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20:邪魔者
しおりを挟む観覧席の外で王子を待っていた。こんな場所では狙われないと、安心しきっているだろう。この姿の自分なら、警戒心を抱かれることもない。チャンスは三回。入ってくる時、休憩時、帰る時だ。
別に今回、本当に殺せるとは思っていない。いや、万が一本当に殺せれば、主人の期待に応えられるだろうが、おそらくそれは難しい。
前回の襲撃で捕まった男によると、王子と婚約者は、いつのまにか馬車から離れた場所にいたらしい。そんな不可思議なことができるのは、この国の貴族だけが持つというスキル持ちくらいのものだろう。まさか本当にそんな力を持つ人間が存在しているとは驚きだが。
休憩になって、王子が出てきた。それに気づいた公爵令嬢がタイミングよく話しかける。出てきただけでなく、立ち止まらせる人物の登場に、口角が持ち上がる。
軽くて細身のナイフは幼い頃からの相棒だ。いつ、どんな状況でも、相手に気取らせずに投げることができる。それは、文字通り死ぬ気で磨いた技術だ。
ホールに王子の婚約者が出てきて、王子に近づいていくのにも注意を払いつつ、ナイフをスナップを利かせて投げる。反応が異常に早い護衛が王子を庇う。
次の瞬間、ナイフは消えた。そして、尻餅をついた王子。護衛は突き飛ばした王子を見た後、こちらを向き、私を通り過ぎて遙か後方を探るように見つめていたが、首を傾げてすぐに視線を逸らした。
ナイフが消えたということは、やはり瞬間移動か何かを使えるということだ。どこに消えたのか分からないため少々不安が残るが、短剣と同じく町中の武器屋という武器屋を探さなければ足はつかないはず。
問題は誰がスキル持ちかということだ。もし、あの護衛がスキル持ちであれば、王子を庇う必要はなかった。そして、婚約者と共にいた騎士は、ナイフに気づいてすらいなかった。残るは、王子と婚約者。
ならば、次の計画の際には、婚約者を王子から引き離せばいい。婚約者がスキル持ちであれば、僥倖。王子がスキル持ちなら、気づかせなければいいだけだ。
劇の再開を示すブザーが鳴り響いた。
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