82 / 147
現実編
癒しを拒む者
しおりを挟む魔力暴走のような症状を見せていたシャルティが他の誰かを傷付けること無く、なんとか救うことに成功した
完全に鎮火を確認した所で野次馬になっている生徒が大勢いる中、人混みをかき分けてレオンハルト殿下が先生を連れてきてくれたのが見えてホッとする
よかった、そんな気持ちが込み上げてくる
でも、この現場で起きた全部の状況を知らないおれがなんて説明したらいいか…
どう説明しよう…
そんな事を考えつつ、気絶したシャルティを抱え直し、聖女の方を見ると知らない間に怯えて泣きじゃくるような感じの姿になっているのが見えた
何してんだよ、泣きたいのはこっちなんだけどな…?
「先生、こっちです!ルディヴィス!!連れてきたぞ!大丈夫か!?って………お前…それ………っ、」
「シャルティが大変だと聞いたが、一体何があった!?………おい、ルディヴィス…その顔と腕…!?」
2人が何かを見て真っ青な顔になってる
視線の先にはおれの顔と腕…
顔と腕?その部分になんかあっただろうか…?シャルティを救うのにどうしても近寄らなきゃいけないから熱いの我慢して行ったけど…
そう言えば顔と腕だけえらくズキズキする…なんでだろうな…?確認したくてシャルティを抱きしめてる腕を見ると、手先から服を着ていた腕部分まで真っ赤に焼けただれていた
所々立派な水ぶくれもできてて痛い
うわぁ……普通に結構火傷してたのか…
流石シャルティ、常時消火する気持ちで触れたし、水の膜に熱が籠もらないようにしてたのにここまでこんがり焼くとは…相変わらず、すげぇ火力高いな…流石おれの義妹天才だわ
「レオンハルト殿下……先生……おれはただ痛いだけなんで、なんとか大丈夫です…たぶん」
なんて考えてる場合じゃない、本気で痛いはずのに、痛みは何故か他人事にしか思えなくて…
頭に浮かぶのは、おれの後ろで泣きじゃくる見た目の聖女がシャルティに何をしたのか…そればかり
その事のほうが気になってどうしようもないんだ…
おれの顔とか手なんてどうでもいい…こんな人目につく場所に聖女とシャルティが居ることが嫌だ…
火傷がどうこうって、そんな事よりもシャルティを早くこの場から連れ出して欲しかった
「ルディヴィス…!一人にしてごめん…ごめんな…つっ」
レオンハルト殿下がすごく苦しそうな表情でおれを見て、側に駆け寄ってきてくれる…そのまま一緒にシャルティを支えてくれるのが嬉しい…
大丈夫だよって、レオンハルト殿下のお陰で先生が来てくれてるんだとちゃんと伝えたら、男前な顔で若干涙目になってた
ざわざわと周囲が何かを話すのが聞こえる…「これはどういう状況なんだ?」「シャルティ嬢が叫んで、暴走して…」「聖女様はなんで泣いているんだ…?」
「どちらが問題を起こしたんだ…?」
そんな声が聞こえる…………野次馬と化した生徒にこの現場を見ていられる状況
場で起きた事実を想像と空想で可哀想に見える方が正義になる、そんな感じに捻じ曲げられそうで嫌だ………
今直ぐに大声でおれが聖女が悪いって叫べればいい…でも確実な証拠を含めて状況がわからない今叫んで事態が収束するか?…いや、しない
おそらく聖女がなんかした、それだけでは弱いんだ…
変な噂を立てられたくない、聖女に有利な話が生まれればシャルティが傷付く可能性がある…確実な証拠を集めているこの段階で不確かな事を起こしたくない…てか野次馬連中、この状況を見ないで欲しい…
そんなおれの気持ちに気づいたのか、先生が声を上げてくれた
「全員!!!、今は授業終了までの待機時間だ!各自チームへ戻れ!!!見世物なんてここには無い!!!何が起きたか調査するのは教師の仕事だ!
わかったか!!!
さっさと戻れ!減点対象にするぞ!
…………はぁ、全く大丈夫じゃないのはわかった…だが話を聞くにも移動するにも…その大怪我のままでは何かとあれだ…そのレベルの火傷ってなると保険医でも楽に治癒できるもんでもない…聖女ルチア、お前応急処置程度に治せるか?」
先生の言葉にビクリと怯え、おれとシャルティ、そして聖女に、近しい存在であるもの以外がわらわらと各々のチームに戻っていく…良かった…流石です先生っていいたかったのに
全然別方向に先生はとんでもないことを聖女に言った
先生は善意で言ってくれたのかもしれない、聖光魔法は奇跡を起こす力、唯一の強い治癒の光だから
けど…聖女の顔見えてます?
先生は知らないだろうけど、どう考えても自分がヒロインである、乙女ゲームの進行を妨げてる存在を救えって要望に聖女から答えは中々返って来るはずがない
むしろ火傷してその顔でレオンハルト殿下の婚約者できるわけないじゃない!ざまぁみろ!とか思ってるかもしれない…これはおれの想像だが
「え、………その……あたしの力………じゃ………」
って感じにキョロキョロ目を動かしながら…
さっきまで俯いていた顔を上げれば、泣いたフリってバレそうなくらい何も流れてない瞳でおれと先生を交互にみている…そんな風に見えた
そんなに救いたくないなら救わなきゃいい…無理って言っていいんだよ?
レオンハルト殿下も頼むとか聖女に言わないのはヘルリの事、これまでの情報収集で彼女に違和感を持ってくれてるからだろう
というかシャルティを悪役にする聖女に治癒されるくらいなら、火傷のままでいい…触れないで欲しい
そんな気持ちになる
何もはっきりとした返答が返ってこず、先生がもう一度聖女に治癒を頼もうとした時、その言葉を止めながらマイズが来てくれた
2,727
お気に入りに追加
6,644
あなたにおすすめの小説
妹を侮辱した馬鹿の兄を嫁に貰います
ひづき
BL
妹のべルティシアが馬鹿王子ラグナルに婚約破棄を言い渡された。
フェルベードが怒りを露わにすると、馬鹿王子の兄アンセルが命を持って償うと言う。
「よし。お前が俺に嫁げ」
ハッピーエンドのために妹に代わって惚れ薬を飲んだ悪役兄の101回目
カギカッコ「」
BL
ヤられて不幸になる妹のハッピーエンドのため、リバース転生し続けている兄は我が身を犠牲にする。妹が飲むはずだった惚れ薬を代わりに飲んで。
【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜
himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。
えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。
ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ!
★恋愛ランキング入りしました!
読んでくれた皆様ありがとうございます。
連載希望のコメントをいただきましたので、
連載に向け準備中です。
*他サイトでも公開中
日間総合ランキング2位に入りました!
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
彼の至宝
まめ
BL
十五歳の誕生日を迎えた主人公が、突如として思い出した前世の記憶を、本当にこれって前世なの、どうなのとあれこれ悩みながら、自分の中で色々と折り合いをつけ、それぞれの幸せを見つける話。
弟は僕の名前を知らないらしい。
いちの瀬
BL
ずっと、居ないものとして扱われてきた。
父にも、母にも、弟にさえも。
そう思っていたけど、まず弟は僕の存在を知らなかったみたいだ。
シリアスかと思いきやガチガチのただのほのぼの男子高校生の戯れです。
BLなのかもわからないような男子高校生のふざけあいが苦手な方はご遠慮ください。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる