【書籍化進行中】悪役令嬢の兄です、ヒロインはそちらです!こっちに来ないで下さい

たなぱ

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反撃編

それぞれの思惑と変化

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Side シャルティ




ルイ王子の歓迎会、あの場で聖女ルチアが起こした行動はとても酷いものだった
あまり接触した事が無かったから、あんなにも礼儀を弁えない行動を起こすなんて知らなくて…
ヘルリの協力を得てお義兄様がいう悪役令嬢の私を再現して鞭まで準備して…本当はもっと揺さぶりを掛けるつもりだったのに、実際は聖女に対してお説教みたいになってしまった

「ごめんなさいねヘルリ…私、うまく悪役令嬢って存在を演じきれなかったわ
ヘルリが首輪にリードなんて酷いもの付けてまで協力してくれたのに…」

「いえ、そんな事はないと思います
十分にいつもと違うシャルティ様でした周囲の反応も、あの聖女の反応にも変化があったではないですか?」


ヘルリはそう言って私に紅茶を準備してくれる
ルイ王子の歓迎会が終わり、その後の話し合いも終わり現在夕刻…寝るにはまだ早くて、今日の事を思い出しながら過ごす

確かに聖女の顔は私を見て、なんでここに居るのよ!!!って威嚇する様な酷いものだった…けど、何処か違和感もあって…もう少し上手く揺さぶりを掛けれたらその違和感の原因とかも分かったかもしれないのに…
あと、鞭を持った瞬間見えた断片的な私じゃない記憶とかお義兄様に報告したかったけど、現在お義兄様は少し考えたい事があると1人自室に籠もられている
……たぶん、聖女の事…前世の妹だった桃香という存在について考えているのだろう


誰よりも優しくて、自分の幸せなんて放り投げてでも他者の幸せを願うお義兄様…そんなお義兄様と前世とは言え血が繋がってた存在…それが本当にあの聖女だったなんて
あまりにも真逆過ぎて恐ろしくなる、まるで光と闇のように正反対だから…
あの聖女を止めるためにお義兄様が何処かに行ってしまいそうな…そんな理由のわからない恐怖が込み上げてくる…


「シャルティ様、大丈夫ですか?顔色が…」

「っ…………ううん、大丈夫…大丈夫ですわ…
………………ヘルリ、お義兄様が危ない事しないように私と一緒に見守ってくれる?」


ヘルリはコクリと頷きもちろんですと、微笑んでくれる
今思うと、昔が一番楽しかった…聖女が現れる前、ヘルリが家に来てお庭でたくさん遊んだあの頃とか…本当毎日が楽しかった
今は新しい出会いにワクワクする暇もないほど、聖女が現れてから不安でいっぱいになってきている…
またあの平和な日々が戻って来て欲しいと切に願うしかない



ルディヴィスお義兄様、私は…ルティは何があってもお義兄様の味方ですから…どうか一人で抱え込まないで…







………………………
………………
………

Side レオンハルト




ルイ王子の歓迎会が終了し、その後の反省会も終えて各々帰宅する場面になった時、俺はマイズと共に馬車に乗り教会経由で王宮に帰る事となった
本来は別々だったけど、マイズから話したいことがあるって言われたから…

「で、話ってなんだ?二人きりで話したいなんて急に言うから驚いたが…どうかしたか?」

「ある意味大切な事…とでも言いますか
レオンハルト…親友であり互いにルディヴィスに想いを寄せていたからこそ伝えたい事がありまして

実は私、ルイ王子とお付き合いをする事になったんです」

「………………は?」


急に意味のわからない告白をされた時、どういう反応をしていいかわからず、おれはマイズの顔を5度見くらいして再び「は?……え?なんて言った?」と聞き返した
なんて言った?ルイ王子とお付き合い?お付き合いって付き合うだよな?恋仲って事なのか?
え、だってお前…好きなの俺と一緒でルディヴィスだったじゃないか…それがなんで出会って数日のルイ王子と…!?
父上達からもそんな話聞いてないし…何が起きたんだ…!?


「ちょ、予想外の反応をしないでください!レオンハルト…ちゃんと説明しますから…因みに王家やルイ王子の関係者にはまだ内緒ですよ?
まぁ、とりあえず深い理由があるんです、ルイ王子が私をえらく気に入ってる以外にも聖女へ対抗するのに必要だったと言いますか…」



ため息を付きつつマイズはその深い理由というやつを教えてくれた
何故そんな事になったのか、そのキッカケはルイ王子が自分を気に入り、更にはルディヴィス以上に乙女ゲームというモノについて詳しい彼からの提案だったらしい
まず、大前提としてマイズがルディヴィスに想いを寄せていると言うことを即座にルイ王子に気付かれたのがきっかけだった…

気付かれた流れで、10歳の頃の話…ルディヴィスとの出会いの話、自分の魔力を好きになれた話、そこからルディヴィスに想いを寄せてるって話になり…
気づけば全部話していて…その話にルイ王子は号泣してマイズが救われてよかったって泣いてしまったのだと言う

乙女ゲームでマイズはチャラ男枠なのに、聖女という存在…その魔力、魔法に心酔しまるで光に群がる虫の様に異常な忠誠と親愛を捧げているキャラだったから救われてよかったと…でも


『マイズさんはルディヴィスさんが大好きなんですね?うん、うん…!!すごくピュアでいい…!最高!
………………でも、彼はレオンハルト殿下の婚約者でしたよね?あの………マイズさん物凄く言いにくい事、言ってもいいですか?

たぶん、聖女ではなく現状ルディヴィスさんがマイズさんにとってのヒロイン枠なのだとしたら…その気持ちはそのまま置いておくとバッドエンドに向かいます………
レオンハルト殿下とヒロインを奪い合い、闇落ちするエピソードがマイズさんルートには用意されてるんです…あの乙女ゲーム、制作陣の性癖が歪んでるから…このまま好きな気持ちでいたらマイズさん、破滅しちゃうかも…っ!!!』



そう、ルイ王子はマイズにしがみつくように泣いて泣いて…泣きじゃくったらしい
何を冗談言ってるんですか!?って答えられないほどマイズの中で言われた言葉に対して魂が震える変な感じがしたのだと
ヒロインを巡って泥沼化し闇落ちするエピソードが各キャラ一つずつ用意されており、ある一定の特殊な思考の需要も満たしていたゲームだった…と泣くルイ王子を見つめ、この話が嘘ではないと悟った


「ルディヴィスが言ってた話、覚えてますか?
シャルティが鞭を振るいヘルリを虐げたり、イグニスを金で買ったりしたという元々のストーリーと呼ばれる状況…乙女ゲームというゲームの展開について…それだけでも頭がおかしいとは思いましたけどね…
ルディヴィスは前世の妹に見せられて来たシナリオしか知らない、それ以外の情報を持ってない…でも彼はその情報を持っている
聖女がもしも、ルディヴィスを陥れる為に私達の中を裂く行動にでたら…そう考えて怖くなりました」

「覚えてるけど、だからって…」



自分に他者が好意を寄せてるとルディヴィスは気付いていない、現状レオンハルトの婚約者となって交流する以外、他の皆からの好意には気付いていない…
自分に好意を寄せている事により闇落ちし、皆の幸せを願う彼を傷付けてしまう可能性があるなら…私がその予防線になるって決めました
ルイ王子と協力し、各自のメンタル面で私は動きます

そう言ってマイズは笑った
ルイ王子との恋仲は頻繁に会うための口実らしい…ルディヴィスが好きなマイズ、そのマイズに一目惚れしているルイ王子の恋は確実に叶わないが、現状協力と言う形で推しの側にいれるだけで嬉しいから大丈夫って感じらしい…?


「これからルディヴィスは前世の妹の対応が控えてる…その中で守りたいと思ってる私達が争うなんて事態、あってはいけないと思いませんか?
レオンハルト…ルディヴィスを頼みます
…………貴方の心にもたぶん、貴方ではない気持ちがいるかもしれません…注意してください」

「…………ああ、わかってる」



教会前に馬車が到着し、マイズが降りていくのを見つめながら俺も俺自身の心に問いかけてみる…
考えた事もなかった…もしも、ルディヴィスを誰かに奪われたら?婚約者ってポジションとか奪われたらどうする…?

……………ドロリと嫌な感情が芽生え、気持ちになった
奪おうとしていると信用できない聖女が言ってきたとしても信じてしまう程、よく分からないおかしな感情が…



もしかして…乙女ゲームという強制力とかいうのは俺たち個人個人の中に眠っているのか…?







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