【書籍化進行中】悪役令嬢の兄です、ヒロインはそちらです!こっちに来ないで下さい

たなぱ

文字の大きさ
108 / 174
陽動編

感動の味と罪悪感

しおりを挟む
Side ルイ




僕は今、自分で自分を窮地に立たせている気がしてならない
この絶妙にクセの強い乙女ゲーム…『光の聖女に愛を灯す』の世界に転生してしまい早16年
自分が攻略対象者だと分かってから絶望し、乙女ゲームの世界に呑み込まれないようにと必死に逃げて逃げて…逃げ続けてきた…

なのに強制力だと言わんばかりに避けてきた留学は父上に強制的に組み込まれ、実は乙女ゲームじゃない!と信じてラピスチアーノ学園に登校してみればふわふわキラキラの世間一般的にはクソ可愛いヒロイン…聖女が登校している悲しい現実

ここは確実に乙女ゲームの世界、しかし僕は前世から本気で女子が苦手なのだ、恋愛対象は男、男一択…
ヒロインと恋愛どころか関わり合いたくない、だから逃げている…何が乙女ゲームに直結するか分からなかったから王家特有の目を隠してヒッソリこっそり生きてきたのに…



先日、僕の前に現れたのはチャラ男枠の攻略対象者だった次期大司教のマイズ.エースメイス…見た目がもうマジで好みの美しい美形な彼が言った事を、あの日…信じられなかった自分を叱ってやりたい


「貴方が先程から呟いている乙女ゲーム…その言葉に詳しい人に心当たりがあります…
もし、もしも可能でしたらその人の力になってあげてくれませんか?」


そう、考えてることが全部口から出ていた僕にマイズさんは言った、真剣な顔で…必死な表情で…
でも僕は直に信じず逃げてんだ…これは乙女ゲームの世界開始への強制的なのか?って…怖くなって…
もうマジでお美しくお近づきになりたかったマイズさんが恐ろしく見えた

何とも答えられない僕にマイズさんは優しく微笑み、直に信じろと言うのは難しいと、喋らず正体を明かさなくてもいいから一度その人を見て欲しい…ってお願いされて後日連れて行かれたのは悪役令嬢の家だった…紹介状まで書いてもらったのになかなか入る勇気が無くて…悪役令嬢家とか怖すぎて本当に一言も声が出なかったとか恥ずかしくて仕方ない

だって、悪役令嬢だよ?ヒロインとはまた違う可愛い女子…
しかし凶暴で炎と鞭を使い攻略対象者をいたぶる悪女、僕だって乙女ゲームのシナリオ的には隣国の王子なのに、色々巻き込まれて鞭で撃たれてたエピソードがある恐ろしい存在

その悪役令嬢の家に力になって欲しい人いるの!?!って怖すぎて信じられなくて…でもマイズさんに嫌われたくないと勇気を振り絞ってサングイス公爵家に入ったら後悔した…僕の思い込みに…ちゃんと詳しく話聞けよって僕の愚かさに対して後悔する


「えっと…始めまして、ようこそサングイス公爵家へ…」


そう、無言でモサモサ髪で目を隠し怪しさしか無い僕に挨拶をしてくれた存在、ルディヴィス.サングイスという存在を始め認識できなかった
赤い髪に赤い瞳…悪役令嬢にちょっと似てる男…けど見たことが無かったから………誰?乙女ゲームにいた?誰これ?って分からなかった
悪役令嬢も僕が知ってる見た目じゃなくて…ニコニコ可愛く微笑む姿がどこか女子なのに癒される謎のオーラを纏ってて…訳が分からない…知らない男と悪役令嬢にどんな関係が?
そう思いながら、中庭に通されてからもずっと観察していて思い出したんだ…

そう、そして気付いた………大きなピザ窯を見せられて、とんでもなく美しいイリュージョンピザに感動して……あまりにもおいしい…前世で食べた懐かしいピザの味、ジャンクフードの味を口いっぱいに感じた時…


マイズさんが言ってた力になって欲しい相手はこのルディヴィスって人だって事に…
恐ろしさで緊張して見えてなかったけど、この悪役令嬢宅の中庭にいるメンバーのほとんどが乙女ゲームの攻略対象者だって事実も気付いてしまった



悪役令嬢らしくない優しい感じのする悪役令嬢
乙女ゲーム以上に王子になってるレオンハルト殿下
光に狂信的な想いを馳せてないチャラ男じゃないマイズさん
穏やかな紳士にしか見えない闇を感じない従者のヘルリ
ピザをおかわりするイグニス………


その誰もが乙女ゲームで聖女と恋をして救われるエピソードで見たどのスチルよりも、悪役令嬢とも仲良く楽しそうに…幸せそうな表情でこの悪役令嬢宅の中庭にいる事実

その中心にいる知らない男

彼は、ルディヴィスは…乙女ゲームの世界で悪役令嬢の断罪として一家もろとも死を迎える名前すら本編で出ない脇キャラ…悪役令嬢の兄だ
そして、僕と同じ異世界転生者だ…………



乙女ゲームの世界に転生した事を恨みながら逃げ続けた僕とは違う
きっと異世界転生してしまった事を悲観しないで、未来をより良くしようって…義兄って立場で悪役令嬢を救う為に色々してきたんだろうなってわかる光景は心に突き刺さり過ぎた…
あと、ピザが美味しすぎて……ついでにルディヴィスを見つめるレオンハルト殿下達の目が優しすぎてさ…ここはBLの世界か!って感動してしまったんだ

だからこそ、礼儀知らずなままこの乙女ゲームの世界を超えた素晴らしい空間に居る自分が申し訳なくなってくる…………
気が付いたら腰にしがみついついてたり更に失態を重ねてた


でもでも、マイズさんがチャンスをくれたから同じ異世界転生者なら絶対わかるジャパニーズ土下座!!!それで盛大に謝ろうってしたら泣くとは思わないじゃん!?!思わないじゃん………

本当にごめんなさい悪役令嬢の兄…ルディヴィスさん!!礼儀知らずな同郷?ですいません!
早く泣き止んで…自分勝手で申し訳ないけど、話がしたいよ………









しおりを挟む
感想 192

あなたにおすすめの小説

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる

cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。 「付き合おうって言ったのは凪だよね」 あの流れで本気だとは思わないだろおおお。 凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

婚約者の王子様に愛人がいるらしいが、ペットを探すのに忙しいので放っておいてくれ。

フジミサヤ
BL
「君を愛することはできない」  可愛らしい平民の愛人を膝の上に抱え上げたこの国の第二王子サミュエルに宣言され、王子の婚約者だった公爵令息ノア・オルコットは、傷心のあまり学園を飛び出してしまった……というのが学園の生徒たちの認識である。  だがノアの本当の目的は、行方不明の自分のペット(魔王の側近だったらしい)の捜索だった。通りすがりの魔族に道を尋ねて目的地へ向かう途中、ノアは完璧な変装をしていたにも関わらず、何故かノアを追ってきたらしい王子サミュエルに捕まってしまう。 ◇拙作「僕が勇者に殺された件。」に出てきたノアの話ですが、一応単体でも読めます。 ◇テキトー設定。細かいツッコミはご容赦ください。見切り発車なので不定期更新となります。

「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

処理中です...