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プロローグ

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「エリザベート・シュライゼル、貴様の処刑の日取りが決まった、死を持って聖女様を害した罪を償うがいい!!!」


カビの据えた臭いのする地下牢で俯く私へ兵士は語りかける、ああ…また…私はまた同じ自分の処刑の日取りを知るのね
今回の死因は何かしら?毒殺?銃殺?まだやったことのない引き裂きの刑?
もう、うんざり…私は何回同じ時を過ごせばいいの?


私はもう8回程死と時戻りを繰り返している、王都でとても流行った恋愛小説によくある王太子妃として殿下と婚約し、卒業パーティーで聖女を害したと囚われ処刑される悪役令嬢のお話…まさにそれのように渡しは何度も何度も何度も処刑されるルーティンを過ごしてきた…

容姿を変えようが性格を変えようが通う学園をわざわざ国外にしようが、殿下の性癖を周囲に暴露しようが何をしても結果は変わらない

エリザベート・シュライゼルは王太子妃として殿下と婚約をする、そして聖女を害する悪女なのだ
初めは悲壮感や絶望もあった、全てを王太子殿のためにとこの身を削り婚約者として恥ずかしくないように磨いて…しかしその先に待っていたのは冤罪で死刑…
初めて時を戻った時が懐かしい、なぜ?どうしてと未来を変えれると頑張った頃もあった…でも、もうなんか…この繰り返しも段々と嫌になってきている私がいる…殿下を好きだったのは最初の一回、それからはずっと聖女と浮気し放題のクソ野郎としか思えない、完璧な淑女の仮面も剥がれてしまうわ…
本当にそろそろちゃんと殺して欲しい…


悲しみや絶望よりも決められ運命を辿るのが嫌だ、私は自由に生きたい…!!
そう願い女神に祈ること計8回、女神はなにも答えない、つまり神はいない
なのに、運命を変えようと処刑を前に自害を試みると必ず失敗する…神よ命を大切にしなさいと言うのですか?すぐに処刑されるのに!


忘れたはずの涙が溢れる、繰り返す時間の中で捨てた筈なのに…何回これからも続くのだろう、本当は悲しいし辛い、処刑されるのも拷問されるのもうんざりだ…でも他人事に感じてしまう私がいる、こんなにも私は狂ってしまっているのになぜ私の存在を世界は抹消してくれないのですか…?
消えたい、この世界から私という存在を消したい、処刑され巻き戻る物理的な私を消したい…嗚咽を漏らしながら静かに泣く私は今までの人生を思い出し、一つの考えが浮かんだ…




「そうですわ…私が物理的に女だからいけないんです…女だから殿下婚約する、女だから聖女に男を取られて暴走するなどおかしなことを言われる…女だから、女だから……!!!私が男になればよいのですわ!」



まさに天啓、これぞこの繰り返しから脱却する唯一の方法ではないのか!この国は同性婚は認められていない、王妃となるのは女、婚約者も女である
私の心に希望の光が満ちる、明日が明るい!処刑されるけど明るい!



素晴らしい発想に心が踊りまくった私は神などクソ喰らえと密かに学ぶだけ学んでいた豆知識、悪魔召喚の陣を指先を噛み自らの血で自分の肉体に書き込む
なぜ悪魔召喚なのか、それはこの世界に女神などいないから、女神に捨てられた私はこの国の邪教と言われる悪魔召喚を使ったっていいじゃない!どうせ死ぬし!
本当に悪魔が来てくれるかもわからない、しかし男になるには気合と心意気だけではこの邪魔な胸も子宮も排除はできない


見張りさえもサボるこの牢屋には私一人、全裸になり悪魔召喚しようが恥ずかしくなんてないのよ!







