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図書館で
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「花宮さん。そこは、こうしたほうがわかりやすく………って、聞いてる?」
わたしの顔を一条くんが覗き込む。
間近にきた一条くんの顔にドキッとして、とっさに後ろに引いてしまった。
「…聞いてる!聞いてる!」
とは言ってみたけど、本当のところは…あまり聞いていない。
そもそも、『あのあと』で勉強に集中しろと言うほうが難しい。
『島田さんとしゃべってるんだろうなとは思ったけど…。そんなに長くなるような話?』
『うん、まぁ~ねっ。ひらりが、一条くんのことを好きって話…♪』
『ふ~ん。そうなんだ”』
彩奈があんなこと言ったけど、一条くんは…わたしのことどう思ってるの?
わたしなんてっ――。
『なに言ってんの?あんたたち、両想いだからっ』
彩奈にああ言われてから、今まで以上に意識しまくりだし…!
いつもと同じ隣の席だけど、図書室で横並びで座ると、そこには教室の机と机の間にある隙間なんてなくて――。
ちょっと動けば、一条くんと肩が触れるくらい近い。
こんなに一条くんと近くになって、初めて気づくこともある。
ふわりと香る柔軟剤のいい匂い。
きれいな指。
シャツの襟元の隙間から見えた、小さなホクロ。
そのひとつひとつの気づきに、わたしはドキドキさせられる。
「…なに。さっきから」
だから、うっかり見惚れていたら、その視線が気になった一条くんが目を細める。
「ご…ごめん!なんでもないっ!」
「なんでもないわけないだろ。さっきから、チラチラこっち見て」
図書室で小声で話す会話さえも、まるでナイショの話をしているみたいでドキッとする。
そんなわたしの耳に、ふと聞こえた周りの会話――。
「…あっ、見て!あれ、PEACEのひらりちゃんじゃん」
「ホントだー!勉強してるのかな?隣にいるのは……彼氏?」
「彼氏じゃないでしょー。恋愛禁止なんだから」
「そうだよね~。それに、あの人って……学校一の不良でしょ?そもそも、ひらりちゃんに釣り合わないかっ」
わたしたちには聞こえないようなヒソヒソ話のつもりだったかもしれない。
だけど、ここは図書室。
静かな空間に、その言葉たちはいやってほどにわたしの耳に入ってきた。
わたしに聞こえたということは、隣にいる一条くんにもきっと――。
2人組の女の子は、わたしに勉強を教える一条くんを見て、クスクスと笑っている。
わたしと一条くんが…釣り合わない?
そんなのだれが決めることなの?
そりゃ、一条くんは金髪が似合っててかっこいいから、わたしみたいなどこにでもいるような女の子が隣にいるべきじゃないかもしれない。
…だけど、わたしは一条くんの隣にいたい。
一条くんの隣にいさせてほしい。
釣り合わないとか、似合ってないとか、そんなのなんだっていい…!
だって、わたしは一条くんのことが――。
わたしはその女の子たちに言い返そうと、机に手をついて立ち上がった。
だけど、わたしの腕を一条くんが握った。
「…いいって」
一条くんはそれだけ言うと、そっとわたしを座らせた。
「どうして止めるの…!?あんなこと言われて、悔しくないのっ?」
「悔しいもなにも、ほんとのことじゃん。不良の俺が花宮さんに勉強教えてるとか、普通に考えて不釣り合いだろ」
「そんなことな――」
「それに…ここ、図書室だから。静かにな」
口元に人差し指をそっと当てられた。
あんな勝手なこと言われて、怒ったっていいのに…。
一条くんは、まったく気にしていないといった様子。
「一条くんと話したこともないのに、勝手なことばかり言って…」
わたしの顔を一条くんが覗き込む。
間近にきた一条くんの顔にドキッとして、とっさに後ろに引いてしまった。
「…聞いてる!聞いてる!」
とは言ってみたけど、本当のところは…あまり聞いていない。
そもそも、『あのあと』で勉強に集中しろと言うほうが難しい。
『島田さんとしゃべってるんだろうなとは思ったけど…。そんなに長くなるような話?』
『うん、まぁ~ねっ。ひらりが、一条くんのことを好きって話…♪』
『ふ~ん。そうなんだ”』
彩奈があんなこと言ったけど、一条くんは…わたしのことどう思ってるの?
わたしなんてっ――。
『なに言ってんの?あんたたち、両想いだからっ』
彩奈にああ言われてから、今まで以上に意識しまくりだし…!
いつもと同じ隣の席だけど、図書室で横並びで座ると、そこには教室の机と机の間にある隙間なんてなくて――。
ちょっと動けば、一条くんと肩が触れるくらい近い。
こんなに一条くんと近くになって、初めて気づくこともある。
ふわりと香る柔軟剤のいい匂い。
きれいな指。
シャツの襟元の隙間から見えた、小さなホクロ。
そのひとつひとつの気づきに、わたしはドキドキさせられる。
「…なに。さっきから」
だから、うっかり見惚れていたら、その視線が気になった一条くんが目を細める。
「ご…ごめん!なんでもないっ!」
「なんでもないわけないだろ。さっきから、チラチラこっち見て」
図書室で小声で話す会話さえも、まるでナイショの話をしているみたいでドキッとする。
そんなわたしの耳に、ふと聞こえた周りの会話――。
「…あっ、見て!あれ、PEACEのひらりちゃんじゃん」
「ホントだー!勉強してるのかな?隣にいるのは……彼氏?」
「彼氏じゃないでしょー。恋愛禁止なんだから」
「そうだよね~。それに、あの人って……学校一の不良でしょ?そもそも、ひらりちゃんに釣り合わないかっ」
わたしたちには聞こえないようなヒソヒソ話のつもりだったかもしれない。
だけど、ここは図書室。
静かな空間に、その言葉たちはいやってほどにわたしの耳に入ってきた。
わたしに聞こえたということは、隣にいる一条くんにもきっと――。
2人組の女の子は、わたしに勉強を教える一条くんを見て、クスクスと笑っている。
わたしと一条くんが…釣り合わない?
そんなのだれが決めることなの?
そりゃ、一条くんは金髪が似合っててかっこいいから、わたしみたいなどこにでもいるような女の子が隣にいるべきじゃないかもしれない。
…だけど、わたしは一条くんの隣にいたい。
一条くんの隣にいさせてほしい。
釣り合わないとか、似合ってないとか、そんなのなんだっていい…!
だって、わたしは一条くんのことが――。
わたしはその女の子たちに言い返そうと、机に手をついて立ち上がった。
だけど、わたしの腕を一条くんが握った。
「…いいって」
一条くんはそれだけ言うと、そっとわたしを座らせた。
「どうして止めるの…!?あんなこと言われて、悔しくないのっ?」
「悔しいもなにも、ほんとのことじゃん。不良の俺が花宮さんに勉強教えてるとか、普通に考えて不釣り合いだろ」
「そんなことな――」
「それに…ここ、図書室だから。静かにな」
口元に人差し指をそっと当てられた。
あんな勝手なこと言われて、怒ったっていいのに…。
一条くんは、まったく気にしていないといった様子。
「一条くんと話したこともないのに、勝手なことばかり言って…」
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