上 下
70 / 108
現実編

戸惑い

しおりを挟む




レオンハルト殿下の婚約者となったルディヴィス.サングイス公爵子息は幼い頃から婚約者候補として研鑽を重ね、この度婚約者となったが王太子妃教育をほぼ終了できるレベルの学力がある



そんな噂がおれの知らない所で出ていた事に気付いたのは、王太子妃教育として王宮に出入りするようになり、リジャール様とお茶会をする機会が生まれてからだ
なんと、レオンハルト殿下…幼い頃からやってた婚約者候補との交流で、王太子妃教育の大半をおれにさせていたのだ
一緒に勉強したいとなんやかんや色々学んできたが、そう言えば王宮で流行っているテキストだと色々プレゼントあったっけ…シャルティには一個下だから来年からなとか言って…
あれ、王太子妃教育のテキストだったのかよ…!!!

そんな驚きと事前にさせられていた王太子妃教育が門外不出とかじゃなかった奇跡に怯えつつ、婚約者としての地盤を固める為にも、目の前で優雅にお茶を飲む中性的な美しさが素晴らしいリジャール様と本日は交流会中だ




「ルディヴィス、あの子を…レオンハルトを怒らないでやってね?
昔、育児を間違えてしまったかもしれない…そう思っていたんだ…でも、あなたの額に傷を作ってしまったあの事件…その時、あなたの言葉に胸を打たれて、婚約者候補にあなたを望んだ日からあの子は変わった

あんなに幼い頃から色々計画してたみたいなだけど悪気は無いんだよ?…最終的に、その計画のおかげで本当に素晴らしい子に成長しているのも確かだから…」


「……………そ、それは…わかりますが…何年も候補のままだったので驚いてしまって…一言相談が欲しかったですね」


「ふふ、きっと素直に言ったら逃げられるとでも思ったのかもしれないね…でも、これからはきっとなんでも相談してくると思うよ?
…………ねぇ、ルディヴィス…私は、あなたがあの子の婚約者として、ここでこうして話を出来ることが何よりも嬉しい、ここは私とあなたしか居ないから正直に言ってもいいかな?

聖女様の事も聞いています、あたなの従者にした事も、シャルティ嬢にした事も…公には出来ない不確かな音声の事も…
その事実を踏まえても、踏まえる前からも…私、リジャールはレオンハルトの母としてあなた達の味方に着きます…あまり力にはなってあげることは出来ないけど、あなた達を私は信じています」


真っ直ぐにおれを見つめ、心強い言葉をくれるリジャール様はレオンハルト殿下の母だとわかる優しい目をしていた
この国の王妃様が味方に付いてくれる…素晴らしく心強い…けど、それ以上に聖女様は厄介だ
隣国から嫁いできたリジャール様はこの国に後ろ盾が少ない…国王陛下も今回の事を知っているが公平な判断を迫られる立場の為に、自由に動くことは出来ない

虚言を疑われる聖女様だが、唯一無二の力に変わりは無く、第二王子の母を救った事により、奇跡の乙女として認知されつつある…
その後ろ盾として名乗りを上げたのは古くから影響の大きい第二、第三王子派の貴族…
政治的なやりとりはまだ子供のおれにはわからないが面倒な事なのはわかる



父様が言うように今は証拠を集める事が大切…

聖女が直接おれに接触し、虚言で害を生む証拠が欲しい…けど、レオンハルト殿下の婚約者になってからもまだ学園では1年生の生徒を使った噂程度の物しか現れていない
今はレオンハルト殿下や攻略対象であるみんなと仲が良い姿を見せつけ、モブのクセにふざけるなと、バグを許せないと聖女が暴走するであろう日を待つのみ



こちらから接触してはいけない、おれの行動は全て影に記録されるのだから





リジャール様との交流会、その中で少し気になる事もあった…
昔からシャルティやペトラ母様に対して不義の子等という、王家が撤回しても出てきたあの根も葉もない噂…それはレルム伯爵の意思では無いかも知れないという情報があった事…

おれがシャルティと家族になる前、シャルティ達を冷遇し追い詰めた事は直前二人に聞いた為、事実だと言うことはわかる

でも…その後の噂については出所の確証が取れていないと言う…さらにその後聖女を保護する事になったのもレルム伯爵の意思とは違う可能性があると言うのだ

この国には乙女ゲームの世界以前に、広く大きく、数多くの人が住む…前世で学んだ現代とも、中世の貴族とはまた違った法があり、魔法という存在があるため貴族噂は元を辿るのが難しい…不義の子については噂の出どころを考えてもレルム伯爵だとずっと思っていたのに…その背後には何か居るのだろうか…?



