15 / 33
幕末剣士、修学旅行へ
1P
しおりを挟む
お屋敷に戻る前にささっと顔に包帯を巻いて、何食わぬ顔で宗治とお屋敷に戻った。
「…宗治!びぃ様はいらしたの!?」
お屋敷に入ると、慌てた様子で都子姫が駆けつけてきた。
「はい、姫。また倒れているところを見つけました」
「それならよかったわ…」
わたしの名前は『びぃ』だと宗治から聞いたのだろうか。
お姫さまである都子姫に『様』をつけて呼ばれて、一瞬驚いた。
そのあとは、わたしは血だらけの両膝の手当てもしてもらい、お屋敷でのんびり過ごさせてもらった。
お昼ごはんも夜ごはんも和食で薄味だけど、おいしかった。
毎日こんな食事だったら健康によさそう。
だけど、いつ現代に戻れるかがわからないから、これからもずっと同じような食事だったら、無性に揚げ物とかラーメンとかお菓子が食べたくなっちゃうな…。
そんなことを考えながら、わたしは夜のお屋敷の中の庭園を散歩していた。
すると桜の木の下に、月明かりに照らされた刀を振るう影が見えた。
宗治だ。
一心不乱に素振りをする姿に、思わず目を惹かれる。
現代のうちの庭でも毎晩のように素振りをしていたから見慣れた光景のはずなのに、なぜだか今はそんな宗治がかっこよく見えてしまって仕方がない。
わたし…おかしくなっちゃったのかな。
と思うほど、宗治をずっと見ていたかった。
これが…『恋』というやつなのだろうか。
それに、いつもなら何気ない話をしに声をかけるのに、…今はそんなことできない。
宗治を見ているだけで胸がドキドキしてしまうから。
集中していることだし、部屋に戻ろう。
そう思って、戻ろうとした――そのとき。
「びぃ!」
背中からわたしを呼ぶ声がする。
振り返ると、宗治がわたしに向かって手を振っていた。
「いたなら、声かけろよな」
「…あ、うん。…ごめん」
宗治に見つかってしまい、わたしは手招きに誘われるように宗治のもとへおずおずと向かった。
「眠れねぇのか?」
「ううん。風が気持ちよかったから、ちょっと散歩しようと思って」
「そっか」
わたしたちは、桜の木の幹にもたれながら座り込む。
「どうだ?こっちの時代もいいもんだろ?」
「そうだね。都子姫も壱さんも、お屋敷の人たちもみんなよくしてくれるし」
「だろ?都子姫はみんなに優しいし、華道も茶道もお琴だって、なにをさせてもうまいんだ。それに、たまに天然なところがまたかわいい」
宗治は、まるで自分のことのようにうれしそうに話す。
その笑顔はわたしじゃなくて、都子姫に向けられているのだと思うと――。
そんな宗治から、わたしは目を背けたくなってしまった。
「いっそのこと、俺たちが祝言をあげるまでここにいろよ」
「え…!?」
「だって、びぃのその力のおかげで、都子姫ともう一度結婚できる機会が与えられたんだから」
「それは…そうかもしれないけど…」
宗治と都子姫が結婚するところなんて、…見たくないよ。
宗治は、わたしの気持ちにはまったく気づいていない。
「まぁ結婚を約束したのは、2年後の16歳だからな。それまでには春になれば桜は咲くし、びぃは現代に戻っちまうだろうな」
「…そうだよ!わたしだってあっちでの生活があるんだから、ずっとこっちになんていてられないよ」
「だよな。お前もいつか帰っちまうんだな。俺みたいに…」
「…うん、帰るよ。そうなったら、…本当にお別れだね」
わたしがそばにいないと消えてしまうから、いつでも宗治といっしょにいることに迷惑していたけど…。
今は、少しでも長く宗治の隣にいたいと思ってしまっている。
そのとき、ふとわたしの頬をなにかがかすめた。
ヒラリと膝の上に落ちたので、そのなにかを指でつまむ。
「…ん?」
月明かりに照らしてみると、それは桜の花びらだった。
「なんで桜の花びらが…?」
今のこの時代は7月。
こんな時期に桜が咲くはずがない。
――と思っていたら。
「…おっ、おい…びぃ!」
隣から、慌てたようにわたしを呼ぶ声がするから顔を向けると、宗治が空を見上げていた。
「どうしたの?」
「見ろよ、…あれっ!」
宗治に促されるまま、わたしも上に目をやると――。
さっきまでなんの変哲もなかった桜の木が、なんと花を咲かせていたのだった…!
その美しい夜桜に、思わず目を奪われる。
…って、そうじゃなかった!
