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反撃編
世界の謎
しおりを挟むマイズの感情には強制力と本人の意思が混在している…この世界は箱庭と現実が混ざりあった歪な世界という仮説
そんなマイズの言葉に、おれは…おれたちはどう反応していいか分からずにいた
わからない、色々理解が追いつかない…乙女ゲームは本当にゲームなんだ…プログラムで動き、プレイヤーが主人公を操作する事で話が進む
けど、この世界はヒロインが現れる前から動いてたじゃないか?長く歴史もある…隣国との交流とかだって…
同じ様に皆言葉を失う中…暫しの間を置いて反応を示したのはシャルティだった
「感情が決められている事も驚き…ですが…箱庭の部分で…一つ思い当たる事がありますの…私の…本当のお父様…が亡くなる前に私に言った言葉なのですけど…
『変えてあげることが出来なかった、私はやはりここまでだ…すまないシャルティ』
そう、私に言って下さったんです…
この言葉の意味はもしかして…その箱庭の世界から私を救おうとお父様は何かを変えようとしていたのかなって…
私の見てきた私じゃない悲しい記憶の夢は…箱庭の私の記憶…そう、何故か感じてしまうんです…」
シャルティの見てきた悪夢…記憶…それは乙女ゲームで悪役令嬢として生きたと思われるシャルティの記憶だ
乙女ゲームの世界が舞台だから、そんな夢を見てるなんてって聞いた頃は思ったけど、父様の弟…シャルティの実の父の言葉は確かにおかしい
まるで何かを変えている途中に諦めざる終えなかった、そんな言い方だ…それこそマイズの言う箱庭の世界を変えたかった?現実の世界を切り離そうとした?そう思えてしまう発言…………
「レオ、知ってたらでいい…教えて欲しいんだけど、リジャール様と国王陛下って国王陛下が隣国留学中に知り合ったんだよな?
その時って国王陛下だけで隣国に行ったのか?」
「父上から惚気話で死ぬ程聞かされてるからある程度なら分かる…母上に出会った留学は確か我が国から5名程高位貴族が参加していた筈だ
確か、サングイス公爵家からも参加して………まさか………」
コクリとおれは頷く、幼い頃感じたとんでもない違和感…男性のリジャール様が王妃してるって衝撃の理由もこれなら説明がつく
「シャルティの実の父も…おれやルイ王子と同じ異世界転生してる可能性ってあるんじゃ無いのか…?
ここが乙女ゲームだと気付いてから…これまで至る所でおかしかった…
乙女ゲームなのに国の王妃が男性のリジャール様になってる事とか…家にマイケルみたいな他の乙女ゲームの攻略対象ってイケメンが居る事とか…おれがレオの婚約者とかな?類似した世界なんじゃって考える程、強制力が本当にあるか悩むほど色々違うんだ
本来みんな、髪型も見た目も全然違うって事…ルイ王子なら分かるよな?」
「もちろん分かります…見た目が全然違うっていうか魂入ってるー!ってくらい表情から何から違いますね…生きてゲームから飛び出してきたみたいな感じもする完成度を感じます
マイズさんだって感情を乙女ゲームに引っ張られるとは言え、ゲームと全然違う反応するんですよ!?僕の魔力も好きって憧れに弱い所も可愛いですけど!」
ルイ王子の言葉を聞きながら頭の中で整理する…
もしも、シャルティの実父も異世界転生していた存在で、悪役令嬢であるシャルティを救うべくこの世界に…乙女ゲームという物語に抗ったのだとしたら?
その意志を知らずに受け継ぐ形で、おれがシャルティの為に世界を変えようとした結果が現在…多くの事が変化したのだとしたら…
まるで今の世界は物語の大筋を大きく外れて新しい物語を紡ぐ様な…生まれ変わる途中みたいだ
ふと…乙女ゲームで悪役令嬢として悲惨な死を遂げる事を宿命付けられたシャルティを救う、優しい世界を誰かが準備した…とかあったりするのか?
もしも、聖女が桃香じゃなかったら
常識のある乙女ゲームに登場するような心の綺麗な存在が聖女だったら…変わりつつある悪役令嬢が居ない世界で…乙女ゲームとは全く違う、新しいほのぼのとした平和な物語が始まっていたのだろうか…?
何故だろう…この世界の異物はおれじゃなくて…桃香の方なんじゃ…って考えてしまう
「まぁ、ここまで話してあれなんですが、憶測と仮説でしか現状わからない事も多いんです…
ですが、ルディヴィス達に聖女と同じ力があるのは本当ですし、私のよくわからない聖光魔法を好いてしまう現象もルイ王子の言う通り少しずつ変化しているのも本当です…
正面から美しい瞳を隠すことが無くなったこの顔、キラキラした目で四六時中好き好きと言われてみてください…強制力とか聖光魔法どうこう言う前に絆されますよ…これ…
とにかく、これで私からの報告は終わりです」
そう言って笑うマイズの顔は満更でもなく、何処か憑き物が取れたような感じだ
そこから暫くみんなでマイズの仮説を元に情報の擦り合わせをして、おれの計画を煮詰めて…とりあえずは聖女に対しての作戦を遂行しようという話になった
ここが乙女ゲームの箱庭とか、変えようとした結果の新しい現実とか、いくらでも想像は出来るが証拠は無い
一つ言えるのは乙女ゲームの展開を越えて、変えたいと願い、未来のために起こした行動はちゃんと未来を変えているって部分は真実だと言う事…
今はそれだけでも十分だと思うって、みんなで頷きあった
よく考えたら現在休憩時間なんてどう考えても過ぎている…
みんなで授業サボって空き教室で話し合う事になってる事実に気付いてラッジ先生に助けを求めたり、話の内容がファンタジー?過ぎてガルロ先輩とラッジ先生がおれたち場違い感やばくない??って顔をしていて申し訳なくなり、レオンハルト殿下が王家も絡む機密でよろしく!これで本気で仲間だな!と言いつつ、これまでの事をとりあえず説明する場面もあった
おれはそんなみんなを見つめながら、みんなと話し合えて良かったと…一人で思い詰めて変な事しなくてよかったって心から思い返す
ありがとう…みんな、本当に大好きだよって
………………
…………
……
放課後、おれはマイズと二人きりで少し話をした
おれの魔力に惹かれたとはいえ、恋心に似た何かをマイズが思ってたなんて事…
レオンハルト殿下からの好意にすら気付いてないおれは、本気で知らなかったのが申し訳なくて…ちゃんと話そうと思ったから
「マイズ…なんて言っていいか…あれなんだけど…ごめん…おれ全然気付いてなくて…絶対に傷付けたと思うから…」
「…………?ふふっ…いいんですよ気にしなくて、恋心に似た何かの事でしょう?
あのまま気付かずにいた方が大変な事になっていたので、これでよかったんです…
私、ルディヴィスをレオンハルトが奪ってやる!とか本当に考えそうだったんですよ?次期国王と次期大司教が痴情のもつれでトラブルとか笑えませんからね
ルイ王子の事も今は魔力に惹かれてますけど…それを抜きにしても嫌いじゃ無いんです
私がご飯食べてる姿すら尊いって悶える姿が可愛くて…見ていて楽しいんですよ?だから謝らないで下さい、それより…これからも素敵な親友で居て下さいね?」
「うん………うんっ………ありがとう、もちろんだよ…!マイズ!!」
聖母のような微笑みでマイズはおれの頭を撫でる
精神年齢的にはおれが上なのに…優しくて温かくて…本当にマイズが聖母なんじゃって思う…
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