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現実編
ありえないこと
しおりを挟む聖女がシャルティから酷い事を言われて攻撃されそうになったと泣き崩れててから数分、保健室には聖女の声と保険医声しか聞こえなかった
おれは現場を知らなくても、どう考えたってあの場で聖女に逃げてと泣き叫んでいたシャルティが被害者だと確信しているし、酷い事を言うシャルティがいるはず無いだろうって大きな声で叫びたかった
でも、それが正しいとは思わない…今は静観するのが得策だと何故か思うんだ
保健室の中を見回すと、ネオイグニスくんはどうしようって顔をしているし、レオンハルト殿下やイグニスの方を見ると、手をぎゅっと握り聖女をみる目が少し怖い
レオンハルト殿下が口を開こうとした瞬間、ラッジ先生が手で静止し話し始めたのがわかった
「ルチア、それは怖かったな…だが、状況を詳しく話してもらわなければこちらは上手く対応が出来ない
お前の言い分ではシャルティが危害を加えるために近寄ったと言っていたが…
あの現場…シャルティが暴走した場所はシャルティ達に充てがわれたエリアだ、演習場は事前のチーム分けで地面に厳密にエリアの区分がされていたんだ…
だがルチアに接触した筈のシャルティは自分のチームエリアにいた…危害を加えるならルチア達のチームの場所に居るはずじゃないのか?
何故、ルチア…お前が他のチームの場所にいたんだ?」
先生の淡々とした言葉は何処か冷たく感じる
レオンハルト殿下がラッジ先生達を呼びに行ってくれた時、きっと場所の状況も合わせて説明してくれてたんだろう…地面にエリア区分がされてたのは知らなかったけど、あの場所はレオンハルト殿下達のチームエリア…聖女のチームはその横だ
じゃあなんで聖女は違うチームの場所にいたんだって疑問はもっとも…
「っ……、それは…シャルティ様があたしを引きずって………、いや、えっとこっちに来いって言われて…
………ううっ、怖く…て、怖くて良く覚えてないんです!!!仕方ないじゃないですか!あたしはただの庶民だったんですよ?聖女っていわれてもただの市民たったんです!!!
怖くて記憶も朧げで…でも、シャルティ様があたしに酷い事をしようとしたのは本当なんです…!
信じて、信じて…!!先生、レオンハルトくん、イグニスくん…!!!
『あたしは嘘をついたりしない…!!』」
的確におれの名を外して信じてと泣き叫ぶ聖女の声が、とても良く知っていた存在の声と重なった気がした…
「目を擦っては赤くなってしまいますよ…大丈夫です、誰もルチアくんを責めてはいません、これは状況確認と言っていたでしょう?」
乙女ゲームのサポーターキャラだからかもしれないが…誰も嘘をついていないって言葉に賛同も反応もしない中で、保険医の先生が聖女を慰め始める
顔を上げた聖女の顔は涙をボロボロ零しているのに見た目だけは本当に可愛くて…実際に涙を零しながら泣けるなんて凄いな?その涙は何処から溢れてくるんだ?
信じて、信じてと泣く聖女の言葉を、乙女ゲームの攻略対象のレオンハルト殿下達はどう受けっているんだろうか…
先日不安に感じたある日突然みんなの性格が乙女ゲームのキャラになってしまったら…それさえも思い出してしまう…この可愛いだけの顔に惑わされてしまったらって…………
「ルディヴィス…大丈夫だから…大丈夫、心配するな」
そんな不安を感じていたら、おれにしか聞こえない小さな声でレオンハルト殿下が声を掛けてくれた
聖女から見えない位置なのをいいことに手まで握って励ましてくれる…
乙女ゲームのレオンハルト殿下の比じゃないくらいかっこよくて、思わず手を握り返していた…
「ルチア…一応事情はわかった、だが俺たち教師は一人の言い分を信じて行動するわけにはいかない、それは分かるな?
今はゆっくり休め、対応については追って報告する、レオンハルト殿下達3人も詳しい話を聞きたい…ここでは聖女様が休めないからな、別室に移動するぞ
先生、後は任せました」
ラッジ先生が保険医の先生に聖女を任せ、退室を促す
おれたちも後に続くように保健室を出る時、聖女が小さな声でレオンハルトくんとイグニスくんには居てほしかった…みたいな事を言ってた気がしてある意味恐怖を覚えた
本当に自分が被害者だって、自分は悪くない…みんなに慰めてもらえる自信でもあるような…そんな恐怖を…
………………
…………
……
ラッジ先生に連れられておれたちは聖女がいる保健室とは別の共有棟にある保健室に移動する事になった
それにしても他の生徒の姿や教室に気配がない、シャルティ達の件もあったし、今日の結果発表は中止になったのか?合同魔法演習の授業終了の為、早々に帰宅を促されたのかもしれない
本当に生徒が校舎に残っていないみたいに静かだ
誰もいない長い渡り廊下を歩き、共有棟の保健室を目指す
こっちにはマイケル達に預けたシャルティと、乙女ゲームに出てこないモブ保険医なスキンヘッドの先生がいる場所だ
生徒数が多い学校でよかったとしみじみ思う…あの聖女と同じ保健室でシャルティを休ませたくない…
そう思っていると、ある程度歩いた所でラッジ先生が話し始めた
「レオンハルト殿下…お前が俺たちを呼びに来た時の話、それをもう一度話してくれるか?
シャルティからの話も勿論聞くが、聖女ルチアの言動にあまりにも信憑性がなさ過ぎて参考にならない、どう考えても虚言だあれは…あれのどこまでが本当なのか…
義妹があんな目にあったんだ、ちゃんとした真実をルディヴィスも知りたいだろう?」
おれはコクリと頷く
ヘルリに続いて2件目、それも同じ相手からの被害かもしれない…おれが無駄に想像して変な事をしないように…そんな気持ちもあってラッジ先生は後からではなく今、一緒に真実を知ろうとしてくれているとわかった
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