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乙女ゲーム編

あるべき日常

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ヘルリの件があり、おれの聖女様に対するイメージはおそらく誤解が大きかったかもしれない…
謹慎から復帰した聖女様はひたすら落ち込み、時々泣いて過ごしていたと風の噂で聞いたし、その後も儚げなイメージになったとか、守りたくなる美少女だとか色々2年生の教室にも時々噂が舞い込んでくる


その噂は決して悪いものではなく聖女様が本当に聖女様なんだと思うことばかりだった
ごく普通の日常生活に戻り、日々の中で本当にヘルリへ接触禁止を聖女様は守り、シャルティは催眠状態になる事も無く平和に過ごしている


そして、聖女様のいい噂が立ち始めた頃から、この乙女ゲームの攻略対象者であるレオンハルト殿下、マイズ、イグニスに大きな変化があった
おやっ?と思ったのはいつ頃だったか…時々、一緒に放課後を過ごさない日や、昼食を食べない日とかがちらほらあるようになって…

何か用事あるのかな?と思ってたら、なんと3人は個別に聖女と交流しているのだった…!
偶然見かけて驚いたよ本当に…よく覚えてないけど各々、なんとなくゲームの画面っぽいキラキラな場所で笑顔で聖女と攻略対象者が楽しそうに交流し合うそんな場面!


例えばレオンハルト殿下は聖女様と中庭で散歩?してる場面のような後ろ姿だったり、マイズは図書館で聖女様と並んで座り一緒に勉強してるような後ろ姿だったり…イグニスは木の上に登ってて聖女様が見上げてたり…
なんとなく乙女ゲームの画面で見たような…クソ妹が逐一紹介してきてボイスと被って煩かったような記憶が蘇る…



ああ、ここはやっぱり乙女ゲームなんだなって…あんな幸せそうな顔で聖女と笑い合うんだなって…おれからは遠くて顔までよく見えなかったけど、きっとあれはシナリオ通りに聖女に惹かれ始めた証拠なんだろう

ヘルリの件は悲しいすれ違いが生んでしまった悲劇なのかもしれない…聖女の優しさは本物だった、その優しさにレオンハルト殿下達は惹かれて交流が始まっているんだろう
もしかしたら怪しい女?変な女??やべぇー女に狙われてるとか言ってたしその話の相談に聖女様が乗ってあげた事がきっかけで心に潜む闇を聖女が救っている途中なのかもしれない


何にしろ、なんだかんだ乙女ゲームが無事平和な方向で進んでいる…
おれとシャルティ、あと聖女がトラウマになってしまったヘルリと何でかマイケルは遠くから温かく見守る事に徹しよう
決して邪魔しない、乱入しない、そっとして置く、断罪のだって文字すら入らない位置からお幸せにってお祝いしてあげる精神でいる!

これだけ守っていればきっと安心だ
もしも、万が一シャルティに被害が来そうになったら、おれたちモブがアリバイを映像魔法を駆使してちゃんと用意し、救うことも忘れない
悪役令嬢が居ない普通の恋愛シュミレーション?的な感じでみんな楽しく恋して生きてて欲しい

ちょっとだけやっぱり寂しい気持ちもある…でもそれ以上に幸せそうに笑うゲームの画面が現実になる日が来ると思うと嬉しくもあるんだ…



「シャルティ、ついに皆が新たな門出に立ったかも知れないから今日はケーキでお祝いしようか?
おれが生地担当してシャルティが焼いて…!ヘルリとマイケルに生クリーム立ててもらって…中庭のガセボでお茶会とかどう?」


「まぁ!お義兄様達と一緒にケーキ作りなんて久々ですわね?今回はリベンジも兼ねて学園での授業を活かしますわ、オーブン火力の調整はお任せくださいませ!
ふふ、今日は良い天気ですし中庭でお茶したら気持ちよさそうですわね」



今日は授業も半日だし、3人は誰かしら聖女ともしかしたらデートとか!行くかもしれない、おめでとう…本当に幸せになってくれるならおれは、寂しいよりもお前たちの幸せを願いたいんだよ…縁起良く今日はケーキでお祝いだ!








そう、おれはみんなの幸せを願っているのに…






「ずるいぞルディヴィス、シャルティ
そんな楽しそうな計画、お祝いってなんのか分かんねぇけど…俺もお前たちの作ったケーキ食べたい、今日はサングイス公爵家経由でゆっくり茶をしてから王宮に帰るかな?」


「そうですね、私もゆっくりケーキパーティーに参加したいです
今日は幸い午後学園休みの日ですし…ルディヴィスとシャルティの手作りで楽しいお茶の時間を皆で過ごせるのは素敵ですから」


「おれも参加するからな!最近取り引きさせてもらうようになったフルーツ店から季節の美味しいフルーツ貰っていくから!」





と、おれの心で今噂の3人がいつの間にかおれとシャルティの背後に立っていた…びっくりするからやめようぜ!?なんて言えないくらい驚いた

え、今日半日だよ?もう帰れるんだよ?聖女様いいの?もっと仲良くなって誘って街探索とかしなくていいの?サングイス公爵家に聖女様絶対来ないよ?





そんな事を心の中で思ってたら全員一緒にサングイス公爵家庭に帰宅していたのだった














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