鏡像

真鉄

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「乳首もいじってんのか?」
「う……、はい……」
「ほんとすけべだな、あんた」

  紘也はおもちゃの散乱したベッドの上に座り込み、背後から岩本に胸元をまさぐられていた。薄手のスポーツアンダーウェアの上からも、毛深い手の中でむにむにと形を変える大胸筋と、ツンと勃ち上がった乳首の形は丸分かりだ。

「んっ……!」

  薄くすべすべとしたシャツの上から勃起乳首を爪の先で引っ掻かれ、腹の奥へと収斂していくような甘い疼きに思わず呻く。

  アナルオナニー中に乳首をいじるのがいつしか癖になっていた。肉茎の直接的な快感とは違う、じんわりとしつつも強い雌の快感が前立腺の感度をあげるような気がするのだ。だが、アナルオナニーも乳首いじりも誰にも言ったことはなく、女にすら触らせたことはない。

  それが他人の指だというだけでここまで気持ちいいとは――。

「モロ感乳首じゃねえか。自分でここまですけべな乳首に仕上げたのか」
「う、うっ、はい……」

  耳元で囁かれる岩本の渋い声による言葉責めもいけない。耳の感度が異常なのか、渋い中にも艶のある声が悪いのか、それとも自分のいやらしさを容赦なく暴かれるというシチュエーションに弱いのか。紘也自身にも分からないが、岩本に囁かれるたびに、うなじの毛がぞくぞくと逆立つ思いだった。

「舐めてやろうか?」
「――え?」
「乳首だよ。あんたのそのモロ感乳首、ちゅうちゅう吸ったらどうなるんだろうな?」

  どう、なるのだろう。腹の奥から湧き上がる期待に息が上がる。そのまま上半身を押さえつけられ、岩本の太腿に頭が押しつけられた。その上から覆いかぶさるように、岩本が紘也の胸元へと顔を寄せていく。汗臭いような、少し饐えたような岩本の体臭に包まれた。決していい匂いではないのに、何故か確認するように嗅いでしまう。無精髭だらけの顎の向こうに赤い舌がちらちらと蠢くのが見えた。

「……っんう!」

  薄い布越しに熱くぬめった塊が押しつけられ、尖りがくにくにと押し潰された瞬間、今までに感じたことのないほどの甘い疼きが身体を駆け抜けていった。じゅうじゅうといやらしい音を立てて布越しに乳首が吸われる。周囲の肉ごと甘噛みされ、吸われた口内で熱い舌が乳首をぴんぴんと連続で弾き回す。紘也は甘くか細い声を上げ、思わず目の前の岩本のTシャツを掴んで、ひくひくと腰を跳ね上げた。

「はは、こりゃすげえや。……ちょっと待ってな」

  顔を上げた岩本は何かに気づいたのか可笑しげに笑うと、紘也を置いてベッドを下りていく。寝そべったまま荒い息をつきながら、紘也は片方だけじんじんと疼く乳首に貼り付いた布がゆっくりと冷えていくのを感じていた。もう片方も、吸ってほしい。きゅりきゅりと妙な音がするのを感じながら、意識の片隅で紘也はそんなことを考えていた。

「これなら、あんたのやらしい顔も見えるだろ?」
「え、それは……」

  戻ってきた岩本に再度背後から抱えられた紘也が目にしたのは、ベッド横にあった全身が映るほどに大きな姿見だった。本来、壁に立てかけられていた姿見が、枕元の脇にこちらを向いて据え置かれていた。

「どうだ?」
「……う、あ」

  鏡には、ベッドの上で背後から男に抱き込まれた、いやらしい表情の男が座りこんでいた。

  潤んだ目。紅潮した頬。口元はだらしなく開いている。薄いシャツには片方の乳首だけがくっきりと赤く透けて見えていた。もう片方もピンと勃ち上がり、布の下から触ってほしいと自己主張している。

「ああ、ちゃんと全部映ってんな。あんたのすけべな姿、よーく見ときなよ」

  喉奥で鳴る岩本の笑い声に、悪寒とも快感ともつかない震えが背筋を駆け抜けていった。乳首だけでこれなのだ。ふ、ふ、と上ずった息が紘也の唇から漏れた。

  ぶちゅ、と背後で濡れた音がした。目の前に見せられた岩本の両手のひらはローションでぬるぬるといやらしく濡れ光っている。ごくり、と喉を鳴らした紘也の耳元で岩本が笑いを含んだ声で囁く。

