30 / 171
学園編
鍛錬場で
しおりを挟むそういえばこの学園への登校は通学、又は遠方からくる生徒がメインだが寮暮らしを選べる
辺境伯や地方の貴族は距離的に寮暮らしを選ぶ場合もあるが基本は通学が多い、おれも勿論通学一択
何故なら、シャルティが毎朝いってらっしゃいしてくれるのである
天使かな?まじでうちの妹可愛すぎて困る
乙女ゲームの世界だからなのだろうか…通学での交通整備はかなり進んでおり馬車が混むということも無い
そこは素晴らしいと思う
実際通学し始めて既にそれなりの期間が過ぎた…満員電車に揺られた通勤を思い出すと圧倒的快適馬車の旅に日々楽しさしか湧いてこない…
勿論学園の調査も大丈夫、しっかりとメモに書き起こし、知ってるイベントの場所、それが起きたてあろう月と日、時間を書き込み来年役立てるつもりだ
似通った世界だといい、たとえゲームの世界だと認してもそれぞれが自分の意思で判断できるといいな…、シャルティを断罪する可能性があるレオンハルト殿下達との現在の関係が好きなんだよ…本当にいい奴なんだ…ゲームの強制力とかあったらまじで困る
未来は誰にも分からない…ほんとそうだなって改めて痛感する日々
楽しくも不安な日々、その中で、試験も近いしかなり早く登校して優等生っぽく図書館に寄ろうと考えた日、おれは新たな攻略対象者と思われる存在を見つけた
「ふざけているのか!イグニス!貴様は何を鍛錬してるのだ!そんな事ではバイゼル家の品位を疑われるだろう!」
鍛錬場の方から怒りにも似た声、それが叫ぶ名前に聞き覚えがあった
イグニス.バイゼル…攻略対象者の名前と同じ…近衛騎士団長の息子だ…………え?既に学園にいるの?なんで怒鳴られてるんだ…?
ゲームでのイグニスはどんな感じだったか思い出しつつ、まだ人気も少ないそんな時間に何をしているんだろうと鍛錬場を覗いてみることにした
この魔法学園には貴族科と騎士科があるが鍛錬場を使うのは主に騎士科だ
イグニスは騎士科に在籍していたのか?とそんな事を考えながら覗き見してみると………思った以上に修羅場だった
地面に倒れ込む黒髪の少年…それを怒鳴るのは同じ黒髪の上級生と思われる人物だ
ネクタイの色で学年がわかる…怒鳴っている奴は今年卒業を控える最学年の先輩…
なら、地面に倒れているのがイグニスなのか…?
「立てイグニス、バイゼル家に相応しい存在になる為には寝ている場合じゃない!
オレは今年で卒業になってしまう、来年にはレオンハルト殿下が来るというのに近衛騎士になりたくはないのか!?
軟弱なお前のままでいいと思っているのか!!!」
倒れてるのがイグニスでした
え、怒鳴ってるのはイグニスのお兄ちゃん…?
レオンハルト殿下の近衛騎士になるのがバイゼル家の誇り的なそんな展開…?
家族の問題な気がする、ここでおれが口出しして良いものか…とても悩む
しかし、その悩みはイグニスと思われる黒髪の少年の様子を見て吹っ飛んでいった
立てと言われ、必死に這いつくばりながら立とうとするが顔色が悪い、上手く立てず地面に何度も倒れる…まるで激しい目眩や脱力感があるような…
よく見ると衣服の色が大きく変わるほどの汗、立てない程の疲労…目眩…脱力感…………激しい長時間に及ぶ運動と言うなの鍛錬…………脱水症状……………
脱水症状!?!下手をすれば命に関わる状況
家の問題とかどうでもいい、おれはイグニスと思われる少年に向かって走り出していた
「イグニス!」
本当にイグニスだとかなんて関係ない、とりあえず意識の確認をしたかった
手に水の魔術を展開する、空気中の水分を集めその中にいつもシャルティの為に持ち歩いている飴と塩を混ぜ込み簡易的な経口補水液を作る
上級生、イグニスの兄と思われる存在が急に現れたらおれに驚いているがそんな場合じゃない
地面に倒れ込む彼を抱き起こし、口に経口補水液を流し込む…
近くで接し、見るとわかる…ぐっしょりと汗で濡れた身体、カラカラに乾いた唇と舌…目も虚ろなのは長時間水分を摂取せずに鍛錬をしていたからだ…その事が解ってゾッとした
この世界の医療面…それは外科手術的なこともしてるがほとんど魔術をメインに使うためどの程度なのかまだ知らない
けど、必死におれが作った簡易経口補水液を飲み干すイグニスと思われるこの少年は下手したら脱水による命の危機に瀕していたと思う
部活中に脱水で死の危険がとかよくあるやつになってしまう…!
脱水って怖いんだよ、おれも営業でひたすら炎天下歩かされて何度も体験した…搬送されて点滴を打たれたこともある…あの目眩と気持ち悪さは本当に辛いんだ
「な、なんだよお前…邪魔するな!いま、た、鍛錬中なんだぞ!?」
上級生…イグニス兄(仮)はおれを指差し睨んでくる…お前、弟が大事じゃないのか…?家族だろ?
おれなら絶対こんな事しない、ふざけんなよ…
「突然割り込んでしまいすいません…先輩?
僕はサングイス公爵が長子、ルディヴィスです
同級生の命の危機に思わず身体が動いてしまいまして…保健室に連れていきますのでそこを退いてくれますか…?」
「は?………お前には関係ないだろう…!?イグニスとオレの問題だ!部外者が口出しするな…!
命の危機などあるわけない!鍛錬中だっただけだぞ!?来年まで時間が無いんだ!どけ!」
木刀をおれに突きつけ威嚇する先輩は頭に血が上っているようだ…命の危機が無い?どこを見て判断してんだよ…?
イグニスらしき少年はおれより身長が高い…それなのにおれの服にしがみつき、兄に怯えているようにも見える…ゲームでの姿と随分違う気もするが、自分の大切な弟がこんな苦しそうな状況で鍛錬を続けようとするこいつは許せない
「退きません、先輩はイグニスを殺すつもりですか?立てなくなるほどの無理な鍛錬、水分補給さえもろくにさせないこの状況、このまま酷い鍛錬を続ければイグニスは死にます
人は想像よりも簡単に死ぬんですよ?何を焦ってるのか知りませんが、その焦りをイグニスにぶつけるのは間違ってる!!」
おれの言葉に息を詰まらせるのがわかった
しばらく退く気配のないおれを睨みつけていたが、頭に血が上っていてもおれが公爵の息子、更には現在レオンハルト殿下の婚約者候補である事に気付いたのか、イグニスの兄らしき存在は若干舌打ちし立ち去っていった…
「大丈夫だったか?イグニ…………イグニス!?」
残されたイグニスと思われる存在に話しかけようとするが気絶している
その顔は若干幼く見えるがまさに、あの乙女ゲームで何度も見せられた攻略対象者、イグニス.バイゼルに間違いなかった
4,009
お気に入りに追加
6,947
あなたにおすすめの小説

田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?
下菊みこと
BL
髪色が呪われた黒であったことから両親から疎まれ、隠居した父方の祖父母のいる田舎で育ったアリスティア・ベレニス・カサンドル。カサンドル侯爵家のご令息として恥ずかしくない教養を祖父母の教えの元身につけた…のだが、農作業の手伝いの方が貴族として過ごすより好き。
そんなアリスティア十八歳に急な婚約が持ち上がった。アリスティアの双子の姉、アナイス・セレスト・カサンドル。アリスティアとは違い金の御髪の彼女は侯爵家で大変かわいがられていた。そんなアナイスに、とある同盟国の公爵家の当主との婚約が持ちかけられたのだが、アナイスは婿を取ってカサンドル家を継ぎたいからと男であるアリスティアに婚約を押し付けてしまう。アリスティアとアナイスは髪色以外は見た目がそっくりで、アリスティアは田舎に引っ込んでいたためいけてしまった。
アリスは自分の性別がバレたらどうなるか、また自分の呪われた黒を見て相手はどう思うかと心配になった。そして顔合わせすることになったが、なんと公爵家の執事長に性別が即行でバレた。
公爵家には公爵と歳の離れた腹違いの弟がいる。前公爵の正妻との唯一の子である。公爵は、正当な継承権を持つ正妻の息子があまりにも幼く家を継げないため、妾腹でありながら爵位を継承したのだ。なので公爵の後を継ぐのはこの弟と決まっている。そのため公爵に必要なのは同盟国の有力貴族との縁のみ。嫁が子供を産む必要はない。
アリスティアが男であることがバレたら捨てられると思いきや、公爵の弟に懐かれたアリスティアは公爵に「家同士の婚姻という事実だけがあれば良い」と言われてそのまま公爵家で暮らすことになる。
一方婚約者、二十五歳のクロヴィス・シリル・ドナシアンは嫁に来たのが男で困惑。しかし可愛い弟と仲良くなるのが早かったのと弟について黙って結婚しようとしていた負い目でアリスティアを追い出す気になれず婚約を結ぶことに。
これはそんなクロヴィスとアリスティアが少しずつ近づいていき、本物の夫婦になるまでの記録である。
小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

【完結】僕の異世界転生先は卵で生まれて捨てられた竜でした
エウラ
BL
どうしてこうなったのか。
僕は今、卵の中。ここに生まれる前の記憶がある。
なんとなく異世界転生したんだと思うけど、捨てられたっぽい?
孵る前に死んじゃうよ!と思ったら誰かに助けられたみたい。
僕、頑張って大きくなって恩返しするからね!
天然記念物的な竜に転生した僕が、助けて育ててくれたエルフなお兄さんと旅をしながらのんびり過ごす話になる予定。
突発的に書き出したので先は分かりませんが短い予定です。
不定期投稿です。
本編完結で、番外編を更新予定です。不定期です。

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。
みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。
生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。
何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる