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幼少期編

候補言う名の囮

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レオンハルト殿下が本当に週一回、サングイス公爵家に遊びに来るようになり早数ヶ月…
シャルティと本当に仲良くなったレオンハルト殿下は来るたびとても楽しそうに過ごされる
何故か定位置だと主張するように、おれを挟み込むようにソファに座り、一緒に勉強しする終われば3人でお茶をしながらシャルティと共に甘えてくる…うん、かわいい…まるで弟が増えたかのような可愛さだ
平和でしかない、普通に平和に仲良くしている…


時々レオンハルト殿下はおれの匂いを嗅いでいたり、しがみついて離れなかったりはするのだけがたまに傷だ…それ以外には特に不満はない週一回の訪問

レオンハルト殿下は、本当に人としても学力的にも変わろうと努力している、その成長が間近で見えていて嬉しい…いい国王になるだろうな…と前世社畜が太鼓判を押してあげるくらいには

そんな平和な殿下の遊びに来る日々に、もしや公爵家が王家と癒着してると思われないのかと不安になった頃、父様からとんでもない事を聞かされた




『ルディヴィス.サングイスをレオンハルト殿下の婚約者候補とする』




そう書かれた書面をおれに見せながら、ため息をつく父様…おいおい??なんで男のおれを婚約者候補に??乙女ゲームどうなってんだと、驚きのあまり真顔のおれ

おれが呼ばれた父様の執務室に沈黙が続いた…
父様は頭を抱えながら言う



「ルディヴィス、殿下は相当お前の事がお気に入りのようなんだ…恐らく真に心を許せる存在としてお前を欲しているのだろう、事実…努力の矛先はお前に会えること、それを褒美にどんな難関も乗り越えている…

我が公爵家のみと交流するのは不味い、しかし…それを奪ってみろ?お前に会えないことがストレスになり前のような自由奔放な性格になるくらいなら…と国王陛下達が考えた対策、意向がこれだ

婚約者候補との交流を深めるために訪問する、それならば癒着など周囲から言われない…そういうことらしい」


「そんな事が…ですがレオンハルト殿下は本当に変わろうとしている事も事実です
もしかしたら…殿下が心を開ける相手が今は、ぼくしか居ないのかもしれない…これから多くを学んで行けば自ずと好きな人も出来ると思います
それまで、ぼくが殿下の心を守る意味で婚約者候補なら喜んで受けます」 



動揺を必死に隠し冷静に返答すると父様の表情が和らいだ気がした…父様としても殿下の現在の行動は幼さからくる依存に近いものだと思っているのだろう
だからこそおれが乗り気になってしまっては勢力のバランスが崩れ、良からぬ噂が立つかもしれない、しかしおれに話して置かなければ殿下から本気で一時の迷いのまま婚約者に昇格してしまうかもしれない…我が公爵家の跡継ぎとしてシャルティを幸せにする計画があるんで大丈夫ですよ父様…おれは靡かない
おれが婚約者候補になる事で本当にシャルティに白羽の矢が立つ事が無くなるのなら一時的にでもなっておいていいとも思う

それよりも…………レオンハルト殿下…いや、王家よ…なにしてるんですかね?おれ男、殿下も男!!いや王妃様も男だけど!!なんで同じもの生えてる奴を婚約者候補にしちゃうかな!
王妃様くらい超美形だったら平気なのか…?
いやいや、それよりもおれはモブ、あの乙女ゲームで顔すら出してもらえなかったモブなのだ

……………ついでに気になっていた事も聞いてみた



「1つだけお聞きしても……無知であることが怖くて…父様…あの、なんでぼくを候補にできてしまうのですか…?王妃様は男性の方にみえるのも……男でも赤子を産める…それに関係しているんですか?」


実際すごく気になっていたから…!父様教えて!
前の母様もペトラさんも女性なのになんで王妃様は男なんですか!産むとしてどこから産むか聞くのは怖いけど!


「ああ…ルディヴィスはまだそこまでは習っていなかったね…10年ほど前、隣国にて同性でも子を成せる魔術が公表された事により、この国でも数は多くないが同性同士の夫婦もいる…
王妃様は隣国の公爵家出身でな、国王陛下は留学中に一目惚れし、かなりの大恋愛の末…王妃様を娶ったのだ
王妃様は確かに男性だがレオンハルト殿下は王妃様が産んだ子だよ、それもあってお前を婚約者候補にするのは何も問題が無いんだ…困ったことに」


父様はため息をつく
わぉ………隣国?隣国お前の仕業か?乙女ゲームにいらん要素を追加してしまったのは隣国か??
まさか攻略対象の1人がいる隣国では無いといいな…深く聞くのは怖いからやめておこう…
そう、おれは尻込みしてしまった

この日、なんだかんだあって悪役令嬢の兄であるおれは、形だけ攻略対象であるレオンハルト殿下の婚約者候補となったのだ








「おにいさまは殿下と結婚しちゃうんですか…?お家から居なくなっちゃうの…?ルティ…それは…………やだ………さびしい………」


父様と話を終え、自室に戻るとシャルティが涙を浮かべておれに抱きついてきた
転ばないように抱きしめ、背中を擦ってやる…レオンハルト殿下……なんてことをしてくれてんですかね??シャルティ不安になってますけど??
詳しく話を聞くと先日来た殿下からおれと結婚するいいだろうみたいな手紙が来たらしい…ちょっと殿下????


「ルティ、兄様はルティの兄様だよ?この家はぼくが継ぐ公爵家、どうして出ていくんだい?
レオンハルト殿下は今、すごく頑張っていて寂しい方なんだ…ぼくを拠り所に難しい問題に取り組む健気なね…兄様と結婚したいというのはその寂しさを埋めたい気持ちがあるからなんだよ

でもそれは殿下がまだ幼いから…これから成長すると兄様と結婚する話は無くなる、大丈夫だよルティ…
殿下が素敵な人と出会って、素敵な王様になるまでぼくらで支えてあげようね?」


いや本当にそうなんだよシャルティ、兄様は殿下と結婚しません!殿下はいずれ聖女であるヒロインと恋に落ちる
その時、おれは無抵抗に、どうぞどうぞお幸せに!モブはお二人の幸せを祝福します!と拍手で送り出す予定だ
シャルティが嫉妬にかられてヒロインを害し血濡れの公爵家令嬢なんて呼ばれる未来はこの世界にあってはいけないんだから
兄様がちゃんと囮という名の婚約者候補を勤め上げてシャルティが断罪されない未来を創るよ



おれの言葉にシャルティは頷き、殿下を応援すると笑ってくれた…可愛い
レオンハルト殿下、安心してくださいあなたにはヒロインがいるんです…ヒロインですよ?聖女の!
こんなモブ兄で満足している場合じゃないんです!



でも、その日が来るまでおれは殿下のやる気の根源であり続けましょう…素敵な国王になってほしいのは本当だから…









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