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ロールプレイ
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子供の頃から厳しく躾けられてきた。
学歴と金はあるにこしたことはない、男なら何でも一番を目指せ、と父は言う。なので、成績が良ければ高額な小遣いが与えられ、悪ければまるでいない者のように扱われた。もらった小遣いも、投資するための種銭にせよと言われ、パソコンやスマホなどの経費として落とせるもの以外に自由に使うことはできなかった。
人間は品行方正に生きねばならない、下品なものからは目を背け、憎み、清らかに生きなさい、と母は言う。親の眼鏡にかなうような人間でなければ友達として付き合ってはいけない。いわんや恋人においてをや。お前を惑わせる異性に触れてはいけない、と県内屈指の男子のみの進学校以外に選択肢は貰えなかった。
さて、両親はこんなことを言っているが、僕の家は別に何十代と続く名家だとか、高貴なる青い血だとか、そんなご大層なものではない。ただの成金だ。父に多少の商才があって、母に無駄な虚栄心があっただけ。そんな両親の資質を受け継いだ僕は、親の思うとおり、まっすぐに育っていった。
まっすぐに。そう、表面上は――。箱に入れられて四角く育ったスイカを見たことがあるだろうか。例えるならば、あれが僕だ。それも、表から見えないところがばっくりとひび割れて、赤い果肉を曝け出して汁を垂らす、見てくれだけの食べられないスイカだ。
趣味は勉強と投資、読む本はノンフィクションかビジネス書。そんな純粋培養された少年が思春期の頃に初めて触れたファンタジーが――AVだった。それも、マゾ男がお姉さんに尻をまさぐられて射精どころか潮まで噴いてしまうマニアックな――そう、今なら分かるが相当マニアックやつだった。
あの衝撃はそれまでの僕の常識を全て吹き飛ばした。何かネット検索していて、妙な画像がある、と何の気なしにクリックしてみただけだったのだ。たった5分ほどのサンプル動画に僕は異様な興奮を覚え、何度も繰り返し再生し、気がつけばティッシュが空になるほどに射精していた。思えば、あれが運命の分かれ道だったのだろう。
そうして、四角いスイカはひとり静かに、致命的なほどに割れて腐った。親の教えに背くことを恐れていたが、何のことはない、親にさえバレなければいいだけの話だったのだ。それまで僕が築いてきた両親との『信頼関係』のおかげで、高校生になった僕は成績を維持し、ひとりのとき以外は清廉な顔をしてさえいれば、特にうるさく言われることもなかった。
むしろさっさと家を出たくて大学受験には寝る間も惜しんで身を入れたほどだ。僕はいつしか、動画を見ながら興奮に任せてペニスをしごくだけでは満足できなくなっていた。動画の中の男のように尻をいじってみたくて仕方がなくなっていたのだ。だが、さすがに親と同じ屋根の下で尻をいじる勇気はなく、早く家を出たい、親が認めるような一流の大学なら文句も言われまい、とその一心で勉強した。
初めて肛門に指を挿れてみたときの興奮は忘れない。あれは、一人暮らしを始めた最初の夜だった。別に気持ちよかったわけではない。何しろ初めての挿入だ。しかも、中は綺麗にしてみたものの、潤滑油もなしに一本挿れてみただけだったから。だが、『男らしく』、『清らかに』生きてきた僕が、敢えて理性でもってその禁に背くという背徳感はすさまじく――僕はあの時、指を挿れた興奮だけで射精したのだった。
だが、刺激に対して人間はすぐ順応していくものだ。いつしか指だけではすぐに物足りなくなり、小さなディルドを買った。そこからはもう、坂道を転がり落ちていくようなものだった。加速度的に上がっていく性具のサイズと性能。だがそれ以上に僕の中で膨らんでいくものがあった。
――本物を挿れてみたい。
――性的に苛められたい。