何の音も聞こえない地下牢で私の息遣いだけが反響する、召喚陣に魔力を流し込むと辺の温度がぐっと下がるのを感じた…
ごぽっと腹部から黒い何かが溢れ出す、床へ溢れるとずる…ずる…ずる…何かを引きずり形を成していく、じっとりと絡みつく闇の魔力…私の肉体から這い出てこられる真っ黒な物体…ああ、なんてこと…悪魔様はおられたのね…!邪教万歳ですわ!
真っ黒な物体は段々と人の形へと変化する、赤い角が生え、漆黒の髪の襟足だけは血のように赤く、闇のような瞳を持つ青年と覚しき姿へと…




ゆっくりと青年が私を見つめる、
「…、行く数千年ぶりに呼ばれてみれば…全裸の女か………女、望みはなんだ?金か?名誉か?奴隷からの開放か…?」


全てを見据えるように悪魔が語りかける、が!私は金も名誉もいらない、欲しいものはただ一つ!!!
「いえ、女の部分を抹殺し、私の股間に男性器が欲しいのですわ!この後処刑されますので生き返った後にムキムキで男前の野郎にしてくださいませ!」


「…は?」



目の前の全裸の願いに
悪魔は行く数千年生きてきて初めて困惑した






ひっそりと静まり返る地下牢に悪魔様の涙声が響く…
「おま、おまえさぁ…なにその酷い人生…ぐずっ…悪魔の俺でもそんなだったら辛いわすげーわかる…そりゃガチムチの野郎にでもなってクソ殿下野郎達とおさらばしたいよなーズズッ…おまえ頑張ってきたんだな~偉いよ!すごく偉い!」


なんと、私の望みを聞いて困惑した悪魔様はなんでそんな願い?と信用してくれなかったのです!
信じてもらおうと私の状況をしっかりと赤裸々に語ること数十分、目の前の男前悪魔様は私の境遇を悲しんで泣いてくれてます…存在もしないクソ女神様よりも何倍も慈しむ神なのではないでしょうか……この世界の邪教万歳


女の子が全裸じゃ駄目だよとか羽織っていた上着を掛けてくれる紳士悪魔様…願いがわかったらさっさと来世で巨根をは生やしてくれる魔法をかけて欲しい

今か今かと願いを聞き届けてくれるのを待っていたけど悪魔は私をじっと見つめ涙ぐんだまま動かない…やっぱり叶えてくださらないのです…?淑女が巨根とかガチムチとか言ったからだめなのですか…?
…!


「なぁ、おまえ…対価はどうするつもりだったんだ?この部屋に供物らしきものは見当たらない、悪魔の対価の重さを理解せずに召喚したわけではないよな…?」

「ふふ、もちろんです、対価はちゃんと考えております、私の肉体と魂、私という人物に関する存在そのものの記憶と記録全て捧げますわ!
ですが対価をお渡しするのは次に時を戻り処刑されるであろう日を超えてからでお願いします」


そう、処刑される日を超えないと意味がない
せっかく消えるのですそれくらいは最後のご褒美に欲しい


「っ、くく、ははは!なるほど!いいなそれ!時を戻りまくる人間の狂った全てか!その対価気に入った!望みは叶えてやる、おまえの願いが充分に叶った瞬間おまえの存在その物が俺の物だ!


悪魔は笑う
「たが、ただの契約では駄目だ
俺はお前が起こす狂った世界を見てみたい、とても娯楽に飢えているんだ」

「………勝手に見てればよろしいのではなくて?」

「勝手に見てろって…くくく、ほんとおまえやばいな!
よく考えてみろ?悪魔がずっと現世に留まるなんてことできるわけ無いだろう?召喚してまで呼ぶ対象だ、俺等は裏側の世界の住人、この表の世界にそのまま長く留まると普通に死ぬ」

「なっ!勝手に見学して勝手に死なれては困りますわ!」

「だろう?…だから俺と対価の契約をした上で、血の契を交わそう」



願いを叶えるために悪魔が召喚者の一時的な使い魔になるみたいなそんな感じと悪魔様は教えてくれた

私は何でも拒みはしないのに、まさか互いに血を飲ませ合うなんて端ないこと初めてしましたわ!
明日の処刑後、時が戻った時にまた会おう…そう言って消えてしまった悪魔様…ちゃんと約束守って下さいませ!!!!








翌日
エリザベート・シュライゼルの公開処刑が行われた
血のような笑みを残し悪役令嬢は死んだのだ












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