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5,場違いだから帰りたい
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蝋燭で囲まれた円の中に座っていた神の申し子の腕を取り、支えるように立ち上がらせたテールは、ここはどこで自分は何者なのかともう一度ゆっくりと話しかけた。神の申し子は何度も頷きながら、少しずつ言葉の意味もこの現状についても理解しようとしていた。神の申し子は小説や戯曲と同様に、異様に理解力が高いところが凄い。これが自身であったらと一瞬考えたが、無意味なことだとディーンは頭を振ってその考えを捨てた。
「テールさん……つまりここはガージフェクト?っていう国で、僕は神子と呼ばれる異世界からの使者?ってことですか」
「そうです。あ、あと私のことはどうかテールとお呼びください。敬称は不要です」
テールは神の申し子の背中に手を添えて、安心させるように笑う。その顔は柔和で、人好きしそうであった。
神の申し子はその顔に安心してほっと息を吐くと、周囲をゆっくりを見渡す。ようやく落ち着いて現状を理解しようと努めているようだ。聖教会の面々と、電報を受けて集まった第一から第三までの騎士団長とディーン、そして王都魔道士団のトップ陣数名だ。神の申し子の真偽が分からない状況で王族を呼ぶのは危険も多いため、憚られたのだろう。王族を除いた国の主要人物が揃っている。明らかにこの場に場違いなのは、今まさに神の申し子と並んでいるテールと、第二騎士団団長に付いてきたディーンの二人であった。
そっと隣に佇む団長を見上げると、その視線は神の申し子……ではなくギラティカ司教を向いていた。ギラティカ司教も団長を見つめ返し、アイコンタクトで何かを伝えているようである。その心の声は、互いには聞こえないが意思疎通はしっかり出来ているところからして、仲が悪いようで仲が良いとはこのことである。ディーン以外はそんなこと一切気づいてないようだが。
団長の視線がギラティカ司教から外れ、神の申し子へと移る。血のように赤い瞳が小刻みに揺れる。瞼を閉じると、次はディーンに視線を移した。言葉は必要なく、黙ったままでディーンは自分のやるべきことを理解した。
先程飲み込んだ錠剤が、食道を通り胃の中でジュワジュワと溶けているように感じる。一つ息を吐いて、目に魔力を集中する。それはまるで、予見の能力を使用しているかのようで、上手く擬態出来ていると思う。
「すまないが、勝手にこちらでも予見をさせてもらう」
「何を言っている!」
団長は声高に言った。その声に非難を示したのは、当然のごとく聖教会の面々だった。しかし、そんなことは知ったことではないとディーンはそのまま能力を行使した。ディーンの立場は騎士団所属である。上司である第二騎士団団長に命令されれば従うしかないのだ。
「予見させて頂きます」
ディーンはそう言うと、魔力の籠もった瞳を神の申し子に向けた。
予見とは、対象の能力や才覚を見極めることである。本人の気づかない能力の発見に繋がったり、能力の向上が文字として見ることが出来るというものであった。この能力は基本的に重宝されるものであるが、騎士団という環境では自身の身体能力向上といった能力でない為、仕事で発揮でする瞬間がなくディーンは限りなく無能な人間に近かった。所変わってディーンがもし聖教会の一員であったなら、多少は認められて立場も異なっていただろう。しかし、ディーンは聖教会の体制が好きではなかったし、騎士のように体を動かすことが好きで、剣技を極めることが趣味と言う程に、常に剣を触っていたいある意味狂人であった為、聖教会の関係者になることは考えもしなかっただろう。
ディーンの金色に輝く瞳は、黒髪黒目の神の申し子をじっと見つめた。体の中心に真っ白な炎が揺らめいているのが見えた。そして、炎はぱっくりと真っ二つになったように半分が欠けていた。
欠けているということは、やはりこの少年は神の申し子に間違いがないようだ。
「テールさん……つまりここはガージフェクト?っていう国で、僕は神子と呼ばれる異世界からの使者?ってことですか」
「そうです。あ、あと私のことはどうかテールとお呼びください。敬称は不要です」
テールは神の申し子の背中に手を添えて、安心させるように笑う。その顔は柔和で、人好きしそうであった。
神の申し子はその顔に安心してほっと息を吐くと、周囲をゆっくりを見渡す。ようやく落ち着いて現状を理解しようと努めているようだ。聖教会の面々と、電報を受けて集まった第一から第三までの騎士団長とディーン、そして王都魔道士団のトップ陣数名だ。神の申し子の真偽が分からない状況で王族を呼ぶのは危険も多いため、憚られたのだろう。王族を除いた国の主要人物が揃っている。明らかにこの場に場違いなのは、今まさに神の申し子と並んでいるテールと、第二騎士団団長に付いてきたディーンの二人であった。
そっと隣に佇む団長を見上げると、その視線は神の申し子……ではなくギラティカ司教を向いていた。ギラティカ司教も団長を見つめ返し、アイコンタクトで何かを伝えているようである。その心の声は、互いには聞こえないが意思疎通はしっかり出来ているところからして、仲が悪いようで仲が良いとはこのことである。ディーン以外はそんなこと一切気づいてないようだが。
団長の視線がギラティカ司教から外れ、神の申し子へと移る。血のように赤い瞳が小刻みに揺れる。瞼を閉じると、次はディーンに視線を移した。言葉は必要なく、黙ったままでディーンは自分のやるべきことを理解した。
先程飲み込んだ錠剤が、食道を通り胃の中でジュワジュワと溶けているように感じる。一つ息を吐いて、目に魔力を集中する。それはまるで、予見の能力を使用しているかのようで、上手く擬態出来ていると思う。
「すまないが、勝手にこちらでも予見をさせてもらう」
「何を言っている!」
団長は声高に言った。その声に非難を示したのは、当然のごとく聖教会の面々だった。しかし、そんなことは知ったことではないとディーンはそのまま能力を行使した。ディーンの立場は騎士団所属である。上司である第二騎士団団長に命令されれば従うしかないのだ。
「予見させて頂きます」
ディーンはそう言うと、魔力の籠もった瞳を神の申し子に向けた。
予見とは、対象の能力や才覚を見極めることである。本人の気づかない能力の発見に繋がったり、能力の向上が文字として見ることが出来るというものであった。この能力は基本的に重宝されるものであるが、騎士団という環境では自身の身体能力向上といった能力でない為、仕事で発揮でする瞬間がなくディーンは限りなく無能な人間に近かった。所変わってディーンがもし聖教会の一員であったなら、多少は認められて立場も異なっていただろう。しかし、ディーンは聖教会の体制が好きではなかったし、騎士のように体を動かすことが好きで、剣技を極めることが趣味と言う程に、常に剣を触っていたいある意味狂人であった為、聖教会の関係者になることは考えもしなかっただろう。
ディーンの金色に輝く瞳は、黒髪黒目の神の申し子をじっと見つめた。体の中心に真っ白な炎が揺らめいているのが見えた。そして、炎はぱっくりと真っ二つになったように半分が欠けていた。
欠けているということは、やはりこの少年は神の申し子に間違いがないようだ。
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