――支配的に犯されたい。
そう、自分ひとりではどうやっても叶えられない欲望が。
学歴と金はあるにこしたことはない、男なら何でも一番を目指せ、と父は言う。なので、成績が良ければ高額な小遣いが与えられ、悪ければまるでいない者のように扱われた。もらった小遣いも、投資するための種銭にせよと言われ、パソコンやスマホなどの経費として落とせるもの以外に自由に使うことはできなかった。
人間は品行方正に生きねばならない、下品なものからは目を背け、憎み、清らかに生きなさい、と母は言う。親の眼鏡にかなうような人間でなければ友達として付き合ってはいけない。いわんや恋人においてをや。お前を惑わせる異性に触れてはいけない、と県内屈指の男子のみの進学校以外に選択肢は貰えなかった。
さて、両親はこんなことを言っているが、僕の家は別に何十代と続く名家だとか、高貴なる青い血だとか、そんなご大層なものではない。ただの成金だ。父に多少の商才があって、母に無駄な虚栄心があっただけ。そんな両親の資質を受け継いだ僕は、親の思うとおり、まっすぐに育っていった。
まっすぐに。そう、表面上は――。箱に入れられて四角く育ったスイカを見たことがあるだろうか。例えるならば、あれが僕だ。それも、表から見えないところがばっくりとひび割れて、赤い果肉を曝け出して汁を垂らす、見てくれだけの食べられないスイカだ。
趣味は勉強と投資、読む本はノンフィクションかビジネス書。そんな純粋培養された少年が思春期の頃に初めて触れたファンタジーが――AVだった。それも、マゾ男がお姉さんに尻をまさぐられて射精どころか潮まで噴いてしまうマニアックな――そう、今なら分かるが相当マニアックやつだった。
あの衝撃はそれまでの僕の常識を全て吹き飛ばした。何かネット検索していて、妙な画像がある、と何の気なしにクリックしてみただけだったのだ。たった5分ほどのサンプル動画に僕は異様な興奮を覚え、何度も繰り返し再生し、気がつけばティッシュが空になるほどに射精していた。思えば、あれが運命の分かれ道だったのだろう。
そうして、四角いスイカはひとり静かに、致命的なほどに割れて腐った。親の教えに背くことを恐れていたが、何のことはない、親にさえバレなければいいだけの話だったのだ。それまで僕が築いてきた両親との『信頼関係』のおかげで、高校生になった僕は成績を維持し、ひとりのとき以外は清廉な顔をしてさえいれば、特にうるさく言われることもなかった。
むしろさっさと家を出たくて大学受験には寝る間も惜しんで身を入れたほどだ。僕はいつしか、動画を見ながら興奮に任せてペニスをしごくだけでは満足できなくなっていた。動画の中の男のように尻をいじってみたくて仕方がなくなっていたのだ。だが、さすがに親と同じ屋根の下で尻をいじる勇気はなく、早く家を出たい、親が認めるような一流の大学なら文句も言われまい、とその一心で勉強した。
初めて肛門に指を挿れてみたときの興奮は忘れない。あれは、一人暮らしを始めた最初の夜だった。別に気持ちよかったわけではない。何しろ初めての挿入だ。しかも、中は綺麗にしてみたものの、潤滑油もなしに一本挿れてみただけだったから。だが、『男らしく』、『清らかに』生きてきた僕が、敢えて理性でもってその禁に背くという背徳感はすさまじく――僕はあの時、指を挿れた興奮だけで射精したのだった。
だが、刺激に対して人間はすぐ順応していくものだ。いつしか指だけではすぐに物足りなくなり、小さなディルドを買った。そこからはもう、坂道を転がり落ちていくようなものだった。加速度的に上がっていく性具のサイズと性能。だがそれ以上に僕の中で膨らんでいくものがあった。
――本物を挿れてみたい。
――性的に苛められたい。
――支配的に犯されたい。
そう、自分ひとりではどうやっても叶えられない欲望が。
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