17 / 28
図書館で
4P
しおりを挟む
いつもと雰囲気が違うわたしに驚く爽太くんを置いて、彩奈はキョロキョロと周りを見回している。
もちろん、彩奈の御目当てはと言うと――。
「…いたっ!!怜也!生怜也だよぉぉ!!」
ロケバスから出てきた怜也を見つけるなり、大興奮の彩奈。
彩奈は怜也しか見えていないみたいで、メイクを終えたわたしのことも、隣にいる爽太くんのことも忘れている。
そんな彩奈の横にいる一条くんは、眠たそうにあくびをしていた。
「ごめんね、一条くん。彩奈に付き合わせちゃって…」
「べつにいいよ。一度はこういう現場、見てみたかったし」
怜也に大興奮の彩奈と違って、一条くんは実に落ち着いている。
金髪で目立ってはいるけど、同じ中学3年生とは思えない冷静さだ。
しばらく一条くんと他愛のない話をしていたけど、一条くんからわたしの衣装やメイクについて聞かれることはなかった。
衣装は、高校生をイメージしたブレザーで、普段着ているセーラー服とはまったく違う。
メイクだって、爽太くんが言ってくれたように、ちょっと大人びた感じに仕上がっている。
なのに、なにも触れてくれない…。
やっぱり…一条くんの中では、あの告白はなかったことになっているのかな。
でもそうだとしたら、どうしてわたしに告白を…。
モヤモヤしていると、わたしの肩になにかが触れた。
見上げると…。
「今日が最後だな、ひらり」
わたしよりも頭1つ分背が高い怜也だった。
怜也が1メートルにも満たない距離にきて、彩奈は興奮のあまり、口がパクパクしていた。
息をするのも忘れるくらい、怜也に夢中だ。
「あ…彩奈!ちょっと落ち着きなよ!1回、深呼吸してっ」
「だっ…だって!目の前に…れ、怜也がっ…!」
「ひらりの友達?オレのこと知ってくれてるの?サンキュー!」
とか言って、キラースマイルを送る怜也。
そのせいで、彩奈は失神寸前だ。
「…彩奈、しっかりして!」
「いいよ~。オレが面倒見てるから」
「ありがとう、爽太くん!」
さすが、こういうときに爽太くんは頼りがいがある。
彩奈を木陰のベンチまで連れていってくれた。
そんな彩奈を心配そうに眺める怜也。
「…大丈夫かな?あのコ」
「たぶん大丈夫だと思うっ。彼氏もついてることだし」
元はと言えば、怜也のキラースマイルが彩奈の症状を悪化させたんだけどね。
「ひらりの学校の友達って、初めて見たよ」
「そうだね。あのコが、怜也の大ファンでさ」
「マジかっ!それに、あのコの彼氏もいい人そうだね」
彩奈と爽太くんのやり取りを微笑ましそうに見つめる怜也。
だけど、そばにいた一条くんを見るなり、その表情は一変する。
「…で、キミもひらりの友達?」
まるでたしなめるかのように、一条くんを上から下へと睨みつける。
「そうですけど…、なにか?」
「おいおい、冗談だろ?ひらりに、こんな不良の友達がいるなんて思ってなかったよ」
「…怜也!、たしの友達に、なんてこと言うの!」
突然の怜也の無礼な態度に、わたしは怜也の腕を引っ張って反論する。
子ども扱いするようにわたしをなだめる怜也だけど、ニヤリと口角を上げる。
「それに……。本当に…ただの友達?」
意味深な怜也の言葉。
それに素直に反応してしまって、すぐに言葉が出てこなかった。
――だって。
『俺、花宮さんのことが好きだから。だれにも渡したくないくらい好きだから』
一条くんの気持ちを知ってしまったから。
忘れてくれていいよと言われたけれど――。
わたしたちはもう、前みたいな『ただの友達』…ではない。
「…まさか、彼氏?」
わたしの困っている反応が楽しいのか、怜也が茶化すように聞いてくる。
告白はされた…。
だけど、それだけ。
わたしと一条くんは、それ以上なにも…。
「…一条くんは、ただの――」
「ただの友達です」
わたしが言うよりも先に、一条くんが口を開いた。