「まさか、これって…」
とつぶやいた直後、木のうろが赤紫色に光りだした。
「間違いねぇ…!タイムスリップだ!」
「じゃあ、わたしは元の時代へ戻れるの…!?」
「お前はな!…だが、俺はせっかくこっちに戻ってきたんだから、また巻き込まれるわけにはいかねぇんだよ…!」
そう言って、木のうろから離れようとする宗治。
だけど、その光はわたしたちを包み込むように輝き――。
「…きゃーーーー!!」
「うおぉぉぁぁぁぁ~…!!」
わたしたちは、幹のうろの中へと吸い込まれてしまったのだった。
「…いたたっ」
思いきり地面に尻もちをついてしまい、その痛みにおしりを擦る。
「いってぇ…」
横を見ると、宗治がうつ伏せになって倒れていた。
「…あっ!ねえちゃんと、宗治にいちゃんだ!」
そんな声が聞こえて目を向けると、そこには見慣れた我が家があった。
その縁側から、朔がこちらへ走ってくる。
――ということは、ここは…現代?
そのあと、家族全員が居間に集まった。
わたしが自分の身に起きた話をすると、どうやら本当に宗治のいた幕末の時代にタイムスリップしていたようだ。
わたしの家族は、わたしと宗治がいないことに気づき、落ちていた桜の花びらを見つけ、タイムスリップしたのではないかと思って、桜の木が見える縁側で帰りを待っていたらしい。
救い人の力というものには驚かされたけど、さらに驚いたことは、タイムスリップしてから再び戻ってくるまで…たった1時間しかたっていなかったことだ。
向こうでは1日ほど過ごしたというのに。
おばあちゃんの話によると、タイ厶スリップしたとしても、いつの日に飛ぶことができるかはわたしの力では操作することはできない。
さらに、時空の歪みのせいで、必ずしもこっちとあっちの時間の流れは同じとは言えないらしい。
わたしがあっちの世界で、都子姫や壱さんに会い、人攫いに襲われそうになって濃い1日を過ごしたけれど、こっちの世界では…それがたったの1時間。
でも、わたしには貴重な体験だった。
ご先祖様にも会うことができたし。
そんなわたしと違って、とてつもなく落ち込んでいるのは宗治だ。
「…なぜだ。なぜ俺はまた…こっちにきちまったんだ…」
せっかく元の時代へ帰れて喜んでいたのに、すぐにまた連れ戻されてしまったから。
「タイムスリップって、そう何度もあるようなものなの?」
おじいちゃんとおばあちゃんに尋ねると、古文書をパラパラとめくり、ある部分の説明を指さした。
「おそらく今回の時渡りは、完全なものではなかったのじゃな。ゆえに、宗治くんを元の時代に留める力がなく、2人とも戻ってきたのじゃろう」
どうやら、タイムスリップできる条件は『桜が狂い咲きした夜』だけではなく、あと1つあるんだそう。
それが、――満月。
『満月の夜』と『桜の狂い咲き』が同時に重なったとき、本来の救い人としてのタイムスリップの力が発揮されるのだ。
その条件を満たしたタイムスリップで、生まれ変わった宗治は元の時代に受け入れられる。
わたしと宗治がタイムスリップしてしまったあと、新たな古文書にそのことが書かれてあるのを見つけたんだそう。
「満月って、なんだよ…!そんなの聞いてねぇよ!」
「…宗治!びぃ様はいらしたの!?」
お屋敷に入ると、慌てた様子で都子姫が駆けつけてきた。
「はい、姫。また倒れているところを見つけました」
「それならよかったわ…」
わたしの名前は『びぃ』だと宗治から聞いたのだろうか。
お姫さまである都子姫に『様』をつけて呼ばれて、一瞬驚いた。
そのあとは、わたしは血だらけの両膝の手当てもしてもらい、お屋敷でのんびり過ごさせてもらった。
お昼ごはんも夜ごはんも和食で薄味だけど、おいしかった。
毎日こんな食事だったら健康によさそう。
だけど、いつ現代に戻れるかがわからないから、これからもずっと同じような食事だったら、無性に揚げ物とかラーメンとかお菓子が食べたくなっちゃうな…。
そんなことを考えながら、わたしは夜のお屋敷の中の庭園を散歩していた。
すると桜の木の下に、月明かりに照らされた刀を振るう影が見えた。
宗治だ。
一心不乱に素振りをする姿に、思わず目を惹かれる。
現代のうちの庭でも毎晩のように素振りをしていたから見慣れた光景のはずなのに、なぜだか今はそんな宗治がかっこよく見えてしまって仕方がない。
わたし…おかしくなっちゃったのかな。
と思うほど、宗治をずっと見ていたかった。
これが…『恋』というやつなのだろうか。
それに、いつもなら何気ない話をしに声をかけるのに、…今はそんなことできない。
宗治を見ているだけで胸がドキドキしてしまうから。
集中していることだし、部屋に戻ろう。
そう思って、戻ろうとした――そのとき。
「びぃ!」
背中からわたしを呼ぶ声がする。
振り返ると、宗治がわたしに向かって手を振っていた。
「いたなら、声かけろよな」
「…あ、うん。…ごめん」
宗治に見つかってしまい、わたしは手招きに誘われるように宗治のもとへおずおずと向かった。
「眠れねぇのか?」
「ううん。風が気持ちよかったから、ちょっと散歩しようと思って」
「そっか」
わたしたちは、桜の木の幹にもたれながら座り込む。
「どうだ?こっちの時代もいいもんだろ?」
「そうだね。都子姫も壱さんも、お屋敷の人たちもみんなよくしてくれるし」
「だろ?都子姫はみんなに優しいし、華道も茶道もお琴だって、なにをさせてもうまいんだ。それに、たまに天然なところがまたかわいい」
宗治は、まるで自分のことのようにうれしそうに話す。
その笑顔はわたしじゃなくて、都子姫に向けられているのだと思うと――。
そんな宗治から、わたしは目を背けたくなってしまった。
「いっそのこと、俺たちが祝言をあげるまでここにいろよ」
「え…!?」
「だって、びぃのその力のおかげで、都子姫ともう一度結婚できる機会が与えられたんだから」
「それは…そうかもしれないけど…」
宗治と都子姫が結婚するところなんて、…見たくないよ。
宗治は、わたしの気持ちにはまったく気づいていない。
「まぁ結婚を約束したのは、2年後の16歳だからな。それまでには春になれば桜は咲くし、びぃは現代に戻っちまうだろうな」
「…そうだよ!わたしだってあっちでの生活があるんだから、ずっとこっちになんていてられないよ」
「だよな。お前もいつか帰っちまうんだな。俺みたいに…」
「…うん、帰るよ。そうなったら、…本当にお別れだね」
わたしがそばにいないと消えてしまうから、いつでも宗治といっしょにいることに迷惑していたけど…。
今は、少しでも長く宗治の隣にいたいと思ってしまっている。
そのとき、ふとわたしの頬をなにかがかすめた。
ヒラリと膝の上に落ちたので、そのなにかを指でつまむ。
「…ん?」
月明かりに照らしてみると、それは桜の花びらだった。
「なんで桜の花びらが…?」
今のこの時代は7月。
こんな時期に桜が咲くはずがない。
――と思っていたら。
「…おっ、おい…びぃ!」
隣から、慌てたようにわたしを呼ぶ声がするから顔を向けると、宗治が空を見上げていた。
「どうしたの?」
「見ろよ、…あれっ!」
宗治に促されるまま、わたしも上に目をやると――。
さっきまでなんの変哲もなかった桜の木が、なんと花を咲かせていたのだった…!
その美しい夜桜に、思わず目を奪われる。
…って、そうじゃなかった!
「まさか、これって…」
とつぶやいた直後、木のうろが赤紫色に光りだした。
「間違いねぇ…!タイムスリップだ!」
「じゃあ、わたしは元の時代へ戻れるの…!?」
「お前はな!…だが、俺はせっかくこっちに戻ってきたんだから、また巻き込まれるわけにはいかねぇんだよ…!」
そう言って、木のうろから離れようとする宗治。
だけど、その光はわたしたちを包み込むように輝き――。
「…きゃーーーー!!」
「うおぉぉぁぁぁぁ~…!!」
わたしたちは、幹のうろの中へと吸い込まれてしまったのだった。
「…いたたっ」
思いきり地面に尻もちをついてしまい、その痛みにおしりを擦る。
「いってぇ…」
横を見ると、宗治がうつ伏せになって倒れていた。
「…あっ!ねえちゃんと、宗治にいちゃんだ!」
そんな声が聞こえて目を向けると、そこには見慣れた我が家があった。
その縁側から、朔がこちらへ走ってくる。
――ということは、ここは…現代?
そのあと、家族全員が居間に集まった。
わたしが自分の身に起きた話をすると、どうやら本当に宗治のいた幕末の時代にタイムスリップしていたようだ。
わたしの家族は、わたしと宗治がいないことに気づき、落ちていた桜の花びらを見つけ、タイムスリップしたのではないかと思って、桜の木が見える縁側で帰りを待っていたらしい。
救い人の力というものには驚かされたけど、さらに驚いたことは、タイムスリップしてから再び戻ってくるまで…たった1時間しかたっていなかったことだ。
向こうでは1日ほど過ごしたというのに。
おばあちゃんの話によると、タイ厶スリップしたとしても、いつの日に飛ぶことができるかはわたしの力では操作することはできない。
さらに、時空の歪みのせいで、必ずしもこっちとあっちの時間の流れは同じとは言えないらしい。
わたしがあっちの世界で、都子姫や壱さんに会い、人攫いに襲われそうになって濃い1日を過ごしたけれど、こっちの世界では…それがたったの1時間。
でも、わたしには貴重な体験だった。
ご先祖様にも会うことができたし。
そんなわたしと違って、とてつもなく落ち込んでいるのは宗治だ。
「…なぜだ。なぜ俺はまた…こっちにきちまったんだ…」
せっかく元の時代へ帰れて喜んでいたのに、すぐにまた連れ戻されてしまったから。
「タイムスリップって、そう何度もあるようなものなの?」
おじいちゃんとおばあちゃんに尋ねると、古文書をパラパラとめくり、ある部分の説明を指さした。
「おそらく今回の時渡りは、完全なものではなかったのじゃな。ゆえに、宗治くんを元の時代に留める力がなく、2人とも戻ってきたのじゃろう」
どうやら、タイムスリップできる条件は『桜が狂い咲きした夜』だけではなく、あと1つあるんだそう。
それが、――満月。
『満月の夜』と『桜の狂い咲き』が同時に重なったとき、本来の救い人としてのタイムスリップの力が発揮されるのだ。
その条件を満たしたタイムスリップで、生まれ変わった宗治は元の時代に受け入れられる。
わたしと宗治がタイムスリップしてしまったあと、新たな古文書にそのことが書かれてあるのを見つけたんだそう。
「満月って、なんだよ…!そんなの聞いてねぇよ!」
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
選ばれたのは美人の親友
杉本凪咲
恋愛
侯爵令息ルドガーの妻となったエルは、良き妻になろうと奮闘していた。しかし突然にルドガーはエルに離婚を宣言し、あろうことかエルの親友であるレベッカと関係を持った。悔しさと怒りで泣き叫ぶエルだが、最後には離婚を決意して縁を切る。程なくして、そんな彼女に新しい縁談が舞い込んできたが、縁を切ったはずのレベッカが現れる。
【完結】後妻に入ったら、夫のむすめが……でした
仲村 嘉高
恋愛
「むすめの世話をして欲しい」
夫からの求婚の言葉は、愛の言葉では無かったけれど、幼い娘を大切にする誠実な人だと思い、受け入れる事にした。
結婚前の顔合わせを「疲れて出かけたくないと言われた」や「今日はベッドから起きられないようだ」と、何度も反故にされた。
それでも、本当に申し訳なさそうに謝るので、「体が弱いならしょうがないわよ」と許してしまった。
結婚式は、お互いの親戚のみ。
なぜならお互い再婚だから。
そして、結婚式が終わり、新居へ……?
一緒に馬車に乗ったその方は誰ですか?
婚約者の浮気相手が子を授かったので
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ファンヌはリヴァス王国王太子クラウスの婚約者である。
ある日、クラウスが想いを寄せている女性――アデラが子を授かったと言う。
アデラと一緒になりたいクラウスは、ファンヌに婚約解消を迫る。
ファンヌはそれを受け入れ、さっさと手続きを済ませてしまった。
自由になった彼女は学校へと戻り、大好きな薬草や茶葉の『研究』に没頭する予定だった。
しかし、師であるエルランドが学校を辞めて自国へ戻ると言い出す。
彼は自然豊かな国ベロテニア王国の出身であった。
ベロテニア王国は、薬草や茶葉の生育に力を入れているし、何よりも獣人の血を引く者も数多くいるという魅力的な国である。
まだまだエルランドと共に茶葉や薬草の『研究』を続けたいファンヌは、エルランドと共にベロテニア王国へと向かうのだが――。
※表紙イラストはタイトルから「お絵描きばりぐっどくん」に作成してもらいました。
※完結しました
報われない恋の行方〜いつかあなたは私だけを見てくれますか〜
矢野りと
恋愛
『少しだけ私に時間をくれないだろうか……』
彼はいつだって誠実な婚約者だった。
嘘はつかず私に自分の気持ちを打ち明け、学園にいる間だけ想い人のこともその目に映したいと告げた。
『想いを告げることはしない。ただ見ていたいんだ。どうか、許して欲しい』
『……分かりました、ロイド様』
私は彼に恋をしていた。だから、嫌われたくなくて……それを許した。
結婚後、彼は約束通りその瞳に私だけを映してくれ嬉しかった。彼は誠実な夫となり、私は幸せな妻になれた。
なのに、ある日――彼の瞳に映るのはまた二人になっていた……。
※この作品の設定は架空のものです。
※お話の内容があわないは時はそっと閉じてくださいませ。
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる