クールな幼なじみが本気になったら

中小路かほ

文字の大きさ
上 下
4 / 23
年下男子に振りまわされたら

2P

しおりを挟む
「ユウヤくんと付き合うことになったって、なになに!?昨日、断るって言ってなかった!?」

「そうだったんだけど…」


わたしは教室に行くまでの間に、昨日のユウヤくんとの出来事を芽依に話した。


初めは断ったんだけど、どんどんユウヤくんのペースに流されてしまい…。

お試しで、1週間だけ付き合うことになったと。


「…やっぱりわたし、断ったほうがよかったかな」


改めて芽依に相談したら、自分でもなにやっているんだろうと思えてきた。


しかし、話を聞いていた芽依は、キラキラした目でわたしを見つめる。


「あたしはいいと思うよ、ユウヤくん!だって、カッコイイじゃん~♪」


わたしの手を握って喜んでくれた。


「しずくって、自分で自分のこと『地味』って言うけど、あたしはそうじゃないと思うんだな~。だから、初カレを機に、これで自分に自信を持ったらいいんじゃない!?」

「はっ…初カレ!?」

「そうだよ!だって、しずくにとってユウヤくんが初めての彼氏じゃん!」

「でもでも…!付き合うとか、彼氏彼女とか言ったって、具体的になにをしたらいいのかわからないし…」


昨日だって、ユウヤくんと屋上で話したあとに、わたしはすぐに帰ってしまった。


だから、口約束ではそういうことになったけど、『付き合った』という自覚はあまりな――。


「…あっ、花岡先輩だ!おはよ~」


そう言って、わたしの頭をポンポンと優しく撫でて通り過ぎていく人物が…。


…ユウヤくんだ!


一瞬の出来事だったけど、…わたし今。

…頭、ポンポンされたよね!?


周りに他の生徒だっているっていうのに、通りすがりのボディタッチ。

恥ずかしくなったわたしは、顔が真っ赤になる。


「しずく、顔赤いよ~!かわい~」


芽依が冷やかしてくる。


「なんだかんだ言って、ユウヤくんのこと好きなんじゃんっ♪」

「…違うよ!こんな人前であんなことされたら、だれだって恥ずかしくて…こうなるよっ」


ユウヤくんは慣れた様子だったけど、わたしは周りの視線が気になって、恥ずかしくてたまらない。


「今の…見た?」

「…なにあれ。なんでユウヤくんが、2年の先輩なんかに…?」


…ほら。

今の現場を目撃した1年生たちが、さっそく小声で話している。


こういうときだけは、嫌というくらいに人の声がよく聞こえる。


「めっ…芽依!早く行こ…!」


わたしはその場から逃げるように、芽依の手を引いて教室へ向かった。



わたしのクラスはいつも通りで、さっきのユウヤくんとのやり取りを知っているような人はだれもいなかった。


ユウヤくんが同じ2年生だったら、教室も近くてまたなにをされたかわからないけど、学年が違えばそんな心配もない。


そう思っていたのだけれど――。



「花岡せ~んぱい♪遊びにきちゃいましたっ」


なんと1限後の休み時間、ユウヤくんがさっそくわたしのクラスに顔を出した。

しかも、悪気のない無邪気すぎる笑顔で。


「ユ…ユウヤくん…!なにしにきたの…!?」

「なにしにって、花岡先輩の顔が見たかったからきたんです♪」

「急にきたら困るよ…!みんながいるのに…」

「なんで困るんですか?だってオレら、付き合ってるじゃないですか~!」


その言葉に、教室内にいた女の子の視線が、一斉にわたしの背中に刺さったような気がした。


そりゃ…耳を疑いたくもなるだろう。

こんな地味なわたしが、1年生で一番のイケメンのユウヤくんと、『付き合っている』なんて聞いたら。


「ユウヤくん…!ここじゃ人目につくから、…ちょっとこっちにきて!」


わたしはユウヤくんの手首をつかむと、そそくさと教室をあとにした。



やってきたのは、屋上へと続く階段の踊り場。

こんな時間に屋上へ行く人はいないから、ここならだれもこない。


周りに人がいないことを確認して、ようやく胸を撫で下ろした。


さっきまでは人の目が気になって、とてもじゃないけど落ち着けるわけがなかった。


ユウヤくんはというと、なぜかここへきてニヤリと口角を上げた。


「花岡先輩ったら、こんな人気のないところにオレを連れ込んで~。もしかして、キスしようとか思ってました?」


いたずらっぽく笑うユウヤくん。

冗談だということはわかっている。


わかっているけど、『キス』なんてワードが出てきたら、恥ずかしくて顔を真っ赤にせずにはいられない。


「…なっ!そそ…そんなわけ…!」

「うわぁ~!そうやって、必死に否定しようとする花岡先輩、マジでかわいいっす!」


冷やかしなのかなんなのかはわからないけど、わたしは1個下の男の子にペースを乱されているのは確かだ。


「…そんなことよりも!急に教室にきて、どうしたの?なにか用事?」

「ああ、そうそう!オレ、昨日花岡先輩の連絡先を聞くのを忘れてたなって思って」

「…連絡先?それだけのために、わざわざ2年生の階へ?」

「重要っすよ!だって、彼女の連絡先を知らないとか、ありえないですからっ」


どうやらユウヤくんは、本当にわたしの連絡先を聞くためだけに、わずかな10分休憩の合間にこうして訪ねてきてくれたらしい。


ユウヤくんに言われるがままスマホを取り出し、お互いの連絡先を交換した。

お父さん、りっくん以外に、男の人の連絡先を登録したのはこれが初めてのことだ。


アドレス帳でユウヤくんの名前を確認すると、りっくんの名前も見えた。


昨日から、雑誌の撮影で学校を休んでいるけど、今頃なにしてるかな…。


――りっくん。

りっくんがいない間に、わたしはこれまで体験したことがないくらいの事態に巻き込まれています…。



ユウヤくんと連絡先を交換してから、頻繁にユウヤくんからメッセージが届くようになった。


わたしは、なんて返信したらいいのかわからなくて、いつも短文で返してしまうけど…。

それでも、ユウヤくんがうまく返してきて、話が途切れることはなかった。


学校では、ユウヤくんがちょくちょくわたしのクラスに遊びにくるように。


初めこそ、『なんでこの2人が!?』というような目で見られていた。

でも、数日もすればいつものことだというように見られるようなっていた。


下校時は、帰り道が途中まで同じだからいっしょに帰ったり。


そんなことをしていたら、まるで本当に付き合っているみたいな感覚になることがある。


…いや。

実際は、お試しで1週間付き合ってはいるんだけど、こんな地味で恋愛経験のないわたしに、よくユウヤくんもいっしょにいてくれるなぁと思って。


年下なのに、しっかりとわたしをリードしてくれるユウヤくん。

本当にいい子だなとつくづく思う。



『付き合ったら、オレのこと絶対好きにさせてみせますからっ』


あの言葉は、嘘なんかじゃなかった。

ユウヤくんと付き合ったら、これまで通りに大切にしてくれるんじゃないだろうか。


ふと、そんなことを考えてしまった。



そして、約束の1週間後。

初めは長く感じたけど、あっという間の1週間だった。


わたしはいつも通りに登校すると、ふと後ろから名前を呼ばれた。


「しずく!」


振り返ると、そこにいたのはりっくん。

たまにこうしていっしょになると、声をかけてくれる。


「りっくん!久しぶりだねっ。撮影終わったの?」

「ああ。昨日の夜に帰ってきた」

「そっか。お疲れさま」


りっくんは、雑誌の撮影で学校を休んでいた。

どうやら、沖縄に行っていたんだそう。


「これ、お土産。バタバタしてて選ぶ時間なくて、帰りの空港で急いで買ったんだけど…。よかったら、おじさんとおばさんもいっしょに」

「わざわざそんなことしなくてもよかったのに~。でも、ありがとう!」


わたしは、りっくんから手渡された紙袋の中を覗く。


「わぁ!紅芋タルトだ!わたし、これ大好きだよっ。お父さんもお母さんも!」


喜ぶわたしの顔を見ると、りっくんは安心したように微笑んだ。


…と、そこへ。


「花岡先輩っ♪」


背後から、猫なで声がした。

振り向くと、わたしをにこりとした表情で見つめるユウヤくんだった。


「…ユウヤくん!おはよう」

「おはようございます。花岡先輩の姿が見えたから、走ってきちゃいました♪」


ユウヤくんはかわいく舌をペロッと出すと、ふと視線をりっくんへと移した。


「確か…、2年の遠野先輩ですよね?」

「そうだけど…?」

「あの、申し訳ないんですが、花岡先輩と仲よくするの…やめてもらえませんか?」

「えっ?」

「…ちょっと、ユウヤくん!?」


突然のことでポカンとするりっくんの前で、ユウヤくんはわたしの手を握った。


「オレたち、付き合ってるんで♪」


そう言って、ユウヤくんはわたしと繋いだ手をりっくんに見せつけた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

元体操のお兄さんとキャンプ場で過ごし、筋肉と優しさに包まれた日――。

立坂雪花
恋愛
夏休み、小日向美和(35歳)は 小学一年生の娘、碧に キャンプに連れて行ってほしいと お願いされる。 キャンプなんて、したことないし…… と思いながらもネットで安心快適な キャンプ場を調べ、必要なものをチェックしながら娘のために準備をし、出発する。 だが、当日簡単に立てられると思っていた テントに四苦八苦していた。 そんな時に現れたのが、 元子育て番組の体操のお兄さんであり 全国のキャンプ場を巡り、 筋トレしている動画を撮るのが趣味の 加賀谷大地さん(32)で――。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

イケメン御曹司、地味子へのストーカー始めました 〜マイナス余命1日〜

和泉杏咲
恋愛
表紙イラストは「帳カオル」様に描いていただきました……!眼福です(´ω`) https://twitter.com/tobari_kaoru ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 私は間も無く死ぬ。だから、彼に別れを告げたいのだ。それなのに…… なぜ、私だけがこんな目に遭うのか。 なぜ、私だけにこんなに執着するのか。 私は間も無く死んでしまう。 どうか、私のことは忘れて……。 だから私は、あえて言うの。 バイバイって。 死を覚悟した少女と、彼女を一途(?)に追いかけた少年の追いかけっこの終わりの始まりのお話。 <登場人物> 矢部雪穂:ガリ勉してエリート中学校に入学した努力少女。小説家志望 悠木 清:雪穂のクラスメイト。金持ち&ギフテッドと呼ばれるほどの天才奇人イケメン御曹司 山田:清に仕えるスーパー執事

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

甘過ぎるオフィスで塩過ぎる彼と・・・

希花 紀歩
恋愛
24時間二人きりで甘~い💕お仕事!? 『膝の上に座って。』『悪いけど仕事の為だから。』 小さな翻訳会社でアシスタント兼翻訳チェッカーとして働く風永 唯仁子(かざなが ゆにこ)(26)は頼まれると断れない性格。 ある日社長から、急ぎの翻訳案件の為に翻訳者と同じ家に缶詰になり作業を進めるように命令される。気が進まないものの、この案件を無事仕上げることが出来れば憧れていた翻訳コーディネーターになれると言われ、頑張ろうと心を決める。 しかし翻訳者・若泉 透葵(わかいずみ とき)(28)は美青年で優秀な翻訳者であるが何を考えているのかわからない。 彼のベッドが置かれた部屋で二人きりで甘い恋愛シミュレーションゲームの翻訳を進めるが、透葵は翻訳の参考にする為と言って、唯仁子にあれやこれやのスキンシップをしてきて・・・!? 過去の恋愛のトラウマから仕事関係の人と恋愛関係になりたくない唯仁子と、恋愛はくだらないものだと思っている透葵だったが・・・。 *導入部分は説明部分が多く退屈かもしれませんが、この物語に必要な部分なので、こらえて読み進めて頂けると有り難いです。 <表紙イラスト> 男女:わかめサロンパス様 背景:アート宇都宮様

好きな人の好きな人

ぽぽ
恋愛
"私には10年以上思い続ける初恋相手がいる。" 初恋相手に対しての執着と愛の重さは日々増していくばかりで、彼の1番近くにいれるの自分が当たり前だった。 恋人関係がなくても、隣にいれるだけで幸せ……。 そう思っていたのに、初恋相手に恋人兼婚約者がいたなんて聞いてません。

処理中です...