迷いのない言葉と、そのまっすぐな視線が怜也に向けられる。
と同時に、その無機質な言葉はわたしの胸に突き刺さる。
「な…なんかキミ、こわいね~。そんなに睨まなくてもいいじゃんか」
「…すみません。もともとこういう顔で」
「まぁ…それならいいんだけどさっ。2人のやり取り見てたら怪しくて、隠れて付き合ってるのかなって思っただけー」
怜也は、悪びれる様子もなくケラケラと笑う。
怜也にとっては、冗談半分だったのかもしれない。
もちろん、彩奈の御目当てはと言うと――。
「…いたっ!!怜也!生怜也だよぉぉ!!」
ロケバスから出てきた怜也を見つけるなり、大興奮の彩奈。
彩奈は怜也しか見えていないみたいで、メイクを終えたわたしのことも、隣にいる爽太くんのことも忘れている。
そんな彩奈の横にいる一条くんは、眠たそうにあくびをしていた。
「ごめんね、一条くん。彩奈に付き合わせちゃって…」
「べつにいいよ。一度はこういう現場、見てみたかったし」
怜也に大興奮の彩奈と違って、一条くんは実に落ち着いている。
金髪で目立ってはいるけど、同じ中学3年生とは思えない冷静さだ。
しばらく一条くんと他愛のない話をしていたけど、一条くんからわたしの衣装やメイクについて聞かれることはなかった。
衣装は、高校生をイメージしたブレザーで、普段着ているセーラー服とはまったく違う。
メイクだって、爽太くんが言ってくれたように、ちょっと大人びた感じに仕上がっている。
なのに、なにも触れてくれない…。
やっぱり…一条くんの中では、あの告白はなかったことになっているのかな。
でもそうだとしたら、どうしてわたしに告白を…。
モヤモヤしていると、わたしの肩になにかが触れた。
見上げると…。
「今日が最後だな、ひらり」
わたしよりも頭1つ分背が高い怜也だった。
怜也が1メートルにも満たない距離にきて、彩奈は興奮のあまり、口がパクパクしていた。
息をするのも忘れるくらい、怜也に夢中だ。
「あ…彩奈!ちょっと落ち着きなよ!1回、深呼吸してっ」
「だっ…だって!目の前に…れ、怜也がっ…!」
「ひらりの友達?オレのこと知ってくれてるの?サンキュー!」
とか言って、キラースマイルを送る怜也。
そのせいで、彩奈は失神寸前だ。
「…彩奈、しっかりして!」
「いいよ~。オレが面倒見てるから」
「ありがとう、爽太くん!」
さすが、こういうときに爽太くんは頼りがいがある。
彩奈を木陰のベンチまで連れていってくれた。
そんな彩奈を心配そうに眺める怜也。
「…大丈夫かな?あのコ」
「たぶん大丈夫だと思うっ。彼氏もついてることだし」
元はと言えば、怜也のキラースマイルが彩奈の症状を悪化させたんだけどね。
「ひらりの学校の友達って、初めて見たよ」
「そうだね。あのコが、怜也の大ファンでさ」
「マジかっ!それに、あのコの彼氏もいい人そうだね」
彩奈と爽太くんのやり取りを微笑ましそうに見つめる怜也。
だけど、そばにいた一条くんを見るなり、その表情は一変する。
「…で、キミもひらりの友達?」
まるでたしなめるかのように、一条くんを上から下へと睨みつける。
「そうですけど…、なにか?」
「おいおい、冗談だろ?ひらりに、こんな不良の友達がいるなんて思ってなかったよ」
「…怜也!、たしの友達に、なんてこと言うの!」
突然の怜也の無礼な態度に、わたしは怜也の腕を引っ張って反論する。
子ども扱いするようにわたしをなだめる怜也だけど、ニヤリと口角を上げる。
「それに……。本当に…ただの友達?」
意味深な怜也の言葉。
それに素直に反応してしまって、すぐに言葉が出てこなかった。
――だって。
『俺、花宮さんのことが好きだから。だれにも渡したくないくらい好きだから』
一条くんの気持ちを知ってしまったから。
忘れてくれていいよと言われたけれど――。
