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本編・アリスティアの学園生活

再会

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イスト王国はすっかり冬の寒空となり
空気は透き通り肌寒く微かに雪が降り始める
季節である、日中寒すぎると言うわけでは無いがやはり朝方は結構冷える
防寒着が欲しい季節になっていた。
エチュード学園では冬休み前に
隣国メリディエス王国のアカデミーに通う
令嬢令息の生徒を、それぞれの学園に招き
交流祭を行うと言う習わしがあった。
交流祭は年二回、夏と冬に行われる
今年、冬の交流祭はイスト王国で行われる様だ。

「アリス、マクシミリアン王子から手紙が来ました。どうやら交流祭にプリティス伯爵令嬢とルピティス伯爵令嬢も参加される様ですよ?」

「まあ!メルルとプリメラが?それはとても楽しみですわね」

アリスと彼女達とは久しぶりの再会となる
特にアリスとプリメラはあの騒動の後
実際に会話を交わすのは今回が初めてとなる
何度かマクシミリアン王子とメルルからの
手紙で、プリメラの近況はある程度
確認は取れているが、アリスティア
自身少し心配ではあった。

「交流会はホールでお茶会をして談笑するものらしいです、外交や今後の社交界でのコネクションの形成、まだ伴侶の決まっていない令嬢及び令息に良き相手を探させる等
様々な意図がある様ですよ?」

「結構な大人数になりそうですね」

「ええ、アリスが迷子にならない様、私がしっかりエスコートしますから安心して楽しんでくださいね」

「はい、よろしくお願いします、ジーク」

アリスティアとジークハルトは微笑み合う

交流祭の当日、エチュード学園の園庭にて
立食パーティーの様な形式で開催された
今日は良く晴れていて、日中は穏やかな暖かさだった。
エチュード学園生徒とその護衛
メリディエス王国アカデミー生徒とその護衛
全員が全員参加する訳では無かったが
園庭には相当な人数が集まり
予め集合場所を打ち合わせていたものの
アリスティアとジークハルトが
ローゼリアやレオンを探すのには
多少手間取ったイストもメリディエスも
学園内でも仲の良いグループが
大体塊になると学園長のマナフロアが
学園側園庭に設置された壇上に立ち
穏やかにそれでいて淑やかに交流祭の
開会の宣言がされた。
護衛は集団の枠から少し離れた場所で
待機していて、護衛対象の貴族の移動と共に
自分達もゆっくりと動き出す
アリスティアはジークハルト
そしてローゼリアとレオンを連れて
メリディエス王国アカデミーの生徒の中から
プリメラとメルルを探していた
するとこちらに気が付いたのか
遠くの方からメルルの声が聞こえて来た。

「あ!アリスーこっちこっちー!」

大きく手を振るメルル、アリスティアはメルルに手を振りかえす
その隣には少し不安そうにするプリメラが居た

「二人ともお久しぶりね」

「ええ、アリスもジークハルト様も相変わらず仲良さそうで何よりです…ほら、プリメラ…貴女も隠れてちゃダメよ」

少し暗い表情で俯くプリメラは
微笑むメルルに背を押されて
プリメラを見る穏やかに微笑む
アリスティアの目の前に立つ

「…アリス…私…」

「…プリメラ…ずっと会いたかった」

そう言い終えるとアリスティアは
プリメラを優しく抱擁し、耳元で囁く

「…貴女に再会できるこの日を、ずっと待ってたわ…またあの頃の様に皆でお茶しましょう?」

「…うっ…うっ…うぐっ…アリス…ごめんなさい…本当にごめんなさい!!」

「…プリメラ…何も言わなくていいの…何も言わなくて良いのよ…」

「…うっ…うぇーん…二人とも良かったね、また三人揃ったね、本当に良かったね」

童心に帰った様に泣きじゃくるプリメラを
アリスティアはただ優しく抱きしめて
メルルももらい泣きしながら二人の肩を抱く
暖かな心に触れて、再会を喜び合った
アリスティアの頬を静かに涙が伝う
ジークハルト達はただ静かに三人の姿を見守る



(…姫様…ルピティス嬢と再会出来て本当に良かったですね…)

遠くの方でアリスティアを見守り微笑むライザ、その隣でフィルは誰か近づいて来るのに気がつく。

「ライザ…もしかして彼…」

「フィルどうかしたのか?おや?あれは…」

フィルの目配せする先には
メリディエス王国騎士団の紋が入った
マントを翻す紫髪の短髪の男性騎士と
左胸にプリティス伯爵家の家紋が刺繍された
衣服を纏った少し長めで群青色の頭髪の
男性剣士の姿があった。

「やはり、ライザ姉さんか、久しぶりだな」

「デュオン…暫く見ない間に立派になったな」

良く見比べてみると、ライザとデュオンは頭髪の色以外も目元が良く似ているとフィルは思った。

「そちらの少年は…王子の護衛か?」

「デュオン!お前の義兄に向かって失礼だぞ!フィルはこう見えてお前より年上だ!!」

「は?義兄??あの無骨な姉さんに男??え?しかも俺より年上!?この美少年が!?」

フィル自身、この反応も良い加減に慣れてはいるが面と向かって大きな反応をされると
少し心に来るものがあった
特に見た目がライザと釣り合いが
取れていないと言う事なのだろうか…?
フィルの直近の悩みのタネである。

「そうだぞ、公私共に私の最高のパートナーだ」

「ライザ…もう、その、それ位で勘弁してください…」

ライザのこう言った直接的な発言には
時折胸を抉られる様な衝撃を覚えるフィルであった。

「…とにかく…にいさ…フィル殿…大変失礼しました、私はデュオン・ストゥディウム。
ご存知の通りライザ・ストゥディウムの弟です、そして彼はプリティス伯爵令嬢の護衛剣士…」

「…ルーヴ・グランスレイフだ」

「私はプリメラ…ルピティス伯爵令嬢の護衛でこの会に参加しました。」

フィルはルーヴ、デュオンとそれぞれ握手する。フィルは穏やかに微笑んだ。
デュオンは微笑み返すもルーヴは無表情だ。

「僕はフィル・ランスローブ、イスト王国付きの魔導師でライザと共にジークハルト王子とアリスティア姫の護衛をしています。」

「なるほど、ランスローブ…蒼氷の魔導師とはフィル殿の事であったか…、姉さんの相手が貴方の様な方でよかった、今後とも姉さんを頼みます…義兄上」

そう言ってデュオンはフィルに頭を下げた



アリスティア、プリメラ、メルルの三令嬢も
ようやく気持ちが落ち着いたところで
その三人の光景を見守っていた
ローゼリアが令嬢の輪の中へと入って来た

「貴女達がアリスの親友ですのね?
話はアリスから色々聴いておりますわ
わたくしはローゼリア・オラシオン
わたくしもまたアリスの親友であり
貴女方もアリスの親友であると言うのならば…」

そこでローゼリアは一間溜めて、カッと目を見開く

「貴女達もまたわたくしの親友という事でよろしいかしら!!?」

アリスティアはローゼリアの勢いにおおよそ慣れていたが、プリメラとメルルの二人は
ローゼリアの圧にかなり混乱している模様だった

「私はメルル・プリティスです、メルルとお呼び下さいローゼリア様」

「私はプリメラ・ストゥディウム…プリメラと呼んで下さい、ローゼリア様」

「では二人とも、わたくしの事はロゼと…それにしてもプリメラ…貴女は確かルピティス伯爵令嬢ではなかったかしら?」

「…ストゥディウム…プリメラ、貴女もしかして…?」

プリメラは頬を赤く染めていた
ローゼリアには何の事か良くわからなかったが
アリスティアにはそれが何が意味する事か
良く理解をしていた、アリスティアは
プリメラに優しく微笑む

「…おめでとうプリメラ!遂に夢が叶ったのね!心から祝福するわ」

「ありがとう…ありがとう!アリス!」

プリメラの瞳には涙が浮かんでいたが
それは喜びと嬉しさから来るものであった
その後、ジークハルトとレオンは彼女達とは少し離れた所で談笑し、令嬢の四人はお茶をしながら話に花を咲かせていた。
すると、六人ぐらいの男貴族の集団が令嬢四人に近づいて来た。
アリスティアには彼等の顔に見覚えがあった

「なあ?そんな所でお茶してないで
俺達ともっと良い事して遊ばないか?」

貴族の一人がメルルの右手を強引に掴み
強引に引き寄せた、反動で椅子と
椅子に引っかかったテーブルが倒される
アリスティア達は突然の出来事に驚く

「嫌です!離して!!」

「何だと!?コイツ!!」

メルルが貴族に掴まれた手を振り払うお
その反応に怒った貴族の一人は
メルルを勢い良く突き飛ばした

「キャッ!?」

「メルルッ!!」

「何をするのですか!貴方達!!」

アリスティアは貴族に突き飛ばされるメルルの名を叫けび彼女へ駆け寄る。
プリメラは貴族の下品な所業に激怒した。

「わたくし達に手を出す事がどう言う事なのか?貴方達はお解りになっていますか?」

「知らねえからベッドの上で教えてくれよ!」

「…何と下品な!!」

ローゼリアは貴族の下品な態度に
不快感を露わにした
ジークハルトとレオンも騒動に気が付き
野次馬を掻き分けてアリスティア達の元へと向かうも上手く進めない。

「へっ、今すぐ可愛がってやるよ」

貴族の一人がメルルへと近づいた。



「…何やら揉めている様だな」

ライザの視線の先には数人の男と
それに囲われる見覚えのある令嬢の姿
ライザとフィル、そしてデュオンは危険を察知し駆け出そうとしたその時
ルーヴが静かに口を開く。

「…デュオン殿…メルルに呼ばれた
フィル殿とライザ殿の話相手は、頼んだ俺はいかねばならぬ。」

「…お、おい?まさか、ルーヴ殿?」

ルーヴはそう言うと、一瞬にして
フッと風の様に消える
ライザとフィルは己の目を疑った

「なっ…!?消えた…?」

「…すごい、まるで古代の瞬間移動魔法みたいだ…」

ライザとフィルは大層驚いた、デュオンは
ルーヴのこの現象を良く見慣れている様で
今起こった事の説明を始める

「…あれは、グランスレイフ家の技術だそうだ
私は何回か彼を手合わせしているが
何時も驚かされる、彼らの力は
人間の常識の範疇を超えているよ」

デュオンは騒動の方向をただ黙って見て
ライザ達と共にその方向へと向かって行った。
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