悪役令嬢の兄です、ヒロインはそちらです!こっちに来ないで下さい

たなぱ

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乙女ゲーム編

木漏れ日の再会

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Side レオンハルト





ついにルディヴィスと一緒に学園に通うことができる…この日をどれだけ待ち望んでいた事か…!
互いに多忙の為に月2回となってしまった婚約者候補としての交流会で会ってはいたが、それだけでは足りなかった
学園で会うまで待てず、サングイス公爵に話をして入学式の日、一緒の馬車で通学出来たのはかなりの思い出だ


ルディヴィスが通っている学園を一緒に登校して一緒に見る…夢にまでみた事が現実になり、同じように夢だったシャルティと熱く語ってしまったのは仕方ない

入学式で新入生代表の挨拶をする俺を優しく見つめてくれる彼は昔から変わらず、優しく信念があるように思う…そして、なにより愛おしい存在なのは婚約者候補となった日から変わらないのだ


ルディヴィスと話し手を握るだけで幸せな気持になる…それは心が救われたあの日を思い出すのは勿論だが…本当に楽しくて愛おしくて、癒されるんだ
魔力を学んで分かったことは、ルディヴィスは優しい魔力の持ち主である事も知った

俺はルディヴィスが好きだ、成長し好きという気持ちが成長し、愛しているという言葉を知った…



サングイス家の後継者問題、男の王妃という珍しさもあり現状でも婚約者候補のままなのは事実だが、俺は諦めるつもりなど無い、現在も頭の硬い重鎮と戦う準備を進めている状況…
父上と母上が婚姻まで大変だったと言うのがよくわかる…面倒な話をしてくる連中もいるのだからこれは一筋縄ではいかない…


昨年度保護された聖女を王妃に迎えてみてはどうかと言い出したのはどの貴族だったか…
俺がどれほどルディヴィスを愛して、その為に…ここまで苦難を乗り越えてきたのか知らないのか?と言いたくなるほど唐突にそんな話が上がった

勿論、全ての貴族ではない、母上も父上もルディヴィスの有能さを知っているし俺の気持ちもわかっている、しかし第二王子を推薦する大臣達はその話を聞いて、男の王妃よりも、女性であり聖女である存在は国にとっても大きいと面倒な事を言う
男を求める王は如何なものかと…不敬ギリギリを攻めてくる嫌な連中だ
父上が好きでもない相手と婚姻し、子を求められる苦痛を最近になり俺に教えてくれた事で、それが現実味を帯びてしまうから辛い…


一応、時期王太子として陛下達と共に、今代の聖女と顔合わせだけはしたが、本当に美しい美少女と呼ばれる部類の女、その認識しか生まれなかった
不安などなく、自信に満ち溢れた笑みで挨拶してきたのを覚えている

聖女が素晴らしい存在なのはわかる、幼子にも使える素晴らしい聖光の力…そして神へ祈りが届く唯一の存在…それはわかるが、それと俺の気持ちは別だ




そんな一度顔合わせをした聖女が俺の目の前にいる



俺と同い年であった事は知っていたが、そうか学園にも通っていたのか…魔力が強いんだからそうだよな…
資料を借りるために図書館へ向かう途中、木々の生い茂る通路を通り、今日は天気が良く木漏れ日が気持ちいいなと和んでいる俺を呼び止めたのは聖女だった



「お久しぶりです、レオンハルト殿下!ずっとお会いしたかったんです」

「聖女の…ルチア嬢だったかな?一度顔合わせ以来か…久しいな、何かあったのか?」


この学園は貴族も魔力の高い市民も通うため、爵位で人を見下したりする事はなく、誰でも平等と言われている
しかし、王太子である俺に話しかけてくるのは相当の度胸がいると思うのだが…この聖女は度胸があるのか?
俺に会いたかったとも言う…何か用がある様な関係だったか思い返すが思い出せない…


「えっと、あの…あたし学園に来てレオンハルト殿下と共に勉学を学べると楽しみにしていたんです…でもクラスが違うどころか学年が違ってて…
あの!勉強分からない所があって、レオンハルト様に教えて貰えないかなって…せっかくこんな素敵な日に再会したんだし…」


もじもじと顔を赤らめ俺を見つめる聖女…可愛らしいその表情は聖女としての品を感じさせつつ、人を癒す力がある様に感じる
市街から保護された彼女はきっと慣れない環境で不安なのだろう…だからこそ知り合いである俺に頼ろうと…………



知り合い?…いや、違う、一度顔合わせしただけの他人だ
庇護欲を刺激する可愛らしい表情…だが、全く惹かれないのは何故だろう…むしろ背筋に冷たい水を掛けられたような震えを僅かに感じたような気がした


「すまないな、2学年の勉強に使う資料をこれから探しに行く約束をしているんだ、互いに各々高みを目指して頑張ろう」


「え、あっ、レオンハルト様…!?」




このまま此処にいてはいけない気がして…俺はその場を立ち去った








Episode1 木漏れ日の再会



……………………
……………
………



王太子殿下である俺がいくら学園の生徒であるとは言え、レオンハルト様などと呼ぶ生徒がいるのか?
心に何かが引っかかり、急いで2学年の教室へ戻ると直ぐルディヴィスと目が合った


「レオンハルト殿下…どうした?大丈夫か…?何かあったのか?」


直に立ち上がり、俺の所へ心配そうに駆け寄ってくれるルディヴィス…
俺は国の顔になる存在、相手に読まれない為に心の中で思うが表情や顔色までは変えてない、なのに目が合っただけで俺に何かがあったと気付いてくれる…

いつも以上にルディヴィスが愛おしく感じた…思わず抱き締めてしまう程、ルディヴィスに触れたかった
普段なら二人きりの時でしか恥ずかしいと許してはくれない筈なのに、俺のよくわからない不安を見透かすように抱き締め返してくれる事が嬉しい

背中を擦られ、頭を撫でられる…それだけでよくわからない不安な気持ちが安らいでいく…
何かあったなら教えて欲しいと言われて俺の心に浮かんだ言葉は一つだった



「知らない女に名前で呼ばれて…背筋がぞぞぞって…なんか嫌だった…」


「え?女?」


「ぷはっ……!!」



おい、親友?
奥の席でマイズが吹き出すように笑うのが見えたのは気のせいじゃ無いと思う
でも、知らない女怖いなってルディヴィスが笑って慰めてくれるからいいや、こうしてるだけで不安が溶けて、ほんとに癒やされるんだから…


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