「さあ、おっぱいを可愛がってやろうなあ」

  薄いシャツを盛り上げる大胸筋の上に岩本の大きな手が覆い被さった。そのまま柔らかな筋肉をまるで女性の乳房のように捏ね回す。

「……ふ、うっ……」

  鏡に映った、べっとりと胸に貼りついた布からくっきりと浮かび上がったの二つの赤い楕円から目が離せない。太い指がゆっくりと、ツンと尖った乳首を下からなぞり上げた。

「ン、はあっ……!」

  押し込むようにぐりぐりと潰されたかと思えば、指先で挟んで摘み上げられる。ぬめりでぷるりと逃げ出す衝撃に腰が跳ねた。時には肉ごと揉まれ、時には爪で弾かれ、予期できない指先に甘く翻弄され、紘也はただびくびくと身体を戦慄かせ、鼻にかかった甘い声を漏らし続けた。

「おっぱい、気持ちいいか?」

  岩本の甘く錆びた声に紘也は黙って何度も頷いた。くく、と岩本が喉の奥で笑う。

「だろうなぁ。もうちんぽガン勃ちしてるもんなぁ」

  そう言われて鏡を見ると、いつの間にか紘也の股間は熱く勃ち上がり、ハーフパンツを持ち上げていた。中ではかすかに濡れている感触さえする。岩本の手が紘也のハーフパンツにかかった。

「……はは、いやらしいビキニ履いてんなぁ、おい。スケスケとかほんと、あんたすけべすぎんだろ」
「う、う……」

  あまりの羞恥に顔を背けつつも、紘也は鏡から目が離せない。太腿の中間までずらされたハーフパンツを無意識に自ら脱ぎ捨て、半透明の小さな白ビキニにくっきりと浮かび上がる自分の屹立を食い入るような目で見つめていた。先端からは透明な粘液が溢れ、赤い亀頭がまざまざと浮き出しているのがひどくいやらしい。

「言っとくが、俺はちんぽなんて触らねえからな。あんたが自分でシコる分には止めやしねえけど」

  岩本は陶然と鏡に魅入る紘也の耳元に囁くと、身体に貼りついた薄いシャツを腋まで捲りあげた。たくし上げられてくしゃくしゃになったシャツが胸筋に食い込み、くっきりとした陰影を胸の谷間に落とした。

「あ、あ、……っ、んんんっ!」

  指先で肉をくびり出し、人差し指が固く尖った乳首を何度も引っ掻いていく。むず痒いような疼きは止まらない指先にどんどんと感度を増していき、紘也は高まる快感に顎を跳ね上げ、びくびくと身体を震わせた。

「あ、あ、だめ、イッちゃうから、イッちゃう……!」

  震えの止まらない身体と高まり続ける疼きに、紘也は翻弄され、舌足らずな声で譫言のように呟く。腕の中で身体を硬直させ、がくがくと腰を跳ね上げる様子は、岩本の目には実際に達しているように見えた。じわりとビキニが濡れ、更に紘也の屹立が露わになっていく。

  ようやく指を止めると、一際大きく身体を跳ねた後、紘也の身体からぐったりと力が抜けていった。いじられ続けた乳首はじんじんと熱を持って疼き、ただ荒い息を吐くだけでも身体中にさざ波のようなじんわりとした快感が広がっていく。特に、腹の奥がぞくぞくと甘く疼いていた。

「はっ、あ……、あ……」
「……乳首でイクとかすけべすぎ」
「い、いつもは、こんなんじゃ……」

  笑いを含んだ岩本の声に、荒い息の合間に紘也が言い訳をする。乳首だけで軽く達してしまうなど、本当に初めてなのだ。自分で自分を愛撫したところで、無意識的にストップをかけてしまうが、他人の手は予測もできないし容赦もしない。ひどく恥ずかしかったが――今までにないほど気持ちよかったのは確かだ。

「じゃあ、そろそろケツマンで遊ぼうか」
「う、……はい」
「ケツだけ出して、自分でいじるとこ俺に見せてみな」

  耳元で囁かれた岩本の命令に、ぞくりと背筋が震えた。鏡の前で足を持ち上げ、震える指で白ビキニをゆっくりとめくっていく。鏡の中に露わとなった秘所は、事前に中に仕込んでいたローションがさきほどの絶頂で少し漏れ出し、ぬめりを帯びて濡れ光っていた。紫がかった茶色の肉門が、鏡の中でひくひくと蠢いている。

「濡れちゃってほんと、まんこみたいなケツしてんなぁ、あんた」
「う、う……」
「ほら、いつもするみたいにケツマン広げてみな。ローションもっといるか?」

  そう囁くと、持ち上げていた足を岩本が掴み、引き上げた。白い太腿に食い込む浅黒い指のコントラストがひどく扇情的だ。ローションを足されてぬらぬらと光る窄まりに、紘也はそろりと指を伸ばした。

