魂の捕食者

真鉄

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魂の捕食者

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  アーベルのぬめる肉の隘路が巨大な質量によって押し開かれていく。濡れた粘膜と粘膜が擦れ合う感触が堪らなかった。じわじわと浸食する快感を追いかけ始めた彼は、噛み締めるシーツが涎で湿り、丸く変色していることにも気づかない。

「……んはぁぁ……」

  自ら招き入れた巨根の先端が身体の奥で疼く快楽の源泉を余すことなく押し潰し、アーベルは恍惚の溜め息をついた。じっとその様子を観察していた異形が小さく腰を抜き差しし始める。

「あっ、あ、ああん……ああ……」
「もっともっと欲しくないか?」

  か細くも確実に快楽にとろけた声を出し始めたアーベルに異形が優しく囁きかける。ぬちぬちといやらしい水音が部屋に響く。咥え込むだけよりも、擦られた方がもっと気持ちがいい。神父の腰が揺らめいた。更に深く異形の肉竿が媚肉を割り開き、ついに先端が結腸の弁にまで達した。

「ああああ……っ」
「お前の中がきゅうきゅうと締め付けてくるぞ……。最高だ」

  異形は身を倒し、アーベルの上に覆い被さった。しっとりと汗に濡れた神父の肌と、爬虫類じみた異形の肌がぴったりと重なる。異形はアーベルの脇の下から手を差し入れ、神の意匠を握り込んでいた手をもぎ取ると、代わりに指を絡めてがっちりと拘束した。手を掴まれ、脚で太腿を押さえ込まれ、今やアーベルの自由になるのは頭と膝から下だけだ。

「ひああああああっ!」

  快感が身体の奥で爆発した。異形が激しく腰を打ち付け始めたのだ。濡れた媚肉を巨大な熱がぐじゅぐじゅと前後する。びりびりと痺れるような甘い快感にアーベルは叫び、震え、絶頂した。待ちわびていたのだ。これを、ずっと。指を絡ませた手をぎゅっと握りしめ、アーベルは首を仰け反らせた。

「アーベル……」
「あ、あああっ……!」

  異形は名を囁きながら神父の耳をちろちろと舐めた。潤んだ青い瞳と金の瞳が交わり、アーベルは誘うように赤い舌を出した。異形の長い舌が赤い舌に巻きつき、そのまま深く口付ける。上からも下からもじゅぷじゅぷと濡れた音を立て、ただ快楽を追い求めた。

「アーベル、気持ちいいか?」

  金色の瞳が問いかける。絶えず痺れるような快感に浚われ、何も考えることのできないアーベルはこくこくと頷いた。異形はにんまりと笑うと突然身を起こし、ずるりと巨根を引き抜いてしまった。

  どうして? と疑問でいっぱいのアーベルの身体を引き起こし、異形は自らの身体の上に彼を乗せた。空虚を抱えた尻の谷間を異形の肉竿がぬちぬちと前後する。アーベルは途方にくれた呆けた顔で異形を見た。

「自分で挿れなさい。そしたら、もっと気持ちよくしてあげよう」

  アーベルは尻の下の巨大な屹立を一瞥し、眉根を寄せた。身体の奥は我慢ならないほどに疼いている。快感を嫌というほど知ってしまった今となっては、誘惑に打ち克てるほど理性は強靭ではなかった。

  そろりとアーベルの手が背後に伸びた。ひくつく蕾に切っ先をあてがうと、ゆっくりと腰を下ろし始める。

「う、ああああっ……!」

  巨大な熱が空虚を埋め始め、アーベルは恍惚と微笑んだ。満たされていく。張り出したエラがごりごりと快感の源泉をえぐり、異形の胴を跨いで踏ん張った太腿がぶるぶると震えた。

「気持ちいところに自分で当てるといい」

  異形が長い手を伸ばし、アーベルの尖り切った乳首をつまんで引っ張り下ろした。つられて前屈みになりながらも、いやらしく腰を振り、言われた通りに腹の中をえぐるように動かした。首からぶら下がる神の意匠がちゃりちゃりと上下に踊る。

「まだ全部入りきっていないよ」

  異形が腰を揺らし、アーベルは熱い息を吐いた。とろけた顔で困ったように異形を見つめた。これ以上、迎え入れるのは怖い。気持ちよすぎて怖いのだ。異形は乳首から手を離すと神父の肉厚な尻をがっしりと掴み、口端を吊り上げた。

「仕方のない子、だなっ!」
「ひいぃぃぃっ!!」

  下から強く腰を打ち付けられ、ごりごりと媚肉を削りながら長大な剛直がアーベルの身体の奥深くにずっぽりとはまり込んだ。先端は結腸を超え、弁をこじ開けて更にその奥にその身を収めた。アーベルは白目を剥いて天井を仰ぎ、空気を求めるようにはくはくと唇をわななかせた。まるで雷が全身を貫いたかのような強烈な快感に全てがおぼつかない。

  神父の魂はまだ燃えるだろうか。異形は最後の一押しに出た。

「ここはお前の子宮だよ」

  内側からせり出した下腹を異形の手が撫でた。焦点の合わない青い瞳がゆっくりと下降する。金色の瞳を楽しげに細まる。

「お前は俺の子を孕むのだ」
「子、を……はらむ……?」

  徐々に目を見開き、我に返り始めるアーベルの表情を異形はじっくりと眺める。ああ、何てこの魂は美しいのだろう。一際激しく、美しく燃え盛っている。

  アーベルは恐怖におののき、異形の腕を掴んだがびくともしない。青い目を暗くして否定するように激しく首を振る。悪魔の子を孕むなど、とんでもないことだ。自分が堕ちるだけならともかく、自ら悪魔を産み出すなど絶対に許されない。

「いやっ! いやだっ! 離せっ!」
「こんなにしっかりと俺のモノを咥え込んでいてそれはないだろう?」
「あ、ああっ! や、いやだぁっ……!」

  異形は抵抗するアーベルを両手で無理やり抱き込むと、激しく腰を打ち込み始めた。先端が結腸の弁をぬぽぬぽと出入りする度に強烈な甘い電流が身体中を走り抜け、抵抗する力が抜けていく。いやだ、だめだ、と拒絶する意識と、もっと、もっと、と貪欲に快感を貪ろうとする肉体の間で魂が燃え盛る。

「あっ、あっ、やら、あっ、ん、いやぁ……!」

  絶望にか快楽にか零れ落ちた涙を異形の舌が舐め取る。異形にとっては甘露だ。堪らない。腰の動きを更に早め、強く突き入れると、アーベルの震えが皮膚を通して異形にまで余すことなく伝わってくる。まるで清らかな魂と溶け合っているかのような恍惚。

「さあ、アーベル! 俺の子種を受け取れ!」
「ひっ……!」

  抱きすくめられたまま、一際強く突き入れられた先端が、子宮の中で大きく膨らんだ気がした。

「いやっ! いやだっ! やあああああっ……!」

  びゅるっ! びゅるびゅるっ! 大量の熱い飛沫が媚肉に勢いよく叩きつけられ、その衝撃でアーベルは白目を剥いて絶頂に達した。開きっぱなしの口からは涎が垂れ落ちるが、それすらも気づいていない。

  脆くなっていた理性は壮絶なほどの快感の奔流によってあっけなく崩れ去った。

「あ、あ……あは……」

  射精したにもかかわらず、未だに萎えない巨根を身体の奥深くまで貫いたまま身を起こさせ、そのままアーベルを寝台に身を横たえさせた。力なく奇妙な笑みを浮かべるアーベルの腰を掴むとほとんど先端まで抜いては根元まで突き入れる激しい抜き差しを繰り返す。

  アーベルはもう、ただ喘ぎ、快楽を貪るだけの肉塊と成り果てていた。清らかな魂は激しい葛藤の末に燃え尽きたのだ。ああ、楽しかったなぁ。異形は哄笑を撒き散らしながら媚肉の残骸を貪る。子を孕めなど戯言だ。本当に孕もうが、孕まなかろうが異形にとってはどうでもよかった。清らかな魂を消費すること、それだけが彼の目的なのだから。

  激しい突き入れにアーベルの屹立が揺れ、手も触れていないのに白濁を噴き出した。それは勢いよく飛び、胸板で揺れる神の意匠を汚した。


(了)
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