27 / 138
幼少期編
閑話 王妃の心情
しおりを挟む
side リジャール王妃
この国の王妃として、陛下に望まれ両国の架け橋として嫁いで早10年
隣国では普通の事となってきたが、男性である私が妻となる事はこの国ではまだ珍しい
なぜ男がこの国の王妃なのだと、よく思わない者達もある程度現在もいる、たが、それを抜きにしても私達を祝福し、慕ってくれる者達が多いのもまた現実…
同性での婚姻、陛下を巡る色々な闇も見てきた…王妃が男性だけでは不安だと、陛下にあらゆる理由を付け、無理矢理娘を嫁がせた家々こそ同性での婚姻をよく思わない貴族の派閥そのものと言っていい
それを否定することはこの国の歴史を否定する事にも繋がり、陛下は私の他に3人側室の妻を得ている
この環境の中で、陛下は確かに私を愛して下さっている、だからこそ初夜で気を失うほど愛され、子を望まれた
二人の愛の結晶…男性の私が魔術により子を宿し産んだのがレオンハルトだ
陛下と私の特徴を色濃く受け継いだ可愛い我が子…可愛い可愛い我が子…
けれど幼い頃のレオンハルトにはつらい思いをさせてしまったと、今となっては母として失格であったと思う
思い返せば、神童と呼ばれた私達が一度で覚えたことをレオンハルトは覚えられない…そんな些細な出来事からあの子は壊れ始めたのだろう…
ある日から突然幼い幼児のように問題を起こす、嘘を付く、人を蔑む…
私や陛下に叱られる時だけ良い息子の顔をする我が子にどう接していいのか、解らなかった…
未来の王への不安、第二王子や第三王子を押す輩も現れていた
男の私を王妃と認めたくない派閥がひしめく王宮は想像以上にレオンハルトにとっても過ごしにくい世界だったのだろう
けれど…あの日、あの中庭でのお茶会でレオンハルトは救われた…それだけじゃない、私も一人の子に救われたのだ
ルディヴィス.サングイス
この国の宰相の息子である彼は、昔の私達のように子供らしからぬ子なのかもしれない…
レオンハルトに不敬と解っていながら真実を教え、我が子に正しい事をみる目を思い出させてくれた彼はあの日、何を考えていたのだろう
「母上、人の心の痛みがわからない俺は…良き王になれないのですか…?」
お茶会の日、ルディヴィスにグラスをぶつけ怪我をさせた日、レオンハルトは自分が何を言われたのか理解してはいなかった
けれど夜、私の私室を訪れたレオンハルトはルディヴィスに言われたことを振り返り、人の心の痛みについて聞いてきたのだ
我が子が自らの過ちに気付いた日、学ばないといけない大切な事に気付いた日…
母であるが男の私にはレオンハルトを抱き締め、人の心を傷つける事の恐ろしさを教えてあげる事しかできなかった…
二度目の面会でレオンハルトはルディヴィスを見て、声を聞き、現実と向き合うことで死の恐怖と暴力が与える恐ろしさ、そして大切な物を見つけたのだろう
レオンハルトを変えたのはルディヴィスという存在だ、父でも母でもなく、レオンハルトより一つ年上の子共
幼い頃子供が、誰よりも他人の気持ちを尊重し、思いやれる…この素晴らしい事実にこの国の未来は明るいと素直に嬉しい気持ちになった
ルディヴィスを婚約者にしたいと言い出したのはレオンハルト、それを押したのは私だ
私と学園で交際を考えていた頃の陛下によく似た決意の瞳でルディヴィスを求めていたから…
サングイス公爵からは候補と言う形で留められてしまっているが、私の判断は間違っていない
9歳となったレオンハルトはルディヴィスを婚約者候補に据え、私の想像を超える程、賢く優しく、素晴らしい存在へと日々成長している
レオンハルトに必要だったのは父や母ではない、互いに思い合える存在なのだと言い切れる
しかし、やはり男同士の婚約者候補、さらには婚姻は如何なものかと言ってくる者がいる…それが解決するまでは婚約を確定させる事が出来ない
何より大切な跡継ぎを家族想いのサングイス公爵が手放さない…
レオンハルト、お前が望むものは大きな壁の先にある事を理解しなさい、私は母としてこの国の王妃として…お前が努力を続けるなら出来る限り手を貸して上げましょう…
「リジャール…考え事か…?」
私の肩を抱き寄せ耳元へキスを贈る陛下の声が静かな室内に響く
そういえば陛下はまだ、ルディヴィスに直接対面で会った事が無いような…?
「レオンハルトの事を考えておりました…愛する息子は私達と同じように大きな壁のある恋をしているのですよ…?
ふふ、愛する者の為に成長する我が子が可愛くて…レオンハルトの顔を見ていると昔の私達を思い出すのです…」
「高い壁か…確かにそうだな…俺もサングイス公爵に一度、婚約者候補であるルディヴィスとの面談を求めているのだが…勿体無いから嫌だと言うのだぞ?あの宰相は…全く、あいつは…昔から…」
陛下は私を強く抱き締め子供のように甘えながら宰相への不満…いや腐れ縁と呼べる彼の話を教えてくれる
レオンハルトもルディヴィスの前では陛下のようになるのだろうか…?
我が子が進む未来が、今までもこれからも明るい事を願う…けれど、障害が降りかかるかもしれない、いや降りかかると思っていたほうがいい
私は王妃として、母として…同じ男としてレオンハルトを守り見守る
たまには母に甘えてほしいと思いながら…
この国の王妃として、陛下に望まれ両国の架け橋として嫁いで早10年
隣国では普通の事となってきたが、男性である私が妻となる事はこの国ではまだ珍しい
なぜ男がこの国の王妃なのだと、よく思わない者達もある程度現在もいる、たが、それを抜きにしても私達を祝福し、慕ってくれる者達が多いのもまた現実…
同性での婚姻、陛下を巡る色々な闇も見てきた…王妃が男性だけでは不安だと、陛下にあらゆる理由を付け、無理矢理娘を嫁がせた家々こそ同性での婚姻をよく思わない貴族の派閥そのものと言っていい
それを否定することはこの国の歴史を否定する事にも繋がり、陛下は私の他に3人側室の妻を得ている
この環境の中で、陛下は確かに私を愛して下さっている、だからこそ初夜で気を失うほど愛され、子を望まれた
二人の愛の結晶…男性の私が魔術により子を宿し産んだのがレオンハルトだ
陛下と私の特徴を色濃く受け継いだ可愛い我が子…可愛い可愛い我が子…
けれど幼い頃のレオンハルトにはつらい思いをさせてしまったと、今となっては母として失格であったと思う
思い返せば、神童と呼ばれた私達が一度で覚えたことをレオンハルトは覚えられない…そんな些細な出来事からあの子は壊れ始めたのだろう…
ある日から突然幼い幼児のように問題を起こす、嘘を付く、人を蔑む…
私や陛下に叱られる時だけ良い息子の顔をする我が子にどう接していいのか、解らなかった…
未来の王への不安、第二王子や第三王子を押す輩も現れていた
男の私を王妃と認めたくない派閥がひしめく王宮は想像以上にレオンハルトにとっても過ごしにくい世界だったのだろう
けれど…あの日、あの中庭でのお茶会でレオンハルトは救われた…それだけじゃない、私も一人の子に救われたのだ
ルディヴィス.サングイス
この国の宰相の息子である彼は、昔の私達のように子供らしからぬ子なのかもしれない…
レオンハルトに不敬と解っていながら真実を教え、我が子に正しい事をみる目を思い出させてくれた彼はあの日、何を考えていたのだろう
「母上、人の心の痛みがわからない俺は…良き王になれないのですか…?」
お茶会の日、ルディヴィスにグラスをぶつけ怪我をさせた日、レオンハルトは自分が何を言われたのか理解してはいなかった
けれど夜、私の私室を訪れたレオンハルトはルディヴィスに言われたことを振り返り、人の心の痛みについて聞いてきたのだ
我が子が自らの過ちに気付いた日、学ばないといけない大切な事に気付いた日…
母であるが男の私にはレオンハルトを抱き締め、人の心を傷つける事の恐ろしさを教えてあげる事しかできなかった…
二度目の面会でレオンハルトはルディヴィスを見て、声を聞き、現実と向き合うことで死の恐怖と暴力が与える恐ろしさ、そして大切な物を見つけたのだろう
レオンハルトを変えたのはルディヴィスという存在だ、父でも母でもなく、レオンハルトより一つ年上の子共
幼い頃子供が、誰よりも他人の気持ちを尊重し、思いやれる…この素晴らしい事実にこの国の未来は明るいと素直に嬉しい気持ちになった
ルディヴィスを婚約者にしたいと言い出したのはレオンハルト、それを押したのは私だ
私と学園で交際を考えていた頃の陛下によく似た決意の瞳でルディヴィスを求めていたから…
サングイス公爵からは候補と言う形で留められてしまっているが、私の判断は間違っていない
9歳となったレオンハルトはルディヴィスを婚約者候補に据え、私の想像を超える程、賢く優しく、素晴らしい存在へと日々成長している
レオンハルトに必要だったのは父や母ではない、互いに思い合える存在なのだと言い切れる
しかし、やはり男同士の婚約者候補、さらには婚姻は如何なものかと言ってくる者がいる…それが解決するまでは婚約を確定させる事が出来ない
何より大切な跡継ぎを家族想いのサングイス公爵が手放さない…
レオンハルト、お前が望むものは大きな壁の先にある事を理解しなさい、私は母としてこの国の王妃として…お前が努力を続けるなら出来る限り手を貸して上げましょう…
「リジャール…考え事か…?」
私の肩を抱き寄せ耳元へキスを贈る陛下の声が静かな室内に響く
そういえば陛下はまだ、ルディヴィスに直接対面で会った事が無いような…?
「レオンハルトの事を考えておりました…愛する息子は私達と同じように大きな壁のある恋をしているのですよ…?
ふふ、愛する者の為に成長する我が子が可愛くて…レオンハルトの顔を見ていると昔の私達を思い出すのです…」
「高い壁か…確かにそうだな…俺もサングイス公爵に一度、婚約者候補であるルディヴィスとの面談を求めているのだが…勿体無いから嫌だと言うのだぞ?あの宰相は…全く、あいつは…昔から…」
陛下は私を強く抱き締め子供のように甘えながら宰相への不満…いや腐れ縁と呼べる彼の話を教えてくれる
レオンハルトもルディヴィスの前では陛下のようになるのだろうか…?
我が子が進む未来が、今までもこれからも明るい事を願う…けれど、障害が降りかかるかもしれない、いや降りかかると思っていたほうがいい
私は王妃として、母として…同じ男としてレオンハルトを守り見守る
たまには母に甘えてほしいと思いながら…
3,676
お気に入りに追加
6,615
あなたにおすすめの小説
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
皇帝の立役者
白鳩 唯斗
BL
実の弟に毒を盛られた。
「全てあなた達が悪いんですよ」
ローウェル皇室第一子、ミハエル・ローウェルが死に際に聞いた言葉だった。
その意味を考える間もなく、意識を手放したミハエルだったが・・・。
目を開けると、数年前に回帰していた。
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
異世界に召喚されて失明したけど幸せです。
るて
BL
僕はシノ。
なんでか異世界に召喚されたみたいです!
でも、声は聴こえるのに目の前が真っ暗なんだろう
あ、失明したらしいっす
うん。まー、別にいーや。
なんかチヤホヤしてもらえて嬉しい!
あと、めっちゃ耳が良くなってたよ( ˘꒳˘)
目が見えなくても僕は戦えます(`✧ω✧´)
R指定はないけれど、なんでかゲームの攻略対象者になってしまったのだが(しかもBL)
黒崎由希
BL
目覚めたら、姉にゴリ推しされたBLゲームの世界に転生してた。
しかも人気キャラの王子様って…どういうことっ?
✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻
…ええっと…
もう、アレです。 タイトル通りの内容ですので、ぬるっとご覧いただけましたら幸いです。m(_ _)m
.
異世界転生して病んじゃったコの話
るて
BL
突然ですが、僕、異世界転生しちゃったみたいです。
これからどうしよう…
あれ、僕嫌われてる…?
あ、れ…?
もう、わかんないや。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
異世界転生して、病んじゃったコの話
嫌われ→総愛され
性癖バンバン入れるので、ごちゃごちゃするかも…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる