隣の席の一条くん。

中小路かほ

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教室で

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一条くんのヤキモチ発言に、彩奈も驚いている。


「べつに。俺って、もともとこういう感じだけど?」


いや、いや…。

そんなはずがない。


だって…『ヤキモチ』って、だれにでも焼くものじゃないよね…?


ちなみにわたしは、一条くんのことでヤキモチを焼いたことがある。

一条くんの国語の教科書を、元カノのエリさんがずっと持っているって知ったとき。


まだ、一条くんを忘れられないエリさんの気持ちもわからなくもない。

だけど、一条くんのものが元カノの手元にあることに、…なんだかずっとモヤモヤしていた時期があった。


でもこの前、国語の時間に一条くんが自分の教科書を出していることに驚いた。

それを見た瞬間、そのモヤモヤした気持ちも一瞬にして晴れてしまった。


ああ、これがヤキモチなんだって、あとになってからわかった。


ヤキモチは、だれにでも焼くものじゃない。


一条くんのことが好きだから…。


わたしはあのとき、エリさんにヤキモチを焼いてしまっていたんだ。


だから、わたしが怜也の話をしてて、それに対して一条くんがヤキモチって――。

それって、つまり…?


キーンコーンカーンコーン…!


「あっ、やば!確か1限、小テストだったよね!?」


予鈴が鳴ると、彩奈は慌てて自分の席に戻っていった。


一条くんと2人きりになって、この際だから思いきって聞いてみることにした。


少し机を寄せて、口元に手を当てて小声で…。


「さっきのって……冗談だよね?」

「さっきのって?」

「そのぉ……、一条くんが…ヤキモチっていうの」


小声で話しているのに、語尾に向かうにつれてさらに声が小さくなる。


今になって、自分でもなに言ってるんだろうって。


一条くんの回答が返ってくるまでのこのわずかな時間――。

わたしの心臓は、飛び出しそうなくらいドキドキしていた。


ドラマの中で、怜也に頭を撫でられたり、抱きしめられたことはあった。

でも、そんなのじゃ全然ドキドキしなかった。


それなのに、なんて言葉が返ってくるかわからない一条くんの口元を見ているだけで、胸がさらに高鳴ってしまう。


だって、その返事によっては…一条くんはわたしのことを――。


…やばい!

そんなこと考えたら、余計にドキドキしてきたっ…!


もしかしたら、ただの冗談だったかもしれないのに…。


わたしが返事を待っていると、当の一条くんはなぜだかクスリと笑った。


「冗談かどうかは、花宮さんが決めて」


それだけ言うと、「おやすみ」と呟いて机に顔を伏せてしまった。


「ちょっ…!一条くんっ」


思っていなかったかわし方をされて、胸がざわざわして歯がゆい。


わたしが決めてって…どういうこと。


そのことがずっと気になって、そのあとの授業なんてまったく集中できなかった。

集中はできないし、仕事で休んでいたせいでかなり授業内容が進んでいて、そもそもついていけなかった。


…まずいっ。

このままだと、次のテストが……。



放課後。


「ひらり~!久しぶりにカラオケ行かな~い?」


彩奈が誘ってくれたけど、わたしはカラオケどころではなかった。


「…ごめん。わたし、ちょっと図書室で勉強して帰るっ」

「勉強?…そっか、学校休んでたもんね」


正直、すっごくカラオケに行きたいけど、授業内容がちんぷんかんぷんすぎて、さすがにこのまま放置しておくわけにはいかない。


「アタシのノートでよかったら、持っていっていいよ!」

「ありがと~!明日返すねっ」


彩奈は、わたしの席までノートを持ってきてくれて手渡すと、その隣にいた一条くんにチラリと視線を送る。


「一条くんさー。ひらりに休んでた期間の勉強、教えてあげてよ」


…えっ、彩奈!?

急に、なに言い出すの…!?


「なんで俺が?」

「ひらりにお詫びだよ」

「お詫び?なんの?」

「一条くんの元カノが、ひらりにケガさせた分のお詫びっ」

「…なんだよ、それ」


ほら、一条くんのこの不満そうな顔…!

一条くんだって予定があるんだし、急にそんなこと言われたって無理に――。


「お詫びじゃなくたって、俺でいいなら教えるけど」


…えっ!

い…、いいのっ…!?


「花宮さん、図書室でいいんだよね?」

「う…うんっ」

「じゃあ、先に行ってるから」


そう言って、一条くんは行ってしまった。


…びっくりした。

一条くんが、あっさりとオッケーしてくれるなんて。


「で…でも彩奈、なんで一条くんにお願いしてくれたの?」


ただ隣の席にいて、たまたま目についたから。

…ってわけじゃないよね?


すると、彩奈はニヤリと笑った。
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