ショートショート集「どうしてこうなった高校」

部活の疲れを取りたくて特殊カンナで体を剃った結果

「それじゃあ、しっかりカンナで体を剃っておけよ」
　その高校の野球部の監督は、いつもの調子で部員たちにそう告げた。
　彼の言葉どおり、部員たちはユニフォームを脱いで裸になる。そして背中や胸元、足元など疲れた部分をカンナでこすり合う。

　しかしそのカンナは決して危険ではない。
　皮膚に対して安全に作られた、特殊な刃だからだ。
　それどころかカンナは超音波を発し、体内の乳酸を体の表面へ引き寄せる。
　何度もカンナをこすり、乳酸を体外へ排除する。休憩が終わるころにはみんな疲れを感じないから、何時間も全力で練習に取り組めるのだ。

　だがこの日練習に参加した40人中、35人が熱中症で救急車に運ばれるはめになった。
　カンナ頼りで疲ればかり逃がして、脱水症状に気づかなかったせいだ。
　だから夏休みの炎天下の中、みんなバッタバッタと倒れてしまった。

　それ以降、この高校で「疲労削減用カンナ」は持ち込み厳禁になった。