わたしたちはもう、前みたいな『ただの友達』…ではない。
「…まさか、彼氏?」
わたしの困っている反応が楽しいのか、怜也が茶化すように聞いてくる。
告白はされた…。
だけど、それだけ。
わたしと一条くんは、それ以上なにも…。
「…一条くんは、ただの――」
「ただの友達です」
わたしが言うよりも先に、一条くんが口を開いた。
迷いのない言葉と、そのまっすぐな視線が怜也に向けられる。
と同時に、その無機質な言葉はわたしの胸に突き刺さる。
「な…なんかキミ、こわいね~。そんなに睨まなくてもいいじゃんか」
「…すみません。もともとこういう顔で」
「まぁ…それならいいんだけどさっ。2人のやり取り見てたら怪しくて、隠れて付き合ってるのかなって思っただけー」
怜也は、悪びれる様子もなくケラケラと笑う。
怜也にとっては、冗談半分だったのかもしれない。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
初恋の王子様
中小路かほ
児童書・童話
あたし、朝倉ほのかの好きな人――。
それは、優しくて王子様のような
学校一の人気者、渡優馬くん。
優馬くんは、あたしの初恋の王子様。
そんなとき、あたしの前に現れたのは、
いつもとは雰囲気の違う
無愛想で強引な……優馬くん!?
その正体とは、
優馬くんとは正反対の性格の双子の弟、
燈馬くん。
あたしは優馬くんのことが好きなのに、
なぜか燈馬くんが邪魔をしてくる。
――あたしの小指に結ばれた赤い糸。
それをたどった先にいる運命の人は、
優馬くん?…それとも燈馬くん?
既存の『お前、俺に惚れてんだろ?』をジュニア向けに改稿しました。
ストーリーもコンパクトになり、内容もマイルドになっています。
第2回きずな児童書大賞にて、
奨励賞を受賞しました♡!!
イケメン男子とドキドキ同居!? ~ぽっちゃりさんの学園リデビュー計画~
友野紅子
児童書・童話
ぽっちゃりヒロインがイケメン男子と同居しながらダイエットして綺麗になって、学園リデビューと恋、さらには将来の夢までゲットする成長の物語。
全編通し、基本的にドタバタのラブコメディ。時々、シリアス。
時空捜査クラブ ~千年生きる鬼~
龍 たまみ
児童書・童話
一学期の途中に中学一年生の教室に転校してきた外国人マシュー。彼はひすい色の瞳を持ち、頭脳明晰で国からの特殊任務を遂行中だと言う。今回の任務は、千年前に力を削ぎ落し、眠りについていたとされる大江山に住む鬼、酒呑童子(しゅてんどうじ)の力の復活を阻止して人間に危害を加えないようにするということ。同じクラスの大祇(たいき)と一緒に大江山に向かい、鬼との接触を試みている間に女子生徒が行方不明になってしまう。女子生徒の救出と鬼と共存する未来を模索しようと努力する中学生の物語。<小学校高学年~大人向け> 全45話で完結です。
盲目魔女さんに拾われた双子姉妹は恩返しをするそうです。
桐山一茶
児童書・童話
雨が降り注ぐ夜の山に、捨てられてしまった双子の姉妹が居ました。
山の中には恐ろしい魔物が出るので、幼い少女の力では山の中で生きていく事なんか出来ません。
そんな中、双子姉妹の目の前に全身黒ずくめの女の人が現れました。
するとその人は優しい声で言いました。
「私は目が見えません。だから手を繋ぎましょう」
その言葉をきっかけに、3人は仲良く暮らし始めたそうなのですが――。
(この作品はほぼ毎日更新です)
甘い香りがする君は誰より甘くて、少し苦い。
めぇ
児童書・童話
いつもクールで静かな天井柊羽(あまいしゅう)くんはキレイなお顔をしていて、みんな近付きたいって思ってるのに不愛想で誰とも喋ろうとしない。
でもそんな天井くんと初めて話した時、ふわふわと甘くておいしそうな香りがした。
これは大好きなキャラメルポップコーンの匂いだ。
でもどうして?
なんで天井くんからそんな香りがするの?
頬を赤くする天井くんから溢れる甘い香り…
クールで静かな天井くんは緊張すると甘くておいしそうな香りがする特異体質らしい!?
そんな天井くんが気になって、その甘い香りにドキドキしちゃう!
山姥(やまんば)
野松 彦秋
児童書・童話
小学校5年生の仲良し3人組の、テッカ(佐上哲也)、カッチ(野田克彦)、ナオケン(犬塚直哉)。
実は3人とも、同じクラスの女委員長の松本いずみに片思いをしている。
小学校の宿泊研修を楽しみにしていた4人。ある日、宿泊研修の目的地が3枚の御札の昔話が生まれた山である事が分かる。
しかも、10年前自分達の学校の先輩がその山で失踪していた事実がわかる。
行方不明者3名のうち、一人だけ帰って来た先輩がいるという事を知り、興味本位でその人に会いに行く事を思いつく3人。
3人の意中の女の子、委員長松本いずみもその計画に興味を持ち、4人はその先輩に会いに行く事にする。
それが、恐怖の夏休みの始まりであった。
山姥が実在し、4人に危険が迫る。
4人は、信頼する大人達に助けを求めるが、その結果大事な人を失う事に、状況はどんどん悪くなる。
山姥の執拗な追跡に、彼らは生き残る事が出来るのか!
がらくた屋 ふしぎ堂のヒミツ
三柴 ヲト
児童書・童話
『がらくた屋ふしぎ堂』
――それは、ちょっと変わった不思議なお店。
おもちゃ、駄菓子、古本、文房具、骨董品……。子どもが気になるものはなんでもそろっていて、店主であるミチばあちゃんが不在の時は、太った変な招き猫〝にゃすけ〟が代わりに商品を案内してくれる。
ミチばあちゃんの孫である小学6年生の風間吏斗(かざまりと)は、わくわく探しのため毎日のように『ふしぎ堂』へ通う。
お店に並んだ商品の中には、普通のがらくたに混じって『神商品(アイテム)』と呼ばれるレアなお宝もたくさん隠されていて、悪戯好きのリトはクラスメイトの男友達・ルカを巻き込んで、神商品を使ってはおかしな事件を起こしたり、逆にみんなの困りごとを解決したり、毎日を刺激的に楽しく過ごす。
そんなある日のこと、リトとルカのクラスメイトであるお金持ちのお嬢様アンが行方不明になるという騒ぎが起こる。
彼女の足取りを追うリトは、やがてふしぎ堂の裏庭にある『蔵』に隠された〝ヒミツの扉〟に辿り着くのだが、扉の向こう側には『異世界』や過去未来の『時空を超えた世界』が広がっていて――⁉︎
いたずら好きのリト、心優しい少年ルカ、いじっぱりなお嬢様アンの三人組が織りなす、事件、ふしぎ、夢、冒険、恋、わくわく、どきどきが全部詰まった、少年少女向けの現代和風ファンタジー。
王女様は美しくわらいました
トネリコ
児童書・童話
無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。
それはそれは美しい笑みでした。
「お前程の悪女はおるまいよ」
王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。
きたいの悪女は処刑されました 解説版
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる