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陽動編
お茶会日和 後編
しおりを挟むシャルティの操る美しい炎の舞で、見るからに美味しそうな焦げ目のついた最高のピザが完成した
「熱々のうちにどうぞ」とヘルリた達がすばやく完成した出来立てのピザを切り分け参加者に提供する
しっかりと一応ナイフとフォークも付けて
今では何回もピザを食べているレオンハルト殿下達、慣れたように切り分けられたピザを食べれるけど、初めはそうじゃなかった
ピザを見たことないけど人にとって、更にナイフとフォークで食べるのが主流の人には何この料理!?ってなる、それがピザだ
食べたことがあるメンバーの動きを見て手で持って食べるのもハードルが高いだろう、だからこそナイフとフォークも準備しておく
この世界、パスタとかパフェとかはあるのに、ジャンクフードとか日本食はないから…ピザって聞いてピザか!ってなるのはおれと、前世の妹の可能性がある聖女くらいだと思う…
他の人にとっては見たことも聞いたこともない料理…シャルティが素晴らしく焼き上げたピザのお味は如何ですか?ってドキドキしながら反応を観察した
「な、何だこれは…!?可愛いリスちゃんの形をした焦げ目部分を食べる罪悪感を吹き飛ばす旨味…、香ばしさ…言いしれぬ背徳感を感じるぞ…!?
一体これは何国の料理なんだ!?!美味い!!」
ガルロ先輩は美味い!!と目を輝かせながら近くに座っていたマイズに接近して近いです、聞くならおれにって言ってたり
「やばいな…こんな美味いの久々に食べたかもしれねぇ…酒が飲みたくなるな…
ローダン先生、これ職員食堂で出そうとしたら出せると思うか?」
「出せたら幸せですね…熱々のチーズが絶妙に焦がされてて…ワインが飲みたいです」
先生達はお持ち帰りして酒飲みたいとコソコソしてたり、女性陣達はシャルティに「素晴らしいですわ!美味しいですわ!」「このモモンガちゃんの焦げ目を刺繍に出来ないかしら?」って楽しそうに話していた
ピザを食べたことがあるいつものメンバーは言わずもがな、器用にナイフとフォークを使用せず手で食べている、イグニスなんて三枚目のおかわり中だ
ちょっと呆れてイグニスを見てると、レオンハルト殿下がこっちを見て、「大成功だな」って笑ってくれたのがすごく嬉しい…
婚約者で、公爵子息なおれが進めたとは言え、王族の次期国王となる存在が…高貴な人がおれたちが作ったジャンクフードを美味しいって食べてくれる…それが距離感を感じさせなくて…嬉しかった
概ね大成功といえるだろう、シャルティと大成功!ってハイタッチしたいが淑女にそんな事させてはいけない
美味しい美味しいってみんなイグニスに釣られておかわりまでしてくれて…本当に嬉しい
けど………
レオンハルト殿下の微笑みの横、マイズとガルロ先輩の近くで一言も喋らないまま、何故か涙を流しつつピザを食べるル.ベラ先輩…彼だけなんか異質見えた
まるで久々に故郷の料理を食べる帰省した人みたいな………ピザを知ってるかのような、折りたたんでソースが溢れないように食べるその姿が………
…………あの人は、ピザを知ってるのか?
「ルディヴィス!シャルティ!デザートタイプも食べたい!もう一枚お願いします!」
「ん?うん、いいよ、ちょっと待っててね生地作るから」
イグニスがデザートピザのリクエストをしてくれてまた準備に取り掛かった
ル.ベラ先輩は何かを知ってる?でも、もしかしたらピザっぽい食べ物があるのかもしれない?いやまさか前世の記憶持ってるって事は無いだろう…?そんなぽんぽん前世の記憶持ちだったり異世界転生する奴がいたら怖い
きっと実家の郷土料理か何かに似てるんだろう、一言も喋らないからよくわからないが
そう思いつつデザートピザも焼いてみんなで食べた
楽しいひととき程過ぎるのが早い
特大サイズに焼いたピザもあっという間に無くなって、デザートにクリームブリュレ(シャルティの炎魔法を添えて)を提供したりして、大満足のお茶会…最後の方はお食事会が終了する
初参加な合同魔法演習チームメンバーはもちろん、ラッジ先生達にも凄く喜んで貰えて、またお茶会する時は是非呼んでほしいって言ってくれる
ピザについても新発見だったと喜んでくれて…
当初の目的だったシャルティの魔力暴走についての事も、あのレベルで魔法を扱える人間が魔力暴走を起こすわけが無いと理解して貰えた
理解して貰えてよかった……!!
「私が魔力暴走を起こしてないってわかって貰えて良かったです…ありがとうございますお義兄様…
あの日、何が起きたかわからなくて…
でも、お義兄様が素晴らしいって言ってくれた魔法で人を傷付けようとしてたなんて考えたくもなかったから…」
「大丈夫、僕もレオンハルト殿下や皆もシャルティを信じてる、今日、実際に見てもらうって事が成功してラッジ先生達にも暴走なんてありえないと信じて貰えた
実際に見るって大事なんだよ?
昔から必死に努力したシャルティが人を傷つけるなんて思ってない、関わり合わないって誓いあった聖女に何かするなんて誰も思ってないから安心しろ」
シャルティと皆のお見送りをして、少しだけ不安が和らいで涙目なシャルティの頭を撫でてから中庭でまだ寛いでいるレオンハルト殿下達の元に戻る
聖女がいじめられている自分可哀想と演技して、奇跡の力込みで周囲がそれを信じたとしても、それは偽りに過ぎない
おれたちはちゃんと真実を積み重ねて、信頼を得て乙女ゲームじゃない未来を掴むんだ
戻ったら例のウロウロ調査結果も聞かないと…そう考えていたら………
中庭から知らない人の話し声がして、何かあったのか?と近付くと…
モサモサが目の前に飛んできた
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