ヘルリに対して聖女が行った魔力の行使…あの時、サングイス公爵家に謝罪しに来たレルム伯爵のことを思い出す
真っ青な顔で理由すら話さず泣く聖女を咎めていた伯爵を………




乙女ゲームの全てを知ってるわけじゃない、それでもわかるのは、ここは学園も存在する人も殆どが乙女ゲームで見たもので構成された世界…
でも…………おれの前に起きていること、理解できない事を考えると…どう考えてもゲームだけに留まらない現実があるって思うんだ





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令息の兄には全てが視えている

翡翠飾
BL
「そういえば、この間臣麗くんにお兄さんが居るって聞きました!意外です、てっきり臣麗くんは一人っ子だと思っていたので」 駄目だ、それを言っては。それを言ったら君は───。 大企業の御曹司で跡取りである美少年高校生、神水流皇麗。彼はある日、噂の編入生と自身の弟である神水流臣麗がもめているのを止めてほしいと頼まれ、そちらへ向かう。けれどそこで聞いた編入生の言葉に、酷い頭痛を覚え前世の記憶を思い出す。 そして彼は気付いた、現代学園もののファンタジー乙女ゲームに転生していた事に。そして自身の弟は悪役令息。自殺したり、家が没落したり、殺人鬼として少年院に入れられたり、父に勘当されキャラ全員を皆殺しにしたり───?!?!しかもそんな中、皇麗はことごとく死亡し臣麗の闇堕ちに体よく使われる?! 絶対死んでたまるか、臣麗も死なせないし人も殺させない。臣麗は僕の弟、だから僕の使命として彼を幸せにする。 僕の持っている予知能力で、全てを見透してみせるから───。 けれど見えてくるのは、乙女ゲームの暗い闇で?! これは人が能力を使う世界での、予知能力を持った秀才美少年のお話。

出戻り聖女はもう泣かない

たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。 男だけど元聖女。 一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。 「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」 出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。 ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。 表紙絵:CK2さま

天啓によると殿下の婚約者ではなくなります

ふゆきまゆ
BL
この国に生きる者は必ず受けなければいけない「天啓の儀」。それはその者が未来で最も大きく人生が動く時を見せる。 フィルニース国の貴族令息、アレンシカ・リリーベルは天啓の儀で未来を見た。きっと殿下との結婚式が映されると信じて。しかし悲しくも映ったのは殿下から婚約破棄される未来だった。腕の中に別の人を抱きながら。自分には冷たい殿下がそんなに愛している人ならば、自分は穏便に身を引いて二人を祝福しましょう。そうして一年後、学園に入学後に出会った友人になった将来の殿下の想い人をそれとなく応援しようと思ったら…。 ●婚約破棄ものですが主人公に悪役令息、転生転移要素はありません。

やり直せるなら、貴方達とは関わらない。

いろまにもめと
BL
俺はレオベルト・エンフィア。 エンフィア侯爵家の長男であり、前世持ちだ。 俺は幼馴染のアラン・メロヴィングに惚れ込み、恋人でもないのにアランは俺の嫁だと言ってまわるというはずかしい事をし、最終的にアランと恋に落ちた王太子によって、アランに付きまとっていた俺は処刑された。 処刑の直前、俺は前世を思い出した。日本という国の一般サラリーマンだった頃を。そして、ここは前世有名だったBLゲームの世界と一致する事を。 こんな時に思い出しても遅せぇわ!と思い、どうかもう一度やり直せたら、貴族なんだから可愛い嫁さんと裕福にのんびり暮らしたい…! そう思った俺の願いは届いたのだ。 5歳の時の俺に戻ってきた…! 今度は絶対関わらない!

【完結】攻略は余所でやってくれ!