「ん、ん……」

  二本の指を揃え、まずは肉門を柔らかくなるまで揉みほぐす。これだけでも気持ちがいい。鏡の中の、慣れきったいやらしい手つきが自分でもひどくそそる。恍惚の表情で鏡の中の自慰行為に見入っていた紘也だったが、食い入るように鏡に映った秘所を見つめている背後の岩本に気づいた。

  ぎらぎらした眼差しはいやらしく色づいた雄膣の入り口に釘付けになっていて、紘也が自分のことを見ていることにも気づいていない。俺の身体に、いやらしいところに魅入っている――。そう思うと、ぞくぞくと歓喜が紘也の身体を駆け抜けていった。

  指先で谷間を広げ、肉門をいきませた。挿れるときにはこうするほうが楽なのだ。まるで独立した生き物のように口を開いた肉門に、頭上でごくりと喉が鳴る音が聞こえ、太腿に食い込んだ太い指がひくりと震えた。

  もっと見てくれ――。

「ふ、ううっ……」
「……すげえ」

  二本の指が一気に中へと飲み込まれていった。思わず感嘆の声をあげる岩本に、紘也はちらりと恍惚の笑みを浮かべると、ぐちゅぐちゅと音を立てて抜き差しを始めた。見られていると思うと、ぞくぞくと腹の奥から喜悦が溢れ出す。見て、見て。もっと、見て――。

「こんなもん入んのかよと思ってたけど、あんたなら余裕そうだな」

  忘我の境地で後肛を広げていた紘也の目の前に、直径3cmほどのボールの連なったおもちゃが胸元に落とされた。肉門を押し広げる感触がたまらない、お気に入りのおもちゃの一つだ。

「四つん這いになって、鏡に向かってケツを突き出せ。そうすりゃ足の間からあんたも見えるだろ?」

  そう囁くと、岩本は紘也の身体から手を離し、脇に退いた。恍惚でぼんやりとした頭に命令が染み渡る。紘也はのろのろとうつ伏せになり、腰を上げた。広げた足の間から、鏡に映った自分の様子が目の入る。

「……っ」

  高く上げた尻の谷間には、いやらしく色づいた肉門が物欲しげに戦慄いていた。肉厚の尻肉に食い込んだビキニが、却って肉をぷりっと押し上げていて、ひどく肉感的だった。俺はこんなにいやらしい尻をしていたのか……。熱い溜め息がシーツを湿らせる。

「あんたのケツマンはどこまで飲み込めるかな?」

  岩本が楽しげに笑いながら、ローションに濡れたボールの連なりを鏡越しに見せつけるようにぬちゃぬちゃとしごいた。先端のボールが後肛に押しつけられる。紘也は息を詰め、腹に力を込めていきむと肉門を押し開き、これから自分の中を蹂躙するボールに愛おしげに口づけた。

「まずはひとつ」
「……っ」

  ボールが入り口を押し広げ、ぬるんと入り込んだ。ふたつ、みっつ、と声を出して数えながら、岩本が紘也の中へとボールの連なりを次々と埋め込んでいく。徐々に腹の中の圧迫感が膨らみ始め、紘也は身体から力を抜き、深呼吸をするに努めた。

「すげえなあ。全部入っちまった」
「う……」

  収まり切らず、肉門から中途半端に頭を出している最後の一つを指先でゆるく押しながら岩本が満足そうに笑った。くぷくぷと後肛から頭を出したり引っ込めたりする黒いボールは、岩本の指先が離れるとぷるりと押し出され、会陰の辺りに垂れ下がった。この手のおもちゃは出し入れするのが楽しいのであって、腹に収めてもただ苦しいだけだ。出してしまわないように、苦心して尻に力を込めた。

「まだ出すなよ」
「……っ!」

  そう言うと同時に、岩本の手がボールの詰まった汗ばんだ下腹に触れた。屹立に絡まる濡れたビキニからはみ出た陰毛をじゃりじゃりと掻き混ぜ、下腹を押し込むようにゆっくりと撫で上げる。そのまま震える脇腹を辿り、赤く熟れた乳首を抓んだ。

「あっ、ふ……」
「勝手にひり出したらお仕置きだからな」
「っ、っ……!」

  指の腹同士で抓まれ、すり潰された乳首は痛みと甘さの混じった快感を弾けさせる。かと思えば優しく転がされ、押し込まれ、また抓られる。緩急をつけた乳首責めに、胸から広がる快感にひくひくと腹筋が震え、雄膣をみっちりと満たすボールがごりごりと腹の中で蠢いた。甘い快感に霞む紘也の唇から一条の涎が垂れ落ちる。

「あっ……!」

  小さな悲鳴をあげて肉門を締めたときには既に遅かった。戦慄いた腹筋に押されてボールはふたつ、みっつと押し出され、入り口からぶらりと垂れ下がっていた。岩本の指が垂れ下がったおもちゃをつつく。

「おしおきだな」
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