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幼少期編
社畜は魔力を知る
しおりを挟む悪役令嬢の兄として、聖女なヒロインが現れる前に何かしたいと考えた、しかし…だがしかし!!!
実際現れてもいない、ましてやゲームでも描かれていない悪役令嬢サイドの幼少期!攻略対象に会ったらとりあえずシャルティの印象を爆上げしておくくらいしかやることが無いと気付いたのは10歳の誕生日になった頃だった
攻略対象の幼少期にそうホイホイ会えるわけでもないのだ…レオンハルト殿下とヘルリは奇跡と言っていいだろう
その2人はシャルティとの仲も良好で性格もとても人を断罪するようなクソ野郎ではない
クソ妹のゲームプレイを死にそうになりながら見ていただけのおれには、このゲームに対する知識が偏りまくっており…実は知らない事も多かったのだ
流れに身を任せてしまってもいいんじゃないかと、開き直って楽しい公爵令息生活してたら数年が経過している…
初等部とかがないこの世界、15歳まで遠くない?聖女なヒロインはいつ聖女になったのか…その辺を知るはずもなかったおれの数年間は勉強、礼儀作法、お茶会での他貴族との交流会!!
この3つを重点的に楽しんだ訳だが、他の攻略対象に出会うことは無かった
後、出会っていないのは近衛騎士団長の息子と大司教の孫、隣国からの留学生…
………最後なんて学園入学まで会えないと思います!
そんなこんなで、シャルティよ…お兄様10歳になったよ
囮なおれの婚約者候補であるレオンハルト殿下まで参加されてしまった、10歳の誕生日…
それはもう盛大にお祝いして下さった父様達に感謝しかない…いや、殿下が来たことにより参加者が多くなったような気はする…
それ程盛大にお祝いしてくれた事は素直に嬉しかった
性格が自由奔放な問題児ワイルド系から、人の心理解できるマイルド系に変貌を遂げたレオンハルト殿下の人望はかなり厚い
人前で優秀な姿しか見せない殿下が現在も甘えん坊な一面がある事を、おれだけが知っているのは少し嬉しい反面恥ずかしい…
殿下、甘えるのは未来に取っておいてください…おれ、本来モブな顔も出ないちょいキャラなんですよ…
乙女ゲームの世界でおれは顔すら出演しないで死んだモブキャラなのだ…そんな自分を慕って、変わろうとしてくれる…それは自分のシャルティを救う行動が少しずつ実を結んでいるような気がして…嬉しかった
ちなみにヘルリには、従者見習いになり僅か1年ほどで、身長をゆうに越されていた…え?デカくない?お前デカくない?
11歳とは思えないほど大きなヘルリは、現在本当におれの従者となり、これから先学園に入学した時も使用人として着いてくる事が確定した…悪役令嬢の従者ではないけど、その兄の従者…これもゲームの強制力なのかもしれない
いっそ学園なんて行かず、断罪なんて世界線が存在しない、この生活が続けば良いのにと思った頃…
三人目の攻略対象者に出会うことになる、おれの魔力適性を見に向かった教会で…
………………
…………
……
「ルディヴィスも10歳か…時が過ぎるのは早いものだな?そろそろ体内の魔力も身体に馴染んで来た頃だろう、教会に適性を見てもらいに行こうか」
この乙女ゲームがファンタジーな世界だと再認識されられる魔力!適性!社畜でもわくわくしてしまうワードを父様は言ってくる
この世界では全人類、全生物に魔力が備わっている、大きく分けて火水風土光闇の六属性があり、個人個人で体内で保持できる属性の濃度が変わってくるのだと言う
幼い頃魔力を直接付与してはいけないのは、属性が曖昧で保持できる濃度がゼロに等しい段階だからなのだと
まだ作りかけの器に無理に魔力を注げば自分の持っていた個性を潰し、上書きされた物が歪に根付く…例えるなら、ヘルリが人狼化魔法を無理に植え付けられて痛みに泣き、うまくコントロール出来ずに暴走し人を傷つけた事がある…そんな歪さだ
ひどい場合は掛けた魔法によって、植物人間の様になってしまう後遺症も存在するのだから怖い…