オレンジペコ
BL
※4/18『断罪劇は突然に』でこのシリーズを終わらせて頂こうと思います(´∀`*) 遊びに来てくださった皆様、本当に有難うございました♪ 俺の名前は有村 康太(ありむら こうた)。 あり得ないことに死んだら10年前に亡くなったはずの父さんの親友と再会? え?これでやっと転生できるって? どういうこと? 死神さん、100人集まってから転生させるって手抜きですか? え?まさかのものぐさ? まあチマチマやるより一気にやった方が確かにスカッとはするよね? でも10年だよ?サボりすぎじゃね? 父さんの親友は享年25才。 15で死んだ俺からしたら年上ではあるんだけど…好みドンピシャでした! 小1の時遊んでもらった記憶もあるんだけど、性格もいい人なんだよね。 お互い死んじゃったのは残念だけど、転生先が一緒ならいいな────なんて思ってたらきましたよ! 転生後、赤ちゃんからスタートしてすくすく成長したら彼は騎士団長の息子、俺は公爵家の息子として再会! やった~!今度も好みドンピシャ! え?俺が悪役令息? 妹と一緒に悪役として仕事しろ? そんなの知らねーよ! 俺は俺で騎士団長の息子攻略で忙しいんだよ! ヒロインさんよ。攻略は余所でやってくれ! これは美味しいお菓子を手に好きな人にアタックする、そんな俺の話。

【第1部完結】悪役令息ですが、家族のため精一杯生きているので邪魔しないでください~僕の執事は僕にだけイケすぎたオジイです~

ちくわぱん
BL
【11/28第1部完結・12/8幕間完結】(第2部開始は年明け後の予定です)ハルトライアは前世を思い出した。自分が物語の当て馬兼悪役で、王子と婚約するがのちに魔王になって結局王子と物語の主役に殺される未来を。死にたくないから婚約を回避しようと王子から逃げようとするが、なぜか好かれてしまう。とにかく悪役にならぬように魔法も武術も頑張って、自分のそばにいてくれる執事とメイドを守るんだ!と奮闘する日々。そんな毎日の中、困難は色々振ってくる。やはり当て馬として死ぬしかないのかと苦しみながらも少しずつ味方を増やし成長していくハルトライア。そして執事のカシルもまた、ハルトライアを守ろうと陰ながら行動する。そんな二人の努力と愛の記録。両片思い。じれじれ展開ですが、ハピエン。

嫌われ公式愛妾役ですが夫だけはただの僕のガチ勢でした

ナイトウ
BL
BL小説大賞にご協力ありがとうございました!! CP:不器用受ガチ勢伯爵夫攻め、女形役者受け 相手役は第11話から出てきます。  ロストリア帝国の首都セレンで女形の売れっ子役者をしていたルネは、皇帝エルドヴァルの為に公式愛妾を装い王宮に出仕し、王妃マリーズの代わりに貴族の反感を一手に受ける役割を引き受けた。  役目は無事終わり追放されたルネ。所属していた劇団に戻りまた役者業を再開しようとするも公式愛妾になるために偽装結婚したリリック伯爵に阻まれる。  そこで仕方なく、顔もろくに知らない夫と離婚し役者に戻るために彼の屋敷に向かうのだった。

【完結】薄幸文官志望は嘘をつく

七咲陸
BL
サシャ=ジルヴァールは伯爵家の長男として産まれるが、紫の瞳のせいで両親に疎まれ、弟からも蔑まれる日々を送っていた。 忌々しい紫眼と言う両親に幼い頃からサシャに魔道具の眼鏡を強要する。認識阻害がかかったメガネをかけている間は、サシャの顔や瞳、髪色までまるで別人だった。 学園に入学しても、サシャはあらぬ噂をされてどこにも居場所がない毎日。そんな中でもサシャのことを好きだと言ってくれたクラークと言う茶色の瞳を持つ騎士学生に惹かれ、お付き合いをする事に。 しかし、クラークにキスをせがまれ恥ずかしくて逃げ出したサシャは、アーヴィン=イブリックという翠眼を持つ騎士学生にぶつかってしまい、メガネが外れてしまったーーー… 認識阻害魔道具メガネのせいで2人の騎士の間で別人を演じることになった文官学生の恋の話。 全17話 2/28 番外編を更新しました

処理中です...