちんぽが初めてになっちまうんだなぁ」
だが、男の声は嘲笑うでもなく、どこか感慨深そうな響きがあった。
「ん、ふ、……っ」
入り口を撫でていた指が二本、ゆっくりと体内に入りこんでくる。腹の奥で待ちわびている前立腺を探るように、媚肉を押しこみながらゆっくりと進んでいく。自分のものではない指が。あの反り返った中指が――。
「はは、まんこが締まったぜ。そんなにちんぽが欲しいか?」
「欲しいです……」
媚びた声で僕は言う。本当はあの指のことを考えていたけれど、否定するほどのことではないし、いざ指摘されると欲しくなる。実際、腹の奥は犯してほしくてじわじわと甘く疼いていた。
「けど、あんたのここをしっかり広げてやらなきゃ、俺のは入んねーからな。……そうだな、俺の上に乗れよ」
「え、えと……、どう……?」
「俺の方にケツを向けて乗るんだ。69ってやつ」
男はTシャツを脱ぎ捨てると、僕の隣にその長い身体を寝そべらせた。僕は思わず息を呑む。盛り上がった胸。引き締まった腹。刻みこんだような腰。嫌になるほど長い手足。まるで彫像のように均整の取れた肉体。だが、浅黒い肌に刻まれた細かな傷跡や密集する体毛が、そして中央にふてぶてしく寝そべる膨張した雄が、自撮り写真や石像とは異なる生の存在感を主張していた。ジムで鍛えただけの僕とは違う、荒々しく、実用的な肉体。
ぎしりとスプリングを軋ませ、僕は男に背中を見せると、その太い胴体を膝立ちで跨った。男の腰の横に手をつき、ゆっくりと後ろに尻を突き出していく。必然的に僕の目の前には太い血管を纏わせた立派すぎる屹立が突きつけられた。羞恥と期待で顔に血がのぼる。
「まんこ広げてる間、そいつで遊んでな」
まるで鎌首をもたげた蛇のように、雄茎が僕を狙って上下に頭を揺らす。男の大きな掌が尻肉を鷲掴み、僕は熱い溜め息をついた。指が体内に潜りこみ、熟れた前立腺の膨らみを指の腹でこすり始める。
「あっ、ああ、ンっ、それダメ……っ」
ぞくぞくと走り抜けていく甘い衝撃に思わず背筋が反り返った。きっと男は最後まで挿れられないからこそ、かつては前戯で恋人をそれなりに満足させてきたのだろう。たかが指なのに、こんなにも気持ちいい。ぐにぐにと前後にこねられ頭が馬鹿になりそうだった。
「駄目? じゃあ止めるか」
「やだ、やめないでぇ……っ!」
間髪入れぬ懇願に男が苦笑した。指が増えていく。思わず締まろうとする肉門をくぱりと開き、中のとろ肉にふうと息を吹きかけられると、僕は目の前の雄に頬をすりつけながら悶えることしかできなくなる。駄目だ、奉仕しなきゃ。そう思って舌を伸ばして先端を舐めるが、指がしこりを細かく前後するともう駄目だ。あの反り返った中指が。そう思うと僕の身体はぶるりと震えた。
「あっ、あ、ああぁ、だめ、イッちゃう、ぼく、指マンでイッちゃう、指でぇ……っ!」
我慢しようと思ったのに、震える身体は止まらなかった。全身を甘い電流が包みこみ、腰はかくかくと痙攣しながら男の指をきつく食い締めていた。二度、三度と大きく跳ね、ようやく僕の身体から力が抜けていく。熱い溜め息が男の引き締まった下腹を湿らせた。
「今度は勝手に雌アクメしてんのか」
「ごめ、……さ、……」
もう息も絶え絶えで、まともに言葉にならなかった。甘い、甘い雌の絶頂。それは、今までの僕にとってゴールだった。到達できたら、今日はいいオナニーをした、とぐっすり眠れるような。それが、たかが指で――。男が上手いのか、僕が興奮しすぎているのか。強烈な快感に痺れきった頭では判断がつかなかった。
「だらしねえまんこだな。じゃあもう好きなだけアクメしな」
「え……、っ、ああぁぁっ……!」
びくんと身体が跳ねた。さらに指が増やされ、ぐじゅぐじゅと湿った音とともに早い速度で前後左右にこねまわされたのだ。絶頂したばかりの敏感な前立腺ではひとたまりもない。
「やっ、や、イッちゃうから、イッちゃうからぁっ……! またイクッ! や、あっ、んんんんっ……!」
ヒィ、とか細い悲鳴が喉から漏れた。身体が理性の制御を外れていた。腰が跳ねる。雄まんこが指を食い締める。全身ががくがくと痙攣し、恐ろしいほどに気持ちいい。きっと浮遊感や多幸感を与える脳内麻薬がどばどば出ているのだろう。指が左右三本ずつ入りこみ、男が納得するまで入口が拡張されるころには、僕は初めてのメスイキ連続絶頂にぐったりとしていた。
「……どうする?」
指を抜いた男が尋ねた。今や、尻の谷間ではぽっかりと穴が開いていることだろう。身体中がじんじんしていた。身体の中に開いた空虚が、消えていく快感があまりにも寂しくて、僕はみっともなく腰を振り、半泣きの声で懇願した。
「ご主人様のちんぽ挿れてください……! 根元までずっぽり全部飲みこむから……っ! お願いします……!」
「ふーん。じゃあ――」
そのまま自分で挿れてみせな、と背後で寝そべったまま男は言い、僕の尻を軽く叩いた。許可がもらえた僕は、いそいそとベッドサイドに用意していたローションを取ると、嬉々として男の屹立にたっぷりと垂らした。まぶすように上下にしごく。指が回りきらないほどの太さに、改めて生唾を飲んだ。
男の腰を挟むように膝立ちでにじり寄る。手を添え、垂直に立てた屹立の先端と、物欲しげに濡れる肉蕾がむちゅりと口づけた。その熱さと大きさに身体が震えた。武者震いというやつかもしれない。僕は背後を振り返る。
「僕のまんこが、ご主人様のちんぽを飲みこむところ、見ていてくださいね……」
「ああ」
男はウェットティッシュで濡れた指を拭いながらにやりと笑った。ワイシャツの裾をたくしあげ、ディルドを挿れるときの要領で中身のものを出すようにいきむ。いきむということは、入り口を広げるということでもあるのだ。僕は深く息を吐き、ゆっくりと先端を体内に飲みこんでいく。
大きく傘を張ったエラを何とか体内に収め、僕は全身に汗をしたたらせながら一息ついた。大きさと形は模していても、ディルドと本物とはやはり似て非なるものなのだと実感する。熱い。固い。何より、どくんどくんと体内で脈打つこの奇妙な感覚。これに慣れてしまったら、もう無機物には戻れないのでは――? などと心配になってしまう。
「おい、もうギブアップか?」
男の声が背中に投げかけられた。僕は軽く手を上げ、さらに腰を進めた。エラを体内に収めて一旦窄まったものの、僕を貫くこの雄槍は胴体の中央が指も回り切らないほどに中太りしている。ピークはこれからだ。じりじりと、自分でも焦れるほどにゆっくりと腰を下ろしていく。
「別に無理しなくったっていいんだぞ」
全身に冷や汗をにじませながら肉杭を飲みこむ僕に、男がぶっきらぼうに言った。俺はどうでもいいんだぜ、という態度を演じているが、おそらくは本気で心配しているのだろう。何しろ、男にとっても最後までできるかどうかの瀬戸際なのだ。
一番太い部分にさしかかり、入り口がみちみちに広がっているのが自分でも分かる。男の目からはどう見えるだろう。しわが全て引き伸ばされ、半分がた己を受け入れた雄まんこ。細かく上下に腰を動かしながら、ゆっくりと、だが確実に飲みこんでいくさまを見てくれているだろうか。
「は、……あっ……!」
「っ……」
ずるん、と一気に身体の奥へと肉槍が入りこみ、息が一瞬止まった。一番太いところを乗り越えたのだ。大きく息をつくと、僕は背後を振り返り、微笑んだ。
「一番太いとこ、入りましたよ……。見てくれてましたか……?」
「……ああ、見てる。もう少しで全部だ。……いけるか?」
相当奥まで入った気がするが、指で確かめると確かにまだ少し余っている。足の間に手をつき、深い息を吐きながら長大な屹立を迎えいれる。愛用ディルドが到達するよりも奥。鈍い痛みを上回る痺れるほどの快感。ちんぽの裏どころか臍の裏まで入りこんでいるのではないかと錯覚する体積、熱、脈動――。僕は気がつくと、男の腰の上に座りこんで、荒い息をつきながら天井を見上げていた。
「あぁ……入っ、た……」
腹の中がいっぱいだった。関節のやわらかい僕は女の子のように膝をついてぺたんと座りこみながら、満足感に満ちた溜め息をついた。ずくんずくんと体内で脈打つ搏動が奇妙で、それでいて身体になじみつつあった。
その時、身体のわきから男の手がぬうと突き出された。ワイシャツ越しの背中に男の体温を感じる。前のめりになった僕の身体を長い腕が抱きとめた。
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