学園入学が15歳から定められているのも貴族は魔力保持力が高く、使い方をしっかりと学び身体が成長してからでないと、生徒間で事故が起きる可能性があるから…そんな意味もあるらしい
10歳くらいで魔力は馴染む、一番早くて軍の養成校はその歳から入団できる、最低10歳がラインなのだろう
魔力についての呪文など専門知識は10歳で魔力適性を見てからと定められているという…
確かに魔力かっこいいぜって、試し撃ちして相手に後遺症が出たりしても、金で事件を隠蔽なんてことあるかもしれないよな……おれは改めてこの世界を学んだ
聞いたら火と風属性だった父様に連れられて、王都の中心にある大きな教会に足を踏み入れた…
巨大なステンドグラスが煌めき床には淡い模様が浮き出る観光スポットみたいな美しさの漂う大きな教会…すごい…礼拝の人もちらほらいるみたいだ
ここを含め、魔力の適性を調べてくれるのは国の至る所にある教会なのだと父様に説明を受けながら礼拝堂の奥へと進むと神官と思われるおじいさんが佇んでいた
「ようこそサングイス公爵様、お待ちしておりました
ルディヴィス様もこんなに大きくなられて…時の流れとは早いものですな…喜ばしいことだ…
本日の適性検査はわたくし、ロドイ.エースメイスが務めさせていただきます」
「ご無沙汰しておりますロドイ大司教、本日はよろしくお願いします」
和やかに父様と品の良いご老人はおれの驚愕の内心を放置し和やかに会話を続ける…今、なんて言った?ロドイ大司教…?エースメイス大司教…???
え、この優しそうなおじいさんが大司教??まじ?ま、じ?
攻略対象の関係者が目の前におられた…!!!
あなたの孫、聖女なヒロインに恋してうちの義妹断罪するのでなんとかなりませんかね!なんて事は言えず、内心孫を探しながらしっかりと素晴らしい礼儀作法でご挨拶し、おれは大司教様に魔力適性を調べていただいたのだ…
「ルディヴィス様、わたくしの手に手のひらを重ねて下さい、これからわたくしの魔力をほんの少し流します
他人の魔力を流し込まれるのは少し驚くかもしれません、その時感じた違和感を覚えた状態で次はこの水晶に手を触れ、違和感を移すように念じて下さい」
「は、はい…よろしくお願いします」
おれは大司教様の手に自分の手を重ねる…大司教様…あの…あのですね?説明がふわっとしすぎてません?違和感を覚えて、違和感を移すとは?
どう言うことでしょうか…と悩んだ所でその違和感は直にわかった…
じんわりと手のひらに感じる暖かさと、体内に入り込もうとする異様な気持ち悪さ…幼い子なら泣き出しそうな異物感…なにこれぇ…!!
でも、とてもわかるおれの身体がこの違和感を跳ね除けようと頑張っているのが…これが自分の中で魔力が安定するって事なのか?そう言うこと??
「ルディヴィス様、不安にならずに…上手ですよ
その違和感を水晶に移し念じて下さいませ」
「わかり、ましたっ…」
これ、これさ小さい子泣くじゃん…うわぁ違和感がやばい…やばいぃぃ………
例えるなら…例えるならなんだ?うねうね動く何かが詰まった箱に手を突っ込まされている感じ…何だこれ…小さい子がもしもされたら手を突き破ってくるのか…な……………ヘルリが痛いと泣いていた事を思い出してゾッとした…………
ロドイ大司教様に促されるように水晶に触れ、違和感を跳ね除けようと移そうと必死に念じる…
するとあら不思議、身体から何かが抜けるような感覚と水晶がゆっくり色付いていく…
これが、おれの魔力…?
「これは…さすがサングイス公爵子息様…ルディヴィス様は副属性持ちですね…水と土、僅かに闇をお持ちのようだ…」
「あ、ありがとうございます…」
おれは二属性とちょっとおまけみたいな魔力属性を持っていたのだった
親子な父様と何一つ属性被ってなかったけど遺伝とかそんな感じは無いんだな…?それでも自分の中に魔力がある事、それが馴染み存在してることがわかってワクワクしてしまったのは事実だ
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