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陽動編
歓迎会 後編
しおりを挟む聖女にとってパーティーとは余程楽しい物なのかもしれない…もっと攻略対象であるみんなに接触するのかと思えば、普通にパーティーを楽しんでいる感じもある…
とりあえずおれには近づきたくないのか、隣にいるレオンハルト殿下の所にも挨拶以降来ず、マイケル達への接触で留まっているみたいだった
ケーキを食べ、料理を食べ、まるで自分が主人公の様に振る舞う聖女…その後をゆったりと追う第二王子がいる
特に問題もなく歓迎会は滞りなく進んでいたが、聖女がルイ王子に歓迎の挨拶を行う時間が近づいた頃…ある違和感に気付く
終始、聖女を優しく見つめ微笑む第二王子が時々おれの方を見ている?気がする
特に目が合うとか話しかけられてる訳じゃない…睨まれてるわけでもない…でも、聖女を遠目に観察するおれを何故か見ている気が…
気のせいかもしれない、でも何故か違和感を感じる…よく考えると、聖女以上に何を考えてるかわからないレオンハルト殿下の腹違いの弟である第二王子ジェイス殿下…
「レオ、ジェイス殿下って…」
「ん?どうしたルディ…?っ!、そろそろ聖女の番みたいだぞ!」
違和感についてレオンハルト殿下に確認したかった、けどその時間は無いようで…ついに聖女の番が回って来たようだ
ジェイス第二王子に連れられ、制服がドレスコードの会場でただ1人夜会の様なドレスを身に纏い、堂々とルイ王子の前へ歩み出るその姿にはどう見ても自信に満ち溢れているようにしか見えなかった
「ルイ.ベラニード殿下、我が国へようこそ
僕はジェイス、歓迎会を主催するレオンハルトの義理の弟です
今回は我が国の聖女と共にご挨拶を…
さぁルチア、おいで?」
「あ、はい!ようこそ!ルイ王子!あたしは聖女のルチア♡ずっとあなたにお会いしたかったんです…!
あの、あの!せっかくお会いできたんです、あたしの事はルチアって呼んでください♡あ、もしよかったら街をあたしが案内とかしますよ!あたし、元々庶民でお友達少なくて…ルイ王子と仲良くなりたいなって…」
………………え、今なんて言った?
初対面で言う台詞ではない歓迎の言葉が聞こえた気がしたが、まだあの場には行けない
あまりおれ自身が聖女に近づいては計画の意味が無いから…
けどレオンハルト殿下と共に少し離れた位置から主催側の立ち位置で観察をしているが不安になってくる…陽動作戦だからある程度の失礼はルイ王子だって許してくれる…けど…ルイ王子の中身は可愛い女大っきらいな人間…このまま見てて大丈夫かな…?
「………………っ、ご挨拶ありがとうございます
僕はルイ、この度ラピスチアーノ魔法学園に留学出来た事をとても嬉しく思います
ジェイス殿下、聖女殿、在籍中にまた会うこともあるかもしれません…その際はまたお話出来るといいですね?」
おおっと!?ルイ王子、凄い…!素晴らしい王子スマイルで聖女の発言をまるっと無かった事にして、無難な返答してる!
また会うかもしれませんって会わないですと言ってるようなものだ…きっと内心は今にでも逃げたい気持ちで溢れてるのかもしれない…
よく見ると、ガルロ先輩が腰を擦り、マイズがルイ王子の手を握ってる…隣にいるよって励ましているんだろうか?苦手だと言っていた女を目の前にして逃亡しようとしてるのを阻止してるのか?
「ふふ、恥ずかしがり屋さんなんですね?ルイ王子!大丈夫です、ルチアが側にいますから!
人見知りなんてすぐ克服できますよ!
あ!一緒にカフェとかどうですか?おすすめの所があるんです♡ルイ王子と一緒にお茶したいなって!」
「ハハハ、既に先約が永久的に決まっておりまして…お気持ちだけで大丈夫ですよ…お気持ちだけで、ね?」
永久的に聖女とカフェとか行きたくないって言ってる…?言ってるよな…
隣から小さくルイ王子必死過ぎて笑いそうってレオンハルト殿下の声がする…笑ったら可哀想だから耐えよう!必死に聖女の誘いを断ってるんだから!
………それにしても…初対面だよな?相手は隣国の王子だ…その対応は明らかに良くない
礼儀すらも分からないのか…それとも…
おれの中で見たことがあるルイ王子とのエピソードに当てはまらない為、これが乙女ゲームのヒロインの言動として正しいのかわからなかった
数分、聖女は同じ様な会話を繰り返しルイ王子に迫る、台詞一つ一つは失礼過ぎて予想外だけど…話の通じない女である事はみんなからの情報で分かってたし、ある意味想定の範囲内だ
その時間を利用し舞台を整える
ルイ王子を目の前にした聖女、その付近にいるマイズ、ガルロ先輩…少し離れた位置にはおれとレオンハルト殿下、イグニス、マイケル
そして、聖女が行う歓迎の挨拶に不安を募らせる参加者が道を開け登場する存在を迎え入れ、今日の目的を果たすんだ
「あら、庶民がルイ王子を困らせていいと思っていますの?迷惑、その言葉の意味も知らないなんて哀れでなりませんわ…ねぇ、ヘルリ?あなたはどう思う?」
「………………シャルティ様のおっしゃる通りです」
真っ赤な髪を靡かせ、従者である青年に赤い首輪とリードを付け従わせるようにルイ王子と聖女の元へ歩みを進める…
つり目でキツい表情だが、恐ろしい程美しく、血に染まったような真紅の口紅が妖艶さを醸し出す…存在
この乙女ゲームでいる筈なのにいなかった存在、ヒロインである聖女が無理矢理にでも作り上げたかった宿敵
悪役令嬢、シャルティ.サングイスが聖女の目の前に現れた
乙女ゲームと同じ鞭を持ち、怪しげに笑うその首元には攻略対象者が身に着けているネックレスと同じ物が輝いている
「な、何で…なんで悪役令嬢がいるのよ……!!!??」
なんでって、歓迎会が終了だからだよ?聖女様?
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