隣の席の一条くん。

中小路かほ

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教室で

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ユイカちゃんはPEACEのことを考え、そして別れたあとのことも考えて、今までひっそりと恋愛していたんだ。

だから、ずっといっしょにいたけど、わたしもマオちゃんも知らなかったわけだ。


「要は、バレなきゃいいのっ。でも、恋愛するなら徹底的に隠さないとダメだからね!」

「…うん、わかった!ありがとう、ユイカちゃん!」


ユイカちゃんのおかげで、マオちゃんも元気が出たみたい。


「3人揃って、なにこそこそ話してるの~?そろそろレッスン再開するわよ~」


話が終わったところで、トレーナーが戻ってきた。


「「なんでもないでーす!」」


わたしたちは元気よく返事をすると、トレーナーのところへ向かった。


ユイカちゃんとマオちゃんのヒミツを知ってしまった。

これは絶対にだれにも話してはいけない、…わたしたちだけの『ヒミツ』。


ヒミツを共有したことによって、また新たにPEACEの仲が深まったような気がした。



それから、数週間後――。


「ひらり!今日はこれたんだ!」

「うん!彩奈、久しぶり!」


わたしは、1週間ぶりに学校に登校した。


最近暑い日も増えてきて、1週間学校にこなかっただけで夏服率が上がっていた。


そして“彼”もまた、夏らしい爽やかな水色の半袖シャツに変わっていた。


「あれ?きたんだ」

「うん。久しぶりだね」


水色のシャツがズボンから出ていて、着崩し感は相変わらず。


一条くんに会うのも、1週間ぶりだ。



わたしはというと、先週から新しい仕事のスケジュールが入って、地方に行っていた。


その新しいスケジュールとは――。

なんとドラマの撮影!


しかも、毎週火曜日の夜9時放送の連続ドラマ。


そのドラマで、わたしは初の主役に大抜擢された。

子役の頃から、たまに脇役程度でドラマ出演はしていたけど、まさか主役になれるとは思っていなかった。


ストーリーは、田舎で生まれ育った幼なじみの男女が、大人になるまでを描く恋愛もの。

わたしは、1話から6話まで登場するヒロインの中学、高校生時代を担当する。


監督から、「今の学校生活を思い浮かべて、ありのままに演技をしてくれたらいいよ」って言われているけど…。

やっぱりお芝居だと緊張しちゃう。


数日後にもまた撮影があるけど、中学時代までの田舎でのシーンは撮り終わったから、次は東京の高校に進学したシーンから撮ることになっている。


「どう?撮影、順調なの?」


わたしの席へ、彩奈がやってきた。


「うん!今のところは問題なくっ」

「秋のクールだよね!?すっごく楽しみ!」

「シー…!まだ、周りには言っちゃダメだからね。彩奈は特別だから」

「あ~、ごめんごめん!ついっ」


彩奈は親友だから話したけど、なんでもかんでも漏らしていい内容ではないから、念のために釘を刺しておく。


「でも、いいよね~。ダブル主演の相手、来栖怜也くるすれいやでしょ!?」


興奮気味の彩奈。

彩奈は、来栖怜也のファンなのだ。


来栖怜也は、モデルもこなしている今が旬の若手俳優だ。

歳は、わたしより3つ上。


今回のドラマで、わたしと幼なじみ役でダブル主演を務める。


お父さんが有名俳優で、お母さんが元タカラジェンヌの女優で、その血を受け継いだ怜也は高身長のイケメンでしかない。


彩奈みたいに、たくさんの女性ファンを虜にしている。


怜也とは、何度か同じ現場になったことがあって、お互い名前で呼び合う仲ではあった。

だけど、今回ドラマで共演することになって、長い時間いっしょにいるのは初めてのことだった。



「どう!?やっぱり怜也って、かっこいい!?」

「まぁ、テレビや雑誌で見たまんまだよね。整った顔してるよ」

「そうなんだ~♪ってか、そうだよね~♪」


彩奈、すっかり目がハートになっちゃってる。

爽太くんっていう彼氏がいることも忘れて。


「怜也、絶対かっこいいよね~!」

「あの顔で、台本通りの決め台詞を言うわけだから、そりゃかっこよくも見えるよ」


べつに怜也が好きってわけじゃないけど、両想い同士のお芝居をしているわけだし、自然とそんなふうにも見える。

と、特になにも考えずに言っただけだったんだけど――。


「へ~。かっこよく見えるんだ。…なんかちょっとヤキモチ焼くな」


そんな声が横から聞こえてきて、ハッとして見ると、腕を枕にしながらこちらを見つめている一条くんだった…!


さっきまで、席にいなかったのにっ。


しかも、一条くんが言わなさそうな言葉が飛び出したから、さらにびっくり。


「一条くんが…ヤキモチ?な…なんか、キャラ変わった?」
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